医療用医薬品 : サイレース

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医薬品情報


総称名 サイレース
一般名 フルニトラゼパム
欧文一般名 Flunitrazepam
製剤名 フルニトラゼパム製剤
薬効分類名 麻酔導入剤
薬効分類番号 1124
ATCコード N05CD03
KEGG DRUG
D01230 フルニトラゼパム
KEGG DGROUP
DG03202 睡眠薬
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
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添付文書情報2023年4月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
サイレース静注2mg Silece Injection エーザイ 1124400A1058 125円/管 向精神薬(第二種向精神薬), 習慣性医薬品注1), 処方箋医薬品注2)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 急性閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。]
2.3 重症筋無力症の患者[重症筋無力症の症状を悪化させるおそれがある。]

4. 効能または効果

全身麻酔の導入
局所麻酔時の鎮静

6. 用法及び用量

本剤は用時注射用蒸留水にて2倍以上に希釈調製し、できるだけ緩徐に(フルニトラゼパムとして1mgを1分以上かけて)静脈内に注射する。
用量は通常成人に対し全身麻酔の導入としてはフルニトラゼパムとして体重1kgあたり0.02〜0.03mg、局所麻酔時の鎮静としてはフルニトラゼパムとして体重1kgあたり0.01〜0.03mgとし、必要に応じて初回量の半量ないし同量を追加投与する。
なお、患者の年齢、感受性、全身状態、手術術式、麻酔方法などに応じて適宜増減する。

8. 重要な基本的注意

8.1 麻酔を行う際には原則としてあらかじめ絶食をさせておくこと。
8.2 麻酔を行う際には原則として麻酔前投薬を行うこと。
8.3 麻酔・鎮静の深度は、手術、検査に必要な最低の深さにとどめること。
8.4 本剤投与前に、酸素吸入器、吸引器具、挿管器具等の人工呼吸のできる器具及び昇圧剤等の救急蘇生剤を手もとに準備しておくこと。また、必要に応じてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を手もとに準備しておくこと。[13.2参照]
8.5 本剤投与中は、気道に注意して呼吸・循環に対する観察を怠らないこと。観察を行う際には、パルスオキシメーターや血圧計等を用いて、継続的に患者の呼吸及び循環動態を観察すること。[11.1.1参照]
8.6 術後引き続き鎮静及び前向性健忘が認められることがあるので注射後24時間は観察下におくこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 心障害のある患者
呼吸抑制があらわれやすい。[11.1.1参照]
9.1.2 脳に器質的障害のある患者
作用が強くあらわれやすい。
9.1.3 衰弱患者
作用が強くあらわれる。
9.1.4 高度重症患者、呼吸予備力の制限されている患者
無呼吸、心停止がおこりやすい。
9.2 腎機能障害患者
本剤の排泄が遅延するおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
本剤の排泄が遅延するおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.5.1 妊娠動物(ラット)に経口投与した実験で、50mg/kgの用量で催奇形作用が認められる。
9.5.2 妊娠中に他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム、クロルジアゼポキシド等)を服用していた患者が出産した新生児において、口唇裂、口蓋裂等が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告がある。
9.5.3 ベンゾジアゼピン系化合物で新生児に哺乳困難、嘔吐、活動低下、筋緊張低下、過緊張、嗜眠、傾眠、呼吸抑制・無呼吸、チアノーゼ、易刺激性、神経過敏、振戦、低体温、頻脈等を起こすことが報告されている。なお、これらの症状は、離脱症状あるいは新生児仮死として報告される場合もある。また、ベンゾジアゼピン系化合物で新生児に黄疸の増強を起こすことが報告されている。
9.5.4 分娩前に連用した場合、出産後新生児に離脱症状があらわれることが、ベンゾジアゼピン系化合物で報告されている。
9.6 授乳婦
授乳を避けさせること。
9.6.1 ヒト母乳中へ移行することが報告されており、また、新生児の黄疸を増強する可能性がある。
9.6.2 ヒト母乳中へ移行し、新生児に嗜眠、体重減少等を起こすことが他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されている。
9.7 小児等
9.7.1 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.7.2 低出生体重児、新生児に投与する場合には十分注意すること。
本剤は添加剤としてベンジルアルコールを含有している。外国において、ベンジルアルコールの静脈内大量投与(99〜234mg/kg)により、中毒症状(あえぎ呼吸、アシドーシス、痙攣等)が低出生体重児に発現したとの報告がある。
9.8 高齢者
運動失調等の副作用が発現しやすい。

10. 相互作用

10.2 併用注意
アルコール
(飲酒)
中枢神経抑制作用が増強されるおそれがある。
アルコールとの併用は避けることが望ましい。
ともに中枢神経抑制作用を有するため、相互に作用を増強するおそれがある。
中枢神経抑制剤
フェノチアジン誘導体
バルビツール酸誘導体
鎮痛薬
麻酔薬 等
中枢神経抑制作用が増強されるおそれがある。
アルコールとの併用は避けることが望ましい。
ともに中枢神経抑制作用を有するため、相互に作用を増強するおそれがある。
モノアミン酸化酵素阻害剤クロルジアゼポキシドで舞踏病が発現したとの報告がある。機序は不明である。
シメチジン本剤の中枢神経抑制作用が増強されるおそれがある。シメチジンが肝薬物代謝酵素(CYP3A4)を阻害するため本剤の血中濃度が上昇する。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 無呼吸、呼吸抑制、舌根沈下(各0.1〜5%未満)
重篤な転帰をたどることがあるので観察を十分に行うこと。このような場合には、気道を確保し、換気をはかるなど適切な処置を行うこと。[8.59.1.1参照]
11.1.2 錯乱(0.1%未満)
注)発現頻度は製造販売後調査を含む。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 1%以上0.1〜1%未満0.1%未満
精神神経系 覚醒困難、興奮、多弁麻酔後睡眠
肝臓 AST上昇ALT上昇
呼吸器 しゃっくり
循環器血圧低下徐脈頻脈
消化器 嘔吐 
過敏症  発疹
その他 体動尿閉、乏尿

13. 過量投与

13.1 症状
昏睡等の中枢神経抑制作用に基づく症状
13.2 処置
本剤の過量投与が明白又は疑われた場合の処置としてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与する場合には、使用前にフルマゼニルの使用上の注意を必ず読むこと。[8.4参照]

14. 適用上の注意

14.1 薬剤調整時の注意
14.1.1 希釈調製後は速やかに使用すること。
14.1.2 他の注射剤と配合した場合は、経時的に変化することがあるので注意すること。
14.1.3 アルカリ性薬剤との配合には注意する(黄変化を起こすことがある)。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 急速に静脈内に注射した場合、あるいは細い静脈内に注射した場合には血栓性静脈炎を起こすおそれがあるので、なるべく太い静脈を選んで投与すること。
14.2.2 動脈内に注射した場合には、末梢の壊死を起こすおそれがあるので動脈内には絶対に注射しないこと。
14.2.3 筋肉内に注射した場合には、局所障害を起こすおそれがあるので筋肉内には注射しないこと。
14.2.4 静脈内注射時に血管痛がみられることがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 本剤は鎮痛作用を有しないので、必要ならば鎮痛剤を併用すること。
15.1.2 投与した薬剤が特定されないままにフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与された患者で、新たに本剤を投与する場合、本剤の鎮静・抗痙攣作用が変化、遅延するおそれがある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
健康成人男子5名にフルニトラゼパム2mg静脈内投与したとき、未変化体の血中濃度は3相性の減少を示し、各相の平均半減期はそれぞれ8分、2時間及び24時間であった。また、投与後4時間以降は緩徐な消失を示した1)
健康成人におけるフルニトラゼパム2mg静脈内投与時の血中未変化体濃度推移
Mean±S.E.M.,n=5
フルニトラゼパム2mg単回静脈内投与時の薬物動態パラメータ
Cmax(ng/mL)t1/2π(min)t1/2α(hr)t1/2β(hr)AUC0-24h(ng・hr/mL)
47.5±5.38224232.8±28.3

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験
(1)麻酔導入剤として、本剤0.013〜0.038注)mg/kgの静注により手術患者357例中323例(90.5%)に入眠が得られた2)
注)本剤の承認された用量は「通常成人に対し全身麻酔の導入としてはフルニトラゼパムとして体重1kgあたり0.02〜0.03mg、局所麻酔時の鎮静としてはフルニトラゼパムとして体重1kgあたり0.01〜0.03mgとし、必要に応じて初回量の半量ないし同量を追加投与する。なお、患者の年齢、感受性、全身状態、手術術式、麻酔方法などに応じて適宜増減する。」である。
(2)手術患者を対象とした比較試験で、入眠効果、導入状態、深度ともに本剤の有用性が認められている3)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜に存在するベンゾジアゼピン受容体にアゴニストとして高い親和性で結合し、GABA親和性を増大させることにより、GABAニューロンの作用を特異的に増強すると考えられている4)
18.2 睡眠作用、麻酔・鎮痛増強作用
本薬は各種動物試験(マウス、ラット、ネコ、カニクイザル)において、他のベンゾジアゼピン系化合物と同様の薬理学的スペクトラム(静穏・馴化、睡眠誘起・睡眠増強、抗痙攣、筋弛緩作用等)を示したが、特にネコに静脈内投与したとき、脳波は睡眠パターンを示し、各種刺激による脳波覚醒反応の著明な抑制が認められた。またマウス、ラットにおいて麻酔剤、鎮痛剤の作用を増強することが認められた5)6)
18.3 ヒト臨床脳波試験
手術患者に本剤0.02〜0.04注)mg/kgを静脈内投与し、脳波、呼吸曲線、心電図等を測定したところ、著明な入眠作用が認められたが、血圧、脈拍、呼吸にはほとんど変化が認められなかった7)
注)本剤の承認された用量は「通常成人に対し全身麻酔の導入としてはフルニトラゼパムとして体重1kgあたり0.02〜0.03mg、局所麻酔時の鎮静としてはフルニトラゼパムとして体重1kgあたり0.01〜0.03mgとし、必要に応じて初回量の半量ないし同量を追加投与する。なお、患者の年齢、感受性、全身状態、手術術式、麻酔方法などに応じて適宜増減する。」である。

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. フルニトラゼパム

一般的名称 フルニトラゼパム
一般的名称(欧名) Flunitrazepam
化学名 5-(2-Fluorophenyl)-1-methyl-7-nitro-1,3-dihydro-2H-1,4-benzodiazepin-2-one
分子式 C16H12FN3O3
分子量 313.28
融点 168〜172℃
物理化学的性状 フルニトラゼパムは白色〜微黄色の結晶性の粉末である。
本品は酢酸(100)に溶けやすく、無水酢酸又はアセトンにやや溶けやすく、エタノール(99.5)又はジエチルエーテルに溶けにくく、水にほとんど溶けない。
KEGG DRUG D01230

20. 取扱い上の注意

外箱開封後は、遮光して保存すること。本剤は、光により含量が低下する。

22. 包装

10管(褐色ガラスアンプル)

23. 主要文献

  1. 深沢英雄ら, 臨床薬理, 9 (3), 251-265, (1978) »DOI
  2. 高橋長雄ら, 臨床薬理, 12 (3), 323-334, (1981) »DOI
  3. 高橋長雄ら, 麻酔, 30 (8), 837-848, (1981) »PubMed
  4. 岡田敏一, 神経精神薬理, 2 (1), 5-16, (1980)
  5. 矢島孝ら, 応用薬理, 21 (1), 123-142, (1981)
  6. 金子武稔ら, 日本薬理学雑誌, 77 (4), 383-395, (1981) »PubMed
  7. 木谷泰治ら, 臨床薬理, 10 (4), 609-610, (1979) »DOI

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
エーザイ株式会社 hhcホットライン
〒112-8088 東京都文京区小石川4-6-10
電話:フリーダイヤル 0120-419-497
製品情報問い合わせ先
エーザイ株式会社 hhcホットライン
〒112-8088 東京都文京区小石川4-6-10
電話:フリーダイヤル 0120-419-497

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元(輸入元)
エーザイ株式会社
東京都文京区小石川4-6-10

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版