1.1 本剤による光線力学的療法は、規定の講習を受け、光線力学的療法の安全性・有効性を十分に理解し、本剤の調製・投与及びレーザー照射に関する十分な知識・経験のある眼科専門医のみが実施すること。
1.2 本剤投与後48時間は皮膚又は眼を直射日光や強い室内光に暴露させないよう注意すること。本剤投与後48時間以内は光線に対して過敏になるため。[
8.3.1参照]
1.3 本剤投与後48時間以内に緊急手術を要する場合は、できる限り内部組織を強い光から保護すること。本剤投与後48時間以内は光線に対して過敏になるため。
1.4 光照射により本剤を活性化させた場合に、視力低下等の高度の視覚障害が誘発されるおそれがあり、回復しなかった症例も認められていることから、本剤による光線力学的療法のリスクについても十分に患者に説明した上で、本治療を施行すること。[
11.1.1参照]
1.5 本剤は特定の適切な眼科用光線力学的療法用レーザーにより光照射した場合にのみ、適正かつ安全に使用できることが確認されているので、本剤の光活性化の基準に適合しないレーザーは使用しないこと。光熱凝固のために使用されているレーザーを本剤の活性化に用いることはできない。基準に適合しないレーザーを用いた場合には、本剤の部分的光活性化による不十分な治療、あるいは逆に、過度の活性化により網膜等周辺正常組織の損傷を引き起こすおそれがある。
2.1 ポルフィリン症の患者[症状を増悪させるおそれがある。]
2.2 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.3 眼底の観察が困難な患者[混濁の程度の強い白内障又は角膜混濁のある患者等では、眼底の観察が困難であり、また、対象となる病変部に適切な光照射エネルギー量が到達するかどうか不明であるため、本剤による適切な治療を施行することができない。]
Occult CNV(脈絡膜新生血管)又はminimally classic CNVを有する患者では、本剤の有効性(視力低下抑制)はプラセボと統計学的有意差がみられなかったとの成績があるので、これらの患者に本剤を適用することについてはリスクとベネフィットを勘案した上で判断すること。[
17.3参照]
ベルテポルフィンとして6mg/m2(体表面積)を10分間かけて静脈内投与し、本剤投与開始から15分後にレーザー光[波長689±3nm、光照射エネルギー量50J/cm2(照射出力600mW/cm2で83秒間)]を治療スポットに照射する。
なお、3ヵ月毎の検査時に蛍光眼底造影で脈絡膜新生血管からのフルオレセインの漏出が認められた場合は、再治療を実施する。
本剤による光線力学的療法(本PDT)は、本剤の静脈内投与(第1段階)及び眼科用光線力学的療法用レーザー(非発熱性ダイオードレーザー)からのレーザー光照射によるビスダインの活性化(第2段階)の2つのプロセスからなる。
7.1 再治療
3ヵ月以内の間隔で再治療を実施しても、視力低下の維持においてさらなる有効性は認められなかったとの成績があるので、再治療の実施時期については、各患者の症状や検査成績の推移について慎重に検討した上で判断すること。[
17.1.4参照]
7.4 病変サイズの測定
7.4.1 蛍光眼底血管造影及びカラー眼底写真によって病変の最大直径(GLD:greatest linear dimension)を測定する。
7.4.2 この測定には全てのclassic CNV及びoccult CNV、血液又は蛍光のブロック(blocked fluorescence)及び網膜色素上皮の漿液性剥離を含めること。また、眼底カメラは倍率2.4〜2.6の範囲内のものが望ましい。
7.4.3 蛍光眼底血管造影での病変のGLDについては、眼底カメラの倍率に関する補正を加えて、網膜病変のGLDを算定する。
7.5 スポットサイズの決定
7.5.1 治療スポットサイズは、網膜病変部に500μmの縁取りを行い、病変部を完全にカバーできるようにするために、GLDに1,000μmを加える。
7.5.2 ただし、治療スポットの鼻側縁端は、視神経乳頭の側頭側縁端から200μm以上離れた位置とする。視神経への障害を避けるため、視神経から200μm以内のレーザー照射を避けなければならない。病変部が視神経に極めて近い位置に存在する患者においては、病変部を完全にカバーできないため、視神経から200μm以内のCNVでの光活性化が起こらず、本剤の有効性は低下するおそれがある。
7.6 レーザー光照射
7.6.1 視力矯正用コンタクトレンズを使用している患者の場合、本PDTの前にコンタクトレンズをはずしてから治療を開始すること。
7.6.2 ベルテポルフィンの光による活性化は照射する総エネルギー量でコントロールする。
7.6.3 CNVの治療における照射エネルギー量はCNV病変1cm2あたり50Jである(照射出力600mW/cm2で83秒間照射することになる)。
7.6.4 事前に決定した治療スポットに適切にレーザー光を照射するためには、照射エネルギー量、照射出力、眼科用レンズの倍率、ズームレンズの設定が重要なパラメータとなる。レーザー照射手順の設定と操作については使用するレーザーシステムマニュアルに従い、用法及び用量に定めた照射条件を厳密に遵守すること。
7.6.5 689±3nmの波長を安定に出力できるレーザーを使用する。
7.6.6 レーザー光は適切な眼科用拡大レンズを使用し、光ファイバー及びスリットランプを介して単円スポットとして網膜に照射する。
7.6.7 必要な場合には、眼球運動防止のための球後麻酔を併用することができる。
7.7 両眼治療(臨床試験では両眼治療は行われていない。)
初回治療における両眼同時治療は避けること。なお、両眼に治療対象となる病変がある場合は、両眼同時治療の有益性と危険性を慎重に評価する必要がある。
7.7.1 過去に本PDTを施行した経験がなく、両眼に治療対象となる病変がある患者については、まず片眼(病変が進行している眼)にのみ本PDTを施行し、1週間以上観察した上で、特に安全性上問題がないと判断できる場合に限って、もう一方の眼への本PDTの施行を考慮すること。
7.7.2 過去に片眼に対して本PDTを施行し、特に安全性上問題がなかった場合において、両眼に治療対象となる病変がある患者については、最初に進行がより高度である眼の病変を対象として、用法及び用量に従い本PDTを施行すること。その後直ちにもう一方の眼の治療のためにレーザーを再設定し、本剤投与開始から20分以内(投与終了10分以内)に光照射を実施すること。
8.1 背部痛、胸痛等の筋骨格痛を引き起こすことがあるので、これらのリスクについても予め患者に対して十分な説明を行うとともに、本剤投与中は慎重に観察し、これらの症状が強くあらわれた場合には、直ちに投与を中止し適切な処置を行うこと。特に高血圧、アレルギーの既往がある場合には、重篤化するおそれがあるので注意すること。
8.2 本剤投与後、視覚異常、視力低下又は視野欠損等の視覚障害が発現することがあるので、このような症状が続いている間は高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう患者を十分指導すること。
8.3 患者指導
本PDTの実施にあたっては、患者に対して、以下の内容を十分指導すること。
8.3.1 本剤の投与を受けた患者は投与後48時間は光線過敏状態にあるため、投与後2日間は皮膚、眼等を直射日光、強い室内光(日焼けサロン、強いハロゲンランプ、手術室・歯科治療室で用いられる強力な医療用照明等)にさらさないよう注意する必要がある。[
1.2、
14.1.1参照]
8.3.2 本剤投与後2日以内の昼間に外出しなければならない場合は、皮膚や眼を強い光から保護しなければならず、保護用の衣服や濃いサングラスを着用する必要がある。
また、皮膚に残存しているベルテポルフィンは可視光線によって活性化されるので、紫外線用日焼け止め剤は光線過敏性反応から皮膚を保護するためには無効である。
8.3.3 本剤投与3〜5日目も直射日光や強い光への暴露は避けることが望ましい。
8.3.4 室内光を浴びることにより“photo bleaching”といわれるプロセスを介して皮膚に残存しているベルテポルフィンの不活化が促進されるので、本PDT施行後は暗所にとどまらず積極的に室内光を浴びることが望ましい(但し、強いハロゲンランプ、窓からの直射日光あるいはこれらに相当する光線への暴露は避ける必要がある)。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 胆管閉塞のある患者
9.1.2 麻酔下にある患者
アトロピン及びケタミンで鎮静化したブタ又は麻酔ブタに臨床推奨用量の10倍以上の高用量(2mg/kg)を急速静脈内投与した試験で、補体活性化の結果と考えられる死亡を含む重篤な循環不全が認められている。これらの作用は抗ヒスタミン剤の前投与により減弱又は消失している。また、これらの作用は無麻酔ブタではみられず、無麻酔下、全身麻酔下を問わずイヌでは認められていない。
ヒトの血液を用いたin vitro試験において、10μg/mLの濃度(本剤投与患者の予想最高血中濃度の5倍を超える濃度)で軽度〜中等度の補体活性化が認められ、100μg/mL以上の濃度で有意な補体活性化が認められている。臨床試験では臨床的に意味のある補体活性化は報告されていないが、補体活性化によるアナフィラキシー発現の危険性を排除できない。
9.1.3 網膜血管増殖腫(Retinal Angiomatous Proliferation)の患者
当該患者に対する臨床成績はなく、有効性及び安全性は確立していない。
9.1.4 糖尿病性網膜症をはじめとする網膜症を合併している患者
当該患者に対する臨床成績はなく、有効性及び安全性は確立していない。
9.3 肝機能障害患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
また、動物実験(ラット)でベルテポルフィン10mg/kg/日以上(雌ラットのAUC0-∞に基づけば、ヒトでの投与量6mg/m2の約40倍以上の相当量)を器官形成期の母体に静脈内投与した試験で、胎児に肋骨の湾曲、無眼球症/小眼球症の発生率増加が認められている。妊娠ウサギの器官形成期にベルテポルフィン10mg/kg/日を静脈内投与した試験で、母体の体重増加の抑制、摂餌量の減少が認められている。
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。母乳中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
65歳以上と65歳未満の患者における薬物動態パラメータを確認した結果、AUCの平均値は65歳以上群は65歳未満群より有意に高いことが知られている。[
16.6.2参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 眼障害
重篤な視力低下(3.1%)、視覚異常(変視症、霧視等)(4.7%)、視野欠損(頻度不明)、硝子体出血(頻度不明)、網膜下出血(1.6%)、網膜剥離(頻度不明)、網膜色素上皮剥離(頻度不明)、網膜色素上皮裂孔(頻度不明)、網膜浮腫(頻度不明)、黄斑浮腫(頻度不明)[
1.4参照]
11.1.2 アナフィラキシー、血管迷走神経反応(頻度不明)
失神、発汗、めまい、発疹、呼吸困難、潮紅、血圧の変化、心拍数の変化等の全身状態を伴うことがある。
11.1.3 痙攣(頻度不明)
11.1.4 脳梗塞(1.6%)、大動脈瘤(1.6%)、心筋梗塞(1.6%)
11.1.5 出血性胃潰瘍(頻度不明)
11.1.6 全身性の疼痛(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%〜10%未満 | 1%〜5%未満 | 頻度不明 |
治療眼 | 視力低下 | 眼の異常感(眼違和感、眼瞼腫脹感)、彩視症、眼重感、中心性漿液性網脈絡膜症 | 視野障害(暗点、黒点等)、網膜又は脈絡膜血液非灌流、加齢黄斑変性の進行、結膜炎、眼痛、流涙障害、羞明、網膜虚血、白内障、眼の乾燥 |
注射部 | − | − | 疼痛、浮腫、炎症、血管外漏出、出血、変色、過敏性反応、水疱 |
消化器 | − | 悪心、膵炎 | 便秘、下痢、嘔吐、腹痛 |
内分泌・代謝系 | − | 血中コレステロール増加、血中カリウム増加 | 糖尿病、ケトーシス |
血液 | − | 好酸球増加症、異型リンパ球 | 貧血 |
肝臓 | − | AST、ALT上昇 | − |
過敏症 | − | 発疹、そう痒 | 光線過敏性反応、蕁麻疹 |
精神神経系 | − | 頭痛、めまい、痴呆、うつ病、パーキンソニズム、感覚減退 | 感覚鈍麻、感覚異常 |
循環器 | − | 動悸、不整脈 | 高血圧 |
泌尿器 | − | 糸球体腎炎、尿蛋白、血中クレアチニン増加、尿潜血陽性 | − |
その他 | − | 注入に関連した背部痛(骨盤、肩帯又は胸郭への放散痛)、無気力、頚部違和感、筋硬直 | 発熱、胸痛、無力症、悪寒、インフルエンザ症候群、咳嗽増加、疼痛、非治療眼の視力低下 |
本剤の過量投与又はレーザー光の過量照射により正常な網膜血管の非灌流を招くことがあり、そのため高度の視力低下(永続的な視力低下を含む)を起こす可能性がある。
また、本剤の過量投与により患者の強い光に対する光線過敏状態の期間が延長する。このような場合は、過量投与の量に応じて、光線過敏性反応に対する予防措置を講ずる期間を延長する必要がある。
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 光線過敏性反応を誘発する可能性があるので、注射液調製時又は投与時に薬液が眼や皮膚に触れないよう十分注意すること。万一、触れた場合は強い光から保護すること。[
8.3.1参照]
14.1.2 本剤1バイアルに日局注射用水7mLを加えて溶解し、ベルテポルフィン2mg/mLを含有する7.5mLの溶液を調製する。バイアルから6mg/m
2(体表面積)相当量のビスダイン溶液を吸引し、総量として30mLになるよう日局ブドウ糖注射液(5%)で希釈し、投与用注射液とする。[
7.2参照]
14.1.3 本剤は生理食塩液中で沈殿するため、日局注射用水以外の溶解液(生理食塩液等)は使用しないこと。また、他剤との混注は行わないこと。[
7.2参照]
14.1.4 溶解、希釈後は使用するまで遮光し、4時間以内に使用すること。[
7.2参照]
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 薬液がこぼれた場合は雑巾等で拭き取ること。その際、薬液が皮膚や眼に触れないようにするため、ゴム手袋や防護用のメガネを使用することが望ましい。
14.2.2 投与速度:14.1.2の項に従って調製した投与用注射液の総量30mLを、適切なシリンジポンプとインフュージョン・ラインフィルターを用い、10分間(3mL/分)かけて静脈内に投与する。
14.2.3 本剤の静脈内投与を開始する前に静注ラインを確認し、投与後注意深くモニターする。[
7.3参照]
14.2.4 高齢者は静脈壁がぜい弱である可能性が高いので、できるだけ大きな腕の静脈、できれば前肘静脈を用いることが望ましい。[
7.3参照]
14.2.5 手背の細い静脈からの投与は避ける。[
7.3参照]
14.2.6 本剤の血管外漏出がみられた場合には、直ちに投与を中止し、冷湿布を行うとともに、重度の局所的光過敏反応(日焼け等)が発現するおそれがあるので、腫脹や変色が消退するまで漏出部位を直射日光から完全に保護すること。[
7.2参照]
本剤による光線力学的療法についての講習を受け、本剤使用にかかわる安全性及び有効性について十分に理解し、本剤の調製、投与、レーザーによる光照射に関する十分な知識・経験のある医師のみによって使用されるよう、必要な措置を講じること。