5.1 本剤は先天性プロテインC(PC)欠乏症の患者に使用すること。
先天性PC欠乏症とは以下の項目のいずれかに該当するものである。
なお、健康な低出生体重児、新生児、乳児でもPC活性および血液凝固第VII因子活性が低いことが知られているので、先天性PC欠乏症の診断には留意すること。
・PC活性が60%以下であり、かつ、血液凝固第VII因子との活性比又は抗原比が0.7未満である場合。
・PC活性が60%以下であり、かつ、血栓症の既往歴がある場合。
・PC活性が60%以下であり、かつ、同一家系内に先天性PC欠乏症患者がいる場合。
・PC活性が60%を超え80%以下の場合は、血液凝固第VII因子との活性比又は抗原比が0.7未満で、かつ、血栓症の既往歴があるか、同一家系内に先天性PC欠乏症患者がいる場合。
・遺伝子解析により、PC欠乏症の診断がなされている場合。
5.2 先天性PC欠乏症に起因する電撃性紫斑病の患者とは5.1に示す先天性PC欠乏症に該当し、かつ皮膚壊死を伴う紫斑等の皮膚所見を呈している患者である。
なお、電撃性紫斑病の徴候を呈している患者で、明らかな基礎疾患がないにもかかわらず汎発性血管内血液凝固症候群(DIC)様の臨床検査異常が認められ、先天性PC欠乏症が起因すると疑われる場合には、原則として初回発症時においては、5.1に示す先天性PC欠乏症の診断結果を待たずに本剤の投与を開始することを考慮する。この場合においても可能な限り、本剤投与前にPC活性を測定すること。
5.3 先天性活性化プロテインC不応症であるホモ接合体factor V Leiden mutationの患者に対する本剤の効果は期待できない。
<深部静脈血栓症、急性肺血栓塞栓症>
本剤を添付の日局注射用水で溶解し、通常1日に活性化プロテインC 200〜300単位/kg体重を輸液(5%ブドウ糖液、生理食塩液、電解質液等)に加え、24時間かけて点滴静脈内投与する。
なお、原則として6日間投与しても症状の改善が認められない場合は投与を中止すること。年齢及び症状に応じて適宜減量する。
<電撃性紫斑病>
本剤を添付の日局注射用水で溶解し、以下のとおり投与する。
なお、原則として6日間投与しても症状の改善が認められない場合は投与を中止すること。
投与1日目 | 活性化プロテインC 100単位/kg体重を緩徐に静脈内投与し、その後、600〜800単位/kg体重を輸液(5%ブドウ糖液、生理食塩液、電解質液等)に加え、24時間かけて点滴静脈内投与する。 |
投与2日目以降 | 1日に活性化プロテインC 600〜900単位/kg体重を輸液(5%ブドウ糖液、生理食塩液、電解質液等)に加え、24時間かけて点滴静脈内投与する。 |
7.1 症状の改善が認められた後、再発・再燃することがあるので、その場合には本剤の再投与を考慮すること。
7.2 本剤の臨床試験において、6日間を超えた投与経験はない。
8.1 本剤の使用にあたっては、疾病の治療における本剤の必要性とともに、本剤の製造に際しては感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているものの、ヒトの血液を原材料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを患者又はその家族に対して説明し、その理解を得るよう努めること。
8.2 他剤による抗凝固療法施行中に本剤を使用する場合や、本剤の使用中に新たに他剤を併用したり、休薬したりする場合には、凝固能の変動に注意すること。[
10.2参照]
8.3 本剤の原材料となる献血者の血液については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体、抗HIV-2抗体及び抗HTLV-1抗体陰性で、かつALT値でスクリーニングを実施している。さらに、HBV、HCV及びHIVについては個別の試験血漿で、HAV及びヒトパルボウイルスB19についてはプールした試験血漿で核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。本剤はイムノアフィニティークロマトグラフィー処理、ウイルス除去膜処理によって原材料由来のウイルスを除去し、さらに65℃96時間の乾燥加熱処理を施した製剤であるが、投与に際しては、次の点に十分注意すること。
8.3.1 血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること。[
9.1.1、
9.1.2、
9.5参照]
8.3.2 肝炎ウイルス等のウイルス感染の危険性を完全には否定できないので、観察を十分に行い、症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。
8.3.3 現在までに本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、投与の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上投与すること。
8.4 アナフィラキシーを起こす可能性があるので、観察を十分に行うこと。
8.5 マウスたん白質に対して過敏症の患者に投与する場合は観察を十分に行うこと。また、同たん白質に対する抗体を産生する可能性を完全には否定できないので、観察を十分に行うこと。本剤は、抗プロテインCマウスモノクローナル抗体をリガンドとしたイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製されており、マウス抗体が残存する可能性を完全には否定できない。
8.6 DICに対する第III相臨床試験において電解質(ナトリウム、カリウム、クロル)の低下傾向が認められたので、観察を十分に行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 溶血性・失血性貧血の患者
ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には、発熱と急激な貧血を伴う重篤な全身症状を起こすことがある。[
8.3.1参照]
9.1.2 免疫不全患者・免疫抑制状態の患者
ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には、持続性の貧血を起こすことがある。[
8.3.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。本剤の投与によりヒトパルボウイルスB19の感染の可能性を否定できない。感染した場合には胎児への障害(流産、胎児水腫、胎児死亡)が起こる可能性がある。[
8.3.1参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 溶解時に不溶物の認められるものは使用しないこと。
14.1.2 5%ブドウ糖液、生理食塩液、電解質液等の輸液以外の、他の製剤と混注しないこと。
14.1.3 本剤は、アミノ酸類の輸液と混合すると、添加されている抗酸化剤により活性化プロテインC活性の顕著な低下が認められるので、抗酸化剤(亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等)が添加されている製剤と混合しないこと。
14.1.4 本剤を溶解後、輸液に加える際、汚染に注意すること。
14.1.5 一度溶解したものは速やかに使用すること。
14.1.6 使用後の残液は再使用しないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 通常5%ブドウ糖液、生理食塩液、電解質液等と混合して点滴静脈内投与する。
14.2.2 本剤を静脈内投与する場合には2〜3mL/分の速度で緩徐に投与すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
経口避妊薬服用者は活性化プロテインC不応症になり易いことが報告されており、経口避妊薬服用者への本剤の投与には注意を要する。
本剤は特定生物由来製品に該当することから、本剤を使用した場合は、医薬品名(販売名)、その製造番号又は製造記号(ロット番号)、使用年月日、使用した患者の氏名、住所等を記録し、少なくとも20年間保存すること。
1バイアル 溶剤(日本薬局方注射用水)5mL、溶解移注針添付