本剤はファブリー病と確定診断された患者にのみ使用すること。
通常、アガルシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として、1回体重1kgあたり0.2mgを隔週、点滴静注する。
7.1 日局生理食塩液で希釈した後に投与すること。
7.2 投与速度が速いとinfusion related reactionが発現しやすいので、投与は40分以上かけて行うこと。[1、
8.2-
8.4参照]
8.1 本剤はたん白質製剤であるため、アナフィラキシーショックが起きる可能性は否定できない。このような症状の発現に備え、緊急処置を取れる準備をしておくこと。[1、2、
9.1.1、
11.1.1参照]
8.2 本剤の投与中又は投与終了後1時間以内にinfusion related reactionがあらわれることがある。主な症状は発熱、倦怠感、四肢疼痛、胸部不快感、悪寒、顔面潮紅であり、頭痛、呼吸困難、腹痛、嘔気、胸痛、そう痒、浮腫、じん麻疹等のアレルギー反応を伴うこともある。Infusion related reactionは、通常本剤による治療開始2〜4ヵ月で発現するが、1年以降に発現する例も報告されている。本剤投与中にinfusion related reactionがあらわれた場合には、必要に応じて投与を中断し、適切な処置(抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤投与等)を行うこと。処置後は経過を観察し、投与再開に際しては以下を考慮すること。[1、2、
7.2、
9.1.1、
11.1.1参照]
・Infusion related reactionが不変又は悪化した場合には、投与を再開しないこと。Infusion related reactionに対する追加処置を考慮すること。
・Infusion related reactionが軽快又は消失した場合、投与再開を考慮すること。再開の場合、必要に応じ、投与速度を中断前の1/2を目安として下げること。
8.3 Infusion related reactionが発現した患者への次回投与に際しては、以下を考慮すること。[1、
7.2参照]
・前投薬(抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤等を本剤投与1〜3時間前に投与)の処置を行うこと。
・前投薬等の処置を行ってもinfusion related reactionが軽減しない症例において、同処置を実施した上で本剤を1〜5分間投与して中断し、約5分後に投与を再開することによりinfusion related reactionが軽減された例がある。
8.4 心臓にファブリー病の病変が認められる患者において、本剤の投与中又は投与終了後24時間以内に、infusion related reactionに関連して、心房細動、心室性期外収縮、頻脈性不整脈、心筋虚血、心不全等があらわれたとの報告がある。このような症状があらわれた場合には、投与を中断し、適切な処置を行うこと。[1、
7.2参照]
8.5 本剤の投与により、アガルシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)に対するIgG抗体が産生し、効果が減弱した例が報告されている。これらの大部分では、本剤の投与を継続することにより効果が回復したが、回復がみられない例もあった。本剤投与中に、疼痛の悪化など効果の減弱がみられた患者では他の治療法に切り替えることも考慮すること。[
17.3.1参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 本剤の成分又はα-ガラクトシダーゼ製剤に対する過敏症の既往歴のある患者[
8.1、
8.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を考慮しながら、慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 アナフィラキシー(頻度不明)[1、2、
8.1、
8.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 5%以上 | 5%未満 |
| 皮膚 | ざ瘡、紅斑性発疹、そう痒 | 発疹、網状皮斑、じん麻疹、脱毛、皮膚乾燥、皮膚剥離 |
| 精神神経系 | 頭痛、めまい | 振戦、眩暈、パニック発作、傾眠、不眠、情動変動 |
| 循環器 | | 血圧上昇、動悸、頻脈 |
| 肝臓 | | AST上昇、LDH上昇 |
| 泌尿器 | | 腎機能異常、クレアチニンクリアランス低下、クレアチニン上昇 |
| 消化器 | 嘔気(11.7%)、腹痛、下痢 | 口渇、胃部不快感、嘔吐 |
| 呼吸器 | | 呼吸困難、咳嗽、肺うっ血、呼吸不全、低酸素血症 |
| 血液 | | 好酸球増多 |
| 眼 | | 結膜炎、流涙、瞬きが増える |
| その他 | 顔面潮紅(ほてり)(20.8%)、悪寒(20.8%)、発熱(19.5%)、疼痛(四肢疼痛、下肢痛等)(11.7%)、アレルギー反応、浮腫、背部痛、胸痛、熱不耐性、異常感覚(冷感、ピリピリ感)、疲労感、倦怠感、咽頭絞扼感 | 嗄声、神経痛、筋肉痛、味覚異常、インフルエンザ様症状、温度感覚変化、知覚不全、CK上昇、鼻炎、咽頭炎、喉頭炎、熱感、耳鳴、胸部圧迫感、胸部不快感、しびれ感、眼窩周囲浮腫、骨痛、嗅覚錯誤、いびき |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 患者の体重あたりで計算した本剤(アガルシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として1mg/mLの溶液)の必要量を用時にバイアルから採取し、100mLの日局生理食塩液に加えて希釈する。
14.1.2 本剤の希釈液としては日局生理食塩液以外使用しないこと。
14.1.3 本剤は保存中に少量の微粒子を生じることがあるが、微粒子は0.2μmのインラインフィルターで除去される。また、これにより本剤の薬効は影響を受けない。
14.1.4 凝集や失活の原因となるので、希釈後は激しく振とうしないこと。
14.1.5 他剤と混注しないこと。
14.1.6 希釈後は肉眼で不溶性異物や変色の有無を確認し、それらを認めた場合は使用しないこと。
14.1.7 使用後の残液は使用しないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
本剤投与時には0.2μmのインラインフィルターを通して投与すること。
16.1 血中濃度
日本人男性ファブリー病患者に、本剤0.2mg/kgを40分間で点滴静脈内投与した場合の血漿中α-ガラクトシダーゼA活性は、約40分後に最大値を示した後速やかに消失し、投与8時間後にはほぼ投与前の値に低下した。12回目投与時では、初回投与時に比較してCmax及びAUC
0-∞の減少が認められ、T
1/2の延長がみられた。
| 投与回数 | 例数 | Cmax(U/mL) | AUC0-∞(U・min/mL) | T1/2(min) |
| 初回 | 12 | 5,169±993 | 364,277±82,827 | 56±13 |
| 12回目 | 11 | 3,030±1,963 | 334,225±210,487 | 134±87 |
16.3 分布
16.3.1 米国において、男性ファブリー病患者10例に本剤を0.007〜0.110mg/kg
注)静脈内投与し、44時間後に肝バイオプシーを行って本剤の分布を調べたところ、投与量の8.5〜32.4%が肝臓に分布していることが認められた
1)(外国人データ)。
16.3.2 ラットに本剤の125I標識体を0.13及び1.28mg/kgの用量で単回静脈内投与して組織中放射能濃度を測定した。放射能は、投与後4時間において特に肝臓に高濃度で分布し、この放射能の大部分はたん白成分由来であった。
16.5 排泄
ラットに本剤の125I標識体を0.13及び1.28mg/kgの用量で単回静脈内投与した時、投与後24時間までに投与放射能量の61.6〜78.8%が尿中に排泄された。
注)本剤の承認された1日通常用量は0.2mg/kgである。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験
男性ファブリー病患者12例に本剤0.2mg/kgを、2週間に1回の頻度で6ヵ月間静脈内投与(12回)した。その結果、ファブリー病の原因である体内に蓄積したセラミドトリヘキソシド(CTH)の指標とされる
1)2)血漿中CTH濃度及び尿沈渣中CTH量が有意に減少し、疼痛の重症度及び疼痛による生活妨害度が軽減した
3)。これらの効果は、さらに1年間投与を継続した場合にも持続がみられた。臨床検査値異常を含む副作用は12例中10例に認められた。主な副作用は、発熱6例、悪寒及び倦怠感が各4例、四肢疼痛、熱感、CK上昇及び呼吸困難が各2例であった。
17.1.2 海外第II相試験
米国において、男性ファブリー病患者26例に本剤0.2mg/kgあるいはプラセボを、2週間に1回の頻度で6ヵ月間静脈内投与(12回)する二重盲検比較試験を行った。その結果、血漿中CTH濃度及び尿沈渣中CTH量が減少するとともに、プラセボ群に比較し有意な疼痛の軽減及び腎機能低下の抑制が認められた
4)。本剤投与群14例中8例において、悪寒、顔面潮紅、末梢性浮腫などの投与時反応が認められた。
17.1.3 海外第II相試験
英国において、男性ファブリー病患者15例に本剤0.2mg/kgあるいはプラセボを、2週間に1回の頻度で6ヵ月間静脈内投与(12回)する二重盲検比較試験を行った。その結果、血漿中CTH濃度及び尿沈渣中CTH量が減少するとともに、プラセボ群に比較し有意な左室肥大進行の抑制が認められた。問題となる有害事象は認められなかった。
17.1.4 海外臨床試験
ドイツにおいて、女性ファブリー病患者15例に本剤0.2mg/kgを2週間に1回の頻度で最長で55週間投与した結果、血漿中CTH濃度及び尿沈渣中CTH量が減少し、左室肥大が有意に軽減した。投与時反応は認められなかった
5)。
17.2 製造販売後調査等
17.2.1 国内特定使用成績調査(長期使用に関する調査)
投与前後の血漿中CTH濃度を測定したファブリー病患者439例における血漿中CTH濃度は、投与開始時5.4±3.3nmol/mL(平均値±標準偏差)、投与6ヵ月時4.4±1.9nmol/mL(変化量−1.0±2.5nmol/mL)、最終時3.9±1.8nmol/mL(変化量−1.5±2.7nmol/mL)であった(観察期間:3.1±1.7年)。そのうち心ファブリー病患者23例における血漿中CTH濃度は、投与開始時4.1±1.8nmol/mL、投与6ヵ月時3.4±1.3nmol/mL(変化量−0.6±1.0nmol/mL)、最終時3.5±1.6nmol/mL(変化量−0.6±1.2nmol/mL)であった(観察期間:2.4±1.6年)。また、15歳以上の心ファブリー病患者における拡張末期左室後壁厚、拡張末期心室中隔厚、左室心筋重量係数は以下のとおりであった。
| 項目 | 例数注) | 開始時 | 最終時 | 変化量 | 観察期間(年) |
| 拡張末期左室後壁厚(mm) | 15 | 15±4 | 14±4 | −1±3 | 2.6±1.8 |
| 拡張末期心室中隔厚(mm) | 15 | 17±4 | 15±3 | −1±3 | 2.6±1.8 |
| 左室心筋重量係数(g/m2.7) | 13 | 101±33 | 92±28 | −9±18 | 2.8±1.8 |
493例中121例(24.5%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められた。主な副作用は発熱18例(3.7%)、倦怠感14例(2.8%)、悪心11例(2.2%)、四肢疼痛10例(2.0%)等であった。(再審査終了時)
17.3 その他
17.3.1 抗体の産生
国内及び外国の臨床試験で、本剤が3回以上投与された患者67例中26例(39%)でアガルシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)に対するIgG抗体の産生が認められたが、このうち20例(77%)では投与継続中に抗体価の低下あるいは抗体の消失がみられた。抗体産生に起因する特異な副作用は認められなかった。一方、抗体の産生により効果が減弱する例がみられたが、投与を継続することにより、ほとんどの例で効果が回復した。[
8.5参照]
18.1 作用機序
アガルシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)は、ヒトリソソーム加水分解酵素であり、CTHの末端にα-グリコシド結合したガラクトース残基を切り離す酵素活性を有する。糖たん白質であるアガルシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)は、その糖鎖のマンノース-6-リン酸残基が細胞表面のマンノース-6-リン酸レセプターに結合することにより細胞内に取り込まれる
6)。
18.2 組織中CTH量に対する効果
アガルシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)をα-ガラクトシダーゼAノックアウトマウスに投与した時、肝臓、心臓及び腎臓等に分布し、これらの臓器に蓄積したCTHの量が減少した。
26.1 製造販売元
武田薬品工業株式会社
〒540-8645
大阪市中央区道修町四丁目1番1号