下記疾患におけるIGF-I(ソマトメジン-C)分泌過剰状態および諸症状の改善
先端巨大症(外科的処置、他剤による治療で効果が不十分な場合又は施行が困難な場合)
通常、成人にはペグビソマント(遺伝子組換え)として初日に40mg(タンパク質部分)を1日1回皮下投与する。2日目以降は1日1回10mg(タンパク質部分)を投与する。なお、血清中IGF-I値及び症状に応じて、1日量30mg(タンパク質部分)を上限として、5mg(タンパク質部分)ずつ適宜増減する。
7.1 本剤の投与にあたっては、4〜8週間隔で血清中IGF-I値を測定し、その値が性別・年齢別正常値内に収まる範囲で投与量の調整を行うこと。[
8.4、
12.参照]
7.2 初期維持用量での投与時、あるいは継続治療中に最低用量まで減量しても、血清中IGF-I値が正常範囲の下限を下回った場合には、本剤の休薬あるいは投与中止を考慮すること。
7.3 本剤を3ヵ月以上投与しても、血清中IGF-I値の正常化が認められずかつ血清中IGF-I値の低下傾向も認められない場合には、本剤の投与中止を考慮すること。
8.1 成長ホルモン産生下垂体腫瘍は進展することがあり、これに伴い視野狭窄などの重篤な症状を生じることがあるので、定期的にMRI検査等を行い患者の状態を十分観察すること。腫瘍の進展が認められた場合は、他の治療法への切り替え等適切な処置を行うこと。
8.2 ALT、ASTが上昇することがあるので、以下の点に注意すること。
・本剤投与開始時
本剤投与開始前には必ず肝機能検査(ALT、AST等)を行うなど臨床検査値及び臨床症状を十分に観察し、投与の開始を検討すること。
・本剤投与中
本剤投与開始後1年間は1ヵ月に1回、以後は定期的に肝機能検査を行うこと。また、本剤投与中に、肝障害を示唆する症状(疲労、悪心、嘔吐、腹痛、黄疸)が発現した場合には、適宜肝機能検査を行い、肝障害が確認された場合には本剤の投与を中止すること。
患者に対し、本剤使用中に肝障害を示唆する症状があらわれた場合には、本剤の使用を中止し、直ちに連絡するよう指導すること。
8.3 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の指導、監督のもとで投与を行い、患者自らが確実に投与できることを確認した上で、自己投与を行うようにすること。
8.4 本剤は成長ホルモン受容体拮抗剤であるため、血清中成長ホルモンが高値を示していても、成長ホルモン分泌不全状態を生じる可能性がある。したがって、血清中IGF-I値をもとに本剤の用量調整を行うとともに、成長ホルモン分泌不全状態の臨床徴候及び症状に注意すること。[
7.1、
12.参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ウサギを用いた初期胚発生に関する試験では、ペグビソマント10mg(タンパク質部分)/kg/日投与群で着床後の吸収胚数の増加が認められたが
1)、ウサギにおける胚・胎児発生に関する試験においては10mg(タンパク質部分)/kg/日までの投与量で催奇形性を示唆する所見は認められなかった
2)。
9.6 授乳婦
本剤投与中は治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤の乳汁中への移行は不明である。
9.7 小児等
9.8 高齢者
本剤は構造的に成長ホルモンと極めて類似しており、交叉反応が起こるため、通常の測定法による血清中成長ホルモン濃度の測定値が高値を示すことがある。更に、本剤投与中は血清成長ホルモン濃度が上昇することがある。したがって、血清中IGF-I値をもとに本剤の用量調整を行うこと。[
7.1、
8.4参照]
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 調製時
用時、本剤のバイアルに添付の注射用水を1mL加える。バイアルを両手に挟み、薬剤の粉末が溶けるように両手の中でゆっくりと転がして溶解すること(激しく振とうしないこと)。バイアルのキャップのゴムの部分をアルコール綿で清拭し、バイアル内の薬液(1mL)を全てシリンジに吸い上げること。
14.1.2 調製後
14.2 薬剤投与時の注意
注射部位の有害事象(出血、紅斑、疼痛、腫脹等)が報告されているので、注射部位を上腕、太腿、腹部、臀部等広範囲に求め、順序よく移動し、同一部位に短期間内に繰返し注射しないこと。発赤、湿疹、損傷のある部位は避けること。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与(健康成人)
日本人及び外国人の健康成人にペグビソマント1mg(タンパク質部分)/kgを単回皮下投与した場合、血清中薬物動態パラメータ(平均±標準偏差)はそれぞれ、Cmaxが9.01±1.43及び8.98±2.19μg/mL、Tmaxが76及び60時間、AUCが1,910±410及び1,510±550μg・h/mLであり、日本人と外国人で同様の値を示した
4)5)(外国人及び日本人データ)。
図 健康成人(日本人及び外国人)にペグビソマント1mg(タンパク質部分)/kgを単回皮下投与後の血清中ペグビソマント(タンパク質部分)濃度推移
16.1.2 反復投与(先端巨大症患者)
先端巨大症患者にペグビソマント10、15又は20mg(タンパク質部分)を1日1回長期投与した後の定常状態における血清中濃度(平均±標準偏差)はそれぞれ9.3±6.3、14.3±7.5及び18.1±10.1μg/mLであり、ほぼ投与量に比例して増加した
6)(外国人データ)。また、先端巨大症患者にペグビソマントを長期投与した後の血清中ペグビソマント濃度とIGF-I濃度の関係は、ペグビソマント濃度の上昇に伴い、ペグビソマント濃度10μg/mL付近まではIGF-I濃度は大きく減少し、この付近を越えると、緩やかに減少した
7)(外国人及び日本人データ)。
16.2 吸収
健康成人にペグビソマント20mg(タンパク質部分)を単回皮下投与後49時間にCmax(1.39μg/mL)を示し、半減期は約6日(138時間)であった。バイオアベイラビリティは57%であった
8)(外国人データ)。
16.3 分布
雌雄ラットに[
125I]ペグビソマント3mg(タンパク質部分)/kgを単回皮下投与した後の全身オートラジオグラフィーの結果より、ラットでは[
125I]ペグビソマントは血液脳関門を通過しにくいと考えられる
9)。
16.4 代謝
ペグビソマントの代謝経路は、そのタンパク質部分及びPEG5000(分子量5000のポリエチレングリコール)の代謝、並びに両分子間のアミド結合の安定性の各観点から推定可能であり、それぞれの代謝について考察した。その結果、PEG5000は代謝を受け難く、またタンパク質部分とポリエチレングリコールの間のアミド結合は安定と考えられることから、ペグビソマントの代謝はそのタンパク質部分の代謝に依存するものと考えられた。ペグビソマントのタンパク質部分の代謝は小さなペプチド及び各アミノ酸への分解であることが予期され、その代謝経路は一般に知られていることから代謝試験は実施しなかった。
16.5 排泄
健康成人にペグビソマント20mg(タンパク質部分)を単回皮下投与後の未変化体(タンパク質部分)の尿中排泄率は投与量の1%未満であった
8)(外国人データ)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験(連日投与試験)
先端巨大症患者18例を対象とした臨床試験(12週間連日投与)を実施した。被験者は初日40mg(タンパク質部分)、2日目から投与8週後まで10mg(タンパク質部分)を連日投与し、18例中11例は9週目から15mg(タンパク質部分)へ増量した(1日1回投与)。投与後の血清中IGF-I値の変化率は、−54.7±24.72%(平均変化率±標準偏差)であり、投与前と比較し有意に減少した(95%信頼区間−67.02、−42.43)。血清中IGF-I値の正常化率は、44.4%(8/18)であった。指輪サイズ及び臨床症状スコア(軟部組織の肥大、関節痛、頭痛、発汗亢進、疲労感)の合計値においても改善がみられた。
図 IGF-I値のベースラインからの変化率(%)の推移
副作用は72.2%(13/18例)に認められた。主な副作用は、血清AST上昇3例、血清ALT上昇3例、腹痛2例、注射部位腫瘤2例、注射部位合併症2例、下痢2例及び気道感染2例であった
10)。
17.1.2 国内臨床試験(長期投与試験)
連日投与試験で本剤を投与された被験者のうち医師により安全性及び有効性が問題ないと判断された被験者16例に対し、1日量30mg(タンパク質部分)を上限とする長期投与試験を行った。投与期間の中央値は433.5日(最小値、最大値:92、502)であった。最終観測時点の血清中IGF-I値の変化率は、−66.7±31.19%(平均変化率±標準偏差)であり低下を維持した。血清中IGF-I値の正常化率は81.3%(13/16例)であった(投与中止例2例を含む)。指輪サイズ及び臨床症状スコア(軟部組織の肥大、関節痛、頭痛、発汗亢進、疲労感)においても引続き改善がみられた。
副作用は81.3%(13/16例)に認められた。主な副作用は、注射部位疼痛4例、腹痛3例、頭痛2例、倦怠感2例、高コレステロール血症2例、血清AST増加2例及び眼痛2例であった
11)。
17.1.3 海外臨床試験(連日投与二重盲検試験)
先端巨大症患者112例を対象とした二重盲検比較試験(12週間連日投与)を実施した。有効性評価対象症例111例において、血清中IGF-I値、IGFBP-3(インスリン様成長因子結合タンパク-3)値は本剤10、15及び20mg(タンパク質部分)投与群で投与前と比較し用量依存的に有意に減少した。一方プラセボ群では投与前と比較しほとんど変動しなかった。また、血清中IGF-I値の正常化率は10mg群54%(14/26例)、15mg群81%(21/26例)、20mg群89%(25/28例)であったのに対し、プラセボ群では10%(3/31例)であった。指輪サイズは15及び20mg群でプラセボ群に比し有意に減少した。臨床症状スコアの検討では、軟部組織の肥大、発汗亢進が15及び20mg群でプラセボ群に比し有意に改善した。疲労感及び臨床症状スコアの合計では10、15及び20mgすべての群でプラセボ群に比し有意に改善した。
副作用は本剤10、15及び20mg群でそれぞれ46.2%(12/26例)、30.8%(8/26例)及び35.7%(10/28例)に認められた。各群で2例以上認められた副作用は、本剤10mg群で無力症2例、注射部位反応2例、発汗2例及び肝機能検査(値)異常2例、本剤20mg群で注射部位反応3例、嘔気3例及び下痢2例であった
3)。
17.1.4 海外長期投与試験
先端巨大症患者38例を対象とした1日量40mg(タンパク質部分)を上限とする長期投与試験を実施した。平均投与期間は84.7週であった。血清中IGF-I値の正常化率は97.4%(38例中37例、40mg(タンパク質部分)で正常化した2例を含む)であり、血清中IGF-I値に対する効果は長期投与によって減弱することなく維持された
12)。
副作用は47.4%(13/38例)に認められた。主な副作用は、注射部位反応4例であった。
17.1.5 海外長期投与試験
先端巨大症患者109例を対象とした1日量40mg(タンパク質部分)を上限とする長期投与試験を実施した。平均投与期間は42.6週であった。血清中IGF-I値の正常化率は92.6%(108例中100例、35mg及び40mg(タンパク質部分)で正常化した2例を含む)であり、血清中IGF-I値に対する効果は長期投与によって減弱することなく維持された。
副作用は42.2%(46/109例)に認められた。主な副作用は頭痛5例、注射部位反応4例、肝機能検査値異常4例及び高コレステロール血症3例であった
13)。
<ソマバート皮下注用10mg>
1バイアル
(溶解液 日局 注射用水 20mL添付)
<ソマバート皮下注用15mg>
1バイアル
(溶解液 日局 注射用水 20mL添付)
<ソマバート皮下注用20mg>
1バイアル
(溶解液 日局 注射用水 20mL添付)