医療用医薬品 : カプトリル

List   Top

医薬品情報


総称名 カプトリル
一般名 カプトプリル
欧文一般名 Captopril
製剤名 カプトプリル製剤
薬効分類名 レニン・アンジオテンシン系降圧剤
薬効分類番号 2144
ATCコード C09AA01
KEGG DRUG
D00251 カプトプリル
KEGG DGROUP
DG01501 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
DG03231 血圧降下薬
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
日米の医薬品添付文書はこちらから検索することができます。

添付文書情報2024年12月 改訂(第3版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
カプトリル錠12.5mg CAPTORIL Tablets 12.5mg アルフレッサファーマ 2144001F1020 8.3円/錠 処方箋医薬品注)
カプトリル錠25mg CAPTORIL Tablets 25mg アルフレッサファーマ 2144001F2026 9.6円/錠 処方箋医薬品注)
カプトリル細粒5% CAPTORIL Fine Granules 5% アルフレッサファーマ 2144001C1074 17.2円/g 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 血管浮腫の既往歴のある患者(アンジオテンシン変換酵素阻害剤等の薬剤による血管浮腫、遺伝性血管浮腫、後天性血管浮腫、特発性血管浮腫等)[高度の呼吸困難を伴う血管浮腫を発現するおそれがある。]
2.3 デキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートを用いた吸着器によるアフェレーシスを施行中の患者[10.1参照]
2.4 アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜(AN69)を用いた血液透析施行中の患者[10.1参照]
2.5 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5参照]
2.6 アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)[10.1参照]
2.7 アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)を投与中の患者、あるいは投与中止から36時間以内の患者[10.1参照]

4. 効能または効果

本態性高血圧症
○腎性高血圧症
○腎血管性高血圧症
悪性高血圧

6. 用法及び用量

通常、成人に1日37.5〜75mgを3回に分割経口投与する。年齢、症状により適宜増減する。
なお、重症例においても1日最大投与量は150mgまでとする。

8. 重要な基本的注意

8.1 副作用発現の可能性が増大することがあるので、1日用量150mgを超える量は投与しないこと。
8.2 手術前24時間は投与しないことが望ましい。
8.3 血圧低下に基づくめまい、ふらつきがあらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う作業に注意させること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 両側性腎動脈狭窄のある患者又は片腎で腎動脈狭窄のある患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けること。腎血流量の減少や糸球体ろ過圧の低下により急速に腎機能を悪化させるおそれがある。
9.1.2 高カリウム血症の患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けること。高カリウム血症を増悪させるおそれがある。
また、腎機能障害、コントロール不良の糖尿病等により血清カリウム値が高くなりやすい患者では、高カリウム血症が発現するおそれがあるので、血清カリウム値に注意すること。[11.1.4参照]
9.1.3 造血障害のある患者
好中球減少症、無顆粒球症等の副作用が発現することがある。[11.1.2参照]
9.1.4 全身性エリテマトーデス(SLE)などの免疫異常のある患者
好中球減少症、無顆粒球症等の副作用が発現することがある。重篤な自己免疫疾患(特に全身性エリテマトーデス)又は免疫抑制剤の投与を受けている患者では、好中球減少、無顆粒球症があらわれやすいので、血液像に留意して、定期的に検査を行うこと。白血球数の急激な減少あるいは4,000/mm3未満となった場合には、白血球分画を含む経過観察を十分に行い、3,000/mm3未満を示す場合には投与を中止すること。[10.211.1.2参照]
9.1.5 消化性潰瘍又はその既往歴のある患者
消化器症状が発現することがある。
9.1.6 脳血管障害のある患者
過度の降圧が脳血流不全を惹起し、病態を悪化させることがある。
9.1.7 光線過敏症の既往歴のある患者
発疹等の皮膚症状が発現することがある。
9.1.8 重症の高血圧症患者
少量より投与を開始し、増量する場合は患者の状態を十分に観察しながら徐々に行うこと。初回投与後、一過性の急激な血圧低下を起こす場合がある。
9.1.9 厳重な減塩療法中の患者
少量より投与を開始し、増量する場合は患者の状態を十分に観察しながら徐々に行うこと。初回投与後、一過性の急激な血圧低下を起こす場合がある。
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎障害のある患者
血清クレアチニン値が3mg/dLを超える場合には、投与量を減らすか、又は投与間隔をのばすなど慎重に投与すること。過度の血圧低下及び血液障害が起こるおそれがある。[16.6.1参照]
9.2.2 腎障害のある患者
(1)少量より投与を開始するなど特に注意すること。
(2)蛋白尿があらわれやすいので、腎機能、尿所見に留意し、定期的に検査を行うこと。持続的な蛋白尿の増加傾向が認められる場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
(3)好中球減少、無顆粒球症があらわれやすいので、血液像に留意して、定期的に検査を行うこと。白血球数の急激な減少あるいは4,000/mm3未満となった場合には、白血球分画を含む経過観察を十分に行い、3,000/mm3未満を示す場合には投与を中止すること。[11.1.2参照]
9.2.3 腎疾患の既往歴のある患者
蛋白尿があらわれやすいので、腎機能、尿所見に留意し、定期的に検査を行うこと。持続的な蛋白尿の増加傾向が認められる場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
9.2.4 血液透析中の患者
少量より投与を開始し、増量する場合は患者の状態を十分に観察しながら徐々に行うこと。初回投与後、一過性の急激な血圧低下を起こす場合がある。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝機能障害のある患者
黄疸等の副作用が発現することがある。
9.4 生殖能を有する者
9.4.1 妊娠する可能性のある女性
妊娠していることが把握されずアンジオテンシン変換酵素阻害剤又はアンジオテンシンII受容体拮抗剤を使用し、胎児・新生児への影響(腎不全、頭蓋・肺・腎の形成不全、死亡等)が認められた例が報告されている1)2)
本剤の投与に先立ち、代替薬の有無等も考慮して本剤投与の必要性を慎重に検討し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、投与が必要な場合には次の注意事項に留意すること。[9.5参照]
(1)本剤投与開始前に妊娠していないことを確認すること。本剤投与中も、妊娠していないことを定期的に確認すること。投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止すること。
(2)次の事項について、本剤投与開始時に患者に説明すること。また、投与中も必要に応じ説明すること。
・妊娠中に本剤を使用した場合、胎児・新生児に影響を及ぼすリスクがあること。
・妊娠が判明した又は疑われる場合は、速やかに担当医に相談すること。
・妊娠を計画する場合は、担当医に相談すること。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止すること。妊娠中期及び末期にアンジオテンシン変換酵素阻害剤又はアンジオテンシンII受容体拮抗剤を投与された患者で羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全及び羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形、肺の低形成等があらわれたとの報告がある。また、海外で実施されたレトロスペクティブな疫学調査で、妊娠初期にアンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与された患者群において、胎児奇形の相対リスクは降圧剤が投与されていない患者群に比べ高かったとの報告がある。妊娠中に本剤を投与された重症高血圧症の患者で、羊水過少症、また、その新生児に低血圧・腎不全等があらわれたとの報告がある。[2.59.4.1参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒトで母乳中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
少量より投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に過度の降圧は好ましくないとされている。脳梗塞等が起こるおそれがある。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
デキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートを用いた吸着器によるアフェレーシスの施行
リポソーバー、イムソーバTR、セルソーバ
2.3参照]
ショックを起こすことがある。陰性に荷電したデキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートによりブラジキニンの産生が刺激される。さらに本剤が、ブラジキニンの代謝を抑制するため、ブラジキニンの血中濃度が上昇し、ショックを誘発すると考えられている。
アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜(AN69)を用いた透析
2.4参照]
アナフィラキシーを発現することがある。陰性に荷電したAN69によりブラジキニンの産生が刺激される。さらに本剤が、ブラジキニンの代謝を抑制するため、ブラジキニンの血中濃度が上昇し、アナフィラキシーを誘発すると考えられている。
アリスキレンフマル酸塩
ラジレス
(糖尿病患者に使用する場合。ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く。)
2.611.1.4参照]
非致死性脳卒中、腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧のリスク増加が報告されている。レニン−アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある。
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)
サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(エンレスト)
2.7参照]
血管浮腫があらわれるおそれがある。本剤投与終了後にARNIを投与する場合は、本剤の最終投与から36時間後までは投与しないこと。また、ARNIが投与されている場合は、少なくとも本剤投与開始36時間前に中止すること。併用により相加的にブラジキニンの分解が抑制され、ブラジキニンの血中濃度が上昇する可能性がある。
10.2 併用注意
カリウム保持性利尿剤
スピロノラクトン、トリアムテレン等
カリウム補給剤
塩化カリウム等
血清カリウム値が上昇することがあるので、血清カリウム値に注意すること。機序:本剤はアンジオテンシンII産生を抑制し、アルドステロンの分泌を低下させるため、カリウム排泄を減少させる。
危険因子:腎障害のある患者
利尿降圧剤
トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド等
本剤初回投与後、一過性の急激な血圧低下を起こすおそれがあるので、投与は少量より開始すること。利尿降圧剤によるナトリウム排泄によって、レニン・アンジオテンシン系が亢進されているため、本剤によりアンジオテンシンIIの産生が抑制されると、降圧作用が増強されると考えられている。
危険因子:特に最近利尿降圧剤投与を開始した患者
アロプリノール過敏症状(Stevens-Johnson症候群、関節痛等)が発現したとの報告がある。患者の状態を注意深く観察し、発熱を伴う発疹等の過敏症状が発現した場合には直ちに両剤の投与を中止すること。機序不明。
危険因子:腎障害のある患者
リチウム製剤
炭酸リチウム
併用によりリチウム中毒を起こすことが報告されているので、血中のリチウム濃度に注意すること。明確な機序は不明であるが、ナトリウムイオン不足はリチウムイオンの貯留を促進するといわれているため、本剤がナトリウム排泄を促進することにより起こると考えられる。
ニトログリセリン降圧作用が増強されるおそれがある。両剤の降圧作用による。
アリスキレンフマル酸塩
11.1.4参照]
腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがあるため、腎機能、血清カリウム値及び血圧を十分に観察すること。
なお、eGFRが60mL/min/1.73m2未満の腎機能障害のある患者へのアリスキレンフマル酸塩との併用については、治療上やむを得ないと判断される場合を除き避けること。
併用によりレニン・アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある。
アンジオテンシンII受容体拮抗剤
11.1.4参照]
腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがあるため、腎機能、血清カリウム値及び血圧を十分に観察すること。併用によりレニン・アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある。
非ステロイド性消炎鎮痛剤降圧作用が減弱するおそれがある。プロスタグランジンの合成阻害作用により、本剤の降圧作用を減弱させる可能性がある。
非ステロイド性消炎鎮痛剤腎機能を悪化させるおそれがある。プロスタグランジンの合成阻害作用により、腎血流量が低下するためと考えられる。
カリジノゲナーゼ製剤本剤との併用により過度の血圧低下が引き起こされる可能性がある。血管平滑筋の弛緩が増強される可能性がある。
免疫抑制剤
9.1.411.1.2参照]
好中球減少、無顆粒球症があらわれやすいので、血液像に留意して、定期的に検査を行うこと。白血球数の急激な減少あるいは4,000/mm3未満となった場合には、白血球分画を含む経過観察を十分に行い、3,000/mm3未満を示す場合には投与を中止すること。免疫異常のある患者では好中球減少症、無顆粒球症等の副作用があらわれやすい。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 血管浮腫(頻度不明)
呼吸困難を伴う顔面、舌、声門、喉頭の腫脹を症状とする血管浮腫があらわれることがある。このような場合には、気管の閉塞を起こしやすくなるので、直ちに投与を中止し、アドレナリンの皮下注射、気道確保など適切な処置を行うこと。また、腹痛を伴う腸管の血管浮腫があらわれることがある。
11.1.2 汎血球減少、無顆粒球症(いずれも頻度不明)[9.1.39.1.49.2.210.2参照]
11.1.3 急性腎障害、ネフローゼ症候群(いずれも頻度不明)
11.1.4 高カリウム血症(頻度不明)[9.1.210.110.2参照]
11.1.5 天疱瘡様症状(頻度不明)
11.1.6 狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、心停止(いずれも頻度不明)
11.1.7 アナフィラキシー(頻度不明)
11.1.8 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、剥脱性皮膚炎(いずれも頻度不明)
11.1.9 錯乱(頻度不明)
11.1.10 膵炎(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜1%未満注1)0.1%未満注1)頻度不明
血液白血球減少貧血、好酸球増多、血小板減少
腎臓BUN上昇、血清クレアチニン上昇蛋白尿
皮膚発疹注2)、そう痒蕁麻疹、光線過敏症
味覚注3)味覚の異常
精神神経系頭痛、めまい頭重感、眠気
消化器食欲不振、悪心・嘔吐、下痢胃部不快感、腹痛
肝臓AST上昇、ALT上昇γ-GTP上昇、ALP上昇、LDH上昇、肝障害黄疸
循環器起立性低血圧、動悸、胸痛、胸部不快感、レイノー様症状息切れ
その他血清カリウム値の上昇咳嗽、脱力感、発熱、筋肉痛、口渇、口内炎、歯痛の増強、知覚異常、嗄声、四肢のしびれ感、顔面潮紅、クームス試験の陽性例、抗核抗体の陽性例低血糖

12. 臨床検査結果に及ぼす影響

尿中ケトン(アセトン)が偽陽性を呈することがある。

13. 過量投与

13.1 症例
33歳の女性に対し、カプトプリル(推量500〜750mg)、アルプラゾラム10mgを投与。投与6時間後のカプトプリル血漿中濃度は5,952μg/L。患者は、薬剤投与5時間後に入院し、その時低血圧になっていた(収縮期血圧80mmHg)。それから輸液とドパミンを30分以内、10μg/kg/minで点滴静注したところ血圧上昇。さらに、入院後18.5時間目と24.5時間目に2回低血圧を発現したが、ドパミンにて上昇。その後入院期間中の血圧は正常になり、初期の嗜眠や全身脱力感の消失後は、他の症状の発現はなかった3)
13.2 処置
低血圧−生理食塩液の点滴静注による体液量増加が、血圧の回復のために採るべき処置である。カプトプリルは、血液透析により成人の循環系から除去されるが、新生児又は小児に対しては、有効性のデータは不十分である。
腹膜透析はカプトプリルを除去するのに有効ではない4)

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
<錠>
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 本剤投与中に高度の蛋白尿が認められた患者について腎生検を行ったところ、膜性腎症がみられたとの報告がある。
15.1.2 インスリン又は経口血糖降下剤の投与中にアンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与することにより、低血糖が起こりやすいとの報告がある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 健康成人5例にカプトプリルを1回50mg経口投与した場合の薬物動態は、下表のとおりであった5)
Cmax(ng/mL)Tmax(hr)t1/2(hr)
479±650.68±0.020.43±0.02
16.1.2 腎機能正常な本態性高血圧症患者7例と慢性腎不全患者7例にカプトプリルを1回経口投与(本態性高血圧症患者には50mg、慢性腎不全患者には25mg)後の血中濃度は、両群とも投与1時間後に最高値(本態性高血圧症患者で平均179.3ng/mL、慢性腎不全患者で平均80.7ng/mL)に達し、その後本態性高血圧症患者群では6時間後に9.8ng/mL(最高値の5.5%)に減少するが、慢性腎不全患者群ではその後の減衰は遅延し、6時間後でも22.1ng/mL(最高値の27.3%)と高値を示した6)
16.5 排泄
健康成人5例にカプトプリルを1回50mg経口投与したところ、主に尿中に排泄され、投与後24時間までの未変化カプトプリルの尿中排泄率はおよそ35%、総カプトプリル(未変化カプトプリル+代謝物)としては約63%を示す5)
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎障害患者
腎障害患者に14C-カプトプリルを1回100mg経口投与注)し、総放射能の血中半減期を求め、腎障害患者におけるカプトプリルの用法及び用量について検討した(外国人)。その結果に基づく腎障害患者の投与量・投与間隔の例を次表に示す。[9.2.1参照]
(1)投与間隔による調節
Ccr(mL/min)>7575〜3534〜2019〜87〜5
投与間隔(hr)812〜2424〜4848〜7272〜108
(2)投与量による調節
Ccr(mL/min)投与間隔(hr)投与量(mg)
3024100
252490
202480
152470
102455
52435
注)本剤の承認用法及び用量は「通常、成人に1日37.5〜75mgを3回に分割経口投与する。年齢、症状により適宜増減する。なお、重症例においても1日最大投与量は150mgまでとする。」である。
16.8 その他
16.8.1 薬物速度論的パラメータ(mean±SE)5)
(1)吸収速度定数
Ka=5.0±0.3hr−1(健康成人5例、本剤食間1回50mg経口投与)
(2)消失速度定数
Ke=1.6±0.1hr−1(健康成人5例、本剤食間1回50mg経口投与)
(3)AUC
510±90ng・hr/mL(健康成人5例、本剤食間1回50mg経口投与)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験
軽症・中等症本態性高血圧患者74例を対象に、12週間カプトプリル錠を単独投与(1回37.5〜50mg/日、1日3回)した結果、除外例22例を除く降圧率(下降例数♯1)/評価例数)は、67.3%(35/52例)であった。
副作用発現頻度は、自他覚症状が12.2%(9/74例)であり、臨床検査値異常は認められなかった。主な自他覚症状の副作用は、発疹又はそう痒2.7%(2/74例)であった。
軽症・中等症本態性高血圧患者27例を対象に、12週間カプトプリル錠(1回37.5〜50mg/日、1日3回)をチアジド系利尿降圧剤と併用投与した結果、除外例2例を除く降圧率(下降例数♯1)/評価例数)は、80.0%(20/25例)であった。
副作用(自他覚症状)の発現頻度は11.1%(3/27例)であり、発疹及びそう痒、腹痛、吐気が各3.7%(1/27例)であった。臨床検査値異常は認められなかった7)
♯1)下降:平均血圧(−13mmHg以上)を満たす場合
17.1.2 国内第III相試験(プロプラノロールを対照とした二重盲検比較試験)
軽症・中等症本態性高血圧患者349例を対象に、12週間カプトプリル錠1回12.5mg、25mg、37.5mg(カプトプリル群)又はプロプラノロール錠1回20mg、30mg、40mg(プロプラノロール群)を1日3回♯1)、経口投与した結果、除外例25例を除く降圧率(下降例数♯2)/評価例数)は、カプトプリル群で63%(99/157例)、プロプラノロール群で49%(81/167例)であり、両群間に有意差を認めた。
カプトプリル群における副作用(自他覚症状)の発現頻度は4%(6/157例)であり、発疹2%(3/157例)、そう痒1%(2/157例)であった。臨床検査値異常は3%(4/157例)に認められた8)
♯1)カプトプリル群は1日2回投与を含む注)
♯2)下降:平均血圧(−13mmHg以上)を満たす場合、あるいは下降傾向♯3)であっても150/90mmHg未満に降圧した場合
♯3)下降傾向:平均血圧(−7mmHg以上)を満たす場合
注)本剤の承認用法及び用量は「通常、成人に1日37.5〜75mgを3回に分割経口投与する。年齢、症状により適宜増減する。なお、重症例においても1日最大投与量は150mgまでとする。」である。
17.1.3 国内第III相試験(ヒドララジンを対照とした無作為化比較試験)
重症高血圧症患者を対象にカプトプリル37.5mg〜150mg/日(カプトプリル群)とヒドララジン60mg〜200mg/日(ヒドララジン群)による無作為化比較試験を実施した結果、有用率はカプトプリル群で87%(74/85例)、ヒドララジン群で43%(35/81例)と本剤の有用性が認められた。
カプトプリル群において副作用は5.9%(5/85例)に発現し、発疹・そう痒が3.5%(3/85例)と最も多く認められた9)
17.1.4 一般臨床試験
カプトプリルの一般臨床試験は39施設、総症例1,013例の各種高血圧症患者を対象に実施され、そのうち不明例72例を除く941例について効果判定が行われ、694例(有効率73.8%)に降圧効果が認められた。臨床試験成績の概要は次の如くである7)10)11)12)13)14)15)16)17)18)
(1)疾患別臨床効果
軽・中等症の本態性高血圧症で67.5%(361/603例)、重症本態性高血圧症で86.7%(85/98例)、悪性高血圧で90.2%(46/51例)、腎性高血圧症で80.1%(113/145例)、腎血管性高血圧症等で79.0%(83/105例)、その他の高血圧症で54.5%(6/11例)とすぐれた有効率が得られた。
副作用は13.5%(137/1,013例)にみられ、主な副作用は発疹(4.2%)、そう痒(3.7%)、発熱(1.0%)、めまい(0.9%)、下痢・腹痛(0.8%)、ふらつき(0.7%)、味覚異常(0.7%)であった。
カプトプリル単独投与、他剤との併用別の有効率は、単独投与においても71.3%とすぐれた成績が得られたが、他剤との併用では76.0%とさらに効果の増強がみられた。
(2)他剤併用剤数と種類
本態性高血圧症では1剤併用がほとんどを占め、併用剤はチアジド系利尿降圧剤が最も多かった。一方、重症・二次性高血圧症では2、3剤等多剤併用が多く、チアジド系利尿降圧剤、ループ利尿剤、β-遮断剤、メチルドパ水和物、血管拡張剤等が使用された。
(3)1日投与量と降圧効果
判定時の用量と降圧効果との関係は、特に明白でなく、通常用量で満足な降圧効果が得られた。
(4)長期(1年以上)投与例の血圧推移
本態性高血圧症(軽・中等症)及び重症・二次性高血圧症とも、血圧のコントロールは良好であった。本剤(15〜300mg/日)を1年以上投与された患者の82.2%(185/225例(2年以上投与例89例を含む))において血圧の著明下降もしくは下降を認めた。
副作用は5.8%(13/225例)に認められ、主な副作用は発疹4例(うち2例にそう痒を伴う)であった。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
カプトプリルはアンジオテンシン変換酵素を抑制して、アンジオテンシンIIの生成を抑えることにより、末梢血管を拡張して、総末梢血管抵抗を下げて降圧作用をあらわすと共に、アルドステロンの分泌を抑え、軽度のナトリウム排泄作用をあらわす。
18.2 アンジオテンシン変換酵素抑制作用
カプトプリルはウサギ肺より精製したアンジオテンシン変換酵素を競合的に抑制し19)、また経口投与によりアンジオテンシンIによる血圧上昇を抑制する20)ことが明らかにされている。
18.3 降圧作用
18.3.1 カプトプリルは経口投与により、高血圧自然発症ラット及び腎血管性高血圧ラットの血圧を下降させるが、正常ラットの血圧には影響を及ぼさない21)
18.3.2 カプトプリルを長期間連続経口投与しても降圧作用に耐薬性を生じていない(ラット)22)。また連続投与後に休薬しても血圧はもとのレベルに戻るだけで、リバウンド現象はみられない(ラット)23)
18.3.3 カプトプリルは用量に応じた血圧の下降及び心拍出量の増大をもたらし、総末梢抵抗を低下させるが、心拍数には有意の変動はみられていない。また血圧下降時にも臓器血流を減少させることはなく、逆に腎・脳血流を有意に増加する(ラット)22)
18.3.4 カプトプリルは長期投与により高血圧による心肥大を改善し24)、延命効果をもたらす(ラット)23)25)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. カプトプリル

一般的名称 カプトプリル
一般的名称(欧名) Captopril
化学名 (2S)-1-[(2S)-2-Methyl-3-sulfanylpropanoyl]pyrrolidine-2-carboxylic acid
分子式 C9H15NO3S
分子量 217.29
融点 105〜110℃
物理化学的性状 白色の結晶又は結晶性の粉末である。
メタノールに極めて溶けやすく、エタノール(99.5)に溶けやすく、水にやや溶けやすい。
旋光度 〔α〕25D:−125〜−134°(乾燥後,0.1g,エタノール(99.5)10mL,100mm)
KEGG DRUG D00251

22. 包装

<錠12.5mg>
100錠[10錠(PTP)×10、乾燥剤入り]
<錠25mg>
100錠[10錠(PTP)×10、乾燥剤入り]
<細粒5%>
100g[ガラス瓶(褐色)、バラ、乾燥剤入り]

23. 主要文献

  1. 阿部真也 他, 周産期医学, 47 (10), 1353-1355, (2017)
  2. 齊藤大祐 他, 鹿児島産科婦人科学会雑誌, 29, 49-54, (2021)
  3. Augenstein WL,et al., JAMA., 259 (22), 3302-3305, (1988) »PubMed
  4. Physicians'Desk Reference 49th ed., 710-714, (1995)
  5. 社内資料:カプトプリルの健康成人における体内動態に関する資料
  6. 宮崎直道 他, 日本腎臓学会誌, 24 (4), 421-428, (1982) »DOI
  7. 蔵本 築 他, 薬理と治療, 9 (10), 4073-4101, (1981)
  8. 金子好宏 他, 医学のあゆみ, 122 (1), 62-85, (1982)
  9. 蔵本 築 他, 臨床評価, 10 (2), 303-345, (1982)
  10. 圓山アンナ 他, 日本内科学会誌, 69 (5), 541-547, (1980) »DOI
  11. 荻原俊男 他, 日本内分泌学会誌, 56 (10), 1484-1496, (1980) »DOI
  12. 清水完悦 他, 脈波, 10 (1), 47-53, (1980)
  13. 猿田享男 他, 薬理と治療, 9 (10), 4131-4146, (1981)
  14. 武田忠直 他, 薬理と治療, 9 (10), 4103-4130, (1981)
  15. 小口寿夫 他, 薬理と治療, 9 (10), 4199-4209, (1981)
  16. 内田健三 他, 新薬と臨牀, 30 (11), 1895-1906, (1981)
  17. 松田公志 他, 泌尿器科紀要, 26 (1), 63-69, (1980)
  18. 村上英紀 他, 薬理と治療, 9 (10), 4147-4154, (1981)
  19. Cushman DW,et al., Prog Cardiovasc Dis., 21 (3), 176-182, (1978) »PubMed
  20. Rubin B,et al., J Pharmacol Exp Ther., 204 (2), 271-280, (1978) »PubMed
  21. Laffan RJ,et al., J Pharmacol Exp Ther., 204 (2), 281-288, (1978) »PubMed
  22. Koike H,et al., Hypertension., 2 (3), 299-303, (1980) »PubMed
  23. Rubin B,et al., Eur J Pharmacol., 51 (4), 377-388, (1978) »PubMed
  24. Antonaccio MJ,et al., Jpn J Pharmacol., 29 (2), 285-294, (1979) »PubMed
  25. Horovitz ZP,et al., Br J Clin Pharmacol., 7 (S2), 243S-248S, (1979)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
アルフレッサファーマ株式会社 製品情報部
〒540-8575 大阪市中央区石町二丁目2番9号
電話:06-6941-0306
FAX:06-6943-8212
製品情報問い合わせ先
アルフレッサファーマ株式会社 製品情報部
〒540-8575 大阪市中央区石町二丁目2番9号
電話:06-6941-0306
FAX:06-6943-8212

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
アルフレッサファーマ株式会社
大阪市中央区石町二丁目2番9号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/05/21 版