医療用医薬品 : クロフェクトン

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医薬品情報


総称名 クロフェクトン
一般名 クロカプラミン塩酸塩水和物
欧文一般名 Clocapramine Hydrochloride Hydrate
製剤名 クロカプラミン塩酸塩水和物錠
薬効分類名 精神神経安定剤
薬効分類番号 1179
KEGG DRUG
D02371 クロカプラミン塩酸塩水和物
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2024年10月 改訂(第2版 D55)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
クロフェクトン錠10mg CLOFEKTON TABLETS 田辺三菱製薬 1179030F1035 6.6円/錠 処方箋医薬品注)
クロフェクトン錠25mg CLOFEKTON TABLETS 田辺三菱製薬 1179030F2066 16.1円/錠 処方箋医薬品注)
クロフェクトン錠50mg CLOFEKTON TABLETS 田辺三菱製薬 1179030F3020 35.6円/錠 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 昏睡状態、循環虚脱状態の患者[これらの状態を悪化させるおそれがある。]
2.2 バルビツール酸誘導体・麻酔剤等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制剤の作用を延長し増強させる。]
2.3 アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療、又は歯科領域における浸潤麻酔もしくは伝達麻酔に使用する場合を除く)[10.1参照]
2.4 本剤の成分又はイミノジベンジル系化合物に対し過敏症の患者

4. 効能または効果

統合失調症

6. 用法及び用量

通常成人に対し、1日量クロカプラミン塩酸塩水和物として30〜150mgを3回に分けて経口投与する。
なお、症状、年齢に応じて適宜増減する。

8. 重要な基本的注意

8.1 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
8.2 制吐作用を有するため、他の薬剤に基づく中毒、腸閉塞、脳腫瘍等による嘔吐症状を不顕性化することがあるので注意すること。[11.1.4参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 心・血管疾患、低血圧、又はそれらの疑いのある患者
一過性の血圧降下があらわれることがある。
9.1.2 血液障害のある患者
血液障害を悪化させるおそれがある。[11.1.2参照]
9.1.3 てんかん等の痙攣性疾患、又はこれらの既往歴のある患者
痙攣閾値を低下させることがある。
9.1.4 甲状腺機能亢進状態にある患者
錐体外路症状が起こりやすい。
9.1.5 脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者
Syndrome malin(悪性症候群)が起こりやすい。[11.1.1参照]
9.1.6 不動状態、長期臥床、肥満、脱水状態等の患者
肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されている。[11.1.6参照]
9.3 肝機能障害患者
肝機能障害を悪化させるおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。動物実験(マウス)で催奇形作用(口蓋裂の増加)等が認められている。また、妊娠後期に抗精神病薬が投与されている場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性等の離脱症状(新生児薬物離脱症候群)や錐体外路症状があらわれたとの報告がある。
9.6 授乳婦
投与中及び投与後一定期間は授乳しないことが望ましい。
9.7 小児等
錐体外路症状、特にジスキネジアが起こりやすい。小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
少量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。錐体外路症状等の副作用があらわれやすい。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
アドレナリン
(アナフィラキシーの救急治療、又は歯科領域における浸潤麻酔もしくは伝達麻酔に使用する場合を除く)
(ボスミン)
2.3参照]
アドレナリンの作用を逆転させ、重篤な血圧降下を起こすことがある。アドレナリンはアドレナリン作動性α、β-受容体の刺激剤であり、本剤のα-受容体遮断作用により、β-受容体刺激作用が優位となり、血圧降下作用が増強される。
10.2 併用注意
中枢神経抑制剤
(バルビツール酸誘導体・麻酔剤等)
睡眠(催眠)・精神機能抑制の増強、麻酔効果の増強・延長、血圧降下等を起こすことがあるので、減量するなど慎重に投与すること。相互に中枢神経抑制作用を増強させることがある。
アルコール
(飲酒)
眠気、精神運動機能低下等を起こすことがある。相互に中枢神経抑制作用を増強させることがある。
ドンペリドン
メトクロプラミド
内分泌機能調節異常又は錐体外路症状が発現するおそれがある。ともに中枢ドパミン受容体遮断作用を有する。
リチウム心電図変化、重症の錐体外路症状、持続性のジスキネジア、突発性のSyndrome malin(悪性症候群)、非可逆性の脳障害を起こすおそれがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。機序は不明であるが、併用による抗ドパミン作用の増強等が考えられている。
ドパミン作動薬
(レボドパ製剤、ブロモクリプチンメシル酸塩)
相互に作用を減弱させるおそれがある。ドパミン作動性神経において、作用が拮抗することによる。
アドレナリン含有歯科麻酔剤
(リドカイン・アドレナリン)
重篤な血圧降下を起こすことがある。アドレナリンはアドレナリン作動性α、β-受容体の刺激剤であり、本剤のα-受容体遮断作用により、β-受容体刺激作用が優位となり、血圧降下作用が増強されるおそれがある。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 Syndrome malin(悪性症候群)(頻度不明)
無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CKの上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。なお、高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎障害へと移行し、死亡した例が報告されている。[9.1.5参照]
11.1.2 無顆粒球症、白血球減少(いずれも頻度不明)[9.1.2参照]
11.1.3 遅発性ジスキネジア(頻度不明)
長期投与により口周部等の不随意運動があらわれることがある。
11.1.4 麻痺性イレウス(頻度不明)
腸管麻痺(食欲不振、悪心・嘔吐、著しい便秘、腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等)を来し、麻痺性イレウスに移行することがあるので、腸管麻痺があらわれた場合には投与を中止すること。なお、この悪心・嘔吐は本剤の制吐作用により不顕性化することもあるので注意すること。[8.2参照]
11.1.5 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)(頻度不明)
低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム排泄量の増加、高張尿、痙攣、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがあるので、このような場合には投与を中止し、水分摂取の制限等適切な処置を行うこと。
11.1.6 肺塞栓症、深部静脈血栓症(いずれも頻度不明)
肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されているので、観察を十分に行い、息切れ、胸痛、四肢の疼痛、浮腫等が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。[9.1.6参照]
11.1.7 心室頻拍(Torsade de pointesを含む)(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 5%以上0.1〜5%未満頻度不明
循環器 頻脈、血圧降下胸内苦悶感等の心障害
血液  血液障害
肝臓  肝障害
錐体外路症状パーキンソン症候群(手指振戦、筋強剛、流涎等)アカシジア(静坐不能)ジストニア(眼球上転、眼瞼痙攣、舌突出、痙性斜頸、頸後屈、体幹側屈、後弓反張等)、ジスキネジア(口周部、四肢等の不随意運動等)
精神神経系不眠(16.8%)、不安・焦燥(13.4%)興奮、眠気、頭痛・頭重、言語障害幻覚・妄想の顕在化、衝動性の増悪、不穏、眩暈、立ちくらみ
消化器 食欲不振、悪心・嘔吐、便秘、胃部不快感、腹部膨満感 
内分泌  体重増加、乳汁分泌、性欲亢進、月経異常
過敏症  発疹、そう痒感
  複視
その他 倦怠感、口渇PBI上昇、発汗、乏尿

13. 過量投与

13.1 症状
傾眠から昏睡までの中枢神経系の抑制、血圧低下と錐体外路症状である。その他、激越と情緒不安、痙攣、口渇、腸閉塞、心電図変化及び不整脈等があらわれる可能性がある。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 本剤による治療中、原因不明の突然死が報告されている。
15.1.2 外国で実施された高齢認知症患者を対象とした17の臨床試験において、非定型抗精神病薬投与群はプラセボ投与群と比較して死亡率が1.6〜1.7倍高かったとの報告がある。また、外国での疫学調査において、定型抗精神病薬も非定型抗精神病薬と同様に死亡率の上昇に関与するとの報告がある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
健康成人3例にクロカプラミン塩酸塩水和物50mgを単回経口投与した場合、血漿中濃度は約2.7時間で最高に達する。血漿中濃度の半減期は約46時間であった1)
tmax(h)Cmax(ng/mL)t1/2(h)AUC0-∞(ng・h/mL)
2.7±1.212.9±3.346±6436±257
16.5 排泄
尿中には未変化体は検出されない1)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
二重盲検比較試験を含む統合失調症786例に対する有効率は、35.6%(280例/786例)である2)3)4)5)6)7)8)(有効率は“有効と認められるもの”以上を集計)。なお、二重盲検比較試験によって本剤の有用性が確認されている。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
クロカプラミン塩酸塩水和物の作用機序は、中枢神経系におけるドパミン作動性、ノルアドレナリン作動性神経等に対する抑制作用によると考えられている。
18.2 中枢ドパミン受容体遮断作用
18.2.1 イヌでの抗アポモルフィン作用は、クロルプロマジン、カルピプラミンの約4倍強力である9)10)
18.2.2 ラットによるin vivoの実験で、脳内ドパミンの代謝回転を亢進させる9)
18.2.3 ラットによるin vitroの実験で、ドパミン感受性のアデニレートサイクラーゼをクロルプロマジンと同程度に阻害する11)
18.3 ドパミン受容体親和性
ラットによるin vitroの実験で、脳内のハロペリドール特異的結合部位に対してクロルプロマジンより強力な親和性を示す9)
18.4 ノルアドレナリン受容体親和性
ラットのin vitroの実験で、脳内のノルアドレナリンα2受容体に対し、高い親和性を示す12)
18.5 カタレプシー惹起作用
ラットでのカタレプシー惹起作用はクロルプロマジンに比し弱い9)10)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. クロカプラミン塩酸塩水和物

一般的名称 クロカプラミン塩酸塩水和物
一般的名称(欧名) Clocapramine Hydrochloride Hydrate
化学名 1'-[3-(3-Chloro-10,11-dihydro-5H-dibenzo[b,f]azepin-5-yl)propyl]-1,4'-bipiperidine-4'-carboxamide dihydrochloride monohydrate
分子式 C28H37ClN4O・2HCl・H2O
分子量 572.01
融点 約260℃(分解、乾燥後).
物理化学的性状 白色の結晶又は結晶性の粉末で、においはなく、味は苦い。酢酸(100)に溶けやすく、水又はメタノールにやや溶けにくく、エタノール(95)、クロロホルム又はイソプロピルアミンに溶けにくく、無水酢酸又はジエチルエーテルにほとんど溶けない。光によって徐々に着色する。
KEGG DRUG D02371

20. 取扱い上の注意

アルミピロー包装開封後は遮光保存すること。

22. 包装

<クロフェクトン錠10mg>
100錠[10錠(PTP)×10]
<クロフェクトン錠25mg>
100錠[10錠(PTP)×10]
<クロフェクトン錠50mg>
500錠[10錠(PTP)×50]

23. 主要文献

  1. Ishigooka J,et al., Psychopharmacology(Berl)., 97 (3), 303-308, (1989) »PubMed
  2. 鮫島 健,他, 新薬と臨床, 21 (5), 807-823, (1972)
  3. 小野寺勇夫,他, 精神医学, 14 (2), 175-183, (1972)
  4. 梶 鎮夫,他, 臨床精神医学, 3 (8), 867-874, (1974)
  5. 栗原雅直,他, 臨床精神医学, 12 (4), 519-538, (1983)
  6. 森 克己,他, 新薬と臨床, 26 (10), 1893-1897, (1977)
  7. 宇佐晋一, 新薬と臨床, 26 (12), 2363-2369, (1977)
  8. 枝窪俊夫,他, 新薬と臨床, 31 (5), 831-835, (1982)
  9. 中西美智夫,他, クロフェクトン文献集[基礎編], 1-38, (1973)
  10. 中西美智夫,他, Arzneim-Forsch Drug Res., 21, 391-395, (1971)
  11. Kurihara M,et al., Int Pharmacopsychiatry., 17 (2), 73-90, (1982) »PubMed
  12. 長谷川和夫,他, 精神薬療基金研究年報第13集, 13, 95-101, (1981)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
田辺三菱製薬株式会社 くすり相談センター
〒541-8505 大阪市中央区道修町3-2-10
電話:0120-753-280
製品情報問い合わせ先
田辺三菱製薬株式会社 くすり相談センター
〒541-8505 大阪市中央区道修町3-2-10
電話:0120-753-280

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
田辺三菱製薬株式会社
大阪市中央区道修町3-2-10

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/08/20 版