2.1 有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者[症状を増悪するおそれがある]
2.2 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
5.1 急性の発作に対しては、本剤を使用しないよう患者を指導すること。[
8.1参照]
5.2 本剤の投与開始前には、患者の喘息症状を比較的安定な状態にしておくこと。特に、喘息発作重積状態又は喘息の急激な悪化状態のときには原則として本剤は使用しないこと。
成人には、フルチカゾンプロピオン酸エステルとして通常1回100μgを1日2回吸入投与する。
小児には、フルチカゾンプロピオン酸エステルとして通常1回50μgを1日2回吸入投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日の最大投与量は成人では800μg、小児では200μgを限度とする。
症状の緩解がみられた場合は、治療上必要最小限の用量で投与すること。
8.1 本剤は喘息症状が発現しないように維持する目的で継続的に使用する薬剤なので、症状のないときでも毎日規則正しく使用するよう患者を指導すること。また、本剤は発現した発作を速やかに軽減する薬剤ではないので、発作発現時に使用する短時間作動型吸入β
2刺激薬(例えば吸入用サルブタモール硫酸塩)等の他の適切な薬剤を処方すること。[
5.1参照]
8.2 本剤の投与期間中に発現する急性の発作に対しては、発作発現時に短時間作動型吸入β2刺激薬等の他の適切な薬剤を使用するよう患者を指導すること。
また、その薬剤の使用量が増加したり、効果が十分でなくなってきたと感じられたら、喘息の管理が十分でないことが考えられるので、可及的速やかに医療機関を受診し治療を求めるように患者を指導すること。
このような状態は喘息の管理が不十分になっていることを示唆し、突然患者の生命が脅かされる可能性があるので、本剤の増量やあるいは気管支拡張剤・全身性ステロイド剤を短期間併用し、症状の軽減に合わせて併用薬剤を徐々に減量すること。
8.3 感染を伴う喘息症状の増悪がみられた場合には、ステロイド療法の強化と感染症の治療を考慮すること。
8.4 本剤の投与を突然中止すると喘息の急激な悪化を起こすことがあるので、投与を中止する場合には患者の喘息症状を観察しながら徐々に減量していくこと。
8.5 全身性ステロイド剤と比較し可能性は低いが、吸入ステロイド剤の投与により全身性の作用(クッシング症候群、クッシング様症状、副腎皮質機能抑制、小児の成長遅延、骨密度の低下、白内障、緑内障、中心性漿液性網脈絡膜症を含む)が発現する可能性があるので、吸入ステロイド剤の投与量は患者毎に喘息をコントロールできる最少用量に調節すること。特に長期間、大量投与の場合には定期的に検査を行い、全身性の作用が認められた場合には患者の喘息症状を観察しながら徐々に減量するなど適切な処置を行うこと。
8.6 全身性ステロイド剤の減量は本剤の吸入開始後症状の安定をみて徐々に行う。減量にあたっては一般のステロイド剤の減量法に準ずる。
8.7 本剤を含む吸入ステロイド剤投与後に、潜在していた基礎疾患である好酸球性多発血管炎性肉芽腫症にみられる好酸球増多症がまれにあらわれることがある。この症状は通常、全身性ステロイド剤の減量並びに離脱に伴って発現しており、本剤との直接的な因果関係は確立されていない。本剤の投与期間中は、好酸球数の推移や、他の好酸球性多発血管炎性肉芽腫症症状(しびれ、発熱、関節痛、肺の浸潤等の血管炎症状等)に注意すること。
8.8 全身性ステロイド剤の減量並びに離脱に伴って、鼻炎、湿疹、蕁麻疹、眩暈、動悸、倦怠感、顔のほてり、結膜炎等の症状が発現・増悪することがあるので、このような症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 結核性疾患の患者
9.1.2 感染症(有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症を除く)の患者
9.1.3 糖尿病の患者
9.1.4 気管支粘液の分泌が著しい患者
本剤の肺内での作用を確実にするため本剤の吸入に先立って、分泌がある程度減少するまで他剤を使用するとよい。
9.1.5 長期又は大量の全身性ステロイド療法を受けている患者
全身性ステロイド剤の減量中並びに離脱後も副腎皮質機能検査を行い、外傷、手術、重症感染症等の侵襲には十分に注意を払うこと。また、必要があれば一時的に全身性ステロイド剤の増量を行うこと。これらの患者では副腎皮質機能不全となっていることが考えられる。[
13.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。本薬は皮下投与による動物実験(ラット
1)、ウサギ
2))で副腎皮質ステロイド剤に共通した奇形発生、胎児の発育抑制がみられ、これらの所見はウサギにおいて低い用量で出現することが報告されている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。フルチカゾンプロピオン酸エステル10μg/kgをラットに皮下投与したときに乳汁中への移行が報告されている。
9.7 小児等
9.7.1 長期間投与する場合には投与量は患者毎に喘息をコントロールできる最少用量に調節することとし、身長等の経過の観察を十分行うこと。また使用にあたっては、使用法を正しく指導すること。全身性ステロイド剤と比較し可能性は低いが、吸入ステロイド剤を特に長期間、大量に投与する場合に成長遅延をきたすおそれがある。
9.7.2 患者の状態を十分に観察しながら投与すること。5歳未満の小児等を対象とした臨床試験は実施していない。[
17.1.3参照]
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に、生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
アナフィラキシー(頻度不明)
アナフィラキシー(呼吸困難、全身潮紅、血管性浮腫、蕁麻疹等)があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.5%〜2%未満 | 0.5%未満 | 頻度不明 |
過敏症 | | 発疹、蕁麻疹、顔面浮腫 | |
口腔並びに呼吸器 | 口腔及び咽喉頭症状(不快感、むせ、疼痛、刺激感、異和感)、嗄声 | 口腔及び呼吸器カンジダ症、味覚異常、咳、口内乾燥、感染症 | |
消化器 | | 悪心、腹痛、食道カンジダ症 | |
精神神経系 | | | 睡眠障害、不安、易刺激性、攻撃性 |
その他 | | 鼻炎、胸痛、浮腫、気管支攣縮注)、高血糖 | 皮膚挫傷(皮下出血等) |
13.1 症状
過量投与(通常の用法及び用量を超えた量等)により、副腎皮質機能抑制等の全身性の作用がみられることがある。本剤を過量かつ長期間吸入した小児において、低血糖、及びそれに伴う意識低下、痙攣を主な所見とする急性副腎皮質機能不全の発現が報告されている。
副腎皮質機能が抑制されている患者においては、外傷、手術、感染、本剤の急速な減量時等に急性副腎皮質機能不全が発現する可能性がある。[
9.1.5参照]
13.2 処置
過量投与後に本剤を減量する際は、患者の管理を十分に行いながら徐々に行うこと。
16.1 血中濃度
健康成人にフルチカゾンプロピオン酸エステル400μgを吸入投与した結果、投与後0.67時間で最高血漿中濃度(0.119ng/mL)に達し、その後消失半減期4.1時間で減少した
3)(外国人データ)。
16.3 分布
血漿蛋白結合率は81〜95%であった
4)(外国人データ)。
16.4 代謝
健康成人におけるフルチカゾンプロピオン酸エステル経口投与時の血中主要代謝物は、17β-カルボン酸体であり、尿中では17β-カルボン酸体及びそのグルクロン酸抱合体、糞中では未吸収による未変化体及び17β-カルボン酸体である(外国人データ)。
本剤はCYP3A4によって代謝を受ける
5)。[
10.参照]
16.5 排泄
健康成人に3H-フルチカゾンプロピオン酸エステル1mgを経口投与した場合、ほとんど吸収されず、糞中への排泄は総回収率の87〜97%を占め、尿中排泄率は5%以下であり、その大部分は投与後48時間までに排泄された(外国人データ)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 海外臨床試験(成人)
成人喘息患者48例を対象に交叉比較法によるメサコリンを用いた気道過敏性試験が実施された。その結果、本剤1回100μgを1日2回4週間投与することにより、プラセボに比して有意に気道過敏性が低下すること、またその低下作用はフルチカゾンプロピオン酸エステルロタディスクと同等であることが示されている
6)。
副作用は本剤群では報告されなかった。
17.1.2 国内臨床試験(成人)
比較試験を含む成人気管支喘息患者370例
7)8)9)10)11)12)13)14)15)16)に対するフルチカゾンプロピオン酸エステルロタディスクの有効率(中等度改善以上)は79.7%(295/370例)である。また、成人気管支喘息患者(軽・中等症)を対象とする比較試験において、フルチカゾンプロピオン酸エステルロタディスク1回100μg1日2回又はベクロメタゾンプロピオン酸エステルエアゾール1回100μg1日4回を4週間投与した結果、フルチカゾンプロピオン酸エステルロタディスクは最終全般改善度、概括安全度及び有用度
注)とも有意に優れた成績が得られた。
注)
最終全般改善度
臨床症状、聴診ラ音、肺機能検査所見、併用薬の使用状況及び患者の印象を総合的に判断し、担当医師が以下の7段階で判定
1.著明改善 2.中等度改善 3.軽度改善 4.不変 5.やや悪化 6.悪化 7.著明悪化
概括安全度
副作用、血圧・脈拍及び臨床検査成績に基づき、担当医師が以下の4段階で判定
1.安全である 2.ほぼ安全である 3.やや安全性に問題あり 4.安全性に問題あり
有用度
最終全般改善度及び概括安全度を総合的に判断し、担当医師が以下の7段階で判定
1.きわめて有用 2.有用 3.やや有用 4.有用でない 5.やや好ましくない 6.好ましくない 7.きわめて好ましくない
17.1.3 国内第III相試験(小児)
小児気管支喘息患者108例
17)18)に対するフルチカゾンプロピオン酸エステルディスカスの有効率(中等度改善以上)
注)は82.4%(89/108例)である。
また、用量検討試験
17)の年齢層毎の有効率は以下の表のとおりである。[
9.7.2参照]
| 5歳 | 6〜8歳 | 9〜11歳 | 12〜15歳 |
100μg/日 | 0%(0/1) | 76.9%(10/13) | 65.2%(15/23) | 42.9%(3/7) |
200μg/日 | 40.0%(2/5) | 87.5%(14/16) | 70.0%(14/20) | 76.9%(10/13) |
注)最終全般改善度
臨床症状、聴診ラ音、肺機能検査所見、併用薬の使用状況及び患者の印象を総合的に判断し、担当医師が以下の6段階で判定
1.著明改善 2.中等度改善 3.軽度改善 4.不変 5.悪化 6.判定不能
17.2 製造販売後調査等
17.2.1 国内使用成績調査(小児:対象症例15歳未満)
有効性解析対象症例692例における有効率は97.98%(678/692例)であった。
安全性解析対象症例723例における副作用発現頻度は、0.97%(7/723例)であった。その内訳は、浮動性めまい、頭痛、発声障害、口腔内不快感、アトピー性皮膚炎、発熱及びアラニン・アミノトランスフェラーゼ増加 各0.14%(1/723例)であった注1)。
17.2.2 長期使用を検討した国内特別調査(小児:対象症例15歳未満)
有効性解析対象症例409例における有効率は99.76%(408/409例)であった。
安全性解析対象症例519例における副作用発現頻度は、1.35%(7/519例)であった。その内訳は、血中コルチゾール減少0.39%(2/519例)、口腔カンジダ症、意識消失、息詰まり感、腎障害、好酸球数増加及び副鼻腔炎 各0.19%(1/519例)であった注1)、注2)。
注1)ドライパウダー剤とエアゾール剤の合算である。
注2)観察期間12ヵ月の調査における症例数
18.1 作用機序
フルチカゾンプロピオン酸エステルは合成副腎皮質ステロイドであり、グルココルチコイド受容体を刺激することにより、喘息抑制作用、抗炎症作用及び抗アレルギー作用を示す。
18.2 喘息抑制作用
フルチカゾンプロピオン酸エステルの吸入投与及び気管内投与により、モルモットにおける卵白アルブミン抗原誘発遅発型喘息反応を抑制し、気管支肺胞洗浄液中の好酸球増加に対して抑制作用を示した。好酸球浸潤抑制作用はベクロメタゾンプロピオン酸エステルの約7倍であった。
18.3 抗炎症作用
18.3.1 ヒト血管収縮作用
フルチカゾンプロピオン酸エステルはMcKenzieらの方法による健康成人皮膚における血管収縮試験(皮膚蒼白度を指標)においてベクロメタゾンプロピオン酸エステルの約1.9倍、ベタメタゾン吉草酸エステルの約2.6倍、フルオシノロンアセトニドの約9.5倍の局所抗炎症作用を示した
19)。
18.3.2 急性炎症モデルに対する作用
ラットにおけるカラゲニン足蹠浮腫抑制作用は、局所投与でフルチカゾンプロピオン酸エステル>ベタメタゾン吉草酸エステル=ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、皮下投与でフルチカゾンプロピオン酸エステル>ベタメタゾン吉草酸エステル>ベクロメタゾンプロピオン酸エステルの順であった
20)。
18.3.3 亜急性・慢性炎症モデルに対する作用
ラットを用いたcotton pellet法による肉芽腫増殖抑制作用はフルチカゾンプロピオン酸エステル>ベタメタゾン吉草酸エステル>ベクロメタゾンプロピオン酸エステルの順であり、croton oil法による局所投与ではフルチカゾンプロピオン酸エステル>ベタメタゾン吉草酸エステル=ベクロメタゾンプロピオン酸エステルの順である
20)。
また、ラットのadjuvant関節炎抑制作用は皮下投与で、フルチカゾンプロピオン酸エステルはベタメタゾン吉草酸エステル、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルより強い抑制作用を示す
20)。
18.4 抗アレルギー作用
ラットにおける48時間PCA反応に対し、皮下投与で用量依存的に抑制し、その強さはフルチカゾンプロピオン酸エステル>ベタメタゾン吉草酸エステル>クロモグリク酸ナトリウムの順である
20)。
また、picryl chloride誘発マウス耳浮腫法による遅延型アレルギー反応に対し、皮下投与で用量依存的に抑制し、その強さはフルチカゾンプロピオン酸エステル=ベクロメタゾンプロピオン酸エステル>ベタメタゾン吉草酸エステルの順である
20)。
薬剤の保管に際して以下の事項に注意するよう患者を指導すること。
・30℃以上の場所に保管しないこと。
・ボンベは火中に投入しないこと。
・地方自治体により定められたボンベの廃棄処理法に従うこと。
・ボンベに穴を開けるときは空にしてから開けること。