2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 急性閉塞隅角緑内障のある患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。]
2.3 重症筋無力症の患者[筋弛緩作用により症状を悪化させるおそれがある。]
○心身症(胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、高血圧症、心臓神経症、自律神経失調症)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・易疲労性・睡眠障害
通常、成人にはメキサゾラムとして1日1.5〜3mgを3回に分けて経口投与する。なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、高齢者には1日1.5mgまでとする。
8.1 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
8.2 連用により薬物依存を生じることがあるので、漫然とした継続投与による長期使用を避けること。本剤の投与を継続する場合には、治療上の必要性を十分に検討すること。[
11.1.1参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 心障害のある患者
9.1.2 脳に器質的障害のある患者
9.1.3 衰弱患者
9.1.4 中等度呼吸障害又は重篤な呼吸障害(呼吸不全)のある患者
他のベンゾジアゼピン系薬剤で、呼吸機能の低下している患者に投与したところ、呼吸不全をおこし、炭酸ガスナルコーシスになったとの報告がある。
9.2 腎機能障害患者
薬物の体内蓄積による副作用の発現に注意すること。一般に排泄が遅延する傾向がある。
9.3 肝機能障害患者
薬物の体内蓄積による副作用の発現に注意すること。一般に排泄が遅延する傾向がある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.5.1 妊娠中に他のベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム)の投与を受け、出生した新生児に口唇裂(口蓋裂を伴うものを含む)等が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告がある。
9.5.2 ベンゾジアゼピン系薬剤で新生児に哺乳困難、嘔吐、活動低下、筋緊張低下、過緊張、嗜眠、傾眠、呼吸抑制・無呼吸、チアノーゼ、易刺激性、神経過敏、振戦、低体温、頻脈等を起こすことが報告されている。なお、これらの症状は、離脱症状あるいは新生児仮死として報告される場合もある。また、ベンゾジアゼピン系薬剤で新生児に黄疸の増強を起こすことが報告されている。
9.5.3 分娩前に連用した場合、出産後新生児に離脱症状があらわれることが、ベンゾジアゼピン系薬剤で報告されている。
9.6 授乳婦
授乳を避けさせること。ヒト母乳中へ移行し、新生児に嗜眠、体重減少等を起こすことが他のベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム)で報告されており、また黄疸を増強する可能性がある。
9.7 小児等
9.8 高齢者
少量から投与を開始するなど慎重に投与すること。高齢者では、運動失調等の副作用が発現しやすい。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 依存性(頻度不明)
連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し慎重に投与すること。また、連用中における投与量の急激な減少ないし中止により、痙攣発作、せん妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想等の離脱症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。[
8.2参照]
11.1.2 刺激興奮、錯乱(いずれも頻度不明)
注)発現頻度は使用成績調査を含む。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 0.1%以上 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
| 精神神経系 | 眠気(3.90%)、ふらつき(1.29%)、傾眠、めまい、歩行困難、ろれつがまわらない | 頭痛、頭重感、多夢、物忘れ、立ちくらみ | 運動失調、舌のもつれ |
| 肝臓 | AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇、ALP上昇 | 肝機能異常 | − |
| 血液 | − | 貧血、白血球減少、白血球増多、好酸球増多 | − |
| 循環器 | − | 血圧低下 | − |
| 消化器 | 口渇、食欲不振 | 悪心、嘔吐、嘔気、胃部不快感、胃もたれ、胃痛、腹痛、下痢 | − |
| 過敏症 | − | 発疹 | − |
| 骨格筋 | 倦怠感、脱力感 | 易疲労感 | − |
| 泌尿器 | − | BUN上昇 | − |
| その他 | − | 性欲減退 | − |
13.1 処置
本剤の過量投与が明白又は疑われた場合の処置としてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与する場合には、使用前にフルマゼニルの使用上の注意を必ず読むこと。
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.1 臨床使用に基づく情報
投与した薬剤が特定されないままにフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与された患者で、新たに本剤を投与する場合、本剤の鎮静・抗痙攣作用が変化、遅延するおそれがある。
16.1 血中濃度
16.1.1 血漿中濃度
健康成人男性6例にメキサゾラムを2mg又は4mgの投与量で単回経口投与したとき、血漿中にメキサゾラムは検出されなかった。代謝物chlornordiazepam(CND)は投与後1〜2時間で最高血中濃度に達し、その後極めて緩徐に血中から消失した。
1)
16.3 分布
16.3.1 血漿蛋白結合率
メキサゾラム及び主要代謝物CND、ロラゼパムヒト血漿中蛋白結合率を平衡透析法により検討した結果、メキサゾラムの血漿蛋白結合率は約98%であり、CND及びロラゼパムの血漿蛋白結合率はいずれも90%以上であった(
in vitroデータ)
2)。
16.4 代謝
16.4.1 ヒト血漿中代謝物
健康成人男性6例にメキサゾラムを1回2mg、1日3回5日間反復投与したとき、血漿中にはCND及びロラゼパムが認められた
1)。
16.4.2 薬物代謝酵素
メキサゾラムはCYP3A4の基質であり、CYP3A4によってCNDに代謝された後、さらにロラゼパムに代謝される(
in vitroデータ)
3)。[
10.参照]
16.5 排泄
健康成人男性6例にメキサゾラムを2mg又は4mgの投与量で単回投与したとき、ロラゼパム、CND又はベンゾフェノン型の代謝物として尿中に排泄され、投与72時間までの尿中総排泄率は10%以下であった
1)。
注)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人にはメキサゾラムとして1日1.5〜3mgを3回に分けて経口投与する。なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、高齢者には1日1.5mgまでとする。」である。
18.1 作用機序
ベンゾジアゼピン受容体は、抑制性神経伝達物質であるγ−アミノ酪酸(GABA)受容体及びCl
−チャンネルと複合体を形成して機能的に共役している。ベンゾジアゼピン誘導体はベンゾジアゼピン受容体に結合し、GABAのGABA受容体への親和性を増大させる。そしてGABA受容体と共役するCl
−チャンネルが活性化され、Cl
−イオンの透過性が高まる。Cl
−イオンの細胞内への流入を増加させて神経細胞を過分極の状態にさせることにより、神経系に抑制的に作用する。
9)
18.2 静穏作用
動物実験(マウス、ハムスター、ラット、サル
10))から、闘争反応、狂暴性、攻撃性、興奮を抑制する作用がジアゼパムより強いことが認められている。
これらの静穏作用は、ネコ
11)、ウサギの実験から、扁桃核−視床下部を含めた大脳辺縁系に本剤が作用する結果と推定される。
18.3 抗痙攣作用
動物実験(マウス、ラット、サル)からメジマイド、カルヂアゾールによる間代性痙攣を抑制する作用がジアゼパムより強いことが認められている。
18.4 筋弛緩作用
動物実験(ネコ)による除脳固縮の抑制、γ-運動ニューロンの活動性の低下がみられ、中枢性の筋弛緩作用が認められている
12)。
18.5 運動機能系に及ぼす影響
動物実験(マウス、ラット、イヌ)において、自発運動量抑制作用、筋弛緩作用、正位反射抑制作用、運動失調作用など運動機能系に及ぼす影響は少ないことが認められている。
18.6 その他
無麻酔ラットでストレス条件下の脳波変化を定量的に調べた結果、ストレス状態における亢進反応を有意に抑制することが認められている
13)。