17.1.1 国内第II相試験
試験開始前のCD4リンパ球数が100〜400/mm
3の12歳以上のHIV感染症患者42例を対象とした多施設共同オープン試験(ラミブジン150mg1日2回投与とジドブジン100mg1日4回投与)で、有効性評価対象症例37例での臨床評価の概要は次のとおりである。
CD4リンパ球数は、試験開始時の平均220.8/mm3から4週後には約25/mm3増加し、8週後から24週後までの増加量は4.6〜34.0/mm3で推移した。CD4リンパ球数の推移を図-1に示した。
CD4パーセントは、開始時の18.81%から4週後には20.03%へ有意に増加し、8週後から24週後まではほとんど変動なく約20%で推移した。血漿中HIV RNA量は、試験開始時の平均3.8log10 copies/mLから4週後には1.6log10 copies/mL有意に減少し、8週後から24週後までは0.7〜1.2log10 copies/mL減少した。血漿中HIV RNA量の推移を図-2に示した。
図-1 CD4リンパ球数の推移(平均値±標準偏差)
図-2 血漿中HIV RNA量の推移(平均値±標準偏差)
42例中30例(71.4%)に副作用が認められ、主な副作用は赤血球減少等の貧血(22件)、空腹時血糖値上昇(6件)、嘔気(4件)、食欲不振(3件)であった
5)。
17.1.2 海外第III相試験(ジドブジンによる治療経験が4週間以内の患者群)
(1)試験A3001
CD4リンパ球数が200〜500/mm
3の12歳以上のHIV感染症患者366例を対象とした二重盲検比較試験(ラミブジン150mg1日2回投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群92例、ラミブジン300mg1日2回
注)投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群94例、ラミブジン300mg1日2回
注)投与群87例、ジドブジン200mg1日3回投与群93例)において薬剤を52週間投与した。ラミブジンとジドブジンの併用投与群ではCD4リンパ球数が、試験開始から24週以降もジドブジン単独投与群に比べ有意に増加していたが、ラミブジンの投与量による効果の差はなかった。24週間の治療中のCD4リンパ球数の推移を図-3に示した。また、血漿中HIV RNA量の減少についても同様であった。ラミブジンとジドブジンの併用療法はジドブジン単独療法よりもCD4リンパ球数及び血漿中HIV RNA量を有意に改善した。試験開始時からラミブジン投与24週間後の血漿中HIV RNA量の推移を図-4に示した。ラミブジンとジドブジンとの併用療法中の血漿ウイルスRNA測定値における変化に関する臨床上の意義は確立されていない。副作用発現頻度は、ラミブジン150mg1日2回投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で70%(64例/92例)、ラミブジン300mg1日2回
注)投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で67%(63例/94例)及びラミブジン300mg1日2回
注)投与群で55%(48例/87例)であった。主な副作用は、ラミブジン150mg1日2回投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で嘔気45%(41例/92例)、頭痛30%(28例/92例)及び倦怠感・疲労25%(23例/92例)、ラミブジン300mg1日2回
注)投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で嘔気39%(37例/94例)、頭痛27%(25例/94例)及び倦怠感・疲労21%(20例/94例)、ラミブジン300mg1日2回
注)投与群で頭痛20%(17例/87例)、嘔気14%(12例/87例)及びニューロパシー14%(12例/87例)であった
14)。
(2)試験B3001
CD4リンパ球数が100〜400/mm
3の18歳以上のHIV感染症患者129例を対象とした二重盲検比較試験(ラミブジン300mg1日2回
注)投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群65例、ジドブジン200mg1日3回投与群64例)において薬剤を48週間投与した。ジドブジン単独投与群では、試験開始から24週後にはCD4リンパ球数がほぼ投与前値に戻ったが、ラミブジンとジドブジンの併用投与群では、試験開始から48週後まで増加していた。24週間の治療中のCD4リンパ球数の推移を図-5に示した。また、血漿中HIV RNA量の減少についても同様であった。ラミブジンとジドブジンの併用療法はジドブジン単独療法よりもCD4リンパ球数及び血漿中HIV RNA量を有意に改善した。副作用発現頻度は、ラミブジンとジドブジンの併用群で62%(40例/65例)であった。主な副作用は、嘔気29%(19例/65例)、倦怠感・疲労15%(10例/65例)及び頭痛11%(7例/65例)であった
15)。
図-3 試験A3001におけるCD4リンパ球数の推移(平均値)
図-4 試験A3001における血漿中HIV RNA量の推移(平均値)
図-5 試験B3001におけるCD4リンパ球数の推移(平均値)
17.1.3 海外第III相試験(24週間以上のジドブジン療法を受けたことのある患者群)
(1)試験A3002
CD4リンパ球数が100〜300/mm
3の18歳以上のHIV感染症患者254例を対象とした二重盲検比較試験(ラミブジン150mg1日2回投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群84例、ラミブジン300mg1日2回
注)投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群84例、ジドブジン200mg1日3回投与とザルシタビン0.75mg1日3回投与の併用群86例)において薬剤を52週間投与した。ラミブジンとジドブジンの併用投与群では、CD4リンパ球数が試験開始から24週以降もジドブジンとザルシタビンの併用投与群に比べ有意に増加していたが、ラミブジンの投与量による効果の差はなかった。24週間の治療中のCD4リンパ球数の推移を図-6に示した。ラミブジンとジドブジンの併用投与群では、血漿中HIV RNA量が試験開始から24週目までジドブジンとザルシタビンの併用投与群よりも減少していたが、その後は3群間に差は認められなかった。ラミブジンとジドブジンの併用療法はジドブジンとザルシタビンの併用療法よりもCD4リンパ球数及び血漿中HIV RNA量を有意に改善した。試験開始時からラミブジン投与24週間後の血漿中HIV RNA量の推移を図-7に示した。ラミブジンとジドブジンとの併用療法中の血漿ウイルスRNA測定値における変化に関する臨床上の意義は確立されていない。副作用発現頻度は、ラミブジン150mg1日2回投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で65%(55例/84例)及びラミブジン300mg1日2回
注)投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で60%(50例/84例)あった。主な副作用は、ラミブジン150mg1日2回投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で倦怠感・疲労19%(16例/84例)、嘔気17%(14例/84例)、ニューロパシー17%(14例/84例)及び頭痛15%(13例/84例)、ラミブジン300mg1日2回
注)投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で嘔気17%(14例/84例)、ニューロパシー17%(14例/84例)、頭痛15%(13例/84例)及び倦怠感・疲労14%(12例/84例)であった
16)。
(2)試験B3002
CD4リンパ球数が100〜400/mm3の18歳以上のHIV感染症患者223例を対象とした二重盲検比較試験(ラミブジン150mg1日2回投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群75例、ラミブジン300mg1日2回注)投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群75例、ジドブジン200mg1日3回投与群73例)において薬剤を24週間投与した。ラミブジンとジドブジンの併用投与群では、CD4リンパ球数がジドブジン単独投与群に比べ有意に増加していたが、ラミブジンの投与量による効果の差はなかった。24週間の治療中のCD4リンパ球数の推移を図-8に示した。血漿中HIV RNA量の減少についても同様であった。ラミブジンとジドブジンの併用療法はジドブジン単独療法よりもCD4リンパ球数及び血漿中HIV RNA量を有意に改善した。副作用発現頻度は、ラミブジン150mg1日2回投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で40%(30例/75例)及びラミブジン300mg1日2回注)投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で45%(34例/75例)であった。主な副作用は、ラミブジン150mg1日2回投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で頭痛13%(10例/75例)、嘔気9%(7例/75例)及び下痢8%(6例/75例)、ラミブジン300mg1日2回注)投与とジドブジン200mg1日3回投与の併用群で嘔気11%(8例/75例)、嘔気・嘔吐8%(6例/75例)及び倦怠感・疲労8%(6例/75例)であった。
図-6 試験A3002におけるCD4リンパ球数の推移(平均値)
図-7 試験A3002における血漿中HIV RNA量の推移(平均値)
図-8 試験B3002におけるCD4リンパ球数の推移(平均値)
17.1.4 海外第II/III相試験(投与回数の比較試験:EPV20001)
血漿中HIV RNA量が400copies/mL以上の抗HIV薬による治療経験がない18歳以上のHIV感染症患者554例を対象とした二重盲検比較試験(ジドブジン300mg1日2回とエファビレンツ600mg1日1回の併用による、ラミブジン300mg1日1回投与群278例又はラミブジン150mg1日2回投与群276例)において、48週間の治療中に血漿中HIV RNA量が検出限界(400copies/mL)未満であった患者の比率の推移を図-9に示した。投与48週後にHIV RNA量が400copies/mL未満であった患者の比率は、ラミブジン300mg1日1回投与群が67%、ラミブジン150mg1日2回投与群が65%であった。さらに、HIV RNA量が50copies/mL未満であった患者の比率では、それぞれ61%、63%であった。また、投与48週後のCD4リンパ球数の増加量(中央値)は、それぞれ144/mm
3、146/mm
3であった。
図-9 血漿中HIV RNA量が400copies/mL未満の患者の比率
なお、本試験における試験成績の要約を表-2に示した。
表-2 試験成績の要約
結果 | ラミブジン300mg1日1回+ジドブジン+エファビレンツ (n=278) | ラミブジン150mg1日2回+ジドブジン+エファビレンツ (n=276) |
レスポンダー注1) | 67% | 65% |
ウイルス学的な治療失敗注2) | 8% | 8% |
症状の進行による中止 | <1% | 0% |
有害事象による中止 | 6% | 12% |
その他の理由による中止注3) | 18% | 14% |
17.1.5 海外第IV相試験(試験EPV40001)
治療経験がないアジア(タイ)人のHIV感染症患者159例を対象とした非盲検、無作為割付試験(ジドブジン300mg1日2回投与とアバカビル300mg1日2回投与の併用による、ラミブジン300mg1日1回投与群54例、又はラミブジン150mg1日2回投与群52例)において、投与48週後の血漿中HIV RNA量が400copies/mL未満であった患者の比率は、ラミブジン300mg1日1回投与群が61%、ラミブジン150mg1日2回投与群が75%であった。さらに、血漿中HIV RNA量が50copies/mL未満であった患者の比率では、それぞれ54%、67%であった。また、投与48週後のCD4リンパ球数の増加量(中央値)は、ラミブジン300mg1日1回投与群が166/mm3、ラミブジン150mg1日2回投与群が216/mm3であった。
(本試験では他にジドブジン300mg1日2回投与とアバカビル600mg1日1回投与の併用によるラミブジン150mg1日2回投与群として53例が組み入れられた。)
17.1.6 海外臨床試験(小児)
ラミブジン単独投与中の小児患者97例のうち14例(14%)に膵炎、13例(13%)に知覚異常及び神経障害が報告され、3例は投与を中止した。
小児患者(年齢3ヵ月〜18歳)を対象としたラミブジン+ジダノシン併用投与群、ラミブジン+ジドブジン併用投与群及びラミブジン+ジドブジン+ジダノシン併用投与群の3群でのオープン試験による比較試験において、47例のうち7例(15%)に膵炎が発症した。なお各薬剤の投与量は、ラミブジンは4mg/kgを12時間毎に1日2回、ジドブジンは180又は90mg/m
2を6時間毎に1日4回、ジダノシンは135mg/m
2を12時間毎に1日2回である。ただしラミブジンの全身クリアランスと年齢の関係から、米国における3ヵ月から12歳までの小児に対する用法・用量はラミブジン1回4mg/kg1日2回(最高150mg1日2回)投与とされている。
小児における非比較対照第I/II相臨床試験の臨床検査値異常の抜粋を表-3に示した。
表-3 小児患者を対象とした非比較対照第I/II相臨床試験における臨床検査値異常の発現頻度
検査(異常値) | 試験開始時に正常であった患者%(n) | 試験開始時に異常であった患者%(n) |
好中球減少症(好中球数<750/mm3) | 22%(55) | 45%(33) |
貧血(ヘモグロビン<8.0g/dL) | 2%(50) | 24%(46) |
血小板減少症(血小板数<40,000/mm3) | 0%(68) | 25%(12) |
AST(>正常値の上限の5倍) | 4%(51) | 29%(42) |
ALT(>正常値の上限の5倍) | 0%(29) | 19%(57) |
アミラーゼ(>正常値の上限の2倍) | 3%(69) | 23%(13) |
注)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人には他の抗HIV薬と併用して、ラミブジンとして1日量300mgを1日1回又は2回(150mg×2)に分けて経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。」である。