2.1 出血している患者(血小板減少性紫斑病、血管障害による出血傾向、血友病その他の凝固障害、月経期間中、手術時、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、流早産・分娩直後等性器出血を伴う妊婦・産褥婦、頭蓋内出血の疑いのある患者等)[止血が困難になるおそれがある。]
2.2 手術直後の患者[止血が困難になるおそれがある。]
2.3 出血する可能性のある患者(内臓腫瘍、消化管の憩室炎、大腸炎、亜急性細菌性心内膜炎、重症高血圧症、重症糖尿病の患者等)[出血するおそれがある。]
2.5 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
通常、成人1日1回バトロキソビンとして10バトロキソビン単位(BU)を輸液で用時希釈し、隔日に1時間以上かけて点滴静注する。
ただし、以下の場合は初回量を20BUとする。
・治療前の血中フィブリノゲン濃度が400mg/dL以上の場合
・突発性難聴において急性効果を期待する場合
投与期間は6週間以内とする。
8.1 本剤は、血漿フィブリノゲン濃度を低下させるので、出血傾向及び止血遅延を起こす可能性がある。したがって、あらかじめ出血の有無を十分確認するとともに、治療前に血漿フィブリノゲン濃度及び血小板を含む凝血学的検査等を行った上、慎重に投与すること。また、投与期間中は、少なくとも週1回血漿フィブリノゲン濃度及び血小板を含む凝血学的検査等を行い、臨床症状の観察を適宜行うこと。[
11.1.1参照]
なお、出血が疑われた場合は投与を中止し、輸血等適切な処置を行うこと。
8.2 本剤による治療中、動脈や深部静脈を損傷した場合に重篤な血腫を形成することがあるので、星状神経節ブロック、穿刺等の動脈や深部静脈を損傷する可能性のある治療又は検査は避けること。また、表在静脈穿刺部位での止血遅延が起こることがあるので、十分に圧迫止血すること。
8.3 患者に対し、本剤による出血の可能性について理解させ、次の事項及びその他必要と考えられる注意を与えること。また、外来患者には、これらの注意を記載した患者手帳を携帯させること。
・手術や抜歯をする場合は、事前に主治医に相談すること。
・他院や他科を受診する場合は、本剤の投与を医師、歯科医師に知らせること。
・創傷を受けやすい仕事に従事しないこと。
8.4 本剤に対し免疫学的耐性が生じることが知られているので、次の点に注意すること。
・血漿フィブリノゲン濃度の低下が得られなくなった場合には、投与を中止すること。
・再治療を行う場合にも、血漿フィブリノゲン濃度に留意すること。
8.5 本剤は安定剤としてゼラチン加水分解物を含有している。ゼラチン含有製剤の投与により、ショック、アナフィラキシー様症状(蕁麻疹、呼吸困難、口唇浮腫、喉頭浮腫等)があらわれたとの報告があるので、問診を十分に行い、投与後は観察を十分に行うこと
1)。[
9.1.4参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 薬剤過敏症又はその既往歴のある患者
9.1.2 消化管潰瘍の既往歴のある患者
9.1.3 脳血管障害後遺症の患者
9.1.4 ゼラチン含有製剤又はゼラチン含有の食品に対して、ショック、アナフィラキシー様症状(蕁麻疹、呼吸困難、口唇浮腫、喉頭浮腫等)等の過敏症の既往歴のある患者1)[8.5参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎障害のある患者
投与しないこと。本剤の代謝等に影響を与えるおそれがある。[
2.4参照]
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝障害のある患者
投与しないこと。本剤の代謝等に影響を与えるおそれがある。[
2.4参照]
9.5 妊婦
9.5.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.5.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対し、本剤投与中は抗凝固剤あるいはサリチル酸製剤(アスピリン等)との併用は避けること。妊娠マウスの胎児器官形成期投与試験で、本剤とサリチル酸ナトリウムを併用した場合、凝固系への影響とともに胚致死作用を高めるとの報告がある。[
10.2、
15.2.2参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ヤギ)で母乳中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら投与間隔に留意するなど慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 出血傾向(0.1%〜5%未満)[
8.1参照]
11.1.2 ショック(0.1%未満)
発現頻度は再審査結果を含む
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1%〜5%未満 | 0.1%未満 |
血液 | 好酸球増多、白血球増多、赤血球減少、ヘモグロビン減少、へマトクリット値減少、血小板増加 | 白血球減少、血小板減少 |
肝臓 | 血清AST上昇、血清ALT上昇、アルカリフォスファターゼ上昇 | |
腎臓 | BUN上昇、血清クレアチニン上昇、蛋白尿 | |
消化器 | 悪心・嘔吐 | 胃痛、食欲不振、胃部不快感等 |
精神神経系 | めまい、頭痛、頭重 | ふらつき、しびれ感 |
代謝異常 | 総コレステロールの上昇、中性脂肪の上昇 | |
感覚器注1) | 耳鳴 | 目のかすみ、眼振 |
過敏症 | 蕁麻疹 | 発疹等 |
注射部位 | 皮下出血、止血遅延 | 血管痛 |
その他 | 胸痛、発熱、不快感 | 冷感、脱力感、心外膜炎、鼻づまり |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 輸液で希釈後は速やかに投与を開始すること。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 点滴静注時には点滴速度に注意すること。点滴速度が速すぎることにより、ときに胸痛、気分不快感等があらわれることがある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 モルモット及びウサギによる感作実験で、抗体の産生を認めたとの報告がある。
15.2.2 妊娠マウスの胎児器官形成期投与試験で、本剤とサリチル酸ナトリウムを併用した場合、凝固系への影響とともに胚致死作用を高めるとの報告がある。[
9.5.2、
10.2参照]
18.1 作用機序
フィブリノゲンからフィブリノペプチドAのみを分離し、線溶系による分解を受けやすいdesAフィブリノゲンとすることにより、血漿フィブリノゲン濃度を低下させる。
18.2 血漿フィブリノゲン低下作用
18.2.1 血漿フィブリノゲン濃度は、投与量と相関して減少する。健常成人において10BU隔日3回投与でのフィブリノゲン濃度は、初回投与時では24時間後に最低値(平均84mg/dL)を示し、48時間後には若干上昇(平均107mg/dL)した。2回目以降は投与4〜10時間後に最低値を示し、以後徐々に上昇し、48時間後でほぼ100mg/dLを示した
2)17)(ヒト)。
18.2.2 静脈内投与により、フィブリノゲン濃度の低下が認められ、その作用は持続的であった
21)(マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、サル、イヌ)。
18.3 その他の血液凝固線溶系
フィブリノゲンを除く血液凝固因子にはほとんど影響を及ぼさないが、線溶系ではフィブリノゲン/フィブリン分解産物(FDP)の増加、ユーグロブリン溶解時間(ELT)の短縮、プラスミノゲン量及びα2-プラスミンインヒビター(α2-PI)の減少、活性プラスミンの出現が認められた。また、血小板数、血小板機能、出血時間にはほとんど影響はなかった
17)18)19)(ヒト)。
18.4 血液レオロジカルファクター
18.4.1 全血粘度の低下、比粘度の低下を認め、また、赤血球沈降速度の抑制及び赤血球通過時間の若干の短縮が示された
4)10)18)19)20)(ヒト)。
18.4.2 静脈内投与により、全血粘度・血漿粘度の低下、Filterability(血漿の通過時間/全血の通過時間)の亢進、赤血球沈降速度に対する抑制作用が認められた
22)(イヌ)。
18.5 末梢循環
18.5.1 指趾の皮膚温の上昇、血流速度の増加が認められた
3)4)(ヒト)。
18.5.2 静脈内投与により血管抵抗の低下、血流速度の増加が認められ、末梢及び微小循環の改善を示した
23)24)25)(ウサギ、イヌ)。
18.6 抗血栓作用
実験的動・静脈血栓の抑制効果を示すことから抗血栓作用が認められた
26)(イヌ)。