非脱分極性筋弛緩剤の作用の拮抗に本剤を静脈内注射するにあたっては、緊急時に十分対応できる医療施設において、本剤の作用及び使用法について熟知した医師のみが使用すること。
2.1 消化管又は尿路の器質的閉塞のある患者[蠕動運動を亢進させ、また排尿筋を収縮させる作用を有する。]
2.2 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.3 迷走神経緊張症の患者[迷走神経興奮作用を有する。]
2.4 脱分極性筋弛緩剤(スキサメトニウム)を投与中の患者[
10.1参照]
○
重症筋無力症、クラーレ剤(ツボクラリン)による遷延性呼吸抑制、消化管機能低下のみられる手術後及び分娩後の腸管麻痺、手術後及び分娩後における排尿困難
○非脱分極性筋弛緩剤の作用の拮抗
<重症筋無力症、クラーレ剤(ツボクラリン)による遷延性呼吸抑制、消化管機能低下のみられる手術後及び分娩後の腸管麻痺、手術後及び分娩後における排尿困難>
通常、成人にはネオスチグミンメチル硫酸塩として1回0.25〜1.0mgを1日1〜3回皮下又は筋肉内注射する。
なお、重症筋無力症の場合は症状により、その他の適応の場合は年齢、症状により、それぞれ適宜増減する。
<非脱分極性筋弛緩剤の作用の拮抗>
通常、成人にはネオスチグミンメチル硫酸塩として1回0.5〜2.0mgを緩徐に静脈内注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、アトロピン硫酸塩水和物を静脈内注射により併用すること。
7.1 非脱分極性筋弛緩剤(ツボクラリン塩化物塩酸塩水和物、パンクロニウム臭化物、ベクロニウム臭化物等)の作用の拮抗に本剤を静脈内注射する場合には、下記の点に注意すること。
7.1.1 本剤の投与は、筋弛緩モニターによる回復又は自発呼吸の発現を確認した後に行うこと。
7.1.2 本剤は特別な場合を除き5mgを超えて投与しないこと。
7.1.3 徐脈がある場合には、本剤投与前にアトロピン硫酸塩水和物を投与して脈拍を適度に増加させておくこと。[
9.1.4参照]
7.1.4 本剤を静脈内注射する場合には、過度のコリン作動性反応を防止するため、通常、成人にはアトロピン硫酸塩水和物として1回0.25〜1.0mgを静脈内注射により併用すること。なお、アトロピン硫酸塩水和物は必要に応じ適宜増減すること。
7.1.5 更に血圧低下、徐脈、房室ブロック、心停止等が起こることがあるのでアトロピン硫酸塩水和物0.5〜1.0mgを入れた注射器をすぐ使えるようにしておくこと。これらの副作用があらわれた場合には、アトロピン硫酸塩水和物等を追加投与すること。[
11.1.2参照]
8.1 ときに筋無力症状の重篤な悪化、呼吸困難、嚥下障害(クリーゼ)をみることがあるので、このような場合には、臨床症状でクリーゼを鑑別し、困難な場合には、エドロホニウム塩化物2mgを静脈内注射し、クリーゼを鑑別し、次の処置を行うこと。
8.1.1 コリン作動性クリーゼ
腹痛、下痢、発汗、唾液分泌過多、縮瞳、線維束攣縮等の症状が認められた場合又はエドロホニウム塩化物を投与したとき症状が増悪ないし不変の場合は、直ちに投与を中止し、アトロピン硫酸塩水和物0.5〜1mgを静脈内注射する。更に、必要に応じて人工呼吸又は気管切開等を行い気道を確保する。[
11.1.1、
13.1参照]
8.1.2 筋無力性クリーゼ
呼吸困難、唾液排出困難、チアノーゼ、全身の脱力等の症状が認められた場合又はエドロホニウム塩化物を投与したとき症状の改善が認められた場合は、本剤の投与量を増加する。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 気管支喘息の患者
9.1.2 甲状腺機能亢進症の患者
9.1.3 冠動脈閉塞のある患者
9.1.4 徐脈のある患者
徐脈を更に増強させるおそれがある。[
7.1.3参照]
9.1.5 消化性潰瘍の患者
9.1.6 てんかんの患者
骨格筋の緊張が高まり、痙攣症状を増強させるおそれがある。
9.1.7 パーキンソン症候群の患者
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎機能低下のある患者
本剤の排泄が遅延し、作用が増強・持続するおそれがある。[
16.1.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。一般に高齢者では、生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<効能共通>
<非脱分極性筋弛緩剤の作用の拮抗>
11.1.2 不整脈(頻度不明)
本剤をアトロピン硫酸塩水和物と併用して静脈内注射した後に、心室性期外収縮、心室頻拍、心房細動等の不整脈や心停止が起こることがある。本剤による徐脈、房室ブロック、心停止等の過度のコリン作動性反応があらわれた場合にはアトロピン硫酸塩水和物を投与すること。[
7.1.5参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 0.1〜5%未満 | 頻度不明 |
| 過敏症 | | 過敏症状 |
| 循環器 | 血圧降下、徐脈、頻脈 | |
| 呼吸器 | 気管支痙攣、気道分泌の亢進 | |
| 消化器 | 唾液の分泌過多、悪心・嘔吐、下痢 | 腹痛 |
| 精神神経系 | 発汗、めまい、大量投与による不安・興奮・虚脱・脱力・筋攣縮・骨格筋の線維束攣縮等 | |
| その他 | 縮瞳 | |
14.1 薬剤投与時の注意
14.1.1 アンプルカット時に異物の混入を避けるため、アンプルの首部の周りをエタノール綿等で清拭しカットすること。
14.1.2 静脈内注射時
静脈内注射にあたっては、緩徐に静脈内注射すること。
14.1.3 筋肉内注射時
筋肉内注射にあたっては、組織、神経等への影響を避けるため下記の点に注意すること。
・筋肉内注射はやむを得ない場合にのみ、必要最小限に行うこと。なお、特に同一部位への反復注射は行わないこと。また、低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児には特に注意すること。
・神経走行部位を避けるよう注意すること。
・注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き、部位をかえて注射すること。
・注射部位に疼痛、硬結をみることがある。
14.2 薬剤調製時の注意
16.1 血中濃度
16.1.1 重症筋無力症患者
重症筋無力症患者5例にネオスチグミンメチル硫酸塩として2mgを単回筋肉内注射したときのネオスチグミンの薬物動態パラメータを表16-1に示す
6)(外国人データ)。
表16-1 薬物動態パラメータ(重症筋無力症患者)
| 投与量(mg) | n | Cmax(ng/mL) | T1/2(hr) |
| 2 | 5 | 21±2 | 1.20±0.11 |
重症筋無力症の承認された用法・用量は「通常、成人にはネオスチグミンメチル硫酸塩として1回0.25〜1.0mgを1日1〜3回皮下又は筋肉内注射する。なお、症状により適宜増減する。」である。
16.1.2 腎機能正常手術患者、両側腎摘出患者及び腎移植患者
腎機能正常手術患者8例、両側腎摘出患者4例及び腎移植患者6例にネオスチグミンメチル硫酸塩として2mgを単回静脈内注射したときのネオスチグミンの薬物動態パラメータを表16-2に示す
7)(外国人データ)。[
9.2.1参照]
表16-2 薬物動態パラメータ(腎機能正常手術患者、両側腎摘出患者及び腎移植患者)
| 投与量(mg) | 投与条件 | 投与対象 | n | T1/2(min) | 分布容積(L/kg) | CLt注1(mL/kg/min) |
| 2 | 麻酔下 | 腎機能正常手術患者 | 8 | 79.8±48.6 | 1.4±0.5 | 16.7±5.4 |
| 2 | 麻酔下 | 両側腎摘出患者 | 4 | 181.1±54.4注2 | 1.6±0.2 | 7.8±2.6注2 |
| 2 | 麻酔下 | 腎移植患者 | 6 | 104.7±64.0 | 2.1±1.0 | 18.8±5.8 |
16.3 分布
16.5 排泄
重症筋無力症患者3例に
14C-標識ネオスチグミンメチル硫酸塩1mgあるいは2mgを単回筋肉内注射したとき、24時間以内に投与放射活性の約82%が尿中に排泄された。その尿中には未変化体約50%、活性代謝物3-ヒドロキシフェニルトリメチルアンモニウム約15%、そのグルクロン酸抱合体0.7%が認められた
6)(外国人データ)。
重症筋無力症の承認された用法・用量は「通常、成人にはネオスチグミンメチル硫酸塩として1回0.25〜1.0mgを1日1〜3回皮下又は筋肉内注射する。なお、症状により適宜増減する。」である。
17.2 製造販売後調査等
<重症筋無力症、クラーレ剤(ツボクラリン)による遷延性呼吸抑制、消化管機能低下のみられる手術後及び分娩後の腸管麻痺、手術後及び分娩後における排尿困難>
<非脱分極性筋弛緩剤の作用の拮抗>
収集した国内2文献において、ネオスチグミンメチル硫酸塩による非脱分極性筋弛緩剤の作用の拮抗効果(臨床成績)を評価した症例は34例であり、非脱分極性筋弛緩剤の作用に拮抗した率(有効率)は82.4%(28例)であった
31)32)。
18.1 作用機序
アセチルコリンはコリン作動性神経(cholinergic nerve)における刺激伝達物質と考えられているが、これを選択的に分解する生体内酵素コリンエステラーゼによって加水分解され、その作用を消失する。ネオスチグミンは、このコリンエステラーゼを一時的に不活化して、アセチルコリンの分解を抑制し、間接的にアセチルコリンの作用を増強するとともに、自らもアセチルコリン様の作用を有するコリン作動薬(副交感神経興奮剤)である。
外箱開封後は遮光して保存すること(光によって徐々に変化することがある)。