医療用医薬品 : エサンブトール

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医薬品情報


総称名 エサンブトール
一般名 エタンブトール塩酸塩
欧文一般名 Ethambutol Hydrochloride
製剤名 エタンブトール塩酸塩錠
薬効分類名 エタンブトール製剤
薬効分類番号 6225
ATCコード J04AK02
KEGG DRUG
D00878 エタンブトール塩酸塩
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
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添付文書情報2023年11月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
エサンブトール錠125mg Esanbutol Tablets 125mg サンド 6225001F1044 6.1円/錠 劇薬, 処方箋医薬品注)
エサンブトール錠250mg Esanbutol Tablets 250mg サンド 6225001F2040 20円/錠 劇薬, 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

<適応菌種>
<適応症>

6. 用法及び用量

<肺結核及びその他の結核症>
通常成人は、エタンブトール塩酸塩として1日量0.75〜1gを1〜2回に分けて経口投与する。
年齢、体重により適宜減量する。
なお、他の抗結核薬と併用することが望ましい。
<MAC症を含む非結核性抗酸菌症>
通常成人は、エタンブトール塩酸塩として0.5〜0.75gを1日1回経口投与する。
年齢、体重、症状により適宜増減するが1日量として1gを超えない。

7. 用法及び用量に関連する注意

<肺結核及びその他の結核症>
7.1 本剤の体重別1日投与量の目安は次表のとおりである。
体重1日投与量投与方法
mg250mg錠のみを用いる場合250mg錠と125mg錠を用いる場合125mg錠のみを用いる場合
250mg錠125mg錠
60kg以上1,0004錠  8錠1日1回朝食後経口投与、あるいは朝夕2回に分けて経口投与する。
50kg以上875 3錠1錠7錠
40kg以上7503錠  6錠
35kg以上625 2錠1錠5錠
30kg以上5002錠  4錠
<MAC症を含む非結核性抗酸菌症>
7.2 投与開始時期、投与期間、併用薬等について国内外の各種学会ガイドライン1)2)3)等、最新の情報を参考にし、投与すること。
7.3 本剤の体重別1日投与量の目安は次表のとおりである。
体重1日投与量投与方法
mg250mg錠のみを用いる場合250mg錠と125mg錠を用いる場合125mg錠のみを用いる場合
250mg錠125mg錠
50kg以上7503錠  6錠1日1回朝食後に経口投与する。
40kg以上625 2錠1錠5錠
30kg以上5002錠  4錠

8. 重要な基本的注意

<効能共通>
8.1 視力障害があらわれることがあるので、視力検査等を定期的に行い、投与すること。[9.8.211.1.115.1参照]
8.2 本剤の投与にあたっては、視力障害について患者に十分に説明すること。投与中は常に患者の観察、服薬指導を十分に行うこと。[11.1.1参照]
8.3 重篤な肝障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うこと。[10.211.1.2参照]
8.4 血小板減少があらわれることがあるので、定期的に血液検査を行うなど観察を十分に行うこと。[11.1.6参照]
<肺結核及びその他の結核症>
8.5 耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。
8.6 本剤を含む抗結核薬による治療で、薬剤逆説反応を認めることがある。治療開始後に、既存の結核の悪化又は結核症状の新規発現を認めた場合は、薬剤感受性試験等に基づき投与継続の可否を判断すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 視神経炎のある患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。視力障害が増強されるおそれがある。[11.1.115.1参照]
9.1.2 糖尿病患者、アルコール中毒患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。既に視神経障害を起こしている場合があり、症状が増悪するおそれがある。[15.1参照]
9.2 腎機能障害患者
蓄積を起こすことが報告されている。[15.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中へ移行することが報告されている4)
9.7 小児等
9.7.1 乳・幼児
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。視力障害の早期発見が極めて困難である。[11.1.1参照]
9.8 高齢者
9.8.1 少量から投与を開始するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。
9.8.2 定期的に視力検査を行い、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。視力障害があらわれやすい。[8.111.1.115.1参照]

10. 相互作用

10.2 併用注意
リファンピシン
11.1.1参照]
視力障害が増強されるおそれがある。機序は不明であるが、動物実験(ラット)において、併用した場合に本剤の視力障害を増強したとの報告がある。
他の抗結核薬
イソニアジド
リファンピシン等
8.311.1.2参照]
重篤な肝障害があらわれることがある。機序は不明である。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 視力障害(頻度不明)
視神経障害による視力低下、中心暗点、視野狭窄、色覚異常等の視力障害があらわれ、発見が遅れ高度に進行すると非可逆的になることがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止すること。[8.18.29.1.19.7.19.8.210.215.1参照]
11.1.2 重篤な肝障害(頻度不明)
劇症肝炎等の重篤な肝障害があらわれることがある。[8.310.2参照]
11.1.3 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫(顔面浮腫、喉頭浮腫等)、蕁麻疹等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.4 間質性肺炎、好酸球性肺炎(いずれも頻度不明)
発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常等が認められた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
11.1.5 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、紅皮症(剥脱性皮膚炎)(いずれも頻度不明)
11.1.6 血小板減少(頻度不明)[8.4参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 頻度不明
中枢・末梢神経系四肢のしびれ感
精神神経系幻覚、不安、不眠
過敏症発熱、発疹、そう痒
血液白血球減少、好中球減少、好酸球増多
肝臓一過性のAST、ALTの上昇
消化器食欲不振、悪心、嘔吐、胃部不快感、胃痛
その他頭痛、めまい感、倦怠感、高尿酸血症

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
本剤による視力障害は主として視神経炎によるとされており、初期症状として霧視、注視している対象物が何となく見えにくい、黒ずんで見える、色調が変わって見えるなどの訴えが多い5)
一般に視力障害は早期に発見し、速やかに投与を中止すれば比較的短期間のうちに回復するとされているが、発見の遅れた重症の視力障害例では回復の遷延化、又は未回復も報告されている6)7)
本剤による視力障害例を追跡調査した報告では、高齢者で体重当たりの投与量の多い患者、腎機能の低下した患者や糖尿病患者において、副作用が発現しやすい傾向にあるとされている8)9)10)。[8.19.1.19.1.29.29.8.211.1.1参照]

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
健康成人男子20名にエタンブトール塩酸塩として25mg/kgを空腹時1回経口投与したとき、最高血中濃度は2時間後に5.7μg/mLである11)
16.3 分布
エタンブトール塩酸塩0.5gを1回経口投与したとき、肺組織内濃度は血中濃度より高い(肺結核患者)12)
16.5 排泄
エタンブトール塩酸塩25mg/kg注)を1回経口投与後の尿糞中への累積排泄率は24時間で54〜67%、48時間で72〜86%及び144時間で79〜94%である。尿中へは、24時間までに54%が排泄される。尿中排泄物は未変化体と代謝物(アルデヒド体、酪酸誘導体)で、その比率はおよそ2:1である(肺結核患者、米国)13)
注)承認最大用量は1日1gである。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験(初回治療)
肺結核に対する化学療法として、初回治療における本剤と他の抗結核剤の併用療法により、喀痰中の結核菌の陰性化率や胸部レ線像所見による改善率を高め、治療期間を短縮することが報告されている。主な副作用は、発疹およびそう痒疹17.6%(15/85例)、胃腸障害10.6%(9/85例)、GPT及びGOTの上昇7.1%(6/85例)及び聴神経障害5.9%(5/85例)であった14)
17.1.2 国内臨床試験(再治療)
肺結核に対する化学療法として、再治療における本剤と他の抗結核剤の併用療法により、喀痰中の結核菌の陰性化率の比較による治療効果を高めることが報告されている。主な副作用は、エチオナミドとの併用の場合で、胃腸障害35.5%(33/93例)及び肝機能障害10.6%(13/93例)、リファンピシンとの併用の場合で、胃腸障害21.6%(21/97例)及び視力障害7.2%(7/97例)であった15)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
エタンブトール塩酸塩は、結核菌に対して強い抗菌力を示し、増殖期に静菌的に作用する。ミコール酸の細胞壁への取込みを阻害するという報告がある16)。電子顕微鏡による観察では結核菌の核酸合成経路を阻害し、細胞分裂を抑制することが認められている17)
18.2 抗菌作用
人型結核菌H37Rv株に対し、1%小川培地、Dubos液体培地では2.5〜5μg/mLで発育を阻止する18)
既存の他の抗結核薬との間に交差耐性を示さない19)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. エタンブトール塩酸塩

一般的名称 エタンブトール塩酸塩
一般的名称(欧名) Ethambutol Hydrochloride
化学名 (2S,2'S)-2,2'-(Ethylenediimino)bis(butan-1-ol)dihydrochloride
分子式 C10H24N2O2・2HCl
分子量 277.23
融点 200〜204℃
物理化学的性状 白色の結晶又は結晶性の粉末で、においはなく、味は苦い。
水に極めて溶けやすく、メタノール又はエタノール(95)にやや溶けやすく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
本品1.0gを水20mLに溶かした液のpHは3.4〜4.0である。
KEGG DRUG D00878

20. 取扱い上の注意

アルミピロー又はボトル開封後は湿気を避けて保存すること。

22. 包装

<エサンブトール錠125mg>
100錠[10錠(PTP)×10]
<エサンブトール錠250mg>
100錠[10錠(PTP)×10]
500錠[バラ、乾燥剤入り]

23. 主要文献

  1. 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会, 結核, 83 (11), 731-733, (2008)
  2. 日本結核病学会非定型抗酸菌症対策委員会, 結核, 73 (10), 599-605, (1998) »DOI
  3. Griffith DE,et al., Am J Respir Crit Care Med., 175, 367-416, (2007) »PubMed
  4. Snider DE,et al, Arch Intern Med., 144, 589-590, (1984) »PubMed
  5. 武田薬品(編):薬剤による副作用II, 450-454, (1979), (非売品)
  6. 鈴木 みち子ほか, 日本眼科紀要, 27 (2), 111-115, (1976)
  7. 大鳥 利文, 日本医師会雑誌, 83 (5), 571-576, (1980)
  8. 栃久保 哲男ほか, 眼科臨床医報, 75 (6), 799-807, (1981)
  9. 吉澤 久雄ほか, 結核, 47 (5), 121-127, (1972) »DOI
  10. 矢野 啓子ほか, 眼科臨床医報, 75 (5), 558-561, (1981)
  11. 社内資料:エサンブトール錠の血中濃度
  12. 馬場 治賢ほか, 日胸, 23 (12), 862-872, (1964)
  13. Peets EA,et al., Amer Rev Resp Dis., 91 (1), 51-58, (1965)
  14. 青木 幸平ほか, 逓信医学, 27 (7), 385-397, (1975)
  15. 国療化研13次B研究, 結核, 47 (5), 139-144, (1972) »DOI
  16. 第十八改正日本薬局方解説書, C-895-899, (2021), (廣川書店)
  17. Gale GR,et al., J Bact., 86 (4), 749-756, (1963) »PubMed
  18. 森山 英五郎ほか, 結核, 39 (5), 155-160, (1964) »DOI
  19. 山本 和男ほか, 日胸, 22, 797-804, (1963)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
サンド株式会社 カスタマーケアグループ
〒105-6333 東京都港区虎ノ門1-23-1
電話:0120-982-001
FAX:03-6257-3633
製品情報問い合わせ先
サンド株式会社 カスタマーケアグループ
〒105-6333 東京都港区虎ノ門1-23-1
電話:0120-982-001
FAX:03-6257-3633

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売
サンド株式会社
東京都港区虎ノ門1-23-1
電話:https://www.sandoz.jp/

その他の説明

眼障害予防の具体的方法
本剤の投与により、視力障害があらわれることがあるので、次のような注意をはらい、視力障害の早期発見に努めること。
なお、本剤による視力障害は、早期に発見し投与を中止すれば可逆的であるが、発見が遅れ高度に進行すると非可逆的になることがある。
(1)本剤の投与に際しては、次の点を患者に十分徹底すること。
1)本剤の投与により、ときに視力障害があらわれること。
2)この視力障害は、早期に発見し、投与を中止すれば可逆的であること。
3)この視力障害は、新聞を片眼ずつ一定の距離で毎朝読むことによって、早期に発見できること。
4)視力の異常に気づいたときは、直ちに主治医に申し出ること。
(2)本剤の投与開始前に、あらかじめ少なくとも視力検査及び外眼検査を実施すること。
開始前の検査で白内障、視神経炎等の異常が認められた場合には、適当な処置を講じてから、本剤を投与すること。
投与中は定期的に眼の検査を行い、異常が認められた場合には投与を中止し、精密な検査を行うこと。
なお、簡便な眼の検査としては、次のような方法がある。
1)視力検査表による検査
2)指を用いる視野狭窄検査
3)中心暗点計による検査
4)眼底検査
5)色覚検査表による検査
(3)本剤を高齢者に投与する場合には、視力検査を特に慎重に行うこと。

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/09/17 版