医療用医薬品 : グリセオール

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医薬品情報


総称名 グリセオール
薬効分類名 頭蓋内圧亢進・頭蓋内浮腫治療剤
眼圧降下剤
薬効分類番号 1319 3999
KEGG DRUG
D04285 濃グリセリン・果糖
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2023年6月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
グリセオール注 GLYCEOL for I.V.Infusion 太陽ファルマ 2190501A4084 302円/袋 処方箋医薬品注1)
グリセオール注 GLYCEOL for I.V.Infusion 太陽ファルマ 2190501A6087 373円/袋 処方箋医薬品注1)
グリセオール注 GLYCEOL for I.V.Infusion 太陽ファルマ 2190501A5064 706円/袋 処方箋医薬品注1)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 先天性のグリセリン、果糖代謝異常症の患者1)2)[重篤な低血糖症が発現することがある。][8.1参照]
2.2 成人発症II型シトルリン血症の患者[8.2参照]

4. 効能または効果

○頭蓋内圧亢進、頭蓋内浮腫の治療
○頭蓋内圧亢進、頭蓋内浮腫の改善による下記疾患に伴う意識障害、神経障害、自覚症状の改善
脳梗塞(脳血栓、脳塞栓)、脳内出血、くも膜下出血、頭部外傷、脳腫瘍、脳髄膜炎
○脳外科手術後の後療法
○脳外科手術時の脳容積縮小
○眼内圧下降を必要とする場合
○眼科手術時の眼容積縮小

6. 用法及び用量

通常、成人1回200〜500mLを1日1〜2回、500mLあたり2〜3時間かけて点滴静注する。
投与期間は通常1〜2週とする。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
脳外科手術時の脳容積縮小の目的には、1回500mLを30分かけて点滴静注する。
眼内圧下降及び眼科手術時の眼容積縮小の目的には、1回300〜500mLを45〜90分かけて点滴静注する。

8. 重要な基本的注意

8.1 新生児等の脳浮腫、原因不明の意識障害に対し、本剤を投与する際には、血糖値、血中乳酸値を測定し、糖新生系の異常、特にフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(FBPase)欠損症の可能性が疑われる場合には投与しないこと。さらに、本剤投与中、投与後においては、血糖低下傾向がないこと、及び意識障害に代表される神経症状、脳浮腫の悪化が生じないことを確認し、悪化がみられた場合は、このような患者への本剤の投与は中止すること。FBPase欠損症の新生児、乳児、幼児に対して、脳浮腫あるいは代謝不全から誘発される脳浮腫予防のために本剤を投与して神経障害(痙攣、頻呼吸、嗜眠等)があらわれ、死亡したとの報告がある3)。[2.1参照]
8.2 成人発症II型シトルリン血症(血中シトルリンが増加する疾病で、繰り返す高アンモニア血症による異常行動、意識障害等を特徴とする)が疑われた場合には、本剤を投与しないこと。成人発症II型シトルリン血症の患者に対して、脳浮腫治療のために本剤を投与して病態が悪化し、死亡したとの報告がある。[2.2参照]
8.3 急性の硬膜下・硬膜外血腫が疑われる患者には、出血源を処理し、再出血のおそれのないことを確認してから本剤を投与すること。血腫の存在を確認することなく本剤を投与すると、頭蓋内圧の下降により一時止血していたものが再び出血することがある。
8.4 本剤には塩化ナトリウムが含まれているので、食塩摂取制限の必要な患者に投与する場合には注意すること。[3.1参照]
8.5 乳酸アシドーシスがあらわれることがあるので注意すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 心臓、循環器系機能障害のある患者
循環血液量を増すことから心臓に負担をかけ、症状が悪化するおそれがある。
9.1.2 尿崩症の患者
本症には適切な水分、電解質管理が必要であり、本剤の投与により電解質等に影響を与え、症状が悪化するおそれがある。[3.1参照]
9.1.3 糖尿病の患者
非ケトン性高浸透圧性昏睡があらわれることがある。
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 腎障害のある患者
水分、塩化ナトリウムの過剰投与に陥りやすく、症状が悪化するおそれがある。[3.1参照]
9.8 高齢者
本剤投与に際しては水・電解質異常に留意し、慎重に投与すること。一般に高齢者では生理機能が低下していることが多い。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 アシドーシス(頻度不明)
乳酸アシドーシスがあらわれることがあるので、症状があらわれた場合には炭酸水素ナトリウム注射液等を投与するなど適切な処置を行うこと。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜5%未満頻度不明
泌尿器尿潜血反応陽性血色素尿、血尿、尿意
消化器悪心嘔吐
代謝異常 低カリウム血症、高ナトリウム血症、非ケトン性高浸透圧性高血糖
その他倦怠感頭痛、口渇、腕痛、血圧上昇

14. 適用上の注意

14.1 全般的な注意
14.1.1 眼科手術中に尿意を催すことがあるので、術前に排尿しておくことが望ましい。
14.1.2 投与に際しては、感染に対する配慮をすること(患者の皮膚や器具消毒)。
14.1.3 寒冷期には体温程度に温めて使用すること。
14.1.4 注射針はゴム栓の○印にまっすぐ刺すこと。斜めに刺すと注射針が容器頸部を貫通し、液漏れの原因となることがある。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 連結管(U字管)を用いたタンデム方式による投与はできないので、2バッグを同時又は連続して投与する場合は、Y型タイプの輸液セットを使用すること。
14.2.2 容器の液目盛りはおよその目安として使用すること。
14.2.3 開封後直ちに使用し、残液は決して使用しないこと。

16. 薬物動態

16.3 分布
ラットの静脈内14C-glycerin投与による全身autoradiographyでは、放射能はほぼ全身にわたり分布し、血中・肝における速やかな消失とは異なり脳への移行及び消失は遅れを示した4)
16.5 排泄
ラット、ウサギの静脈内14C-glycerin投与試験の結果、投与した放射能の65%が14CO2として48時間までに呼気中に排泄された。このときの尿中排泄量はラットで13%、ウサギで9%、糞中排泄量は両者ともごくわずかで、またラットでの胆汁中への排泄量は1%以下であった4)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 頭蓋内圧亢進、脳浮腫の状態が持続している患者(61症例)を対象とした二重盲検比較試験
本剤500mLを2時間かけて静脈内投与した結果、速やかな頭蓋内圧下降、脳浮腫軽減、脳血流改善等の効果をもたらし、自・他覚所見の改善も認められ有用性が明らかにされた。総合全般改善度(第三者判定)〔改善以上〕は41.4%(12/29)であった。副作用は認められなかった5)
17.1.2 脳浮腫及び頭蓋内圧亢進を伴う各種中枢神経疾患患者(17施設253例)を対象とした一般臨床試験
本剤を1日500mLから1000mL静脈内投与した結果、脳脊髄液圧は有意に下降し、頭蓋内圧亢進症状と考えられる自・他覚症状は61.7%に改善がみられた。副作用は、静脈炎(1例)と尿潜血反応(2例)であった6)
17.1.3 緑内障患者及び白内障又は緑内障術前処置の患者(57症例)を対象とした二重盲検比較試験
本剤500mLを60〜90分の投与速度で静脈内投与した結果、有用性が認められた。有用率〔有用以上〕は87.7%(50/57)であった。副作用として、尿意(10例)、口渇(9例)が認められた7)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
<頭蓋内圧下降(頭蓋内圧亢進、脳浮腫等)>
グリセリンの高浸透圧性脱水作用に基づき脳水分量を減少させ、頭蓋内圧下降作用を示す5)とともに脳浮腫の消失8)、脳局所血流量の増加、さらには脳組織の代謝9)を亢進させる。
<眼内圧下降(緑内障、白内障等)>
頭蓋内圧下降の場合と同様に浸透圧差による脱水作用が考えられるが、その他、前房水及び硝子体液の産生に対し抑制的に働くこと、また一部には房水の隅角又は虹彩面からの排出促進をになっていること等が考えられている10)
18.2 薬理作用
<ヒトにおける作用>
18.2.1 頭蓋内圧又は眼内圧下降を必要とする患者に本剤を静脈内投与した結果、本剤は速やかで強い頭蓋内圧下降作用、眼内圧下降作用を示した5)7)11)12)
頭蓋内圧推移
18.2.2 脳卒中の患者に本剤又は、glycerinを投与し、局所脳循環を測定したところ、虚血状態から正常状態への血流増加作用がみられ、充血部位から虚血部位への血流再分配作用も認められた13)14)15)
18.2.3 脳卒中の患者にglycerinを投与したところ、脳浮腫形成における悪循環因子すなわち脳細胞内のエネルギー産生障害因子とされる遊離脂肪酸の減少をもたらすなど脳代謝に関与することが認められた14)16)17)
<動物における作用>
18.2.4 ネコ及びウサギにglycerinを静脈内投与したところ、いずれも脳脊髄液圧下降作用が認められた18)
18.2.5 ウサギに本剤を静脈内投与したところ、前房内圧及び硝子体内圧の下降作用が認められた19)
18.2.6 イヌの硬膜外baloon法及びcold-injury法により作成した脳障害モデルに本剤を静脈内投与したところ、増加している脳水分量の減少をはじめ、脳血流量増加、脳酸素消費量増加、脳組織代謝改善等の作用が認められた20)
18.2.7 ネコの実験的脳虚血モデルに本剤を静脈内投与し、生理学的・組織学的に検討した結果、脳虚血性障害に対し保護的に作用することが認められた21)22)

20. 取扱い上の注意

包装内に水滴が認められるものや内容液が着色又は混濁しているものは使用しないこと。

22. 包装

<200mL>
10袋[10袋×1]
20袋[5袋×4]
<300mL>
10袋[10袋×1]
<500mL>
10袋[10袋×1]

23. 主要文献

  1. 別冊 日本臨牀,領域別症候群シリーズNo.18 先天代謝異常症候群, 376-379, (1988)
  2. 別冊 日本臨牀,領域別症候群シリーズNo.18 先天代謝異常症候群, 85-87, (1988)
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  7. 高瀬正彌,他, 眼科臨床医報, 75 (4), 476-486, (1981)
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  21. 畑下鎮男, Neurol.Med.Chir., 22, 963-971, (1982) »PubMed
  22. 畑下鎮男, Neurol.Med.Chir., 22, 972-981, (1982) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
太陽ファルマ株式会社 お客様相談室
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-5
電話:0120-533-030
URL:https://www.taiyo-pharma.co.jp
製品情報問い合わせ先
太陽ファルマ株式会社 お客様相談室
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-5
電話:0120-533-030
URL:https://www.taiyo-pharma.co.jp

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
太陽ファルマ株式会社
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-5

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/05/21 版