2.1 閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。]
2.2 本剤の成分に対し過敏症の患者
2.3 重症筋無力症の患者[本剤の抗コリン作用により症状が悪化するおそれがある。]
抗パーキンソン剤はフェノチアジン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤、レセルピン誘導体等による口周部等の不随意運動(遅発性ジスキネジア)を通常軽減しない。
場合によっては、このような症状を増悪顕性化させることがある。
ビペリデン塩酸塩として、通常成人1回1mg1日2回よりはじめ、その後漸増し、1日3〜6mgを分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
本剤の投与は、少量から開始し、観察を十分に行い、慎重に維持量まで増量すること。また、他剤から本剤に切り替える場合には、他剤を徐々に減量しながら本剤を増量するのが原則である。
8.1 本剤投与中は定期的に隅角検査及び眼圧検査を行うことが望ましい。
8.2 本剤の大量投与により、パーキンソン症状の増悪がみられることがあるので、このような場合には減量するなど適切な処置を行うこと。
8.3 本剤により気分高揚等が出現したとする報告があり、依存形成につながるおそれがあるので、慎重に投与すること。[
11.1.2参照]
8.4 眠気、調節障害及び注意力・集中力・反射機能等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 開放隅角緑内障の患者
抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。
9.1.2 前立腺肥大など尿路に閉塞性疾患のある患者
9.1.3 胃腸管に閉塞性疾患のある患者
9.1.4 不整脈又は頻拍傾向のある患者
9.1.5 てんかんの患者
9.1.6 高温環境にある患者
9.1.7 動脈硬化性パーキンソン症候群の患者
9.1.8 脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者
9.2 腎機能障害患者
代謝・排泄機能が低下しているため、副作用が起こりやすい。
9.3 肝機能障害患者
代謝・排泄機能が低下しているため、副作用が起こりやすい。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
小児等には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
せん妄、不安等の精神症状及び抗コリン作用による口渇、排尿困難、便秘等があらわれやすい。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 悪性症候群(頻度不明)
抗精神病薬、抗うつ剤及びドパミン作動系抗パーキンソン剤との併用において、本剤及び併用薬の減量又は中止により、発熱、無動緘黙、意識障害、強度の筋強剛、不随意運動、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等があらわれることがある。このような症状があらわれた場合には、体冷却、水分補給等の全身管理及び本剤の投与量を一旦もとに戻した後慎重に漸減するなどの適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CKの上昇があらわれることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下があらわれることがある。[
9.1.8参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 頻度不明 |
精神神経系 | 幻覚、せん妄、精神錯乱、不安、嗜眠、記憶障害 |
消化器 | 口渇、悪心、嘔吐、食欲不振、胃部不快感、下痢、便秘、口内炎 |
泌尿器 | 排尿困難、尿閉 |
過敏症 | 発疹 |
循環器 | 血圧低下、血圧上昇 |
眼 | 眼の調節障害 |
肝臓注) | 肝障害 |
13.1 症状
主な症状は抗コリン作用に基づくものである。口渇、体温上昇、頻脈、不整脈、尿閉、興奮、幻覚、妄想、錯乱、痙れん、呼吸抑制等があらわれることがある。
13.2 処置
中枢神経興奮症状に対してはジアゼパム、短時間作用型のバルビツール酸系薬剤の投与を行う。抗コリン作用を有する抗精神病薬は症状を悪化させることがあるので投与しないこと。
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
16.1 血中濃度
健康成人6例に4mg
注)を1回経口投与後の血漿中未変化体濃度の薬物動態パラメータは、以下のとおりであった
1)(外国人データ)。
Tmax(h) | Cmax(ng/mL) | t1/2β(h) |
1.5 | 5.1 | 18.4 |
注)本剤の承認された用法及び用量は、1回1mgを1日2回より開始し、1日3〜6mgを分割経口投与である。
18.1 作用機序
中枢性に抗コリン作用を示すことにより、ドパミン作動性神経の変性脱落に伴って相対的に過剰活動状態となったコリン作動性神経を抑制する。
18.2 抗振戦作用
マウスのハルミン投与による振戦に対し、腹腔内投与でのED
50は10.3mg/kgであり、アトロピン(ED
50:28.3mg/kg)よりも強い
5)。また、マウスのトレモリン投与による振戦に対し、腹腔内投与でのED
50は2.7mg/kgであり、プロメタジン(ED
50:5.4mg/kg)よりも強い
6)。
18.3 抗硬直作用
レセルピン投与によるラットの筋の緊張性活性(筋電図)についての検討で、5mg/kg静脈内投与によりレセルピン硬直を抑制し、α及びγ反射活性を正常位に回復させる
7)。
18.4 抗カタレプシー作用
ラットのペルフェナジン投与によるカタレプシーに対し、2mg/kg腹腔内前投与により、投与1時間後で80%以上の抑制を示し、その作用はトリヘキシフェニジルと同等である
8)。また、ラットのプロクロルペラジン投与によるカタレプシーに対し、腹腔内投与でのED
50は1.8mg/kgであり、トリヘキシフェニジル(ED
50:8mg/kg)よりも強い
9)。