医療用医薬品 : トラネキサム酸

List   Top

医薬品情報


総称名 トラネキサム酸
一般名 トラネキサム酸
欧文一般名 Tranexamic Acid
薬効分類名 抗プラスミン剤
薬効分類番号 3327
ATCコード B02AA02
KEGG DRUG
D01136 トラネキサム酸
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
日米の医薬品添付文書はこちらから検索することができます。

添付文書情報2023年10月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
トラネキサム酸カプセル250mg「トーワ」 (後発品) TRANEXAMIC ACID CAPSULES 250mg"TOWA" 東和薬品 3327002M1281 10.4円/カプセル

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
トロンビンを投与中の患者[10.1参照]

4. 効能または効果

○全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向(白血病、再生不良性貧血、紫斑病など及び手術中・術後の異常出血)
○局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血(肺出血、鼻出血、性器出血、腎出血、前立腺手術中・術後の異常出血)
○下記疾患における紅斑・腫脹・そう痒などの症状
湿疹およびその類症・蕁麻疹、薬疹・中毒疹
○下記疾患における咽頭痛・発赤・充血・腫脹などの症状
扁桃炎、咽喉頭炎
○口内炎における口内痛および口内粘膜アフター

6. 用法及び用量

トラネキサム酸として、通常成人1日750〜2,000mgを3〜4回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 血栓のある患者(脳血栓、心筋梗塞、血栓性静脈炎等)及び血栓症があらわれるおそれのある患者
血栓を安定化するおそれがある。
9.1.2 消費性凝固障害のある患者
ヘパリン等と併用すること。血栓を安定化するおそれがある。
9.1.3 術後の臥床状態にある患者及び圧迫止血の処置を受けている患者
静脈血栓を生じやすい状態であり、本剤投与により血栓を安定化するおそれがある。離床、圧迫解除に伴い肺塞栓症を発症した例が報告されている。
9.1.4 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 腎不全のある患者
血中濃度が上昇することがある。
9.2.2 人工透析患者11.1.1参照]
9.5 妊婦
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下していることが多い。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
トロンビン
[2.参照]
血栓形成傾向があらわれるおそれがある。血栓形成を促進する作用があり、併用により血栓形成傾向が増大する。
10.2 併用注意
ヘモコアグラーゼ大量併用により血栓形成傾向があらわれるおそれがある。ヘモコアグラーゼによって形成されたフィブリン塊は、本剤の抗プラスミン作用によって比較的長く残存し閉塞状態を持続させるおそれがあると考えられている。
バトロキソビン血栓・塞栓症を起こすおそれがある。バトロキソビンによって生成するdesAフィブリンポリマーの分解を阻害する。
凝固因子製剤
エプタコグアルファ等
口腔等、線溶系活性が強い部位では凝固系がより亢進するおそれがある。凝固因子製剤は凝固系を活性化させることにより止血作用を発現する。一方、本剤は線溶系を阻害することにより止血作用を発現する。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 痙攣(頻度不明)
人工透析患者において痙攣があらわれることがある。[9.2.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜1%未満0.1%未満
過敏症 そう痒感、発疹等
消化器食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、胸やけ 
その他 眠気

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.2 非臨床試験に基づく情報
イヌに長期・大量投与したところ網膜変性があらわれたとの報告がある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男性15例にトラネキサム酸を単回経口投与したとき、薬物動態パラメータは次のとおりであった。1)
単回経口投与時のトラネキサム酸の薬物動態パラメータ
投与量例数Cmax(μg/mL)Tmax(hr)t1/2(hr)
錠250mg53.92〜33.1
錠500mg56.03.3
カプセル500mg55.53.3
16.1.2 生物学的同等性試験
トラネキサム酸カプセル250mg「トーワ」とトランサミンカプセル250mgをクロスオーバー法によりそれぞれ1カプセル(トラネキサム酸として250mg)家兎(n=10)に単回経口投与し、血漿中未変化体濃度について比較検討した結果、両製剤間の生物学的利用率には有意差は認められなかった。2)
16.3 分布
マウスに14C-トラネキサム酸を40mg/kgの投与量で単回経口投与したところ、大部分の臓器において投与1〜2時間後に最高濃度を示し、組織内分布は、肝、腎、肺、膵で高く、子宮、脾、心、筋肉がこれに次ぎ、脳では低かった。3)
16.5 排泄
健康成人男性15例にトラネキサム酸を250mg又は500mg単回経口投与したとき、投与後24時間以内に投与量の約40〜70%が未変化体として尿中に排泄された。1)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
<湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹における紅斑・腫脹・そう痒等の症状>
17.1.1 国内二重盲検比較試験
皮膚疾患(湿疹及びその類症、薬疹・中毒疹)の患者67例を対象に、そう痒、発赤、腫脹等の症状に対する効果をトラネキサム酸カプセル(35例)とプラセボ(32例)との二重盲検比較試験により検討した結果、有効以上はプラセボ31.3%(10/32例)に対しトラネキサム酸カプセル62.9%(22/35例)で、トラネキサム酸カプセルが有意(p<0.05)に優れていた。4)
<扁桃炎、咽喉頭炎における咽頭痛・発赤・充血・腫脹等の症状、口内炎における口内痛及び口内粘膜アフター>
17.1.2 国内二重盲検比較試験
耳鼻咽喉科疾患(急性咽喉頭炎、急性扁桃炎、口内炎等)の患者168例を対象に疼痛、腫脹及び発赤に対する効果をトラネキサム酸カプセル(84例)とプラセボ(84例)との二重盲検比較試験により検討した結果、有効以上はプラセボ26.2%(22/84例)に対しトラネキサム酸カプセル52.4%(44/84例)で、トラネキサム酸カプセルが有意(p<0.05)に優れていた。5)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
線維素溶解現象(線溶現象)は生体の生理的ならびに病的状態において、フィブリン分解をはじめ、血管の透過性亢進等に関与し、プラスミンによって惹起される生体反応を含め、種々の出血症状やアレルギー等の発生進展や治癒と関連している。
トラネキサム酸は、このプラスミンの働きを阻止し、抗出血・抗アレルギー・抗炎症効果を示す。6)7)8)
18.2 抗プラスミン作用
トラネキサム酸は、プラスミンやプラスミノゲンのフィブリンアフィニティー部位であるリジン結合部位(LBS)と強く結合し、プラスミンやプラスミノゲンがフィブリンに結合するのを阻止する。このため、プラスミンによるフィブリン分解は強く抑制される。更に、α2-マクログロブリン等血漿中アンチプラスミンの存在下では、トラネキサム酸の抗線溶作用は一段と強化される。9)10)11)12)13)14)
18.3 止血作用
異常に亢進したプラスミンは、血小板の凝集阻止、凝固因子の分解等を起こすが、軽度の亢進でも、フィブリン分解がまず特異的に起こる。したがって一般の出血の場合、トラネキサム酸は、このフィブリン分解を阻害することによって止血すると考えられる。6)9)
18.4 抗アレルギー・抗炎症作用
トラネキサム酸は、血管透過性の亢進、アレルギーや炎症性病変の原因になっているキニンやその他の活性ペプチド等のプラスミンによる産生を抑制する(モルモット、ラット)。6)7)8)15)16)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. トラネキサム酸

一般的名称 トラネキサム酸
一般的名称(欧名) Tranexamic Acid
化学名 trans-4-(Aminomethyl)cyclohexanecarboxylic acid
分子式 C8H15NO2
分子量 157.21
物理化学的性状 白色の結晶又は結晶性の粉末である。水に溶けやすく、エタノール(99.5)にほとんど溶けない。
KEGG DRUG D01136

22. 包装

100カプセル[10カプセル×10:PTP]
1000カプセル[10カプセル×100:PTP]
1000カプセル[バラ]

23. 主要文献

  1. 佐野光司ほか, 臨床薬理, 7 (4), 375-382, (1976) »DOI
  2. 社内資料:生物学的同等性試験
  3. 豊島 滋ほか, 基礎と臨床, 5 (4), 740-748, (1971)
  4. 宗像 醇, 西日本皮膚科, 31 (2), 141-146, (1969) »DOI
  5. 宮城 平, 臨床と研究, 46 (1), 243-245, (1969)
  6. 窓岩清治, 日本血栓止血学会誌, 30 (1), 237-240, (2019) »DOI
  7. 山田外春ほか, プラスミン研究会報告集, 14, 364-366, (1974)
  8. 山崎英正ほか, 日本薬理学雑誌, 63 (6), 560-571, (1967) »PubMed
  9. 安孫子雍史, Med Pharm., 10 (1), 7-11, (1976)
  10. Iwamoto M, Thrombos Diathes Haemorrh., 33 (3), 573-585, (1975)
  11. Markus G,et al., J Biol Chem., 254 (4), 1211-1216, (1979) »PubMed
  12. Abiko Y,et al., Biochim Biophys Acta., 185 (2), 424-431, (1969) »PubMed
  13. Abiko Y,et al., Biochim Biophys Acta., 214 (3), 411-418, (1970) »PubMed
  14. 伊藤隆史ほか, 日本血栓止血学会誌, 31 (3), 325-333, (2020) »DOI
  15. 木村義民ほか, アレルギー, 15 (9), 755-763, (1966) »DOI
  16. 近藤元治, プラスミン研究会報告集, 6, 36-37, (1966)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
東和薬品株式会社 学術部DIセンター
〒570-0081 大阪府守口市日吉町2丁目5番15号
電話:0120-108-932
FAX:06-7177-7379
製品情報問い合わせ先
東和薬品株式会社 学術部DIセンター
〒570-0081 大阪府守口市日吉町2丁目5番15号
電話:0120-108-932
FAX:06-7177-7379

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
東和薬品株式会社
大阪府門真市新橋町2番11号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/09/17 版