17.1.1 国内第II相試験(成人)
ザナミビル吸入(20mg、40mg/日
注))5日間投与において、主要評価項目である主要な3症状(発熱、頭痛及び筋肉痛)の軽減(発熱は腋窩体温が37.0℃未満、頭痛及び筋肉痛は「ほとんど気にならない」又は「症状がない」の状態が24時間以上持続した場合を軽減と定義)した率をプラセボを対照に二重盲検法により比較した。登録された333例の内、同意撤回又は有効性のデータが評価できない15例を除いた318例を有効性解析対象例として解析した結果、軽減の中央値はいずれの群も4.0日で統計学的に有意な差は見られなかった。なお、治験実施計画書から逸脱した症例数は89例(26.7%)であった。
インフルエンザ症状(発熱、頭痛及び筋肉痛)の軽減率(国内治療試験:成人)
薬剤群 | 累積軽減率(軽減人数) |
初診日 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 | 7日目 | 8日目 | 9日目 |
プラセボ (107例) | 0.9 (1例) | 10.3 (10例) | 27.1 (18例) | 56.1 (31例) | 74.8 (20例) | 86.0 (12例) | 87.9 (2例) | 93.5 (6例) | 96.3 (3例) |
ザナミビル20mg/日群 (101例) | 4.0 (4例) | 13.9 (10例) | 32.7 (19例) | 62.4 (30例) | 78.2 (16例) | 86.1 (8例) | 94.1 (8例) | 97.0 (3例) | 97.0 (0例) |
ザナミビル40mg/日注)群 (110例) | 0.0 (0例) | 13.6 (15例) | 35.5 (24例) | 58.2 (25例) | 78.2 (22例) | 87.3 (10例) | 90.0 (3例) | 94.6 (5例) | 94.6 (0例) |
日内最高体温は、2日目及び3日目においてザナミビル吸入投与はプラセボに比し速やかな低下がみられた。
日内最高体温の推移
また、副次的評価項目である主要な5症状(発熱、頭痛、筋肉痛、咳及び咽頭痛)について、インフルエンザウイルスの感染が確認された症例における軽減の推移を示した。
インフルエンザ症状(発熱、頭痛、筋肉痛、咳及び咽頭痛)の軽減率(国内治療試験:成人)
薬剤群 | 累積軽減率(軽減人数) |
初診日 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 | 7日目 | 8日目 | 9日目 |
プラセボ (54例) | 0.0 (0例) | 3.7 (2例) | 5.6 (1例) | 20.4 (8例) | 35.2 (8例) | 46.3 (6例) | 57.4 (6例) | 61.1 (2例) | 64.8 (2例) |
ザナミビル20mg/日群 (55例) | 0.0 (0例) | 3.6 (2例) | 14.6 (6例) | 25.5 (6例) | 32.7 (4例) | 45.5 (7例) | 60.0 (8例) | 69.1 (5例) | 78.2 (5例) |
ザナミビル40mg/日注)群 (63例) | 0.0 (0例) | 6.4 (4例) | 20.6 (9例) | 33.3 (8例) | 52.4 (12例) | 66.7 (9例) | 74.6 (5例) | 79.4 (3例) | 84.1 (3例) |
ザナミビル20mg/日群における投与期間中の副作用発現頻度は6.8%(7/103例)であった。主な副作用は、動悸が1.9%(2/103例)、発汗、背部痛、耳鳴、喘鳴及び発熱がそれぞれ1.0%(1/103例)であった。また、投与終了後22日目までの副作用発現率は1.0%(1/103例)であり、発疹及び四肢浮腫がそれぞれ1.0%(1/103例)であった。
注)本剤を治療に用いる場合の承認用法及び用量は、1回10mg、1日2回5日間の吸入投与である。
17.1.2 海外第III相試験(成人)
(1)南半球における臨床試験
ザナミビル20mg/日吸入における症状の軽減の速さを、投与した全例の集団、インフルエンザウイルスの感染が確認された集団について二重盲検法によりプラセボを対照として比較した。なお、発熱がなくなり(口腔内体温37.8℃未満かつ発熱感無)、頭痛、筋肉痛、咽頭痛及び咳が「軽症」又は「症状無」の状態が24時間以上持続した場合を軽減と定義した。ザナミビル群はプラセボ群に比し有意に速い軽減がみられた。
インフルエンザ症状の軽減に要した日数(中央値)(海外治療試験:成人)
解析集団/実施地域 | 軽減に要した日数の中央値 |
ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 |
投与された全例 | 5.0日(227例) | 6.5日(228例) |
インフルエンザウイルスの感染が確認された集団 | 4.5日(161例) | 6.0日(160例) |
A型あるいはB型インフルエンザウイルスの感染が確認された患者における発熱、頭痛、筋肉痛、咽頭痛及び咳症状の軽減に要した日数(中央値)を以下に示した。
ウイルス型別のインフルエンザ症状の軽減に要した日数(中央値)(海外治療試験:成人)
インフルエンザウイルスの型 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | 日数の差 |
A型 | 4.5日(105例) | 6.5日(109例) | 2.0日 |
B型 | 4.5日(56例) | 6.0日(51例) | 1.5日 |
副次的な評価項目として、インフルエンザにおける一般的な症状である咳と発熱の軽減及び二次的な合併症(気管支炎、肺炎及び副鼻腔炎等)の併発率について以下に示した。
咳と発熱の軽減に要した日数(中央値)及び合併症の併発率(海外治療試験:成人)
咳の軽減日 | 発熱の軽減日 | 合併症併発率注1) |
ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 |
3.0日 | 3.8日 | 1.0日 | 1.5日 | 24% | 30% |
ザナミビル20mg/日群における投与中の有害事象発現頻度は37%(83/227例)であった。主な有害事象は、副鼻腔炎が4%(10/227例)、咳が4%(8/227例)、気管支炎及び下気道感染症が3%(7/227例)であった。また、投与後の有害事象発現頻度は15%(33/227例)であり、咳が2%(4/227例)、気管支炎及び副鼻腔炎が1%(3/227例)であった。
(2)欧州における臨床試験
ザナミビル20mg/日吸入における症状の軽減の速さを、投与した全例の集団、インフルエンザウイルスの感染が確認された集団について二重盲検法によりプラセボを対照として比較した。なお、インフルエンザ症状の軽減は南半球の試験と同様に定義した。ザナミビル群はプラセボ群に比し有意に速い軽減がみられた。
インフルエンザ症状の軽減に要した日数(中央値)(海外治療試験:成人)
解析集団/実施地域 | 軽減に要した日数の中央値 |
ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 |
投与された全例 | 5.0日(174例) | 7.5日(182例) |
インフルエンザウイルスの感染が確認された集団 | 5.0日(136例) | 7.5日(141例) |
A型あるいはB型インフルエンザウイルスの感染が確認された患者における発熱、頭痛、筋肉痛、咽頭痛及び咳症状の軽減に要した日数(中央値)を以下に示した。
ウイルス型別のインフルエンザ症状の軽減に要した日数(中央値)(海外治療試験:成人)
インフルエンザウイルスの型 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | 日数の差 |
A型 | 5.0日(132例) | 7.5日(133例) | 2.5日 |
B型 | 7.5日(4例) | 14.0日(8例) | 6.5日 |
副次的な評価項目として、インフルエンザにおける一般的な症状である咳と発熱の軽減及び二次的な合併症(気管支炎、肺炎及び副鼻腔炎等)の併発率について以下に示した。
咳と発熱の軽減に要した日数(中央値)及び合併症の併発率(海外治療試験:成人)
咳の軽減日 | 発熱の軽減日 | 合併症併発率注1) |
ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 |
3.0日 | 4.0日 | 1.5日 | 2.0日 | 24% | 33% |
ザナミビル20mg/日群における投与中の有害事象発現頻度は25%(44/174例)であった。主な有害事象は、嘔気・嘔吐、副鼻腔炎及び気管支炎が2%(4/174例)、下痢及び咽頭炎が2%(3/174例)であった。また、投与後の有害事象発現頻度は20%(34/174例)であり、気管支炎が5%(9/174例)、副鼻腔炎が3%(5/174例)、咳が2%(4/174例)、鼻炎が2%(3/174例)であった。
(3)北米における臨床試験
ザナミビル20mg/日吸入における症状の軽減の速さを、投与した全例の集団、インフルエンザウイルスの感染が確認された集団について二重盲検法によりプラセボを対照として比較した。なお、インフルエンザ症状の軽減は南半球の試験と同様に定義した。その結果、ザナミビル群とプラセボ群の間に統計学的に有意な差はみられなかった。
インフルエンザ症状の軽減に要した日数(中央値)(海外治療試験:成人)
解析集団/実施地域 | 軽減に要した日数の中央値 |
ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 |
投与された全例 | 5.5日(412例) | 6.0日(365例) |
インフルエンザウイルスの感染が確認された集団 | 5.0日(312例) | 6.0日(257例) |
A型あるいはB型インフルエンザウイルスの感染が確認された患者における発熱、頭痛、筋肉痛、咽頭痛及び咳症状の軽減に要した日数(中央値)を以下に示した。
ウイルス型別のインフルエンザ症状の軽減に要した日数(中央値)(海外治療試験:成人)
インフルエンザウイルスの型 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | 日数の差 |
A型 | 5.0日(307例) | 6.0日(251例) | 1.0日 |
B型 | 4.5日(3例) | 13.5日(5例) | 9.0日 |
副次的な評価項目として、インフルエンザにおける一般的な症状である咳と発熱の軽減及び二次的な合併症(気管支炎、肺炎及び副鼻腔炎等)の併発率について以下に示した。
咳と発熱の軽減に要した日数(中央値)及び合併症の併発率(海外治療試験:成人)
咳の軽減日 | 発熱の軽減日 | 合併症併発率注1) |
ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 |
3.0日 | 4.5日 | 1.5日 | 1.5日 | 15% | 22% |
ザナミビル20mg/日群における投与中の有害事象発現頻度は31%(126/412例)であった。主な有害事象は、下痢が5%(19/412例)、気管支炎が4%(15/412例)、嘔気・嘔吐及び副鼻腔炎が3%(12/412例)であった。また、投与後の有害事象発現頻度は26%(106/412例)であり、嘔気・嘔吐及び副鼻腔炎が3%(13/412例)、頭痛が3%(12/412例)、下痢が1%(6/412例)であった。
17.1.3 国内第III相試験(小児)
5〜14歳までの小児を対象とし、ザナミビル吸入(20mg/日)5日間投与による治療投与試験(Open試験)を実施した。主要評価項目であるインフルエンザ主要症状の軽減[体温(腋窩)37.5℃未満、咳「なし」又は「軽度」、頭痛、咽頭痛、熱感・悪寒、筋肉・関節痛が「なし/気にならない程度」の状態が24時間以上持続した場合を軽減と定義]までに要した日数(中央値)は4.0日であった。
副作用発現頻度は2%(3/145例)であり、口内炎、顔面浮腫(口唇の腫脹)及びそう痒症(全身そう痒感)が各1%未満(1/145例)であった。
17.1.4 海外第III相試験(小児)
5〜12歳までの小児を対象とした治療投与試験
3)を、成人を対象とした治療投与試験と同様の用法及び用量(ザナミビル20mg/日吸入、5日間投与)で実施した。主要評価項目であるインフルエンザ主要症状の軽減[体温(耳内)37.8℃未満、咳「なし」又は「軽度」、筋肉痛・関節痛、咽頭痛、熱感・悪寒及び頭痛「なし/少々症状あるが気にならない」の状態が24時間以上持続した場合を軽減と定義]までに要した日数(中央値)は、インフルエンザウイルスの感染が確認された集団において、ザナミビル投与群がプラセボ投与群に比し有意に短かった(p<0.001)。
インフルエンザ症状の軽減に要した日数(中央値)(海外治療試験:小児)
解析集団 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | 日数の差 | P値 (95%信頼区間) |
インフルエンザウイルスの感染が確認された症例 | 4.0日(164例) | 5.25日(182例) | 1.25日 | <0.001 (0.5,2.0) |
ザナミビル20mg/日群の副作用発現頻度は3%(7/224例)であり、下痢、消化不良、嘔気、嘔吐、嗄声、浮動性めまい、胸痛及び皮膚炎がそれぞれ1%未満(1/224例)であった。
17.1.5 国内第III相試験(成人)
18歳以上の医療機関の従事者を対象とし、ザナミビル吸入(10mg/日)28日間投与注)による予防試験(プラセボを対照とした二重盲検群間比較試験)を実施した。その結果、インフルエンザ様症状の発現(発熱(37.5℃以上)、発熱感、咳、頭痛、咽頭痛、筋肉・関節痛のうち2つ以上の症状の発現)及びインフルエンザウイルス感染が確認された患者の割合は、ザナミビル群1.9%(3/160例)、プラセボ群3.8%(6/156例)であった(p=0.331)。
ザナミビル群の副作用発現率は1%未満(1/161例)であり、好酸球数増加1%未満(1/161例)であった。
17.1.6 海外第III相試験(家族内感染)
(1)NAI30010試験では、家族内においてインフルエンザウイルス感染症患者が確認されてから家族全員(5歳以上)をザナミビル10mg1日1回又はプラセボ1日1回、10日間吸入のいずれかに割り付け、予防効果を比較した。本試験では初発症例も接触症例と同一の投与群にランダム化された。その結果、インフルエンザ様症状の発現(口腔体温37.8℃以上又は発熱感、咳、頭痛、咽頭痛、筋肉痛のうち2つ以上の症状の発現)及びインフルエンザウイルス感染が確認された患者が1例以上認められた家族の割合は、ザナミビル10mg/日群4%(7/169家族)及びプラセボ群19%(32/168家族)であり、ザナミビル10mg/日群はプラセボ群に比し有意な予防効果を示した(p<0.001)。
(2)NAI30031試験では、家族内においてインフルエンザウイルス感染症患者が確認されてから家族全員(5歳以上)をザナミビル10mg1日1回又はプラセボ1日1回、10日間吸入のいずれかに割り付け、予防効果を比較した。本試験では初発症例に対する抗ウイルス薬によるインフルエンザ治療は実施されていない。その結果、インフルエンザ様症状の発現(口腔体温37.8℃以上又は発熱感、咳、頭痛、咽頭痛、筋肉痛のうち2つ以上の症状の発現)及びインフルエンザウイルス感染が確認された患者が1例以上認められた家族の割合は、ザナミビル10mg/日群4%(10/245家族)及びプラセボ群19%(46/242家族)であり、ザナミビル10mg/日群はプラセボ群に比し有意な予防効果を示した(p<0.001)。
17.1.7 海外第III相試験(地域内感染)
(1)NAIA3005試験では、インフルエンザウイルス感染症の発生が認められている地域を対象に、共通の大学に属する18歳以上の者を対象としてザナミビル10mg1日1回又はプラセボ1日1回、28日間吸入注)のいずれかに割り付け、予防効果を比較した。その結果、インフルエンザ様症状の発現(口腔体温37.8℃以上又は発熱感、咳、頭痛、咽頭痛、筋肉痛のうち2つ以上の症状の発現)及びインフルエンザウイルス感染が確認された患者の割合は、ザナミビル10mg/日群2.0%(11/553例)及びプラセボ群6.1%(34/554例)であり、ザナミビル10mg/日群はプラセボ群に比し有意な予防効果を示した(p<0.001)。
(2)NAI30034試験では、インフルエンザウイルス感染症の発生が認められている地域を対象に、共通のコミュニティーに属する高齢者(65歳以上)、糖尿病を有する患者、慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者等のハイリスク患者を対象としてザナミビル10mg1日1回又はプラセボ1日1回、28日間吸入注)のいずれかに割り付け、予防効果を比較した。その結果、インフルエンザ様症状の発現(口腔体温37.8℃以上又は発熱感、咳、頭痛、咽頭痛、筋肉痛のうち2つ以上の症状の発現)及びインフルエンザウイルス感染が確認された患者の割合は、ザナミビル10mg/日群0.2%(4/1678例)及びプラセボ群1.4%(23/1685例)であり、ザナミビル10mg/日群はプラセボ群に比し有意な予防効果を示した(p<0.001)。
17.1.8 海外第III相試験(介護施設内感染)
(1)米国における臨床試験
インフルエンザウイルス感染症の発生が認められている介護施設の入所者を対象に、ザナミビル10mg1日1回又は対照群1日1回、14日間投与
注)のいずれかに割り付け、予防効果を比較した。その結果、新たな症状又は症候を発現し、インフルエンザウイルス感染が確認された患者の割合は、以下のとおりであった。
インフルエンザウイルス感染症患者の割合(米国での予防試験)
試験 | ザナミビル10mg/日群 | 対照群注1) | P値 |
NAIA3003 | 4%(7/184例) | 8%(16/191例) | 0.085 |
ザナミビル群の副作用発現率は34%(80/238例)であった。主な副作用は咳嗽7%(17/238例)、消化管徴候・症状5%(13/238例)、便秘5%(12/238例)、頭痛5%(11/238例)、鼻の徴候・症状5%(11/238例)であった。
(2)欧州における臨床試験
インフルエンザウイルス感染症の発生が認められている介護施設の入所者を対象に、ザナミビル10mg1日1回又は対照群1日1回、14日間投与
注)のいずれかに割り付け、予防効果を比較した。その結果、新たな症状又は症候を発現し、インフルエンザウイルス感染が確認された患者の割合は、以下のとおりであった。
インフルエンザウイルス感染症患者の割合(欧州での予防試験)
試験 | ザナミビル10mg/日群 | 対照群注1) | P値 |
NAIA3004 | 6%(15/240例) | 9%(23/249例) | 0.355 |
ザナミビル群の副作用発現率は7%(16/242例)であった。主な副作用は咽喉・扁桃の不快感・疼痛2%(4/242例)、咳嗽、鼻の徴候・症状、悪心・嘔吐が1%未満(1/242例)であった。
注)本剤を予防に用いる場合の承認用法及び用量は、1回10mg、1日1回10日間の吸入投与である。
17.1.9 海外臨床試験(ハイリスク患者)
(1)慢性呼吸器疾患(喘息/慢性閉塞性肺疾患)を基礎疾患に持つ患者での臨床試験
南半球、欧州及び北米にて、気管支喘息又は慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)を基礎疾患にもつインフルエンザウイルス感染患者を対象とした試験が実施された。
発熱、頭痛、筋肉痛、咽頭痛及び咳の5症状の全ての症状が軽減するのに要した日数を指標として、ザナミビル(20mg/日吸入)の有効性を、プラセボを対照として評価した。評価には、インフルエンザウイルスの感染が確認された症例と試験薬が割り付けられた全例を用いた。その結果、試験薬が割り付けられた全例では、ザナミビル群はプラセボ群に比し軽減までの所要日数を1.0日短縮していたが、統計学的有意差は検出されなかった。なお、インフルエンザウイルスの感染が確認された症例でザナミビル群はプラセボ群に比し、1.5日(p=0.009)の有意な短縮がみられた。
インフルエンザ症状の軽減に要した日数(中央値)(海外治療試験:慢性呼吸器疾患を有する患者)
解析集団 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | 日数の差 | P値 |
試験薬を割り付けた全例 | 6.0日(262例) | 7.0日(263例) | 1.0日 | 0.123 |
インフルエンザウイルスの感染が確認された集団 | 5.5日(160例) | 7.0日(153例) | 1.5日 | 0.009 |
有害事象の発現率は、投与中においてプラセボ群42%(111/263例)、ザナミビル群38%(99/261例)、投与後においてプラセボ群35%(92/263例)、ザナミビル群43%(112/261例)といずれも両群で同程度であった。薬剤に関連があると判定された有害事象は、投与中においてプラセボ群9%(23/263例)、ザナミビル群9%(23/261例)であり、投与後においてプラセボ群2%(6/263例)、ザナミビル群1%未満(2/261例)であった。
主な有害事象は喘息、副鼻腔炎、気管支炎であり、両群間に差は認められなかった。
肺機能に対するザナミビルの影響を喘息又はCOPDを基礎疾患にもつインフルエンザウイルス感染患者を対象にプラセボを対照として評価した。肺機能の指標として、試験期間中の朝と夜の最大呼気流量(PEFR)の変化量(患者測定)と1秒量(FEV1.0)(1日目、6日目、28日目に医療機関にて測定)を用いた。ザナミビル吸入中の最大呼気流量(PEFR)の平均値は、プラセボに比し良好に推移し、投与開始後6日目及び28日目で肺機能が投与開始前より1秒量(FEV1.0)あるいは最大呼気流量(PEFR)が20%を超えて低下した患者の頻度はザナミビル群とプラセボ群間に差はみられなかった。
(2)ハイリスク患者での臨床試験
ハイリスクと定義されている患者(65歳以上、慢性呼吸器疾患、高血圧を除く心循環器系疾患、糖尿病、免疫不全状態のいずれかに該当)の集団を、南半球、欧州及び北米の臨床第III相試験(3試験)、欧州及び北米で実施された小児臨床試験、南半球での臨床第II相試験、予防検討のための家族内予防試験(予防試験に組み入れの後インフルエンザウイルス感染症に罹患した患者)から抽出し、ザナミビル20mg/日吸入投与群について、投与された全例及びインフルエンザウイルスの感染が確認された症例につきプラセボを対照として比較した。
ザナミビル群の発熱、頭痛、筋肉痛、咽頭痛及び咳の5症状の全ての症状が軽減に要する日数は、プラセボ群に比し、投与された全例で1.5日(p=0.046)、インフルエンザウイルスの感染が確認された症例で2.5日(p=0.015)の有意な短縮がみられた。
インフルエンザ症状の軽減に要した日数(中央値)(海外治療試験:ハイリスク患者)
解析集団 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | 日数の差 | P値 |
投与された全例 | 5.5日(154例) | 7.0日(167例) | 1.5日 | 0.046 |
インフルエンザウイルスの感染が確認された集団 | 5.0日(105例) | 7.5日(122例) | 2.5日 | 0.015 |
また、抗生物質による治療を必要とする二次的な合併症の発現率は、投与された全例では、ザナミビル群で16%(24/154例)に対し、プラセボ群では25%(41/167例)、インフルエンザウイルスの感染が確認された集団では、ザナミビル群で13%(14/105例)に対しプラセボ群では24%(29/122例)であり、ザナミビル群における発現率は有意に低かった(投与された全例p=0.042、インフルエンザウイルスの感染が確認された症例p=0.045)。
抗生物質による治療を必要とする合併症の発現率(海外治療試験:ハイリスク患者)
解析集団 | ザナミビル20mg/日群 | プラセボ群 | 相対リスク | P値 |
投与された全例 | 16%(24/154例) | 25%(41/167例) | 0.63 | 0.042 |
インフルエンザウイルスの感染が確認された集団 | 13%(14/105例) | 24%(29/122例) | 0.57 | 0.045 |
有害事象の発現率は、ザナミビル群で39%(60/154例)、プラセボ群で43%(72/167例)であった。最も多くみられた事象は「喘息症状の悪化/喘息症状の増加」であり、ザナミビル群で7%(11/154例)、プラセボ群で14%(24/167例)であった。
いずれかの群で5例以上発現した有害事象(海外治療試験:ハイリスク患者)
有害事象 | プラセボ群 167例 | ザナミビル20mg/日群 154例 |
有害事象発現例数 | 72例(43%) | 60例(39%) |
| 喘息症状の悪化/喘息症状の増加 | 24例(14%) | 11例(7%) |
| 気管支炎 | 11例(7%) | 7例(5%) |
| 嘔吐 | 5例(3%) | 5例(3%) |
| めまい | 3例(2%) | 5例(3%) |
| 肺炎 | 1例(<1%) | 6例(4%) |
| 下気道感染症 | 5例(3%) | 0例 |
| 咳 | 6例(4%) | 0例 |
また、ハイリスク患者のうち慢性呼吸器疾患を有している集団(ザナミビル群109例、プラセボ群113例)での有害事象の発現率は、ザナミビル群で41%(45/109例)、プラセボ群で45%(51/113例)、65歳以上の高齢者の集団(ザナミビル群36例、プラセボ群40例)においては、ザナミビル群で39%(14/36例)、プラセボ群で45%(18/40例)と、いずれの集団においてもザナミビル群はプラセボ群を上回らなかった。