1.1 本剤による治療は危険性を伴うため、投与期間中は入院又はそれに準ずる管理のもとで適切な処置を行うこと。また、緊急時に十分対応できる医療施設において、白血病[特に急性前骨髄球性白血病(APL)]のがん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施すること。治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与すること。
1.2 本剤は分化症候群が発現し、致死的な転帰をたどることがあるので、十分な経過観察を行うこと。このような症状があらわれた場合には休薬し、副腎皮質ホルモン剤のパルス療法等の適切な措置を行うこと。[
11.1.1参照]
1.3 本剤には催奇形性があるので、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、妊娠する可能性のある女性には投与しないことを原則とするが、やむを得ず投与する場合には使用上の注意を厳守すること。[
2.1、
8.1、
9.4.1、
9.5参照]
2.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[
1.3、
9.5参照]
2.2 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.3 ビタミンA製剤を投与中の患者[
10.1参照]
2.4 ビタミンA過剰症の患者[ビタミンA過剰症が増悪するおそれがある。]
5.1 染色体検査[t(15;17)転座]又は遺伝子検査(PML-RARA遺伝子)によりAPLと診断された患者に投与すること。
5.2 初発例のAPL患者での本剤の有効性・安全性は確立していない。[
17.1.1参照]
5.3 本剤により完全寛解を得た後に再発したAPLに対して、本剤の有効性・安全性は確立していない。
寛解導入療法:1日6mg/m2を2回にわけて朝、夕食後経口投与し、骨髄寛解が得られるまで投与する。投与期間は本剤の投与開始日から8週間を越えないこと。
7.1 1日6mg/m2を超える用法・用量での有効性及び安全性は明らかではない。1日12mg/m2を超えて投与した経験はない。
7.2 本剤の寛解後療法の有効性及び安全性は確立していない。
8.1 本剤には催奇形性があり、副作用の発現頻度が高いので、使用上の注意を厳守し、患者又はそれに代わり得る適切な者に副作用についてよく説明した上で投与すること。[
1.3、
9.4.1参照]
8.2 末梢血中の「芽球及び前骨髄球」の和が1,000/mm3を超える場合には、化学療法により「芽球及び前骨髄球」の和を1,000/mm3以下にしてから本剤を投与すること。
8.3 APLに併発する播種性血管内凝固(DIC)では、致命的な出血傾向(脳出血、肺出血等)が報告されている。本剤投与中にこのような症状があらわれた場合には、出血傾向に対する適切な処置を行うこと。
8.4 脂質代謝異常が引き起こされることがあるので、定期的に血中の総コレステロール及びトリグリセリドの検査を行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。[
9.1.1参照]
8.5 肝機能異常が引き起こされることがあるので、定期的に肝機能検査を行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。[
9.3参照]
8.6 本剤投与中に関節痛・骨痛の症状があらわれることがあるので、観察を十分に行うこと。[
9.1.3参照]
8.7 間質性肺疾患があらわれることがあるので、胸部X線検査等を行うなど観察を十分に行うこと。[
11.1.4参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 脂質異常症の素因がある患者[
8.4参照]
9.1.2 無酸症等著しい低胃酸状態が持続している患者
本剤は中性付近において溶解度、溶出性等が増加する性質をもつため、本剤の吸収が増加し、作用が増強されるおそれがある。また、類薬(エトレチナート)で牛乳又は高脂肪食と服用すると吸収が増加することが報告されている。
9.1.3 25歳以下の患者
骨の成長が終了していない可能性があるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ観察及び定期的な検査を十分に行いながら慎重に投与すること。ラット、イヌを用いた動物実験で過骨症及び骨端の早期閉鎖を起こすことが報告されている
1)2)。[
8.6参照]
9.2 腎機能障害患者
類薬(トレチノイン)で重篤な腎障害を起こすおそれがあることが報告されている。
9.3 肝機能障害患者
類薬(エトレチナート)で肝障害が悪化するおそれがあることが報告されている。[
8.5参照]
9.4 生殖能を有する者
9.4.1 妊娠する可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。疾患の重症度及び治療の緊急性を考慮した上で、患者には胎児への毒性の可能性及び次の注意事項についてよく説明し理解させた後、投与すること。[
1.3、
8.1、
9.5参照]
(1)本剤には催奇形性があるので、妊娠する可能性のある女性で他に代わるべき治療法がない重症な患者にやむを得ず投与する場合には、投与開始前の少なくとも1カ月間、投与中及び投与中止後少なくとも2年間は必ず避妊させること。
(2)本剤の投与は次の正常な生理周期の2日又は3日目まで開始しないこと。
(3)本剤の投与開始前2週間以内の妊娠検査が陰性であるとの結果を確認すること。
(4)本剤の投与中は1カ月毎に追加の妊娠検査を実施することが望ましい。
9.4.2 男性に投与する場合には、投与中及び投与終了後6カ月間は避妊させること。ラット、イヌを用いた動物実験で、精子形成能に異常を起こすことが報告されている。
9.4.3 男性に投与する場合には、不妊など性腺に対する影響を考慮すること。ラット及びイヌにおいて、精巣毒性の所見が報告されており
2)3)4)5)、これらの所見は臨床投与条件下におけるAUCと同程度で認められている。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。ラットの0.3mg/kg/dayで、後期死亡胎児数の増加、胎児の外形及び内臓異常として口蓋裂、顔面裂、無眼球、小眼球、眼瞼開存、口角部の裂、外脳、髄膜瘤、耳介形態異常、骨格変異である頸肋、胸推体ダンベル状骨化が、ウサギの0.1mg/kg/dayで、流産頻発、死亡胎児数の増加、胎児の外表、内臓及び骨格異常などの催奇形性が報告されている
6)7)8)。[
1.3、
2.1、
9.4.1参照]
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)で、乳汁中への移行が認められている
9)。
9.7 小児等
9.7.1 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.7.2 類薬(トレチノイン)において、長期投与した場合に頭蓋内圧上昇症状が報告されている。
9.8 高齢者
用量に留意して定期的に血漿アルブミン検査を行い、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。血漿アルブミンが減少していることが多く、本剤は血漿蛋白との結合性が強いため、血漿アルブミンが減少していると遊離の薬物血漿中濃度が高くなるおそれがある。また、生理機能が低下していることが多く、副作用があらわれやすい。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 分化症候群(5%以上)
発熱、呼吸困難、胸水貯留、肺浸潤、間質性肺疾患、肺うっ血、心嚢液貯留、低酸素症、低血圧、肝不全、腎機能不全、多臓器不全等が発現し、重篤な転帰をたどることがあるので、このような症状が認められた場合には、本剤を中止し、副腎皮質ホルモン剤のパルス療法等の適切な処置を行うこと。[
1.2参照]
11.1.2 感染症(5%以上)
11.1.3 白血球増加症(5%以上)
末梢白血球数が30,000/mm3を超えた場合には、休薬等の適切な処置を行うこと。
11.1.4 間質性肺疾患(5%未満)
異常が認められた場合には、投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。[
8.7参照]
11.1.5 縦隔炎(5%未満)
11.1.6 横紋筋融解症(5%未満)
フィブラート系薬剤を服用している脂質代謝異常の患者に本剤を投与し、本剤との因果関係が否定できない横紋筋融解症が発現し、死亡した症例が報告されている。
11.1.7 血栓症(頻度不明)
脳梗塞、肺梗塞、その他の動脈又は静脈血栓症等があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 5%未満 | 頻度不明 |
精神神経系 | 頭痛 | 感覚減退、嗅覚錯誤 | |
呼吸器 | | 呼吸困難、喀血、しゃっくり、低酸素症 | |
胃腸障害 | | 口内乾燥、口内炎、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、消化不良、便秘、痔核 | |
皮膚 | 発疹、皮膚乾燥、湿疹、剥脱性皮膚炎 | 皮膚炎、そう痒症、水疱性皮膚炎、皮膚刺激 | 紅斑 |
筋・骨格 | 骨痛、関節痛 | 筋肉痛、背部痛 | |
全身状態 | 発熱 | 粘膜疹、胸痛、倦怠感、腫脹 | |
血液 | 白血球数増加、ヘモグロビン減少 | 血小板数減少、血小板数増加 | |
肝臓 | AST増加、ALT増加、LDH増加、ALP増加 | | γ-GT(GTP)増加 |
脂質代謝 | TG増加、TC増加 | | |
その他 | 毛包炎、CRP増加 | 咽頭炎、耳痛、血中尿素減少、血中ナトリウム減少、血中クロール減少、尿蛋白、血中アルブミン減少、アミラーゼ増加、総蛋白増加、尿潜血 | CPK増加 |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
アルミピロー包装開封後は、湿気を避けて遮光して保存すること。