医療用医薬品 : フェアストン

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医薬品情報


総称名 フェアストン
一般名 トレミフェンクエン酸塩
欧文一般名 Toremifene Citrate
製剤名 トレミフェンクエン酸塩製剤
薬効分類名 乳癌治療剤
薬効分類番号 4291
ATCコード L02BA02
KEGG DRUG
D00967 トレミフェンクエン酸塩
KEGG DGROUP
DG01585 エストロゲン受容体拮抗薬
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2025年6月 改訂(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
フェアストン錠40 Fareston Tablets 40 日本化薬 4291007F1021 132.5円/錠 劇薬, 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦[8.19.59.6参照]
2.2 QT延長又はその既往歴のある患者(先天性QT延長症候群等)[心室性頻拍(Torsade de pointesを含む)、QT延長の増悪もしくは再発するおそれがある。][17.3.1参照]
2.3 低カリウム血症のある患者[心室性頻拍(Torsade de pointesを含む)、QT延長を起こすおそれがある。][17.3.1参照]
2.4 クラスIA(キニジン、プロカインアミド等)又はクラスIII(アミオダロン、ソタロール等)の抗不整脈薬を投与中の患者[10.1参照]

4. 効能または効果

閉経後乳癌

6. 用法及び用量

通常、成人にはトレミフェンとして40mgを1日1回経口投与する。また、既治療例(薬物療法及び放射線療法などに無効例)に対しては、通常成人にトレミフェンとして120mgを1日1回経口投与する。なお、症状により適宜増減する。

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤には抗エストロゲン及びエストロゲン作用がある。本剤は、閉経初期の患者へ投与されることがあるので、以下の点に注意すること。[2.19.59.6参照]
・本剤の投与開始時にあたっては、妊娠していないことを確認し、本剤の妊娠への影響について説明すること。
・治療期間中はホルモン剤以外の方法で避妊するよう指導すること。
・本剤投与中に妊娠が確認された場合又は疑われた場合には直ちに投与を中止すること。
8.2 本剤投与によりQT延長がみられていることから、心血管系障害を有する患者に対しては、本剤の投与を開始する前に心血管系の状態に注意をはらうこと。[9.1.217.3.1参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 骨髄抑制のある患者
軽度の白血球減少及びヘモグロビン減少が認められている。
9.1.2 重度の徐脈等の不整脈、心筋虚血等の不整脈を起こしやすい心疾患のある患者
心室性頻拍(Torsade de pointesを含む)、QT延長を起こすおそれがある。[8.217.3.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ラット、ウサギ)で胎児毒性(死亡、発育遅延、内臓・骨格異常、出生児の生殖障害)、妊娠維持及び分娩への障害等の生殖障害が認められている。[2.18.1参照]
9.6 授乳婦
授乳中の女性には投与しないこと。動物実験(ラット)で乳汁に移行することが認められている。[2.18.1参照]
9.8 高齢者
本剤の臨床試験成績から、高齢者と非高齢者において副作用の発現率及びその程度に差がみられていないが、用量に留意して患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。本剤は主として肝臓で代謝されており、高齢者では肝機能が低下していることが多く高い血中濃度が持続するおそれがある。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
クラスIA抗不整脈薬
キニジン
プロカインアミド
(アミサリン) 等
クラスIII抗不整脈薬
アミオダロン
(アンカロン)
ソタロール
(ソタコール) 等
2.4参照]
QT延長を増強し、心室性頻拍(Torsade de pointesを含む)等を起こすおそれがある。これらの薬剤はいずれもQT間隔を延長させるおそれがあるため。
10.2 併用注意
腎臓を介してカルシウムの排泄を減少させる薬物
チアジド系利尿剤
高カルシウム血症の危険性を増大させるおそれがある。機序不明
クマリン系抗凝血剤
ワルファリン
抗凝血作用を増強するとの報告があるので、抗凝血剤を減量するなど慎重に投与すること。クマリン系薬剤の代謝が阻害される。
フェノバルビタール
フェニトイン
カルバマゼピン
本剤の血中濃度が低下するおそれがある。本剤の代謝が促進される。
リファンピシン本剤の血中濃度が低下するおそれがある。本剤の主要代謝酵素CYP3A4が誘導され、本剤の代謝が促進される。
リトナビル本剤のAUCが上昇することが予想される。本剤の主要代謝酵素CYP3A4を阻害する。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 血栓塞栓症、静脈炎(頻度不明)
脳梗塞、肺塞栓、血栓塞栓症、静脈炎、血栓性静脈炎があらわれることがある。
11.1.2 肝機能障害、黄疸(頻度不明)
11.1.3 子宮筋腫(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 1〜5%未満1%未満頻度不明
消化器悪心・嘔吐、食欲不振胃部不快感、下痢 
肝臓ALT上昇、AST上昇、LDH上昇、γ-GTP上昇、Al-P上昇 ビリルビン上昇
過敏症  発疹、かゆみ
血液 白血球減少、貧血血小板減少
  視覚障害(角膜の変化等)
精神神経系めまい 頭痛、うつ症状
生殖器 性器出血膣分泌物、子宮内膜増殖
皮膚  脱毛
その他顔面潮紅、倦怠感、発汗コレステロール上昇、ほてり、高カルシウム血症トリグリセライド上昇、BUN上昇、浮腫

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 本剤による子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖及び子宮体癌が報告されている。
15.1.2 類薬タモキシフェンクエン酸塩ではその使用と子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖、子宮体癌発生との因果関係を示唆する疫学的調査の結果が報告されている。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
女性乳癌患者に本剤40mgを単回経口投与したとき、3時間後に最高血清中濃度(392.5ng/mL)に達し、その後、半減期はα相3.0時間、β相68.7時間で2相性を示して消失した1)
16.1.2 反復投与
本剤を反復経口投与(1日1回、40mg及び120mg)したとき、AUC及びCmaxの値は用量依存的に増加した。反復投与時の血清中濃度は初回投与時に比べて増加し、投与開始後2週間以内にほぼ一定となった2)
16.3 分布
本剤120mgを1日1回、5日間反復経口投与したときの最終投与後2及び4時間の血清を混合して蛋白結合率を測定した。トレミフェン及びN-デスメチルトレミフェンの蛋白結合率はそれぞれ98.7±0.3及び97.9±1.0%であった3)
16.4 代謝
女性乳癌患者における血中主代謝物はN-デスメチルトレミフェンであった。本剤を反復経口投与したとき、この代謝物の血清中濃度は未変化体と同様に2週間以内にほぼ一定となった。このときの血清中濃度は未変化体の約2倍以上であった2)
16.5 排泄
女性乳癌患者に本剤を経口投与したときの尿中排泄率は未変化体、N-デスメチルトレミフェンいずれも0.1%以下であり、ヒトにおける主排泄経路は糞中であると推察された4)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相臨床試験(用量設定試験)
原発進行・再発乳癌患者(薬物療法、放射線療法を受けていない症例及び術後補助療法に再発した症例)に対する本剤40mg/日投与における奏効率は24.1%(7/29例)であった。
副作用発現頻度は19.0%(8/42例)であった。主な副作用は顔面潮紅9.5%(4/42例)、悪心・嘔吐7.1%(3/42例)、食欲不振4.8%(2/42例)等であった。
原発進行・再発乳癌患者(補助療法中再発例及び既治療例)に対する本剤120mg/日投与における奏効率は13.5%(5/37例)であった。
副作用発現頻度は30.4%(14/46例)であった。主な副作用は悪心・嘔吐、食欲不振 各15.2%(7/46例)、顔面潮紅10.9%(5/46例)等であった5)
17.1.2 国内後期第II相比較臨床試験(二重盲検比較試験)
進行・再発乳癌患者に対して本剤40mg/日及びタモキシフェン20mg/日の有効性及び安全性を検討した。その結果、奏効率は本剤投与群26.3%(15/57例)、タモキシフェン投与群28.1%(16/57例)であり両薬剤群間で有意差は認められなかった。
副作用発現頻度は12.3%(7/57例)であった。副作用は顔面潮紅3.5%(2/57例)、倦怠感1.8%(1/57例)であった6)
17.1.3 国内後期第II相臨床試験(タモキシフェン耐性乳癌に対する試験)
タモキシフェン療法に耐性の乳癌患者を対象として本剤120mg/日投与の有効性及び安全性を検討した。その結果、奏効率は11.8%(6/51例)であった。
副作用発現頻度は5.1%(3/59例)であった。副作用は悪心、ふらふら感 各1.7%(1/59例)であった7)
17.2 製造販売後調査等
17.2.1 国内市販後第III相臨床試験
閉経後乳癌に対する術後補助療法における無作為化比較試験を実施した。その結果、本剤40mg/日投与、タモキシフェン20mg/日投与において、5年生存率は本剤投与群で97.2%、タモキシフェン投与群で97.1%であった。両群間の差0.1%の90%信頼区間は−3.7%〜3.8%であり、信頼区間の下限が−10%を超えていないことから、本剤の有効性のタモキシフェンに対する非劣性が検証された。
評価項目\薬剤投与群本剤タモキシフェン
有効性  
解析例数123例120例
5年生存率97.2%(103/106例)97.1%(101/104例)
安全性(副作用発現症例率)  
自覚症状・他覚所見31.7%(40/126例)33.3%(42/126例)
臨床検査値異常31.7%(40/126例)39.7%(50/126例)
17.3 その他
17.3.1 QT間隔に対する影響
QT間隔に及ぼす影響について検討することを目的として健常成人男子250例を対象に本剤、モキシフロキサシン錠及びプラセボを用いた二重盲検比較試験を実施した。血漿中濃度が投与開始5日以内に定常状態に到達するよう本剤を投与し、5日目投与後に心電図を測定したところ、本剤20mg投与群注1)、80mg投与群注1)、300mg投与群注1)におけるQTcI注2)の平均(95%片側信頼区間の上限)は、それぞれ6.2msec(9.4msec)、23.9msec(27.0msec)、56.9msec(60.0msec)であった。また、モキシフロキサシン400mg投与群は7.3msec(10.4msec)であった(外国人データ)。[2.22.38.29.1.2参照]
注1)本剤の承認最大用量は120mg/日である
注2)QTcI:個人ごとに補正し、プラセボ値を引いたQT間隔

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
18.1.1 抗エストロゲン作用
トレミフェン及び主代謝物であるN-デスメチルトレミフェンは、in vitroにおいてエストラジオールにより増殖促進されたヒト乳癌細胞(T-47D)の増殖を阻害した。さらにトレミフェンは、in vivoにおいて未成熟ラットのエストラジオールによる子宮重量の増加を抑制した8)
18.1.2 抗IGF-1作用
トレミフェン及び主代謝物であるN-デスメチルトレミフェンは、インシュリン様成長因子-1(IGF-1)により増殖促進されたエストロゲンレセプター(+)及び(−)乳癌細胞の増殖を阻害した。従って、この抗IGF-1作用は、エストロゲンレセプターを介さない作用と考えられる9)
18.2 抗腫瘍効果
ヌードマウス可移植性ヒト乳癌を用いin vivoで検討した結果、トレミフェンは、エストロゲンレセプター(ER)(+)ヒト乳癌BR-10及びZR-75-1に対して増殖抑制作用を示した10)11)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. トレミフェンクエン酸塩

一般的名称 トレミフェンクエン酸塩
一般的名称(欧名) Toremifene Citrate
化学名 2-[4-〔(Z)-4-chloro-1,2-diphenyl-1-butenyl〕phenoxy]-N,N-dimethylethylamine monocitrate
分子式 C26H28ClNO・C6H8O7
分子量 598.08
物理化学的性状 トレミフェンクエン酸塩は、白色の結晶性の粉末である。酢酸(100)又はピリジンに溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール(95)に溶けにくく、水に極めて溶けにくく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
KEGG DRUG D00967

22. 包装

40錠[10錠(PTP)×4]

23. 主要文献

  1. 社内資料:血清中濃度
  2. 社内資料:反復投与
  3. 社内資料:血清蛋白結合性
  4. 社内資料:単回投与時の尿中排泄
  5. 冨永健ほか, 癌と化学療法, 20, 79-90, (1993) »PubMed
  6. 野村雍夫ほか, 癌と化学療法, 20, 247-258, (1993) »PubMed
  7. 浅石和昭ほか, 癌と化学療法, 20, 91-99, (1993) »PubMed
  8. 丸山佐起子ほか, 日本癌治療学会誌, 28, 811-818, (1993)
  9. 丸山佐起子ほか, 日本癌治療学会誌, 28, 826-834, (1993)
  10. 黒岩俊介ほか, 癌と化学療法, 20, 617-623, (1993) »PubMed
  11. 黒岩俊介ほか, 日本癌治療学会誌, 28, 819-825, (1993)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
日本化薬株式会社 医薬品情報センター
〒100-0005 東京都千代田区丸の内二丁目1番1号
電話:0120-505-282
製品情報問い合わせ先
日本化薬株式会社 医薬品情報センター
〒100-0005 東京都千代田区丸の内二丁目1番1号
電話:0120-505-282

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
日本化薬株式会社
東京都千代田区丸の内二丁目1番1号
26.2 提携先
Orion Corporation
Finland

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/06/18 版