<効能共通>
本剤は製剤に添付された溶解液(日局注射用水)全量で溶解し、緩徐に静脈内に注射又は点滴注入する。なお、1分間に5mLをこえる注射速度は避けること。
<血友病A>
通常1回に血液凝固第VIII因子活性(F.VIII:C)で250〜2,000国際単位を投与するが、年齢・症状に応じて適宜増減する。
<von Willebrand病>
通常1回にリストセチンコファクター活性(RCof)で500〜4,000単位を投与するが、年齢・症状に応じて適宜増減する。
8.1 本剤の使用にあたっては、疾病の治療における本剤の必要性とともに、本剤の製造に際し感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているが、血液を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを、患者に対して説明し、理解を得るよう努めること。
8.2 本剤の原材料となる献血者の血液については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体、抗HIV-2抗体、抗HTLV-1抗体陰性で、かつALT値でスクリーニングを実施している。更に、HBV、HCV及びHIVについて核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。本剤は、以上の検査に適合した血漿を原料として、人血液凝固第VIII因子-vWF複合体を濃縮・精製した製剤であり、ウイルス不活化を目的として、製造工程においてリン酸トリ-n-ブチル(TNBP)/ポリソルベート80処理、凍結乾燥の後、60℃、72時間の加熱処理を施しているが、投与に際しては、次の点に十分注意すること。
8.2.1 血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること。[
9.1.2、
9.1.3、
9.5参照]
8.2.2 肝炎ウイルス等のウイルス感染のリスクについては完全には否定できないので、観察を十分に行い、症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。
8.2.3 現在までに本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、投与の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上投与すること。
8.3 大量投与により血管内に凝固による栓塞を起こすおそれがあるので、慎重に投与すること。
8.4 患者の血中に血液凝固第VIII因子に対するインヒビターが発生するおそれがある。特に、血液凝固第VIII因子製剤による補充療法開始後、投与回数が少ない時期(補充療法開始後の比較的早期)や短期間に集中して補充療法を受けた時期にインヒビターが発生しやすいことが知られている。本剤を投与しても予想した止血効果が得られない場合には、インヒビターの発生を疑い、回収率やインヒビターの検査を行うなど注意深く対応し、適切な処置を行うこと。
8.5 本剤は抗A及び抗B血液型抗体を有する。したがって血液型がO型でない患者に大量投与したとき、まれに溶血性貧血を起こすことがある。
8.6 本剤にはフィブリノゲンが含まれているので、投与により血中のフィブリノゲン濃度が過度に上昇するおそれがある。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 IgA欠損症の患者
抗IgA抗体を保有する患者では過敏反応を起こすおそれがある。
9.1.2 溶血性・失血性貧血の患者
ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には、発熱と急激な貧血を伴う重篤な全身症状を起こすことがある。[
8.2.1参照]
9.1.3 免疫不全患者・免疫抑制状態の患者
ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には、持続性の貧血を起こすことがある。[
8.2.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。本剤の投与によりヒトパルボウイルスB19の感染の可能性を否定できない。感染した場合には胎児への障害(流産、胎児水腫、胎児死亡)が起こる可能性がある。[
8.2.1参照]
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 アナフィラキシー(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 頻度不明 |
過敏症 | 発熱、蕁麻疹、顔面潮紅等 |
消化器 | 悪心、嘔吐、腹痛等 |
精神神経系 | 倦怠感、違和感、頭痛等 |
注射部位 | 血管痛 |
その他 | 溶血性貧血、血圧上昇、悪寒、腰痛、季肋部不快感、結膜の充血 |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 他の製剤と混注しないこと。
14.1.2 溶解した液を注射器に移す場合、フィルターの付いたセットを用いること。
14.1.3 一度溶解したものは1時間以内に使用すること。
14.1.4 使用後の残液は細菌汚染のおそれがあるので使用しないこと。本剤は細菌の増殖に好適なたん白であり、しかも保存剤が含有されていない。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 溶解時に沈殿の認められるものは使用しないこと。
14.2.2 輸注速度が速すぎるとチアノーゼ、動悸を起こすことがあるので、1分間に5mLを超えない速度でゆっくり注入すること。
14.3 薬剤交付時の注意
14.3.1 子供の手の届かない所へ保管すること。
14.3.2 使用済の医療機器等の処理については、主治医の指示に従うこと。
18.1 作用機序
血漿中の血液凝固第VIII因子及びvon Willebrand因子を補い、出血傾向を抑制する。
18.2 血液凝固反応
第VIII因子欠乏血漿を用いた
in vitro実験において、本剤の添加量に依存して、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の補正効果が確認されている。
また、von Willebrand因子欠乏血漿を用いた
in vitro実験において、本剤の添加量に依存して、リストセチンコファクター活性が補正され、同時にマルチマーも補正されることが確認されている
3)。
本剤は特定生物由来製品に該当することから、本剤を投与又は処方した場合は、医薬品名(販売名)、その製造番号(ロット番号)、投与又は処方した日、投与又は処方を受けた患者の氏名、住所等を記録し、少なくとも20年間保存すること。
〔参考:血友病Aに対する投与量の基準〕
本剤の投与量は、出血部位と症状、因子欠乏の程度、患者の体重、抑制因子(インヒビター)の有無とその量、更に期待される凝固因子レベルなどによって決定される。
通常体重1kg当たり第VIII因子を1国際単位投与したとき、血中第VIII因子レベルは2%上昇するとされている。本剤投与時の第VIII因子活性の上昇期待値は次式を用いて求められる。
〔第VIII因子活性の上昇期待値(%)※=投与第VIII因子力価(国際単位)/体重(kg)×2〕
また、投与に必要な第VIII因子力価は
〔投与所要力価(国際単位)=体重(kg)×上昇期待値(%)※×0.5〕
(※正常値を100%とする)
上式はインヒビターが存在しない場合であるので、インヒビターが存在する場合は、次式を用いてインヒビターが中和される量をプラスして投与しなければならない。
第VIII因子1国際単位に結合するインヒビターは約2単位といわれている。
〔インヒビター活性の中和に要する第VIII因子力価(国際単位)=血漿インヒビターの活性値(単位/mL)×体重(kg)×48〕
血友病A患者出血時の補充療法基準
出血部位及び重症度 | 初回投与より止血まで | 止血後の維持 |
血中因子濃度目標レベル(%) | 1回投与量(IU/kg) | 1日投与回数(回/日) | 血中因子濃度目標レベル(%) | 1回投与量(IU/kg) | 1日投与回数(回/日) | 投与期間(日) |
頭蓋内出血 | 80以上 | 40以上 | 2 | 40 | 20 | 1 | 7 |
筋肉内出血 吐血・下血 喀血 血尿 挫創・挫傷 穿刺 | 重症 | 80 | 40 | 2 | 40 | 20 | 1 | 4 |
軽症 | 40 | 20 | 1〜2 | 20 | 10 | 1 | 2 |
関節内出血 歯肉出血 口腔内咬傷 鼻出血 表在性創傷 打撲 運動療法 | 重症 | 40 | 20 | 1〜2 | | | | |
軽症 | 20 | 10 | 1〜2 | | | | |
コンコエイト-HTの溶解法及び溶解液注入針の使い方
[1]添付の溶剤瓶を室温程度にまで温めてください。
決して37℃を超えて加温しないでください。
[2]コンコエイト-HTと溶剤の両方の瓶のキャップを除去しゴム栓の表面を消毒してください(
図1)。
(図1)
[3]溶解液注入針に添付のアダプターを溶剤瓶にセットします(
図2)。
(図2)
[4]溶解液注入針の保護サヤをまず片方だけ軽くまわしてはずします(
図3)。
(図3)
[5]溶解液注入針を溶剤瓶のゴム栓中央に真っすぐ深く刺入してください(
図4)。
(図4)
[6]溶解液注入針の反対側の保護サヤを軽くまわしてはずし、コンコエイト-HT瓶を倒立させて溶解液注入針をゴム栓の中央大きい○印の箇所に真っすぐ深く刺入してください(
図5)。
(図5)
[7]溶剤瓶が上になるように逆転してください。液が流れ始めたら連結された両方の瓶を斜めにして液ができるだけコンコエイト-HT瓶の壁面に沿って流れ込むようにしてください(
図6)。
(図6)
[8]溶剤瓶をはずし、溶解液注入針に保護サヤをはめます。
その状態でコンコエイト-HT瓶をゆるく振盪し、完全に溶解させてください(
図7)。
(図7)
[9]溶解液注入針の保護サヤをはずし、フィルトランを注射筒にセットします。
フィルトラン付注射筒をコンコエイト-HTの容量分引き、そのまま溶解液注入針の針部に深く刺し込み、押し子を押し込んでください(
図8)。
(図8)
[10]コンコエイト-HT瓶を倒立させ、注射筒にコンコエイト-HTを取り出してください(
図9)。
(図9)
[11]注射筒からフィルトランを抜き取ってください(
図10)。
(図10)
[12]翼状針を装着して静脈内に投与してください(
図11)。
(図11)
その他の説明