医療用医薬品 : スルモンチール

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医薬品情報


総称名 スルモンチール
一般名 トリミプラミンマレイン酸塩
欧文一般名 Trimipramine Maleate
製剤名 トリミプラミンマレイン酸塩製剤
薬効分類名 抗うつ剤
薬効分類番号 1174
ATCコード N06AA06
KEGG DRUG
D02408 トリミプラミンマレイン酸塩
KEGG DGROUP
DG01730 非選択的モノアミン再取り込み阻害薬
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
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添付文書情報2024年12月 改訂(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
スルモンチール散10% Surmontil Powder 共和薬品工業 1174005B1020 40.2円/g 劇薬, 処方箋医薬品注)
スルモンチール錠10mg Surmontil Tablets 共和薬品工業 1174005F1022 6.4円/錠 処方箋医薬品注)
スルモンチール錠25mg Surmontil Tablets 共和薬品工業 1174005F2029 10.8円/錠 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。]
2.2 三環系抗うつ剤に対し過敏症のある患者
2.3 心筋梗塞の回復初期の患者[心筋に対しキニジン様作用を有する。]
2.4 MAO阻害剤(セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩、サフィナミドメシル酸塩)を投与中又は投与2週間以内の患者[10.1参照]

4. 効能または効果

精神科領域におけるうつ病・うつ状態

5. 効能または効果に関連する注意

抗うつ剤の投与により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤の投与にあたっては、リスクとベネフィットを考慮すること。[8.1-8.49.1.59.1.615.1.1参照]

6. 用法及び用量

通常、成人にはトリミプラミンとして1日50〜100mgを初期用量とし、1日200mgまで漸増し、分割経口投与する。
まれに300mgまで増量することもある。
なお、年齢、症状により適宜減量する。

8. 重要な基本的注意

8.1 うつ症状を呈する患者は希死念慮があり、自殺企図のおそれがあるので、このような患者は投与開始早期並びに投与量を変更する際には患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること。[5.、8.2-8.49.1.59.1.615.1.1参照]
8.2 不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されている。また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化又は自殺念慮、自殺企図、他害行為が報告されている。患者の状態及び病態の変化を注意深く観察するとともに、これらの症状の増悪が観察された場合には、服薬量を増量せず、徐々に減量し、中止するなど適切な処置を行うこと。[5.、8.18.38.49.1.5-9.1.815.1.1参照]
8.3 自殺目的での過量服用を防ぐため、自殺傾向が認められる患者に処方する場合には、1回分の処方日数を最小限にとどめること。[5.、8.18.28.49.1.59.1.615.1.1参照]
8.4 家族等に自殺念慮や自殺企図、興奮、攻撃性、易刺激性等の行動の変化及び基礎疾患悪化があらわれるリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。[5.、8.1-8.39.1.5-9.1.815.1.1参照]
8.5 無顆粒球症等の血液障害があらわれることがあるので、定期的に血液検査を行うことが望ましい。[11.1.2参照]
8.6 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
8.7 投与量の急激な減少ないし投与の中止により、嘔気、頭痛、倦怠感、易刺激性、情動不安、睡眠障害等の離脱症状があらわれることがある。投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 開放隅角緑内障の患者
抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。
9.1.2 排尿困難又は眼圧亢進等のある患者
抗コリン作用を有するため、症状を悪化させることがある。
9.1.3 心不全・心筋梗塞・狭心症・不整脈(発作性頻拍・刺激伝導障害等)等の心疾患のある患者又は甲状腺機能亢進症の患者(ただし、心筋梗塞の回復初期の患者は除く)
循環器系に影響を及ぼすことがある。
9.1.4 てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者
痙攣を起こすことがある。
9.1.5 躁うつ病患者
躁転、自殺企図があらわれることがある。[5.、8.1-8.49.1.615.1.1参照]
9.1.6 自殺念慮又は自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者
自殺念慮、自殺企図があらわれることがある。[5.、8.1-8.49.1.515.1.1参照]
9.1.7 脳の器質障害又は統合失調症の素因のある患者
精神症状を増悪させることがある。[8.28.49.1.8参照]
9.1.8 衝動性が高い併存障害を有する患者
精神症状を増悪させることがある。[8.28.49.1.7参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。三環系抗うつ剤には動物試験(ラット)で催奇形作用が報告されているものがある。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
少量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。血圧降下、ふらつき、抗コリン作用による口渇、排尿困難、便秘、眼圧亢進等があらわれやすい。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
MAO阻害剤
セレギリン塩酸塩
(エフピー)
ラサギリンメシル酸塩
(アジレクト)
サフィナミドメシル酸塩
(エクフィナ)
2.4参照]
臨床症状:発汗、不穏、全身痙攣、異常高熱、昏睡等の症状があらわれることがある。
なお、MAO阻害剤の投与を受けた患者に本剤を投与する場合には、少なくとも2週間の間隔をおき、また本剤からMAO阻害剤に切り替えるときには、2〜3日間の間隔をおくことが望ましい。
詳細は不明であるが、相加・相乗作用によると考えられる。
10.2 併用注意
抗コリン作用を有する薬剤本剤の作用が増強されることがある。共に抗コリン作用を有する。
アドレナリン作用を有する薬剤本剤の作用が増強されることがある。共に交感神経終末の受容体でのアドレナリン作用を有する。
中枢神経抑制剤
バルビツール酸誘導体等
アルコール
本剤の作用が増強されることがある。共に中枢神経抑制作用を有する。
降圧剤
グアネチジン
降圧剤の作用を減弱することがある。本剤は降圧剤の交感神経終末への取り込みを阻害する。
スルファメトキサゾール・トリメトプリム本剤の効果が減弱することがある。本剤の代謝が促進される。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、必要に応じて、減量、休薬又は中止するなどの適切な処置を行うこと。
11.1.1 Syndrome malin(悪性症候群)(頻度不明)
無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理と共に適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CKの上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。
11.1.2 無顆粒球症(頻度不明)
前駆症状として発熱、咽頭痛、インフルエンザ様症状等があらわれる場合もある。[8.5参照]
11.1.3 麻痺性イレウス(頻度不明)
腸管麻痺(食欲不振、悪心・嘔吐、著しい便秘、腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等の症状)を来し、麻痺性イレウスに移行することがあるので、腸管麻痺があらわれた場合には投与を中止すること。なお、この悪心・嘔吐は、本剤の制吐作用により不顕性化することもあるので注意すること。
11.1.4 幻覚(頻度不明)、譫妄(0.5%)注1)、精神錯乱(頻度不明)
注1)発現頻度は再評価結果に基づく。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、必要に応じて、減量、休薬又は中止するなどの適切な処置を行うこと。
 5%以上注1)0.1〜5%未満注1)頻度不明
過敏症 発疹そう痒感
肝臓  黄疸、AST上昇、ALT上昇
精神神経系眠気(20.0%)振戦等のパーキンソン症状、運動失調、不眠、不安、焦躁感構音障害、四肢の知覚異常
血液  白血球減少
循環器 血圧降下、頻脈動悸
抗コリン作用口渇(20.2%)排尿困難、視調節障害、便秘、鼻閉眼圧亢進
消化器 悪心・嘔吐、食欲不振下痢、味覚異常
長期投与  口周部等の不随意運動注2)
その他眩暈、倦怠感頭痛、発汗ふらつき

13. 過量投与

13.1 症状
服用1〜12時間後に眠気等の中枢神経症状、頻脈及び呼吸抑制等がみられる。中毒症状では、意識障害、痙攣、低血圧及び重篤な不整脈があらわれるおそれがある1)2)
13.2 処置
特異的な解毒剤はない。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 海外で実施された大うつ病性障害等の精神疾患を有する患者を対象とした、複数の抗うつ剤の短期プラセボ対照臨床試験の検討結果において、24歳以下の患者では、自殺念慮や自殺企図の発現のリスクが抗うつ剤投与群でプラセボ群と比較して高かった。なお、25歳以上の患者における自殺念慮や自殺企図の発現のリスクの上昇は認められず、65歳以上においてはそのリスクが減少した。[5.、8.1-8.49.1.59.1.6参照]
15.1.2 主に50歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において、選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ剤を含む抗うつ剤を投与された患者で、骨折のリスクが上昇したとの報告がある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
健康成人9例に50mgを空腹時に単回経口投与したときの薬物動態パラメータを表16-1に示す3)(外国人データ)。
表16-1 薬物動態パラメータ(健康成人、単回経口投与)
投与量(mg)例数Cmax(ng/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)
50928.2±4.43.1±0.624.0±2.3
16.2 吸収
健康成人にて、トリミプラミンメタンスルホン酸(トリミプラミンとして12.5mg)の点滴静注時を対照として、トリミプラミンマレイン酸塩(トリミプラミンとして50mg)経口投与時の生物学的利用率を推定したところ、41.4±4.4%(平均値±標準誤差)であった3)(外国人データ)。
16.3 分布
16.3.1 蛋白結合率
血漿蛋白結合率は94.9±0.3%(平均値±標準誤差)であった3)(外国人データ)。
16.4 代謝
肝臓で代謝され胆汁中へ移行後、腸肝循環で再び代謝を受け腎から排泄される。また、血中には脱メチル体も認められた。ヒトに投与すると尿中にトリミプラミンの他に15種類の代謝物が認められた1)4)(外国人データ)。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
抗うつ剤の作用機序は確立されていない。
脳内モノアミンに対する作用として、モノアミンの再取込み阻害によりシナプス間におけるモノアミンの利用率を亢進させることが抗うつ効果と関連して注目されているが、矛盾点も多い5)6)
18.2 薬理作用
抗うつ剤のラット脳シナプトゾームにおけるセロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を表18-1に、ラット脳を用いた受容体結合試験の結果を表18-2に、それぞれ示す7)in vitro試験)。
表18-1 抗うつ剤の再取り込み阻害作用比較
〔IC50(nmol/L)、ラット脳、シナプトゾーム〕
項目\薬剤トリミプラミンアミトリプチリンイミプラミン
セロトニン254728
ノルアドレナリン147014885
表18-2 抗うつ剤の受容体親和性比較
〔Ki(nmol/L)、ラット脳〕
項目\薬剤トリミプラミンアミトリプチリンイミプラミン
イミプラミン結合部位への親和性303209
デシプラミン結合部位への親和性26524873
ノルアドレナリン受容体(α1)への親和性6948122
セロトニン受容体(5-HT2)への親和性2727172
ドパミン受容体(D2)への親和性52108266

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. トリミプラミンマレイン酸塩

一般的名称 トリミプラミンマレイン酸塩
一般的名称(欧名) Trimipramine Maleate
化学名 3-(10,11-Dihydro-5H-dibenz[b,f]-azepin-5-yl)-2-methylpropyl-dimethylamine hydrogen maleate
分子式 C20H26N2・C4H4O4
分子量 410.51
融点 141〜144℃(分解)
物理化学的性状 白色の結晶又は結晶性の粉末で、においはないか、又はわずかに特異なにおいがある。
酢酸(100)に極めて溶けやすく、メタノール又はクロロホルムに溶けやすく、アセトンにやや溶けやすく、エタノール(95)にやや溶けにくく、水に溶けにくく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
分配係数 21.4[pH5、1-オクタノール/緩衝液]
KEGG DRUG D02408

20. 取扱い上の注意

外箱開封後は遮光して保存すること。

22. 包装

<スルモンチール錠10mg>
500錠[10錠(PTP)×50]
<スルモンチール錠25mg>
500錠[10錠(PTP)×50]
<スルモンチール散10%>
500g[瓶]

23. 主要文献

  1. 佐藤重仁,他, 救急医学, 9, 383-389, (1985)
  2. 亀井徹正, 救急医学, 12, 1289-1293, (1988)
  3. Abernethy,D.R.et al., Clin.Pharmacol.Ther., 35, 348-353, (1984) »PubMed
  4. Maurer,H., Arzneim.-Forsch./Drug Res., 39, 101-103, (1989) »PubMed
  5. 小山司,他, 精神医学, 36, 17-21, (1994)
  6. 野村総一朗, 精神科治療学, 7, 75-82, (1992)
  7. 社内資料:薬理作用特性に関する比較試験

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
共和薬品工業株式会社 お問い合わせ窓口
〒530-0005 大阪市北区中之島3-2-4
電話:0120-041-189
FAX:06-6121-2858
製品情報問い合わせ先
共和薬品工業株式会社 お問い合わせ窓口
〒530-0005 大阪市北区中之島3-2-4
電話:0120-041-189
FAX:06-6121-2858

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
共和薬品工業株式会社
大阪市北区中之島3-2-4

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/08/20 版