2.1 次に示す患者[乳酸アシドーシスを起こしやすい。][
1.1、
8.1、
11.1.1参照]
・乳酸アシドーシスの既往歴のある患者
・重度の腎機能障害患者(eGFR30mL/min/1.73m
2未満)又は透析患者(腹膜透析を含む)[
9.2.1参照]
・心血管系、肺機能に高度の障害(ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等)のある患者及びその他の低酸素血症を伴いやすい状態にある患者[嫌気的解糖の亢進により乳酸産生が増加する。]
・脱水症の患者又は脱水状態が懸念される患者(下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者、経口摂取が困難な患者等)
・過度のアルコール摂取者[肝臓における乳酸の代謝能が低下する。また、脱水状態を来すことがある。][
10.1参照]
2.2 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須である。]
2.3 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。また、乳酸アシドーシスを起こしやすい。][
1.1、
8.1、
11.1.1参照]
2.4 栄養不良状態、飢餓状態、衰弱状態、脳下垂体機能不全又は副腎機能不全の患者[低血糖を起こすおそれがある。][
11.1.2参照]
2.5 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[
9.5参照]
2.6 本剤の成分又はビグアナイド系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
通常、成人にはメトホルミン塩酸塩として1日量500mgより開始し、1日2〜3回食後に分割経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、1日最高投与量は750mgとする。
中等度の腎機能障害患者(eGFR30mL/min/1.73m
2以上60mL/min/1.73m
2未満)では、メトホルミンの血中濃度が上昇し、乳酸アシドーシスの発現リスクが高くなる可能性があるため、以下の点に注意すること。特に、eGFRが30mL/min/1.73m
2以上45mL/min/1.73m
2未満の患者では、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[
8.1、
9.2.2、
11.1.1、
16.6.1参照]
・投与は、少量より開始すること。
・投与中は、より頻回に腎機能(eGFR等)を確認するなど慎重に経過を観察し、投与の適否及び投与量の調節を検討すること。
・効果不十分な場合は、メトホルミン塩酸塩として1日最高投与量を750mgまで増量することができるが、効果を観察しながら徐々に増量すること。また、投与にあたっては、1日量を1日2〜3回に分割投与すること。
8.1 まれに重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがある。リスク因子としては、腎機能障害、肝機能障害、低酸素血症を伴いやすい状態、脱水(利尿作用を有する薬剤の併用を含む)、過度のアルコール摂取、感染症、高齢者等が知られている。特に、脱水、過度のアルコール摂取等により患者の状態が急変することもあるので、以下の点に注意すること。[
1.1、
1.2、
2.3、
11.1.1参照]
(1)本剤の投与開始前及びその後も投与中は定期的に、腎機能(eGFR等)及び肝機能を確認するとともに、患者の状態に十分注意して投与の適否及び投与量の調節を検討すること。なお、高齢者等、特に慎重な経過観察が必要な場合には、より頻回に確認すること。[
2.1、7.、
9.2、
9.3、
9.8参照]
(2)脱水症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。利尿作用を有する薬剤(利尿剤、SGLT2阻害剤等)との併用時には、特に脱水に注意すること。[
2.1、
10.2参照]
(3)本剤の投与開始時及びその後も投与中は適切に、以下の内容を患者及びその家族に十分指導すること。
・発熱、下痢、嘔吐、食事摂取不良等の体調不良(シックデイ)の時は脱水状態が懸念されるため、いったん服用を中止し、医師に相談すること。[
2.1、
9.1.2参照]
・乳酸アシドーシスの症状(胃腸障害、倦怠感、筋肉痛、過呼吸等)があらわれた場合には、直ちに受診すること。[
11.1.1参照]
(4)ヨード造影剤を用いて検査を行う患者においては、本剤の併用により乳酸アシドーシスを起こすことがあるので、検査前は本剤の投与を一時的に中止すること(ただし、緊急に検査を行う必要がある場合を除く)。ヨード造影剤投与後48時間は本剤の投与を再開しないこと。なお、投与再開時には、患者の状態に注意すること。[
10.2参照]
8.2 低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与するときには注意すること。[
11.1.2参照]
8.3 本剤の使用にあたっては、患者及びその家族に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。[
9.1.1、
11.1.2参照]
8.4 投与する場合には、少量より開始し、血糖値、尿糖等を定期的に検査し、薬剤の効果を確かめ、本剤を3〜4ヵ月投与しても効果が不十分な場合には、速やかに他の治療法への切り替えを行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 低血糖を起こすおそれのある以下の患者又は状態
・不規則な食事摂取、食事摂取量の不足
・激しい筋肉運動
9.1.2 感染症
9.2 腎機能障害患者
腎臓における排泄が減少しメトホルミンの血中濃度が上昇するため、乳酸アシドーシス等の発現リスクが高くなる可能性がある。[
1.1、
1.2、
9.8、
11.1.1、
16.6.1参照]
9.2.1 重度の腎機能障害患者(eGFR30mL/min/1.73m2未満)又は透析患者(腹膜透析を含む)
9.2.2 中等度の腎機能障害患者(eGFR30mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満)
慎重に経過を観察し、投与の適否及び投与量の調節を検討すること。特に、eGFRが30mL/min/1.73m
2以上45mL/min/1.73m
2未満の患者には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[7.、
8.1参照]
9.3 肝機能障害患者
肝臓における乳酸の代謝能が低下し、乳酸アシドーシスの発現リスクが高くなる可能性がある。[
1.1、
1.2、
9.8、
11.1.1参照]
9.3.1 重度の肝機能障害患者
9.3.2 軽度〜中等度の肝機能障害患者[
8.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ラット、ウサギ)で胎児への移行が認められており、一部の動物実験(ラット)で催奇形作用が報告されている。また、妊婦は乳酸アシドーシスを起こしやすい。[
2.5、
11.1.1参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
高齢者では、腎機能、肝機能等が低下していることが多く、また脱水症状を起こしやすい。これらの状態では乳酸アシドーシスを起こしやすいので、以下の点に注意すること。[
1.2、
8.1、
9.2、
9.3、
11.1.1参照]
・本剤の投与開始前、投与中は定期的に、特に慎重な経過観察が必要な場合にはより頻回に腎機能や肝機能を確認するなど十分に観察しながら慎重に投与すること。メトホルミンはほとんど代謝されず、未変化体のまま尿中に排泄される。また、肝機能の低下により乳酸の代謝能が低下する。
・腎機能や脱水症状等患者の状態に十分注意して投与の中止や減量を検討すること。特に75歳以上の高齢者では、乳酸アシドーシスが多く報告されており、予後も不良であることが多いため、本剤投与の適否をより慎重に判断すること。
・血清クレアチニン値が正常範囲内であっても、年齢によっては実際の腎機能が低下していることがあるので、eGFR等も考慮して、慎重に患者の状態を観察すること。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 乳酸アシドーシス(頻度不明)
乳酸アシドーシス(血中乳酸値の上昇、乳酸/ピルビン酸比の上昇、血液pHの低下等を示す)は予後不良のことが多い。一般的に発現する臨床症状は様々であるが、胃腸症状、倦怠感、筋肉痛、過呼吸等の症状がみられることが多く、これらの症状があらわれた場合には、直ちに投与を中止し、必要な検査を行うこと。なお、乳酸アシドーシスの疑いが大きい場合には、乳酸の測定結果等を待つことなく適切な処置を行うこと。[
1.1、
1.2、
2.1、
2.3、7.、
8.1、
9.1.2、
9.2、
9.3、
9.5、
9.8、
10.1、
10.2、
13.1参照]
11.1.2 低血糖(頻度不明)
低血糖症状(初期症状:脱力感、高度の空腹感、発汗等)が認められた場合には、糖質を含む食品を摂取するなど適切な処置を行うこと。ただし、α-グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ボグリボース、ミグリトール)との併用により低血糖症状が認められた場合にはブドウ糖を投与すること。[
2.4、
8.2、
8.3、
9.1.1、
10.2参照]
11.1.3 肝機能障害、黄疸(頻度不明)
AST、ALT、Al-P、γ-GTP、ビリルビンの著しい上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.4 横紋筋融解症(頻度不明)
筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがある。
注)発現頻度は使用成績調査を含む。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
消化器注1)
| 下痢 | 食欲不振、腹痛、悪心、嘔吐、腹部膨満感、便秘 | 消化不良 | 胃炎、胃腸障害、放屁増加 |
血液 | | | | 貧血、白血球減少、血小板減少、白血球増加、好酸球増加 |
過敏症 | | 発疹 | | そう痒 |
肝臓 | | | | 肝機能異常 |
腎臓 | | | | BUN上昇、クレアチニン上昇 |
代謝異常 | | | | CK上昇、ケトーシス、乳酸上昇、血中カリウム上昇、血中尿酸増加 |
その他 | | 全身倦怠感注1)、頭痛、頭重 | 眠気 | 筋肉痛注1)、めまい・ふらつき、味覚異常、浮腫、動悸、発汗、脱力感、空腹感、ビタミンB12減少注2)
|
13.1 症状
13.2 処置
アシドーシスの補正(炭酸水素ナトリウム静注等)、輸液(強制利尿)、血液透析等の適切な処置を行う。
14.1 薬剤調製時の注意
本剤とオルメサルタン メドキソミル製剤等との一包化は避けること。一包化して高温高湿度条件下にて保存した場合、本剤が変色することがある。
14.2 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.1 臨床使用に基づく情報
インスリン又は経口血糖降下剤の投与中にアンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与することにより、低血糖が起こりやすいとの報告がある。
16.1 血中濃度
健康成人21例に本剤1錠(メトホルミン塩酸塩250mg)を空腹時
注)に経口投与した場合、血漿中未変化体濃度は投与後約2.4時間で最高値に達し、その後約3.6時間の半減期で消失した
1)。
健康成人に空腹時にグリコラン錠250mgを経口投与した後の血漿中未変化体濃度(平均値±標準偏差、n=21)
薬物動態パラメータ
Dose(mg/body) | Tmax(hr) | Cmax(ng/mL) | AUC0-24hr(ng・hr/mL) | t1/2(hr) |
250 | 2.36±0.96 | 997±255 | 6680±1410 | 3.61±0.54 |
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
腎機能正常者(クレアチニンクリアランス:>90mL/min)、軽度(クレアチニンクリアランス:61〜90mL/min)及び中等度(クレアチニンクリアランス:31〜60mL/min)の腎機能障害者にメトホルミン塩酸塩850mg
注)を空腹時に単回経口投与したときの薬物動態パラメータは以下のとおりであった
2)(外国人データ)。[7.、
9.2参照]
| Cmax(μg/mL) | AUC0-∞(μg・hr/mL) | t1/2(hr) | CLR(mL/min) |
腎機能正常者(3例) | 1.64±0.50 | 11.22±3.19 | 11.2±5.2 | 394.7±83.8 |
軽度腎機能障害者(5例) | 1.86±0.52 | 13.22±2.00 | 17.3±21.2 | 383.6±122.3 |
中等度腎機能障害者(4例) | 4.12±1.83 | 58.30±36.58 | 16.2±7.6 | 108.3±57.2 |
16.7 薬物相互作用
16.7.1 ドルテグラビルとの併用
健康成人に対し本剤とドルテグラビル50mg/日及び100mg/日を併用して反復投与した場合、メトホルミンのCmaxがそれぞれ66%及び111%上昇し、AUCがそれぞれ79%及び145%増加した
3)(外国人データ)。[
10.2参照]
16.7.2 バンデタニブとの併用
健康成人に対し本剤とバンデタニブを併用して単回投与した場合、メトホルミンのCmax及びAUC
0-∞がそれぞれ50%及び74%増加し、腎クリアランスが52%減少した
4)(外国人データ)。[
10.2参照]
注)本剤の用法・用量:1日量500mg(2〜3回食後に分割経口投与)より開始し、1日最高投与量は750mgである。
100錠[10錠(PTP)×10]、210錠[21錠(PTP)×10]、1000錠[10錠(PTP)×100]、500錠[瓶、バラ]