医療用医薬品 : アラセナ

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医薬品情報


総称名 アラセナ
一般名 ビダラビン
欧文一般名 Vidarabine
製剤名 ビダラビン
薬効分類名 抗ウイルス剤
薬効分類番号 6250
ATCコード J05AB03
KEGG DRUG
D06298 ビダラビン
KEGG DGROUP
DG02840 抗ヘルペスウイルス薬
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
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添付文書情報2020年5月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
アラセナ−A点滴静注用300mg ARASENA-A for Intravenous Infusion 300mg 持田製薬 6250400D1044 5996円/瓶 処方箋医薬品注)

1. 警告

ペントスタチンとの併用により、腎不全、肝不全、神経毒性等の重篤な副作用が発現したとの報告があるので1)、併用しないこと。[2.210.1参照]

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 ペントスタチンを投与中の患者[1.、10.1参照]

4. 効能または効果

単純ヘルペス脳炎
○免疫抑制患者における帯状疱疹

6. 用法及び用量

本剤は、通常、5%ブドウ糖注射液または生理食塩液を用いて用時溶解し、輸液500mLあたり2〜4時間かけて点滴静注する。
<単純ヘルペス脳炎>
ビダラビンとして、通常1日10〜15mg/kg、10日間点滴静注する。なお、症状・腎障害の程度により適宜増減する。
<免疫抑制患者における帯状疱疹>
ビダラビンとして、通常1日5〜10mg/kg、5日間点滴静注する。なお、症状・腎障害の程度により適宜増減する。

7. 用法及び用量に関連する注意

帯状疱疹患者に投与する場合には、可能な限り早期(発症から5日以内)に投与を開始することが望ましい。

8. 重要な基本的注意

骨髄機能抑制等の副作用が起こることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。[9.1.111.1.2参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 骨髄機能抑制のある患者
骨髄機能抑制を助長するおそれがある。[8.、11.1.2参照]
9.1.2 膠原病の患者
副作用があらわれやすいとの報告がある。
9.2 腎機能障害患者
排泄能の低下により、本剤の作用が増強することがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット、ウサギ)で催奇形作用が報告されている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.7.1 低出生体重児、新生児
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。低出生体重児、新生児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.7.2 乳児、幼児、小児
必要最小限の使用にとどめるなど、慎重に投与すること。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。本剤は主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため高い血中濃度が持続するおそれがある。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
ペントスタチン
コホリン
[1.、2.2参照]
腎不全、肝不全、神経毒性等の重篤な副作用が発現することがある1)ペントスタチンが、ビダラビンの代謝に関与するADA(アデノシンデアミナーゼ)酵素の阻害作用を有するため、ビダラビンの血中濃度が高まることによると考えられる2)
10.2 併用注意
キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する薬剤
アロプリノール
フェブキソスタット
精神神経障害、骨髄機能抑制等のビダラビンの副作用を増強するおそれがある。これらの薬剤が、ビダラビンの主代謝物であるAra-Hxの代謝に関与するキサンチンオキシダーゼの阻害作用を有するため、Ara-Hxの血中濃度が高まることによると考えられる3)
エラペグアデマーゼ(遺伝子組換え)エラペグアデマーゼ(遺伝子組換え)がビダラビンの作用に影響を及ぼすおそれがある。エラペグアデマーゼ(遺伝子組換え)のADA活性により、ビダラビンが代謝される。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 精神神経障害(0.4%)
振戦、四肢のしびれ、痙攣、意識障害、幻覚、錯乱、一過性の精神障害等があらわれることがある。
11.1.2 骨髄機能抑制(0.8%)
赤血球数、白血球数、血小板数の減少及びヘモグロビン、ヘマトクリット値の低下があらわれることがある。[8.、9.1.1参照]
11.1.3 ショック(頻度不明)、アナフィラキシー(頻度不明)
血圧低下、胸内苦悶、脈拍異常、呼吸困難、悪心・嘔吐、発疹等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜5%未満頻度不明
肝臓AST、ALT、Al-Pの上昇等 
腎臓 BUN、クレアチニンの上昇等
精神神経系頭痛・頭重感不眠、めまい等
過敏症発疹等そう痒感
消化器食欲不振、悪心・嘔吐、下痢等便秘
全身症状発熱全身倦怠感、疼痛、筋肉痛、体重減少
その他 注射部位の疼痛、性欲減退

13. 過量投与

13.1 症状
本剤の長期投与、大量投与により、精神神経障害(振戦、しびれ、錯乱等)が発現しやすくなることが示唆されている4)

14. 適用上の注意

14.1 薬剤調製時の注意
本剤は通常、5%ブドウ糖注射液又は生理食塩液に溶解して用いるが、低溶解性のため、以下の点に留意すること。
・患者の状態により他の輸液を用いる場合には、結晶の析出に十分注意すること。
・輸液500mLあたり本剤2バイアルを溶解する場合には、結晶の析出に十分注意すること。
・冬場など輸液の温度が低い場合には溶けにくいので、輸液の温度をあらかじめ20℃以上の室温に戻してから使用すること。
・調製した輸液と他剤との混注は本剤が析出するおそれがあるので、可能な限り避けること。
・結晶析出の有無を確認できない脂質等を含む輸液は用いないこと。
・本剤は用時調製すること。調製後、長時間放置すると結晶が析出することがあるので、溶解後は速やかに使用すること。
14.2 薬剤投与時の注意
本剤を点滴静注する際は大量の輸液を用いることから、脳圧亢進等の危険な状態を招くおそれもあるので、患者の状態を十分に観察しながら投与することが望ましい。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
健康成人男性にビダラビン10mg/kgを3時間で点滴静注したところ、ビダラビンの血漿中濃度は0.2μg/mLであった。また、主代謝物であるAra-Hx(9-β-D-Arabinofuranosyl Hypoxanthine)は点滴開始2時間後に最高(7.2μg/mL)となり、以後漸減して投与終了5時間後には血中から消失した。
16.5 排泄
健康成人男性にビダラビン10mg/kgを点滴静注した結果、投与後24時間までの尿中排泄は未変化体として1.7%、主代謝物であるAra-Hxとして47.5%であった。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
<単純ヘルペス脳炎>
17.1.1 国内第III相臨床試験
本剤10〜15mg/kg/dayを10日間投与した本剤投与群(92例)と他剤で治療した過去5年間のretrospective data(対照群58例)を比較検討した結果、対照群の致死率に比べ本剤投与群の致死率は有意に低く、かつ正常生活に復帰できるようになった症例が多く、「寝たきり」の症例は有意に少なかった。さらに、本剤投与開始時の意識障害が軽度なほど、また投与時期が早期なほど予後良好であった。
副作用発現頻度は、本剤投与群で13.0%(12/92例)であった。主な副作用は、発疹6.5%(6/92例)、下痢2.2%(2/92例)であった5)
<免疫抑制患者における帯状疱疹>
17.1.2 国内第II相臨床試験
高齢者に発症した帯状疱疹を対象として、本剤5mg/kg/day(17例)、本剤10mg/kg/day(15例)又は対照薬(16例)を5日間投与した三群比較試験を実施した結果、5mg/kg/day投与群及び10mg/kg/day投与群ともに高い有用率が確認された。
副作用発現頻度は、5mg/kg/day投与群で5.9%(1/17例)及び10mg/kg/day投与群で6.7%(1/15例)であった。副作用は、5mg/kg/day投与群のAST上昇及び10mg/kg/day投与群の血圧上昇(各1例)であった6)
17.1.3 国内第III相臨床試験
悪性腫瘍患者に併発した帯状疱疹を対象として、本剤を高用量(300mg/日)と低用量(50mg/日)で5日間投与した二重盲検比較試験注)を実施した結果、高用量群(61例)は低用量群(66例)に比し、有意に高い有用率を示した。特に、一般状態の悪い患者では疼痛等の神経症状の消失が高用量群で早期に認められた。
副作用発現頻度は、高用量群で16%(9/58例)であった。主な副作用は、高用量群では悪心・嘔吐及び発熱で各3%(各2/58例)であった7)
注)本剤の承認された用法及び用量は「通常1日5〜10mg/kg、5日間点滴静注」である。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
ウイルスのDNA依存DNAポリメラーゼを強力に阻害することにより抗ウイルス作用が発現するものと推察されている8)
18.2 抗ウイルス作用
18.2.1 In vitroの実験で、ビダラビンは単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、ワクチニアウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス等のDNAウイルスに対して強い増殖抑制作用を有するが、インフルエンザウイルス等のRNAウイルスに対する増殖抑制作用は認められていない9)10)
18.2.2 実験的に感染させた単純ヘルペス脳炎動物(ウサギ、ハムスター)の20日間生存率は無処置群20〜40%、ビダラビン投与群90〜100%で、ビダラビン投与により生存率が著明に増大した11)12)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ビダラビン

一般的名称 ビダラビン
一般的名称(欧名) Vidarabine
化学名 9-β-D-Arabinofuranosyladenine
分子式 C10H13N5O4
分子量 267.24
融点 約250℃(分解)
物理化学的性状 白色の結晶性の粉末で、におい及び味はない。ジメチルスルホキシドに溶けやすく、酢酸(100)に溶けにくく、水又はエタノール(95)に極めて溶けにくく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。吸湿性である。
KEGG DRUG D06298

22. 包装

バイアル
5本

23. 主要文献

  1. Miser,J.S.et al., Am.J.Clin.Oncol., 15 (6), 490-493, (1992) »PubMed »DOI
  2. Agarwal,R.P., Cancer Treat.Symp., 2, 17-22, (1984)
  3. Friedman,H.M.et al., N.Engl.J.Med., 304 (7), 423, (1981) »PubMed
  4. Burdge,D.R.et al., Can.Med.Assoc.J., 132 (4), 392-395, (1985) »PubMed
  5. 大谷杉士 他, 感染症学雑誌, 56 (9), 799-824, (1982) »DOI
  6. 新村眞人 他, 西日本皮膚科, 47 (2), 292-301, (1985) »DOI
  7. 久木田 淳 他, Chemotherapy., 33 (1), 53-73, (1985) »DOI
  8. Muller,W.E.G.et al., Ann.N.Y.Acad.Sci., 284, 34-48, (1977) »PubMed »DOI
  9. Miller,F.A.et al., Antimicrob.Agents Chemother., 8, 136-147, (1968) »PubMed
  10. 山西弘一 他, 皮膚, 26 (4), 772-775, (1984) »DOI
  11. 倉田 毅 他, 脳と神経, 35 (9), 913-920, (1983)
  12. 持田製薬社内資料:薬理試験−実験的単純ヘルペス脳炎(ハムスター)を用いた抗ウイルス作用の検討−

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
持田製薬株式会社 くすり相談窓口
〒160-8515 東京都新宿区四谷1丁目7番地
電話:03-5229-3906
0120-189-522
FAX:03-5229-3955
製品情報問い合わせ先
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26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
持田製薬株式会社
東京都新宿区四谷1丁目7番地

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版