<有効菌種>
アスペルギルス、カンジダ、ムコール、クリプトコッカス、ブラストマイセス、ヒストプラズマ、コクシジオイデス、ホルモデンドラム、ヒアロホーラ、ホルミシチウム
<適応症>
毒性が非常に強いため深在性の重篤な疾患にのみ適用すること。
<静注>
(調製法)本品1バイアル(50mg)中に注射用水又は5%ブドウ糖注射液10mLを加えて溶かし、溶液が透明になるまでゆっくりと振盪する。この溶解液(アムホテリシンB 5mg/mL)をさらに5%ブドウ糖注射液で500mL以上に希釈(アムホテリシンB 0.1mg/mL以下の濃度)して使用する。
通常、成人に対しては、1日体重1kg当りアムホテリシンB 0.25mg(力価)より開始し、次回より症状を観察しながら漸増し、1日量として体重1kg当り0.5mg(力価)を点滴静注するが、投与量は1日体重1kg当り1mg(力価)又は隔日体重1kg当り1.5mg(力価)までとする。副作用の発現のため投与困難な場合には、初回量は1日1mg(力価)より開始し、症状を観察しながら漸増し、1日総量50mg(力価)までを連日又は隔日1回点滴静注する。点滴静注は3〜6時間以上かけて徐々に行う。患者の症状、状態に応じて適宜用量を調節する。
<気管内注入>
本品1バイアル(50mg)を注射用水10mLに溶解し、その0.2〜4mL(1〜20mg)を更に注射用水約10mLに希釈(アムホテリシンB 0.1〜2mg/mL)して用いる。通常、初回量は1日1mg(力価)又は5〜10mg(力価)より開始し、漸次増量し、1日10〜20mg(力価)を隔日1回気管内に注入する。
<胸膜内注入>
気管内注入と同じ要領で溶解したアムホテリシンB液を、初回量は1日1mg(力価)より開始し、漸次増量し、5〜20mg(力価)を週1〜3回、胸水排除後、胸膜内に注入する。
<髄腔内注入>
1バイアル(50mg)を注射用水10mLに溶解し、その0.2〜4mL(1〜20mg)を更に注射用水20〜30mLに適宜希釈して用いる。通常1回0.25〜1mg(力価)を採取髄液量を超えない液量で漸増法により1日1回隔日、又は3日毎に徐々に注入する。
<膀胱内注入>
膀胱内の尿を排除し、アムホテリシンB 15〜20mg(力価)を注射用水100mLに溶解し、1日1〜2回尿道カテーテルをとおして直接注入する。注入後薬剤は1時間以上(出来れば2〜3時間)膀胱内にとどめておく。
<皮内注>
1バイアル(50mg)を2%プロカイン10mLに溶かし、その0.1〜0.4mL〔アムホテリシンBとして0.5〜2mg(力価)〕を病巣皮内及び皮下に分注する。1回の総量は50mg(力価)を限度とし、10〜30日の間隔で行う。
<吸入>
1バイアル(50mg)を注射用水10〜20mLで溶解し、1回2.5〜5mg/mLを1日2〜5回吸入する。1〜2ヵ月継続して行う。
<静注>
7.1 副作用発現により投与困難な場合があるので、初回は試験的に1mg(力価)を5%ブドウ糖注射液20mLに溶解し20〜30分かけて投与し、30分毎に体温、脈拍、呼吸、血圧を2〜4時間観察することが望ましい。
7.2 1日総投与量は体重1kg当り1.5mg(力価)を超えないこと。
7.3 休薬後7日以上を経て投与を再開する場合には用法及び用量欄の記載に従い初回量より再開すること。
8.1 腎障害(急性腎不全、尿細管性アシドーシス、腎石灰沈着、BUN上昇、クレアチニン上昇、低張尿等)があらわれることがあるので、定期的に腎機能(尿一般検査、クレアチニンクリアランス試験、BUN試験等)、血清電解質(特にカリウム、マグネシウム)の検査を行うなど、観察を十分に行うこと。総投与量が5gを超えると不可逆的な腎障害があらわれることがあるので十分に注意すること。また、本剤投与前に補液及びナトリウム補給を行うことにより、腎毒性の発現を低下させることがある。[
11.1.3、
11.1.8参照]
8.2 本剤は毒性が強く、無顆粒球症があらわれることがあるため、また患者によって忍容性の変動が大きいため、定期的に腎機能、肝機能、血清電解質(特にカリウム、マグネシウム)、血球数等の検査を行うなど、観察を十分に行うこと。[
11.1.6、
11.1.8参照]
9.2 腎機能障害患者
一旦休薬するか、投与間隔をあけて投与すること。本剤の投与により、更に腎機能が低下するおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中へ移行するかは不明である。
9.7 小児等
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常がみられた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 心停止、心不全、不整脈(心室頻拍、心室細動、心房細動等)(いずれも頻度不明)
11.1.2 急性肝不全(頻度不明)
11.1.3 腎障害(頻度不明)
急性腎不全、高窒素血症、尿細管性アシドーシス、腎石灰沈着、腎性尿崩症等の腎障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、無尿、乏尿、BUN上昇、クレアチニン上昇、低張尿、多飲、多尿等があらわれた場合には減量、休薬、血清電解質の補正等適切な処置を行うこと。特にこれらの症状が重篤な場合には患者の回復を待って投与を再開すること。[
8.1参照]
11.1.4 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(いずれも頻度不明)
11.1.5 アナフィラキシー(頻度不明)
11.1.6 無顆粒球症(頻度不明)[
8.2参照]
11.1.7 肺水腫(頻度不明)
11.1.8 低カリウム血症(頻度不明)
重篤な低カリウム血症があらわれることがあり、血清カリウム値の異常変動に伴い心室頻拍等の不整脈、全身倦怠感、脱力感等が発現するおそれがある。[
8.1、
8.2参照]
11.1.9 横紋筋融解症(頻度不明)
低カリウム血症を伴う横紋筋融解症があらわれることがあるので、筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.10 中枢神経障害(頻度不明)
本剤の髄腔内注入で、髄膜炎、脳症、脊髄障害、対麻痺等があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常がみられた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 頻度不明 |
| 腎臓 | BUN上昇、クレアチニン上昇、低張尿 |
| 精神神経系 | 頭痛、倦怠感 |
| 消化器 | 食欲不振、悪心・嘔吐、下痢、消化不良、痙攣性心窩部痛、出血性胃腸炎、下血 |
| 過敏症 | 発疹、そう痒、潮紅、アレルギー反応、斑点状丘疹性皮疹 |
| 血液 | 凝固障害、貧血、血小板減少、白血球減少、顆粒球減少、好酸球増多、白血球増多 |
| 循環器 | 血圧低下、血圧上昇 |
| 呼吸器 | 呼吸困難、気管支痙攣、過敏性肺臓炎 |
| 肝臓 | 肝機能異常、黄疸 |
| 神経系 | 末梢神経障害、複視、霧視、聴力低下、難聴、耳鳴 |
| その他 | 低カリウム血症、高カリウム血症、低マグネシウム血症、発熱、悪寒、筋肉痛、関節痛、めまい、痙攣、疼痛、体重減少、血栓性静脈炎、注射部疼痛 |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 沈殿が生じるため、溶解剤として、生理食塩液等の電解質溶液を使用しないこと。また、糖尿病患者でブドウ糖液が使用できない場合は、キシリトール輸液等の非電解質溶液の使用を考慮すること。
14.1.2 溶解液(アムホテリシンB 5mg/mL)は遮光し、冷蔵庫に保存し、なるべく早く使用すること。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 血管痛、血栓又は静脈炎を起こすことがあるので、注射液調製、注射部位、注射方法等に十分注意し、その注射速度はできるだけ遅くすること。なお、悪寒、戦慄が起こった場合には、さらに注射速度を遅くすること。注射部位の変更及び隔日投与で、血栓性静脈炎の発生頻度を低下させるとの報告がある。
14.2.2 投与速度
本剤を1時間以内で静脈内投与すると高カリウム血症、不整脈を起こすとの報告があるので、特に腎機能が低下している患者では、1時間以内の投与を避けること。
14.2.3 投与器具
本剤はコロイド溶液であり、1.0ミクロンより小さい孔径のインラインフィルターを使用すると、目詰まりを起こすことがあるので使用しないこと。インラインフィルターを使用する場合は、本剤の通過を確実にするために、1.0ミクロン以上の孔径のものを使用すること。