1.1 本剤は緊急時に適切な対応がとれる施設において循環器疾患治療や救急医療に十分な知識及び経験のある医師の下で使用すること。
1.2 本剤の投与により過度の低血圧が急激にあらわれることがあり、場合によっては死に至る可能性があるので、必ず血圧を連続的にモニター(観血的動脈圧測定等)しながら、慎重に投与すること。[
8.5、
11.1.1、
13.1参照]
1.3 本剤の投与によりシアン中毒があらわれることがあり、場合によっては死に至ることがあるので、血圧、心拍数、心電図の他に血液ガス及び酸塩基平衡が常時測定できる十分な設備が整った施設において、慎重に投与すること。[
7.2、
8.4、
9.1.6、
11.1.3、
13.1参照]
2.1 脳に高度な循環障害のある患者[脳循環が抑制されるおそれがある。]
2.2 甲状腺機能不全の患者[代謝物のチオシアンにより甲状腺機能が低下する場合がある。][
9.1.2参照]
2.3 レーベル病(遺伝性視神経萎縮症)、たばこ弱視あるいはビタミンB12欠乏症の患者[シアンの解毒処理能力が低下している場合がある。]
2.4 重篤な肝機能障害のある患者[
9.3.1参照]
2.5 重篤な腎機能障害のある患者[
9.2.1参照]
2.6 高度な貧血の患者[血圧低下により貧血症状(めまい等)を悪化させるおそれがある。]
2.7 ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者[
10.1参照]
本剤は、5%ブドウ糖注射液で希釈し、ニトロプルシドナトリウム水和物として0.06〜0.1%(1mL当たり0.6〜1mg)溶液を持続静注する。
<手術時の低血圧維持>
通常、成人には1分間に体重1kg当たりニトロプルシドナトリウム水和物として0.5μg/kg/分の投与速度で投与を開始し、過度の血圧低下に注意しながら徐々に増量して目的値まで血圧を下げ、以後血圧をモニターしながら投与速度を調節する。通常、2.5μg/kg/分以下の投与速度で目的とする血圧が得られ、それを維持することができる。なお、最高投与速度は3μg/kg/分を限度とする。また、開始投与速度は年齢、症状により適宜減量する。
<手術時の異常高血圧の救急処置>
通常、成人には1分間に体重1kg当たりニトロプルシドナトリウム水和物として0.5μg/kg/分の投与速度で投与を開始し、過度の血圧低下に注意しながら徐々に増量して目的値まで血圧を下げ、以後血圧をモニターしながら投与速度を調節する。通常、2.0μg/kg/分以下の投与速度で目的とする血圧が得られ、それを維持することができる。なお、最高投与速度は3μg/kg/分を限度とする。また、開始投与速度は年齢、症状により適宜減量する。
<急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)、高血圧性緊急症>
通常、小児には1分間に体重1kg当たりニトロプルシドナトリウム水和物として0.5μg/kg/分の投与速度で投与を開始し、過度の血圧低下に注意しながら徐々に増量して目的とする血行動態を得るまで循環動態をモニターしながら投与速度を調節する。通常、3.0μg/kg/分以下の投与速度で目的とする血行動態が得られ、それを維持することができる。なお、最高投与速度は10μg/kg/分を限度とする。また、開始投与速度は年齢、症状により適宜減量する。
<効能共通>
7.1 高齢者では本剤の血圧低下作用が強くあらわれることがあるので、低用量から投与を開始するなど、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。[
9.8.1、
9.8.2参照]
7.2 ニトロプルシドナトリウム水和物の代謝物として生成されたシアンはさらにチオシアンに代謝されて解毒されるが、500μg/kg以上のニトロプルシドナトリウム水和物を2μg/kg/分より速く投与すると、体内における解毒処理能力を超えてシアンが生成されることが知られているため、投与速度が2μg/kg/分を超える場合には総投与量が500μg/kg以上とならないように注意すること。[
1.3、
8.4、
9.1.6、
11.1.3、
13.1参照]
<急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)、高血圧性緊急症>
7.3 3μg/kg/分を超える投与速度での投与は重篤な副作用の発生リスクが上昇するため必要最小限に留め、長時間維持しないこと。なお、最高投与速度(10μg/kg/分)での投与は10分を超えないこと。[
11.1.1-
11.1.3参照]
8.1 低血圧を必要とする手術ではECG、導尿等により、心機能や腎機能を監視すること。
8.2 呼吸抑制があらわれることがあるので、呼吸管理に注意すること。また、本剤の投与により動脈血酸素分圧(PaO
2)が低下することがあるので、本剤の投与中はPaO
2又は動脈血酸素飽和度(SaO
2)の監視を行い、必要に応じて吸入酸素濃度(FiO
2)の調節を行うこと。なお、PaO
2低下時に酸素吸入が行われていない場合は投与を中止し、速やかに酸素吸入を行うこと。[
11.2参照]
8.3 投与終了後は、患者の血圧が完全に回復するまで管理を行うこと。
8.4 本剤の投与で代謝物によるシアン中毒を生じるおそれがあるので、血圧や心拍数の他に、心電図、血液ガス及び酸塩基平衡をモニターすること。本剤の使用に際しては日局 チオ硫酸ナトリウム水和物、日局 亜硝酸アミル又は亜硝酸ナトリウム
注)をあらかじめ用意し、救急処置の準備をしておくことが望ましい。また、硬膜外麻酔等施行時の局所麻酔薬の副作用や全身麻酔覚醒時の症状の中には、頭痛、めまい、嘔気、嘔吐等のように、シアン中毒時の自覚症状と類似するものがあるので、これらの症状があらわれた場合も血液ガス及び酸塩基平衡等を観察し、シアン中毒を疑わせる場合は同様の処置を行うこと。血中シアン濃度の上昇には個人差があり、特に肥満患者においては高値を示すことがあるので、投与速度に注意し、慎重に投与すること。なお、外国ではニトロプルシドナトリウム水和物の過量投与によるシアン中毒の死亡例も報告されている。[
1.3、
7.2、
9.1.6、
11.1.3、
13.1参照]
注)亜硝酸ナトリウムについては医薬品として市販されていない。
8.5 本剤の血圧降下作用は強く、また、個人差も見られるので、必ず血圧と心拍数を連続的に監視しながら投与速度に注意し、慎重に投与すること。なお、外国では血圧のモニターを怠った患者において過度の低血圧が強くあらわれることにより非可逆性の虚血性障害や、場合によっては死亡に至る可能性があると報告されている。[
1.2、
11.1.1、
13.1参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 頭部外傷又は脳出血による血腫などの頭蓋内圧亢進症の患者
9.1.2 甲状腺機能の低下した患者
代謝物のチオシアンにより甲状腺機能が低下する場合がある。[
2.2参照]
9.1.3 心機能障害のある患者
9.1.4 著しく血圧の低い患者
9.1.5 本剤の添加剤カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム水和物に対し過敏症の既往歴のある患者
9.1.6 極度な肥満の患者
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎機能障害患者
投与しないこと。腎循環が抑制されるおそれがある。[
2.5参照]
9.2.2 腎機能障害患者(重篤な腎機能障害患者を除く)
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝機能障害患者
投与しないこと。肝循環が抑制されるおそれがある。[
2.4参照]
9.3.2 肝機能障害患者(重篤な肝機能障害患者を除く)
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で、乳汁中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
<手術時の低血圧維持、手術時の異常高血圧の救急処置>
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
9.8.1 75歳以上の高齢者
75歳以上の高齢者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。[
7.1参照]
9.8.2 75歳未満の高齢者
手術患者を対象にして行われた臨床試験において、手術時の低血圧維持における主投与速度の平均は高齢者(65歳以上)で1.14μg/kg/分、非高齢者で1.45μg/kg/分と高齢者で遅かった。また、手術時の異常高血圧の救急処置においても、主投与速度の平均は高齢者で0.65μg/kg/分、非高齢者で1.36μg/kg/分と高齢者で遅かった。このように、高齢者では降圧維持に必要な投与速度が非高齢者に比べて遅く、本剤の血圧低下作用が強くあらわれやすいと考えられるので、低用量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
また、手術時の低血圧維持の臨床試験において、高齢者にPaO
2低下等の副作用発現率が高い傾向が認められているので注意すること。[
7.1参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 過度の低血圧(0.1〜5%未満)
11.1.2 リバウンド現象(0.1〜5%未満)
必要に応じて降圧剤を投与するなど適切な処置を行うこと。特に、手術時の異常高血圧の救急処置に用いる場合に起こりやすいので注意すること。[
7.3参照]
11.1.3 シアン中毒(頻度不明)
シアン中毒の徴候として、耐薬性の出現、代謝性アシドーシスの進行、静脈血酸素含量の上昇及び心電図ST-T波変化などがあらわれる。
症状が発現した場合は、直ちに本剤の投与を中止し、シアン中毒に対する治療を行うこと。シアン中毒の治療には日局 チオ硫酸ナトリウム水和物の静脈内投与、日局 亜硝酸アミルの吸入又は亜硝酸ナトリウム
注)の静脈内投与等が有効であり、特に亜硝酸剤投与後にチオ硫酸ナトリウム水和物を投与する併用療法の効果が高い。[
1.3、
7.2、
7.3、
8.4、
9.1.6、
13.1参照]
注)亜硝酸ナトリウムについては医薬品として市販されていない。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 頻度不明 |
循環器 | | 頻脈、不整脈、心電図異常 | |
呼吸器 | PaO2低下注) | | |
肝臓 | | 肝機能検査値異常(ビリルビン上昇、AST上昇、ALT上昇 等) | |
血液 | | | 一酸化炭素ヘモグロビン増加 |
その他 | | 代謝性アシドーシス | |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤は強力な降圧作用を有するので、必ず希釈して用いること。
14.1.2 調製後は速やかに使用し、残液は廃棄すること。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 本剤の投与には必ずシリンジポンプを使用すること。一時的な大量注入により過剰な低血圧が生ずる危険を防ぐため、投与ラインは屈曲しないように適度な長さのものを使用し、また、三方活栓を介して本剤を投与する時は、注射部位からできるだけ近位に三方活栓を設置すること。
14.2.2 投与終了後は投与ラインの残存液にも注意すること。