医療用医薬品 : サイトテック

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医薬品情報


総称名 サイトテック
一般名 ミソプロストール
欧文一般名 Misoprostol
製剤名 ミソプロストール錠
薬効分類名 抗NSAID潰瘍剤
薬効分類番号 2329
ATCコード A02BB01
KEGG DRUG
D00419 ミソプロストール
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2021年6月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
サイトテック錠200 CYTOTEC Tab.200 ファイザー 2329024F1025 18円/錠 劇薬, 処方箋医薬品注)
サイトテック錠100 CYTOTEC Tab.100 ファイザー 2329024F2021 11.5円/錠 劇薬, 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5参照]
2.2 プロスタグランジン製剤に対する過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与時にみられる胃潰瘍及び十二指腸潰瘍

5. 効能または効果に関連する注意

5.1 本剤は原則として非ステロイド性消炎鎮痛剤を3ヵ月以上長期投与する必要がある関節炎患者等の胃潰瘍及び十二指腸潰瘍の治療にのみ用いること。

6. 用法及び用量

通常、成人にはミソプロストールとして1回200μgを1日4回(毎食後及び就寝前)経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

7. 用法及び用量に関連する注意

7.1 本剤を12週間以上投与しても改善傾向が認められない場合には、他の療法を考慮すること。
7.2 本剤は非ステロイド性消炎鎮痛剤と併用投与することが可能である。非ステロイド性消炎鎮痛剤においては、消化性潰瘍のある患者は投与禁忌となっているが、本剤が投与されている場合はこの限りでない。しかし、高齢者等の患者においては非ステロイド性消炎鎮痛剤による消化性潰瘍の合併症(穿孔、出血等)の危険性が高いので、本剤と併用投与する場合には、経過を十分に観察すること。[9.8参照]

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤投与時にみられる下痢は、通常、軽度で一過性であるが、症状が持続する場合には、減量等の適切な処置を行うこと。また、マグネシウム含有制酸剤との併用に注意すること。[10.2参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 脳血管障害や冠動脈疾患等血圧低下により重篤な合併症を起こすおそれのある患者
類薬(PGE1)で血圧低下作用が報告されている。
9.3 肝機能障害患者
肝機能障害を増悪させるおそれがある。
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性には、治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。
妊娠する可能性のある女性に投与する場合には、妊娠中でないことを十分確認すること。また、患者に次の注意事項について十分説明し、同意を得た後、使用すること。[9.5参照]
・本剤には子宮収縮作用があり、流産を起こしたとの報告があること。
・本剤投与中は避妊すること。また、本剤投与中に妊娠が確認された場合又は疑われた場合には、直ちに投与を中止し、主治医に連絡すること。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。
本剤には子宮収縮作用があり、妊婦で完全又は不完全流産及び子宮出血がみられたとの報告がある。ラットに本剤を経口投与したところ、妊娠前及び妊娠初期投与試験では着床数の減少及び生存胎児数の減少がみられ1)、器官形成期投与試験では胎児の生存及び発育に影響はみられず、催奇形性も認められなかった2)。また、周産期及び授乳期投与試験では出生児の体重増加抑制がみられた3)。ウサギに本剤を経口投与した器官形成期投与試験では着床後の死亡率及び第13肋骨の出現頻度(肋骨数の変異)が増加した4)。[2.19.49.6参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。[9.5参照]
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
下痢等の消化器症状がみられた場合には、減量又は休薬等適切な処置を行うなど慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。[7.2参照]

10. 相互作用

10.2 併用注意
マグネシウム含有制酸剤
8.1参照]
下痢が発現しやすくなる。本剤は、小腸の蠕動運動を亢進させ、小腸からの水・Naの吸収を阻害し、下痢を生じさせる。
マグネシウム含有制酸剤には緩下作用があるので、両者の併用で下痢が発現しやすくなる。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック(頻度不明)、アナフィラキシー(頻度不明)
ショック、アナフィラキシー(呼吸困難、ふるえ等)があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 5%以上0.1〜5%未満0.1%未満頻度不明
消化器下痢、腹痛、嘔気腹部膨満感、消化不良、嘔吐、食欲不振、おくび、便秘等 軟便
肝臓 ALT上昇、AST上昇、Al-P上昇、LDH上昇ビリルビン上昇等総コレステロール上昇、γ-GTP上昇等
腎臓 蛋白尿、クレアチニン上昇多尿、頻尿、BUN上昇尿糖
血液 白血球増多、白血球減少、赤血球減少等 貧血(赤血球減少、ヘモグロビン減少、ヘマトクリット値減少)、血小板減少
生殖器 月経異常 閉経後出血、子宮痙攣、月経困難、月経中間期出血
皮膚 発疹蕁麻疹、そう痒 
精神・神経系 めまい、口渇、異常空腹感頭痛、舌麻痺 
その他 ほてり、発熱、胸痛、浮腫、心悸亢進静脈炎、しびれ感全身倦怠感

13. 過量投与

13.1 症状
過量投与による臨床症状としては、鎮静、振戦、痙攣、呼吸困難、腹痛、下痢、発熱、心悸亢進、低血圧及び徐脈の報告がある。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
健常成人(男子)にミソプロストール(200μg)を単回経口投与した場合、主代謝物であるミソプロストール遊離酸の血漿中濃度の推移は以下のとおりであった5)
tmaxCmax消失半減期
約16分552pg/mL21分
健常成人(男子)にミソプロストール(400μg)を1日2回注)4日間反復経口投与しても主代謝物であるミソプロストール遊離酸の血漿中への蓄積性は認められなかった6)(外国人データ)。
16.5 排泄
健常成人(男子)に3H-ミソプロストールを経口投与した場合、投与後24時間以内に総放射活性の約71%が尿中に、約4%が糞中に排泄された。血漿中及び尿中代謝物としてミソプロストール遊離酸、更にこれがβ-酸化されたジノル体、テトラノル体を含め7つの代謝物が同定された7)(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 非ステロイド性消炎鎮痛剤との相互作用
健常成人(性別不明)にミソプロストールと非ステロイド性消炎鎮痛剤を経口投与した場合、ミソプロストールはアスピリン、ジクロフェナクナトリウム及びイブプロフェンの薬物動態に臨床的に意義のある影響を及ぼさなかった。また、アスピリン、ジクロフェナクナトリウム及びイブプロフェンはミソプロストールの薬物動態に影響を及ぼさなかった8)(外国人データ)。
注)本剤の承認用量はミソプロストールとして1回200μgを1日4回である。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験
非ステロイド性消炎鎮痛剤の継続投与下で本剤を投与した国内での一般臨床試験において、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍での内視鏡判定治癒率及び有用率は以下のとおりであった。
対象疾患名内視鏡判定治癒率有用率(有用以上)
胃潰瘍65.7%(44/67例)76.4%(55/72例)
十二指腸潰瘍83.3%(5/6例)66.7%(4/6例)
17.2 製造販売後調査等
調査症例数3,646例中、副作用発現症例数は356例(9.8%)であり、副作用発現件数は485件であった。その主なものは、下痢・軟便137件(3.8%)、腹痛69件(1.9%)、鼓腸放屁44件(1.2%)、消化不良18件(0.5%)等の消化器症状、Al-P上昇19件(0.5%)、BUN上昇16件(0.4%)等であった。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
胃粘膜壁細胞において特異的プロスタグランジンE型受容体との結合を介して、アデニレートシクラーゼの活性を抑制し、cAMPの増加を抑えることにより、酸分泌抑制作用を示す9)
また、胃粘膜の粘液及び十二指腸粘膜の重炭酸イオン分泌を促進し、粘膜血管に作用して血流量を維持し、粘膜層のもつ酸中和能を高めることより、粘膜防御機構の増強作用を示す。
さらに、強酸及び無水エタノールなど壊死惹起物質による胃粘膜傷害の発生を、胃酸分泌を抑制しない用量においても抑制する。
18.2 胃酸分泌抑制作用
18.2.1 基礎分泌
健常成人(男子)に本剤200μgを1回経口投与した場合、投与後30〜150分の2時間酸分泌量を85.4%抑制した10)
18.2.2 テトラガストリン及び塩酸ベタゾール刺激分泌
健常成人(男女)に本剤200μgを1回経口投与した場合、テトラガストリン4μg/kg及び塩酸ベタゾール1mg/kg筋注投与による刺激後の2時間酸分泌量をそれぞれ28.4%、47.9%抑制した11)
18.2.3 夜間分泌
健常成人(男女)に本剤200μgを1回(午後10時)経口投与した場合、夜間の7時間酸分泌量を47.9%抑制した12)
18.2.4 幽門結紮ラットでの基礎分泌及びイヌでのヒスタミン刺激分泌に対して抑制作用を示した13)
18.3 粘膜防御作用
18.3.1 胃粘膜血行動態に対する作用
健常成人(男子)に本剤200μgを1回経口投与した場合、粘膜血液量を8.5〜27.3%増加させ、その増加は胃内全体で一様であった14)
18.3.2 胃粘液分泌に対する作用
ラットにおいて胃粘膜被覆粘液層の厚さと内腔粘液の糖蛋白量を増加させた15)
18.3.3 十二指腸重炭酸イオン分泌に対する作用
(1)健常成人(男女)に本剤50、100、200、400μgを低用量から順に経口投与した場合、100μg以上において十二指腸近位部及び遠位部の重炭酸イオン分泌を増加させた16)
(2)ラットにおいて十二指腸の重炭酸イオン分泌を増加させた17)
18.3.4 胃粘膜電位差に対する作用
イヌにおいてアスピリンによる胃粘膜電位差の低下を抑制した18)
18.3.5 実験的胃粘膜傷害に対する作用
(1)健常成人(男子)に本剤200μgを投与した場合、80%エタノールの胃粘膜散布による粘膜傷害に対して抑制効果を示した19)
(2)ラットにおいて無水エタノール、塩酸、塩酸−エタノール、塩酸−アスピリン、アスピリン、胆汁酸、プレドニゾロン及びストレスによる胃粘膜傷害に対して、酸分泌を抑制しない用量においても抑制効果を示した17)20)21)
18.4 非ステロイド性消炎鎮痛剤による胃及び十二指腸粘膜傷害に対する作用
18.4.1 健常成人(男女)においてアスピリン、イブプロフェン及びトルメチンによる胃及び十二指腸粘膜傷害、また、ナプロキセンによる胃粘膜傷害に対して抑制効果を示した22)23)24)25)
18.4.2 関節炎患者(男女)において、非ステロイド性消炎鎮痛剤の継続投与下本剤800μg/日を12週間経口投与した場合、潰瘍の発生はみられず、胃及び十二指腸粘膜傷害に対して抑制効果を示した26)。また、変形性関節症患者(男女)において、非ステロイド性消炎鎮痛剤の継続投与下本剤400μg/日又は800μg/日を12週間経口投与した場合にも、胃潰瘍の発生に対して抑制効果を示した27)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ミソプロストール

一般的名称 ミソプロストール
一般的名称(欧名) Misoprostol
化学名 methyl(±)-(1R,2R,3R)-3-hydroxy-2-[(E)-4-hydroxy-4-methyl-1-octenyl]-5-oxocyclopentaneheptanoate
分子式 C22H38O5
分子量 382.54
物理化学的性状 淡黄色の粘稠性のある液体で、かび臭いにおいがある。エタノール(95)、ジエチルエーテル、クロロホルム及び酢酸エチルと混和し、水及びヘキサンには極めて溶けにくい。
分配係数 pH4.0、7.0、9.0の緩衝液−クロロホルム系に分配させた場合、pHによる影響はなく、クロロホルム層への分配はほぼ100%で、水層への分配は全くみられない。
KEGG DRUG D00419

20. 取扱い上の注意

開封後は湿気を避けて取り扱うこと。

22. 包装

<サイトテック錠100>
100錠[10錠(PTP)×10]乾燥剤入り
<サイトテック錠200>
100錠[10錠(PTP)×10]乾燥剤入り

23. 主要文献

  1. 江崎孝三郎ほか, 実中研・前臨床研究報, 11 (2), 167-187, (1985)
  2. 江崎孝三郎ほか, 実中研・前臨床研究報, 11 (2), 189-211, (1985)
  3. 江崎孝三郎ほか, 実中研・前臨床研究報, 11 (2), 213-227, (1985)
  4. 江崎孝三郎ほか, 実中研・前臨床研究報, 11 (2), 237-248, (1985)
  5. 社内資料:ミソプロストール錠の日本人における生物学的利用性の比較
  6. 社内資料:ミソプロストールの代謝物(SC-30695)の単回投与および定常状態における血漿中濃度
  7. 社内資料:健常人における[3H]-ミソプロストール([3H]-SC-29333)の薬物動態試験
  8. Nicholson,P.A.,et al., J.Rheumatol., 17 (suppl.20), 33-37, (1990)
  9. Tsai,B.S.,et al., Am.J.Med., 83 (Suppl.1A), 9-14, (1987)
  10. 中村孝司ほか, 医学と薬学, 15 (1), 135-143, (1986)
  11. 丹羽寛文ほか, 医学と薬学, 15 (1), 145-157, (1986)
  12. 武藤 弘ほか, 医学と薬学, 15 (1), 159-166, (1986)
  13. 社内資料:SC-29333:胃液分泌抑制薬の生物学的研究
  14. 福田益樹ほか, 医学と薬学, 15 (1), 167-173, (1986)
  15. Sellers,L.A.,et al., Dig.Dis.Sci., 31 (2), 91S-95S, (1986)
  16. Isenberg,J.I.,et al., Gastroenterology., 91 (2), 370-378, (1986) »PubMed
  17. 岡部 進ほか, 日本薬理学雑誌, 87 (3), 339-350, (1986) »DOI
  18. Colton,D.G.,et al., J.Pharmacol.Exp.Ther., 210 (2), 283-288, (1979) »PubMed
  19. Agrawal,N.M.,et al., Gastrointest.Endosc., 32 (2), 67-70, (1986) »PubMed
  20. Bauer,R.F.,et al., Dig.Dis.Sci., 31 (2), 81S-85S, (1986)
  21. 社内資料:Misoprostolのcryoprotectionに関する研究
  22. Jiranek,G.C.,et al., Gastroenterology., 96 (2), 656-661, (1989)
  23. Lanza,F.L.,et al., Am.J.Gastroenterol., 83 (9), 1034, (1988)
  24. Lanza,F.L.,et al., Dig.Dis.Sci., 31 (2), 131S-136S, (1986)
  25. Aadland,E.,et al., Am.J.Med., 83 (suppl.1A), 37-40, (1987)
  26. 塩川優一ほか, リウマチ, 31 (5), 554-571, (1991) »PubMed
  27. Graham,D.Y.,et al., Lancet., 332 (8623), 1277-1280, (1988)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
ファイザー株式会社 Pfizer Connect/メディカル・インフォメーション
〒151-8589 東京都渋谷区代々木3-22-7
電話:0120-664-467
製品情報問い合わせ先
ファイザー株式会社 Pfizer Connect/メディカル・インフォメーション
〒151-8589 東京都渋谷区代々木3-22-7
電話:0120-664-467

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
ファイザー株式会社
東京都渋谷区代々木3-22-7

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/05/21 版