2.1 糖尿病性ケトアシドーシス、代謝性アシドーシスのある患者[アシドーシスに基づく心収縮力の抑制を増強させるおそれがある]
2.2 高度の徐脈(著しい洞性徐脈)、房室ブロック(II、III度)、洞房ブロックのある患者[症状を悪化させるおそれがある]
2.3 心原性ショックの患者、肺高血圧による右心不全のある患者、うっ血性心不全のある患者[心機能を抑制し、症状を悪化させるおそれがある]
2.4 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
2.5 気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支を収縮させ、症状を誘発又は悪化させるおそれがある]
通常、成人にはラベタロール塩酸塩として1日150mgより投与を開始し、効果不十分な場合には1日450mgまで漸増し、1日3回に分割、経口投与する。
なお、年齢・症状により適宜増減する。
8.1 投与は少量より開始し、長期投与の場合は心機能検査(脈拍・血圧・心電図・X線等)を定期的に行うこと。特に徐脈になったとき及び低血圧を起こした場合には減量又は中止すること。また、必要に応じて対症療法を行うこと。なお、肝機能、腎機能、血液像等に注意すること。
8.2 類似化合物(プロプラノロール塩酸塩)使用中の狭心症の患者で急に投与を中止したとき症状が悪化したり、心筋梗塞を起こした症例が報告されているので、休薬を要する場合は徐々に減量し、観察を十分に行うこと。また、患者に医師の指示なしに服薬を中止しないよう注意すること。狭心症以外の適用で投与する場合でも、特に高齢者においては同様の注意をすること。[
9.8.2参照]
8.3 褐色細胞腫の手術時に使用する場合を除き、手術前24時間は投与しないことが望ましい。
8.4 めまい、ふらつきがあらわれることがあるので、本剤投与中の患者(特に投与初期)には、自動車の運転等危険を伴う機械の作業に注意させること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 うっ血性心不全のおそれのある患者
観察を十分に行い、ジギタリス剤を併用するなど慎重に投与すること。心機能を抑制し、症状を悪化させるおそれがある。
9.1.2 房室ブロック(I度)のある患者
β遮断剤において房室伝導時間が延長するとの報告がある。
9.1.3 末梢循環障害のある患者
9.1.4 低血糖症、コントロール不十分な糖尿病、長期間絶食状態の患者
低血糖の前駆症状である頻脈等の交感神経系反応をマスクしやすいので血糖値に注意すること。
9.1.5 甲状腺中毒症の患者
休薬を要する場合には徐々に減量し、観察を十分に行うこと。急に投与を中止すると、症状を悪化させることがある。また、β遮断剤において中毒症状をマスクすることがあるとの報告がある。
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎障害のある患者
降圧に伴う腎潅流圧の低下により、症状を悪化させるおそれがある。また、腎臓は主要な排泄経路であるので、血中濃度が上昇するおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
低用量から投与を開始し、増量する場合は患者の状態を十分に観察しながら行うこと。本剤は主として肝臓で代謝されるので、代謝速度が低下して血中濃度が上昇するおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。投与に際しては、母体及び胎児の状態を十分に観察し、過度の血圧低下とならないよう注意すること。胎児及び新生児に血圧低下、徐脈等の異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。妊婦への投与例において、胎児に徐脈等、新生児に血圧低下、徐脈等の症状が認められたとの報告がある。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。母乳中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
以下の点に注意し、少量から投与するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
9.8.1 高齢者では一般に過度の降圧は好ましくないとされている。脳梗塞等が起こるおそれがある。
9.8.2 休薬を要する場合は、徐々に減量する。[
8.2参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 うっ血性心不全(頻度不明)
11.1.2 肝壊死等の重篤な肝障害、黄疸(いずれも頻度不明)
定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し適切な処置を行うこと。なお、このような患者には再投与しないこと。
11.1.3 SLE様症状(筋肉痛、関節痛、抗核抗体陽性)、乾癬(いずれも頻度不明)
2)3) 11.1.4 ミオパシー(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 1%〜5% | 1%未満 | 頻度不明 |
過敏症 | | そう痒、呼吸困難 | 発疹、発熱、血管浮腫 |
皮膚 | | | 苔癬様皮疹 |
精神神経系 | 頭痛、不眠、眠気 | | しびれ感、振戦、抑うつ |
循環器 | めまい・たちくらみ | 徐脈 | 胸痛、房室ブロック、末梢循環障害(レイノー症状の悪化、冷感等) |
呼吸器 | | | 喘息様症状、気管支痙攣 |
消化器 | 悪心・嘔吐、胃痛 | 便秘 | 腹痛、消化不良、口渇 |
泌尿器 | | | 尿閉 |
肝臓 | | | AST、ALT、γ-GTP、Al-P等の上昇 |
腎臓 | | | BUNの上昇 |
眼 | | | 霧視、また、β遮断剤の投与により、涙液分泌減少等があらわれたとの報告がある。注) |
その他 | 倦怠感 | 鼻閉 | 頭皮異常感、浮腫、筋肉痛、CKの上昇、疲労感、発汗、悪寒、陰萎、勃起不全、性欲減退、射精不能 |
12.1 本剤投与中の患者では、蛍光法を用いる血中及び尿中カテコールアミン、VMA(Vanillyl mandelic acid)の測定値をみかけ上増加させる可能性があるので、これらの検査は本剤投与前に行うこと(本剤は、アルカリ溶液中にて励起波長334nmで蛍光を発し、その蛍光波長は412nmである)
4)。
12.2 本剤投与中の患者において、MIBG(metaiodobenzylguanidine)を用いた臨床検査(シンチグラフィー)を実施したところ、MIBGの取り込みが阻害され、臨床検査結果に影響を与えたという報告があるので、本剤投与中の患者においてMIBGを用いた臨床検査を実施する場合には注意すること。
13.1 症状
本剤の過量投与により、過度の起立性低血圧、徐脈などの重度の心血管系作用が発現する可能性がある。本剤の過量投与後の乏尿性腎不全が報告されている。
13.2 処置
下肢を挙上させ患者を仰臥位にし、必要に応じて次のような処置を行う。
・心不全
・気管支痙攣
・徐脈
血液循環を改善させるため、反応をみながらノルアドレナリン投与を繰り返す。
必要に応じて、心臓ペーシングを適用すること。
なお、透析により血中から除去できるラベタロール塩酸塩は1%以下である。
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 褐色細胞腫の患者に投与した場合に高血圧が悪化したとの報告がある
5)。
15.1.2 重篤なアナフィラキシーの既往歴のある患者では、β遮断剤服用により、アナフィラキシー反応がより重篤になることがあり、また、通常用量のアドレナリンによる治療に抵抗する場合がある。
15.1.3 α遮断薬であるタムスロシンを服用中又は過去に服用経験のある患者において、白内障手術中に術中虹彩緊張低下症候群(IFIS:縮瞳型症候群の一種)があらわれるとの報告がある。IFISの発現により白内障手術中の合併症が増加するおそれがあるため、本剤の服用又は服用歴について手術前に執刀医に伝えるよう指導すること。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人に本剤50mg又は100mgを単回経口投与した時の血中ラベタロール濃度は図1のとおりであり、用量依存性を示す
6)。
図1健康成人における単回経口投与時の血中濃度(n=5)
パラメータ | 50mg | 100mg |
Tmax(hr) | 0.97 | 1.22 |
T1/2(hr) | 17.22 | 17.65 |
Cmax(ng/mL) | 21.77 | 59.73 |
AUC(hr・ng/mL) | 198.81 | 533.98 |
Ka(/hr) | 2.89 | 7.52 |
Kel(/hr) | 0.17 | 0.15 |
16.3 分布
16.3.1 体液・組織内移行
ラットに
14C-ラベタロール20mg/kgを経口投与した結果、組織内濃度は各組織において投与後1.5時間に最高濃度に達し、以降速やかに減少した。投与後1.5時間の組織内濃度は、特に肝臓と腎臓で高く、脳への移行は低かった。
また、妊娠18日目のラットに
14C-ラベタロール20mg/kgを経口投与したところ、胎仔の組織内濃度は1.5時間後で母動物血液中濃度の1/3、胎盤の1/4以下であった
7)。
16.3.2 血漿蛋白結合率
16.4 代謝
健康成人に
3H-ラベタロール200mg
注)を経口投与した結果、主な代謝産物は、ラベタロールのo-フェニルグルクロン酸抱合体が投与量の15%、その他のラベタロールの抱合体が45%であった
8)(外国人データ)。
16.5 排泄
健康成人に
3H-ラベタロール200mg
注)を経口投与した結果、投与後24時間までの尿中排泄率は約60%であった
8)(外国人データ)。
注)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人にはラベタロール塩酸塩として1日150mgより投与を開始し、効果不十分な場合には1日450mgまで漸増し、1日3回に分割、経口投与する。」である。
18.1 作用機序
ラベタロールはβ受容体遮断作用に加えて、α受容体遮断作用を併せ持ち、心拍出量にほとんど影響を及ぼさずに全末梢血管抵抗を減少し、血圧を降下させる。
18.2 α,β受容体遮断作用
健康成人における検討で、本剤はβ受容体遮断作用に加えて、α受容体遮断作用を併せ持つことが認められている
9)。
また、ネコの摘出脾臓を用いたin vitroの実験で本剤のα受容体遮断作用はα
1受容体に選択的であることが確認されている
10)。
18.3 血圧降下作用
成人高血圧症患者に投与した場合、心拍出量にほとんど影響を及ぼさずに全末梢血管抵抗を減少し、血圧を降下させる。なお心拍数はわずかに減少する
11)。
また本剤は、早朝の急激な血圧上昇を抑制することが認められている
12)。
18.4 腎機能、脳循環、末梢循環、冠循環に及ぼす影響
成人高血圧症患者における検討で、本剤は腎血管抵抗を減少させ、腎血流量、糸球体ろ過値を増加又は維持することが認められている
13)。また脳循環、末梢循環及び冠循環を維持することが認められている
11)14)15)16)。