2.1 診断のつかない異常性器出血のある患者[異常性器出血の原因疾患を悪化させるおそれがある。]
2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある患者[
7.1、
9.5参照]
2.4 本剤の成分又は他のGn-RH誘導体に対して過敏症の既往歴のある患者
<子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善>
5.1 本剤による子宮筋腫に対する治療は根治療法ではないことに留意し、手術が適応となる患者の手術までの保存療法並びに閉経前の保存療法としての適用を原則とすること。なお、下腹痛、腰痛に対する効果は、投与初期には認められないので、その間は、適当な対症療法を考慮すること。
<生殖補助医療における早発排卵の防止>
5.2 本剤の投与にあたっては、患者及びパートナーの検査を十分に行い、本剤の投与の適否を判断すること。特に、甲状腺機能低下、副腎機能低下、高プロラクチン血症及び下垂体又は視床下部腫瘍等が認められた場合、当該疾患の治療を優先すること。
<子宮内膜症、子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善>
通常、成人には1回あたり片側の鼻腔に1噴霧(ナファレリンとして200μg)を1日2回、月経周期1〜2日目より投与する。
<生殖補助医療における早発排卵の防止>
通常、1回あたり片側の鼻腔に1噴霧(ナファレリンとして200μg)を1日2回投与する。
<子宮内膜症、子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善>
7.1 治療に際しては妊娠していないことを確認し、必ず月経周期1〜2日目より投与を開始すること。また、治療期間中は非ホルモン性の避妊をさせること。[
2.2、
9.4、
9.5参照]
<子宮内膜症>
7.2 本剤の長期投与において、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下がみられるとの報告があるので、6ヵ月以上は投与しないことが望ましい。
<子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善>
7.3 本剤の長期投与において、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下がみられることがあるので、6ヵ月を超える投与は原則として行わないこと。6ヵ月を超える投与の安全性は確立していない。
<生殖補助医療における早発排卵の防止>
7.4 以下のいずれかの方法で投与する。
・通常、調節卵巣刺激を行う前の月経周期の黄体期中期又は2日目から本剤の投与を開始し、下垂体脱感作を確認した後に調節卵巣刺激を開始する。調節卵巣刺激に引き続く最終的な卵胞成熟の誘発まで本剤の投与を継続する。
・通常、調節卵巣刺激を行う月経周期の1又は2日目から本剤の投与を開始し、調節卵巣刺激に引き続く最終的な卵胞成熟の誘発まで本剤の投与を継続する。
<効能共通>
8.1 マウス、ラットに長期投与した試験で下垂体腫瘍、膵小島腺腫及び副腎髄質良性腫瘍の発現率が増加したとの報告があるので、長期にわたり漫然と投与しないこと。
<子宮内膜症、子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善>
8.2 投与に際して、類似疾患(悪性腫瘍など)との鑑別に留意し、投与中腫瘤が増大したり、臨床症状の改善がみられない場合は投与を中止すること。
<子宮内膜症>
8.3 再治療を行う場合は、骨塩量の低下に留意しながら、慎重に投与すること。
<子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善>
8.4 本剤の再投与については、安全性が確立していない。やむを得ず再投与する場合には、可能な限り骨塩量の検査を行い慎重に投与すること。
<生殖補助医療における早発排卵の防止>
8.5 本剤は、不妊治療に十分な知識と経験のある医師のもとで使用すること。本剤投与により予想されるリスク及び注意すべき症状について、あらかじめ患者に説明を行うこと。
8.6 本剤を用いた不妊治療により、卵巣過剰刺激症候群があらわれることがある。患者に対しては、自覚症状(下腹部痛、下腹部緊迫感、悪心、腰痛等)や急激な体重増加が認められた場合には直ちに医師等に相談するよう、あらかじめ説明すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.4 生殖能を有する者
本剤の投与中断により排卵が起き妊娠する可能性があるため、ホルモン剤によらない避妊法を使用するよう患者に指導すること。本剤投与中に患者が妊娠した場合は、本剤の投与を中止し、胎児の発育に影響を及ぼす可能性について患者に説明すること。[
7.1、
9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。他のGn-RH誘導体による流産の報告があり、本剤の動物実験で流産などの生殖障害が報告されている。妊娠ラットに本剤6.4μg/kg/日(ヒトに1日400μgを鼻腔内投与したときの10倍に相当)を筋肉内投与したところ、外形及び形態分化への影響が認められたが、妊娠ラットを用いた別の試験並びに妊娠マウス及び妊娠ウサギを用いた試験では認められなかった。妊娠ラットを用いた試験においては、用量依存的な胎児死亡率の増加が認められ、本剤によるホルモン量の変化によるものと考えられた。[2.2、7.1、9.4参照]
9.6 授乳婦
投与しないこと。動物実験で乳汁中へ移行することが報告されている。[
2.3参照]
9.7 小児等
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 うつ状態(0.1〜5%未満)
エストロゲン低下作用に基づく更年期障害様のうつ状態があらわれることがある。
11.1.2 血小板減少(0.1%未満)
11.1.3 肝機能障害(0.1〜5%未満)、黄疸(頻度不明)
AST、ALT、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.4 不正出血(0.1〜5%未満)
11.1.5 卵巣のう胞破裂(頻度不明)
卵巣のう胞が破裂することがあるので、観察を十分に行い、腹部膨満感、下腹部痛(圧痛等)等の異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
11.1.6 アナフィラキシー(頻度不明)
アナフィラキシー(呼吸困難、熱感、全身紅潮等)があらわれることがある。
注)発現頻度は使用成績調査を含む
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
低エストロゲン症状 | ほてり | 腟乾燥 | リビドー減退、腟炎 | |
子宮・卵巣 | | 帯下 | 卵巣過剰刺激症状 | 卵巣のう腫(胞)、卵巣過剰刺激症候群 |
乳房 | | 乳房緊満 | 乳房萎縮、乳房痛 | |
皮膚 | | ざ瘡、脱毛 | 皮膚乾燥、脂漏、多毛 | |
過敏症 | | 発疹、胸痛 | 湿疹、蕁麻疹、そう痒、息切れ | |
消化器 | | 便秘、下痢、口渇、食欲減退、腹痛、悪心・嘔吐 | 胃部不快感、食欲亢進 | |
筋骨格系 | 肩こり | 疼痛(四肢・肩・腰等)、血清リン上昇、関節痛 | 筋肉痛 | |
精神神経系 | 頭痛 | めまい、神経過敏、しびれ感、傾眠、不安、発汗、立ちくらみ、耳鳴、不眠 | 感覚異常 | 手指のこわばり |
循環器 | | 心悸亢進、四肢冷感、血圧上昇 | | |
鼻 | | 鼻腔粘膜刺激症状、鼻炎 | | |
血液 | | | 白血球減少 | |
その他 | β-リポ蛋白上昇 | 浮腫、体重増加、咽喉刺激、倦怠感、コレステロール上昇、トリグリセライド上昇 | 味覚異常、顔面浮腫、体重減少、嗅覚異常 | |
14.1 薬剤交付時の注意
投与前には吸収を安定にするため鼻をかむ等の指導をすること。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<子宮内膜症>
17.1.1 国内臨床試験
二重盲検比較試験を含む総計273例の子宮内膜症患者における臨床試験での最終全般改善率は76.2%であった。投与量は100〜400μg/日で、投与期間は6ヵ月以内であった。
(1)臨床効果
本剤の主な症状の改善率は次のとおりである
2)3)4)5)6)。
症状別臨床効果
症状 | 例数 | 改善以上 |
月経時症状 | 199例 | 177例(88.9%) |
自覚総合症状 | 218例 | 199例(91.3%) |
ダグラス窩の硬結 | 195例 | 163例(83.6%) |
子宮可動性の制限 | 181例 | 146例(80.7%) |
(2)比較対照試験
二重盲検比較試験において、本剤の有用性が認められている
3)。
(3)骨密度の変化
本剤の6ヵ月間投与により、腰椎(L
2-L
4)の骨密度は平均3.25%低下したが、投薬終了後6ヵ月で回復傾向がみられた。
一方、本剤の6ヵ月間投与による大腿骨頸部の骨密度の低下はみられなかった
6)。
<子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善>
17.1.2 国内第II相/第III相試験
二重盲検比較試験を含む総計164例の子宮筋腫患者における臨床試験での最終全般改善率は78.1%(114例/146例)であった。投与量は400μg/日で、投与期間は4ヵ月以内であった。
(1)臨床効果
本剤の主な症状の改善率は次のとおりである
7)8)。
症状別臨床効果
症状 | 例数 | 改善以上 |
過多月経 | 69例 | 67例(97.1%) |
月経時下腹痛 | 56例 | 53例(94.6%) |
月経時腰痛 | 39例 | 37例(94.9%) |
月経時以外下腹痛 | 20例 | 15例(75.0%) |
月経時以外腰痛 | 14例 | 9例(64.3%) |
貧血 | 61例 | 37例(60.7%) |
子宮筋腫縮小効果
症状 | 例数 | 改善以上 |
筋腫核の縮小度 | 132例 | 96例(72.7%) |
子宮体積の縮小度 | 69例 | 46例(66.7%) |
(2)比較対照試験
二重盲検比較試験において、本剤の有用性が認められている
8)。
18.1 作用機序
本剤は下垂体−性腺系を一過性に刺激し排卵促進などGn-RH様作用の強いGn-RHアゴニストであるが、反復投与によりGn-RH受容体数は減少(ダウンレギュレーション)し、下垂体のGn-RHに対する反応性が低下してLH、FSH分泌が抑制される。その結果、主に卵巣のエストロゲン産生・分泌が抑制されて子宮内膜症組織の退縮又は子宮筋腫の縮小により、治療効果を示す。
18.2 基礎薬理試験
18.2.1 下垂体−性腺機能抑制作用
雌サルを用いた実験で、血中LH量及びFSH量の減少で示される下垂体機能の抑制と、正常な性周期に伴う血中プロゲステロン量増加の抑制で示される卵巣機能の抑制が認められた
9)。
雌イヌを用いた実験で、正常な性周期に伴う血中プロゲステロン量増加の抑制、排卵の抑制及び無月経で示される卵巣機能の抑制が認められた
10)。
実験的子宮内膜症ラットを用いた実験で、下垂体中のGn-RH受容体量の減少及び血中LH量の減少で示される下垂体機能の抑制と血中エストラジオール量の減少で示される卵巣機能の抑制が認められた
11)。
18.2.2 実験的子宮内膜症に対する効果
実験的子宮内膜症ラットの実験で、移植子宮内膜片の体積の減少がみられ、子宮内膜症の治癒効果が認められた
11)。
18.3 臨床薬理試験
18.3.1 下垂体ゴナドトロピン分泌能抑制作用
健康成人(正常月経を有する健康な女性)を対象として、本剤を22日間反復投与したとき、投与開始直後にみられたLH、FSHの分泌の亢進は、投与継続により鈍化し、LH、FSHの分泌能は抑制されることが認められた
1)。
また、子宮内膜症患者に、本剤を24週間投与したとき、LH、FSHの律動性分泌の抑制と同時にLH、FSH分泌能の著明な抑制がLH-RHテストにより確認された
5)。
18.3.2 卵巣機能抑制作用
本剤の投与継続により、一過性に上昇がみられた血中エストラジオール濃度は、その後閉経レベルにまで低下し、それに伴って排卵の抑制、月経の停止等卵巣機能の抑制が認められた
1)2)3)4)5)6)7)8)。