通常、成人にはロピニロールとして1日1回2mgから始め、2週目に4mg/日とする。以後経過観察しながら、必要に応じ、2mg/日ずつ1週間以上の間隔で増量する。いずれの投与量の場合も1日1回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、ロピニロールとして1日量16mgを超えないこととする。
7.1 本剤の投与は6.用法及び用量に従い少量から始め、消化器症状(悪心、嘔吐等)、血圧等の観察を十分に行い、忍容性をみながら慎重に増量し患者ごとに適切な維持量を定めること。また、本剤投与中止後再投与する場合にも少量から開始することを考慮すること。
7.2 一般に空腹時投与において悪心、嘔吐等の消化器症状が多く発現する可能性があるため、食後投与が望ましい。
7.3 本剤はできるだけ同じ時間帯に服用するよう指導すること。
7.4 本剤の有効成分は速放錠である「ロピニロール塩酸塩錠0.25mg、同1mg、同2mg」と同一であるが、用法及び用量が異なることに注意すること。また、ロピニロール塩酸塩錠(速放錠)から本剤へ切り替える場合には、翌日から切り替え可能であるが、十分に患者の状態を観察すること。切り替えに際しては、17.臨床成績の項を参考に用量を選択すること。
8.1 突発的睡眠により自動車事故を起こした例が報告されていることから、患者には突発的睡眠及び傾眠等についてよく説明し、自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業に従事させないよう注意すること。なお、海外において突発的睡眠を起こした症例の中には、傾眠や過度の眠気のような前兆を認めなかった例あるいは投与開始後1年以上経過した後に初めて発現した例も報告されている。[1.、
11.1.1参照]
8.2 起立性低血圧がみられることがあるので、本剤の投与は少量から始め、めまい、立ちくらみ、ふらつき等の起立性低血圧の徴候や症状が認められた場合には、減量、休薬又は投与中止等の適切な処置を行うこと。
8.3 本剤の減量、中止が必要な場合は、漸減すること。急激な減量又は中止により、高熱、意識障害、高度の筋硬直、不随意運動、ショック症状等の悪性症候群があらわれることがある。また、ドパミン受容体作動薬の急激な減量又は中止により、薬剤離脱症候群(無感情、不安、うつ、疲労感、発汗、疼痛等の症状を特徴とする)があらわれることがある。[
11.1.3、
11.2参照]
8.4 レボドパ又はドパミン受容体作動薬の投与により、病的賭博(個人的生活の崩壊等の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず、持続的にギャンブルを繰り返す状態)、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等の衝動制御障害が報告されているので、このような症状が発現した場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。また、患者及び家族等にこのような衝動制御障害の症状について説明すること。
8.5 本剤は24時間かけて有効成分を放出し、溶解するよう設計されているので、腸切除の既往、人工肛門造設術、下痢等の影響で、本剤の消化管内滞留時間が短くなったと考えられる場合、又は糞便中に本剤の残留物が確認された場合には、本剤の効果が十分に得られないおそれがある。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 幻覚、妄想等の精神症状又はそれらの既往のある患者
9.1.2 重篤な心疾患又はその既往歴のある患者
本剤は薬理作用から心拍数低下を起こす可能性がある。
9.1.3 低血圧症の患者
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/分未満)のある患者
本剤は主として腎臓で排泄される。また、これらの患者を対象とした臨床試験は実施していない。血液透析を受けている患者に対して、透析による用量調節の必要性はない。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 肝障害のある患者
本剤は主として肝臓で代謝される。また、これらの患者を対象とした臨床試験は実施していない。
9.3.2 重度の肝障害のある患者
維持用量が決定するまではより低用量の用量調節が可能な速放錠である「ロピニロール塩酸塩錠0.25mg、同1mg、同2mg」を用いることも考慮すること。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ラット)で胎児毒性(体重減少、死亡数増加及び指の奇形)が報告されている。[
2.2参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。臨床試験で本剤投与後に血漿中プロラクチン濃度の低下が認められたため、乳汁分泌が抑制されるおそれがある。また、動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。臨床試験において幻覚等の精神症状が多くみられた。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 突発的睡眠(1.8%)、極度の傾眠(頻度不明)
前兆のない突発的睡眠、極度の傾眠があらわれることがある。[1.、
8.1参照]
11.1.2 幻覚(13.7%)、妄想、興奮、錯乱(いずれも頻度不明)、譫妄(0.6%)
幻覚、妄想、興奮、錯乱、譫妄等の精神症状があらわれることがある。[
10.2参照]
11.1.3 悪性症候群(0.3%)
本剤の投与後、減量後又は中止後に、高熱、意識障害、高度の筋硬直、不随意運動、ショック症状等があらわれることがある。このような症状があらわれた場合には、投与開始初期の場合は中止し、また、継続投与中の用量変更・中止時の場合は一旦もとの投与量に戻した後慎重に漸減し、体冷却、水分補給等の適切な処置を行うこと。なお、投与継続中にも同様の症状があらわれることがある。[
8.3参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 5%未満 | 頻度不明 |
過敏症 | | 発疹、そう痒 | 蕁麻疹、血管性浮腫等 |
精神系 | | リビドー亢進 | 病的賭博、強迫性購買、暴食、攻撃性、躁状態 |
神経系 | 傾眠、ジスキネジア | めまい | 失神 |
血管障害 | | 起立性低血圧 | 低血圧 |
胃腸障害 | 悪心、便秘 | 腹痛、嘔吐、消化不良 | |
その他 | | 末梢性浮腫 | 薬剤離脱症候群注)(無感情、不安、うつ、疲労感、発汗、疼痛等) |
13.1 症状
13.2 処置
ドパミン拮抗薬(抗精神病薬、メトクロプラミド等)投与により症状が軽減することがある。
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
14.2 薬剤投与時の注意
本剤は徐放性製剤であるため、噛んだり、割ったり、砕いたりせずにそのまま服用するよう指導すること。
15.2 非臨床試験に基づく情報
動物実験(ラット)で1.5〜50mg/kg/日の2年間投与により、精巣Leydig細胞の過形成、腺腫の発生頻度が用量依存的に増加したとの報告がある。なお、マウスではがん原性は認められていない。
16.1 血中濃度
16.1.1 L-dopa製剤非併用のパーキンソン病患者62例にロピニロール徐放錠2〜16mgを反復経口投与した時の血漿中ロピニロールのトラフ濃度はほぼ用量比例的に増加した
1)。
L-dopa製剤非併用パーキンソン病患者にロピニロール徐放錠2〜16mgを反復経口投与した時の血漿中ロピニロールのトラフ濃度
投与量(mg) | 例数(例) | トラフ濃度(ng/mL) |
2 | 61 | 1.81±1.76 |
4 | 58 | 3.53±1.75 |
6 | 1 | 3.82 |
8 | 61 | 7.60±5.51 |
10 | 17 | 9.77±3.24 |
12 | 12 | 11.97±7.21 |
14 | 9 | 12.58±5.59 |
16 | 12 | 15.47±8.29 |
16.1.2 生物学的同等性試験
<ロピニロール徐放錠2mg「KMP」>
ロピニロール徐放錠2mg「KMP」とレキップCR錠2mgを、クロスオーバー法によりそれぞれ1錠(ロピニロールとして2mg)健康成人男子に絶食(n=27)及び食後(n=28)経口投与して血漿中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)〜log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された
2)。
(1)絶食投与
| 判定パラメータ | 参考パラメータ |
AUC0-48(ng・hr/mL) | Cmax(ng/mL) | Tmax(hr) | T1/2(hr) |
ロピニロール徐放錠2mg「KMP」 (錠剤、2mg) | 21.83±6.74 | 1.0373±0.3122 | 6.4±3.2 | 6.28±2.12 |
レキップCR錠2mg | 22.87±8.31 | 0.9629±0.3594 | 8.3±3.8 | 6.99±2.56 |
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
(2)食後投与
| 判定パラメータ | 参考パラメータ |
AUC0-48(ng・hr/mL) | Cmax(ng/mL) | Tmax(hr) | T1/2(hr) |
ロピニロール徐放錠2mg「KMP」 (錠剤、2mg) | 28.63±9.39 | 1.5080±0.3667 | 7.2±2.9 | 6.17±1.52 |
レキップCR錠2mg | 27.40±10.73 | 1.3387±0.4494 | 10.6±4.0 | 6.19±1.58 |
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
L-dopa製剤非併用のパーキンソン病患者11例を対象に、ロピニロール徐放錠8〜16mgを食後に反復経口投与した時、空腹時と比べて血漿中ロピニロールの薬物動態に食事の影響はみられなかった。投与量で補正した血漿中ロピニロール濃度は投与後7時間にCmax(1.63±0.46ng/mL/mg)に達し、AUC
0-24は28.28±7.88ng・hr/mL/mgであった
3)。
L-dopa製剤非併用のパーキンソン病患者にロピニロール徐放錠8〜16mgを反復経口投与した時の血漿中ロピニロールの薬物動態パラメータ(投与量で補正)
投与条件 | Cmax(ng/mL/mg) | AUC0-24(ng・hr/mL/mg) |
摂食後 | 1.63±0.46 | 28.28±7.88 |
絶食下 | 1.64±0.61 | 28.91±10.37 |
16.2.2 バイオアベイラビリティ
早期パーキンソン病患者23例にロピニロール徐放錠の8mgを1日1回4〜7日間経口投与した時の定常状態におけるTmaxの中央値は約6時間であり、ロピニロール速放錠の2.5mgを1日3回4〜7日間経口投与した時の血漿中ロピニロールの曝露量に対するロピニロール徐放錠の相対的バイオアベイラビリティは88%以上であった
4)(外国人データ)。
16.3 分布
In vitroでの血漿蛋白結合率は35〜42%であった
5)。
16.5 排泄
16.5.1 健康成人男性9例にロピニロール0.1、0.2及び0.4mg
注)を単回経口投与した時の投与後24時間までのロピニロール及び主代謝物(脱プロピル体)の尿中排泄率は以下のとおりであった
6)。
健康成人男性にロピニロール0.1〜0.4mgを投与した時の尿中排泄率(投与量に対する%:ロピニロール換算)
投与量(mg) | ロピニロール | 主代謝物(脱プロピル体) | 合計 |
0.1 | 6.4±2.9 | 35.3±11.2 | 41.7±12.1 |
0.2 | 9.7±5.8 | 40.3±13.9 | 50.0±13.2 |
0.4 | 3.3±0.9 | 39.3±6.4 | 42.6±6.5 |
16.5.2 健康成人男性4例に
14C標識体0.6mg
注)を単回経口投与した時の投与後48時間までの総放射能排泄率は、尿中に86.1±3.1%、糞中に0.6±0.5%であった
7)(外国人データ)。
注)本剤の承認用量は、「通常、成人にはロピニロールとして1日1回2mgから始め、2週目に4mg/日とする。以後経過観察しながら、必要に応じ、2mg/日ずつ1週間以上の間隔で増量する。いずれの投与量の場合も1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、ロピニロールとして1日量16mgを超えないこととする。」である。
16.8 その他
<ロピニロール徐放錠8mg「KMP」>
ロピニロール徐放錠8mg「KMP」は、「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドライン(平成24年2月29日 薬食審査発0229第10号)」に基づき、ロピニロール徐放錠2mg「KMP」を標準製剤としたとき、溶出挙動が等しく、生物学的に同等とみなされた
8)。