医療用医薬品 : アドレナリン

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医薬品情報


総称名 アドレナリン
一般名 アドレナリン
欧文一般名 Adrenaline
薬効分類名 アドレナリン注射液
薬効分類番号 2451
ATCコード B02BC09 C01CA24 R01AA14 R03AA01 S01EA01
KEGG DRUG
D00095 アドレナリン
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2023年5月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」 (後発品) Adrenaline Injection 0.1% Syringe テルモ 2451402G1040 209円/筒 劇薬, 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 ブチロフェノン系・フェノチアジン系等の抗精神病薬、α遮断薬を投与中の患者(ただし、アナフィラキシーショックの救急治療時はこの限りでない。)[10.1参照]
2.2 イソプレナリン塩酸塩、ノルアドレナリン等のカテコールアミン製剤、アドレナリン作動薬を投与中の患者(ただし、蘇生等の緊急時はこの限りでない。)[10.1参照]

4. 効能または効果

○下記疾患に基づく気管支痙攣の緩解
○各種疾患もしくは状態に伴う急性低血圧またはショック時の補助治療
○心停止の補助治療

5. 効能または効果に関連する注意

<効能共通>
5.1 本剤はアドレナリン注射液をあらかじめシリンジに充てんした製剤であるため、上記以外の効能又は効果を目的として使用しないこと。
<各種疾患もしくは状態に伴う急性低血圧またはショック時の補助治療に対する使用時>
5.2 本剤は心筋酸素需要を増加させるため、心原性ショックや出血性・外傷性ショック時の使用は避けること。

6. 用法及び用量

<気管支喘息および百日咳に基づく気管支痙攣の緩解、各種疾患もしくは状態に伴う急性低血圧またはショック時の補助治療、心停止の補助治療>
アドレナリンとして、通常成人1回0.2〜1mg(0.2〜1mL)を皮下注射または筋肉内注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
蘇生などの緊急時には、アドレナリンとして、通常成人1回0.25mg(0.25mL)を超えない量を生理食塩液などで希釈し、できるだけゆっくりと静注する。なお、必要があれば、5〜15分ごとにくりかえす。

8. 重要な基本的注意

<用法共通>
8.1 本剤はアドレナリン受容体作動薬として、α受容体、β受容体それぞれに作用し、その作用は投与量、投与方法等に影響を受けやすいので注意すること。
8.2 過度の昇圧反応を起こすことがあり、急性肺水腫、不整脈、心停止等を起こすおそれがあるので、過量投与にならないよう注意すること。[11.1.111.1.3参照]
<各種疾患もしくは状態に伴う急性低血圧またはショック時の補助治療に対する使用時>
8.3 本剤はアナフィラキシーショックの救急治療の第一次選択剤であり、ショック時の循環動態を改善するが、その循環動態はショックを起こした原因及び病期により異なることがあるので、治療に際し本剤の選択、使用時期には十分注意すること。
8.4 本剤には昇圧作用のほか血管収縮、気管支拡張作用等もあるので、ショックの初期治療後は他の昇圧薬を用いること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 次の患者には治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。
(1)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
(2)交感神経作動薬に対し過敏な反応を示す患者
アドレナリン受容体が本剤に対し高い感受性を示すおそれがある。
(3)動脈硬化症の患者
本剤の血管収縮作用により、閉塞性血管障害が促進され、冠動脈や脳血管等の攣縮及び基質的閉塞があらわれるおそれがある。
(4)甲状腺機能亢進症の患者
頻脈、心房細動がみられることがあり、本剤の投与により悪化するおそれがある。
(5)糖尿病の患者
肝におけるグリコーゲン分解の促進や、インスリン分泌の抑制により、高血糖を招くおそれがある。
(6)心室性頻拍等の重症不整脈のある患者
本剤のβ刺激作用により、不整脈を悪化させるおそれがある。
(7)精神神経症の患者
一般に交感神経作動薬の中枢神経系の副作用として情緒不安、不眠、錯乱、易刺激性及び精神病的状態等があるので悪化するおそれがある。
(8)コカイン中毒の患者
コカインは、交感神経末端でのカテコールアミンの再取り込みを阻害するので、本剤の作用が増強されるおそれがある。
9.1.2 高血圧の患者
本剤の血管収縮作用により、急激な血圧上昇があらわれるおそれがある。
9.1.3 肺気腫のある患者
肺循環障害を増悪させ、右心系への負荷が過重となり、右心不全に陥るおそれがある。
9.1.4 心疾患のある患者
本剤のβ刺激作用により、心疾患を悪化させるおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦、妊娠している可能性のある女性又は産婦には投与しないことが望ましい。胎児の酸素欠乏をもたらしたり、分娩第二期を遅延するおそれがある。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
少量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
少量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。本剤の作用に対する感受性が高いことがある。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
抗精神病薬
ブチロフェノン系薬剤(セレネース、トロペロン等)
フェノチアジン系薬剤(ウインタミン等)
イミノジベンジル系薬剤(クレミン等)
ゾテピン(ロドピン)
セロトニン・ドパミン拮抗薬(リスパダール等)
多元受容体標的化抗精神病薬(セロクエル等)
ドパミン受容体部分作動薬(エビリファイ)
α遮断薬
2.1参照]
本剤の昇圧作用の反転により、低血圧があらわれることがある。アナフィラキシーショックの救急治療時以外には併用しないこと。これらの薬剤のα遮断作用により、本剤のβ刺激作用が優位になると考えられている。
カテコールアミン製剤
イソプレナリン塩酸塩(プロタノール等)
ノルアドレナリン(ノルアドリナリン)等
アドレナリン作動薬
β刺激薬(ベネトリン等)
エフェドリン(エフェドリン)
メチルエフェドリン(メチエフ等) 等
2.2参照]
不整脈、場合により心停止があらわれることがある。
蘇生等の緊急時以外には併用しないこと。
これらの薬剤のβ刺激作用により、交感神経興奮作用が増強すると考えられている。
10.2 併用注意
ハロゲン含有吸入麻酔薬
ハロタン注1)
イソフルラン注2)
セボフルラン注3)
デスフルラン注4)
頻脈、心室細動発現の危険性が増大する。これらの薬剤により、心筋のカテコールアミン感受性が亢進すると考えられている。
モノアミン酸化酵素阻害薬本剤の作用が増強され、血圧の異常上昇をきたすことがある。本剤の代謝酵素を阻害することにより、カテコールアミン感受性が亢進すると考えられている。
三環系抗うつ薬
イミプラミン
アミトリプチリン等
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)
ミルナシプラン等
その他の抗うつ薬
マプロチリン等
本剤の作用が増強され、血圧の異常上昇をきたすことがある。アドレナリン作動性神経終末でのカテコールアミンの再取り込みを遮断し、受容体でのカテコールアミン濃度を上昇させると考えられている。
メチルフェニデート本剤の作用が増強され、血圧の異常上昇をきたすことがある。アドレナリン作動性神経終末でのカテコールアミンの再取り込みを遮断し、受容体でのカテコールアミン濃度を上昇させると考えられている。
分娩促進薬
オキシトシン等
バッカクアルカロイド類
エルゴタミン等
本剤の作用が増強され、血圧の異常上昇をきたすことがある。これらの薬剤の血管平滑筋収縮作用により、血圧上昇作用を増強すると考えられている。
ジギタリス製剤異所性不整脈があらわれることがある。ともに異所性刺激能を有し、不整脈発現の可能性が高くなると考えられている。
キニジン心室細動があらわれることがある。相互に心筋に対する作用を増強すると考えられている。
甲状腺製剤
チロキシン等
冠不全発作があらわれることがある。甲状腺ホルモンは心筋のβ受容体を増加させるため、カテコールアミン感受性が亢進すると考えられている。
非選択性β遮断薬
プロプラノロール
カルベジロール等
(1)相互の薬剤の効果が減弱する。
(2)血圧上昇、徐脈があらわれることがある。
(1)これらの薬剤のβ遮断作用により本剤の作用が抑制される。また、本剤のβ刺激作用により、これらの薬剤の作用が抑制される。
(2)これらの薬剤のβ遮断作用により、本剤のα刺激作用が優位になると考えられている。
血糖降下薬
インスリン等
血糖降下薬の作用を減弱させることがある。本剤の血糖上昇作用によると考えられている。
ブロモクリプチン血圧上昇、頭痛、痙攣等があらわれることがある。機序は明らかではないが、本剤の血管収縮作用、血圧上昇作用に影響を及ぼすと考えられている。
利尿剤
チアジド系利尿剤
トリクロルメチアジド
ヒドロクロロチアジド等
チアジド系類似剤
インダパミド等
ループ利尿剤
フロセミド等
カリウム保持性利尿剤
スピロノラクトン
本剤の作用が減弱することがある。
手術前の患者に使用する場合、利尿剤の一時休薬等を行うこと。
本剤の血管反応性を低下させることがある。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 肺水腫(頻度不明)
初期症状として、血圧の異常上昇があらわれることがある。[8.2参照]
11.1.2 呼吸困難(頻度不明)
11.1.3 心停止(頻度不明)
初期症状として、頻脈、不整脈、心悸亢進、胸内苦悶があらわれることがある。[8.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 頻度不明
循環器心悸亢進、胸内苦悶、不整脈、顔面潮紅・蒼白、血圧異常上昇
精神神経系頭痛、めまい、不安、振戦
過敏症過敏症状等
消化器悪心・嘔吐
その他熱感、発汗

13. 過量投与

13.1 症状
13.1.1 ときに心室細動、脳出血等があらわれることがある。またアドレナリン受容体感受性の高い患者では、特に注意すること。
13.1.2 腎血管の異常収縮により、腎機能が停止するおそれがある。
13.1.3 血中の乳酸濃度が上昇し、重篤な代謝性アシドーシスがあらわれるおそれがある。

14. 適用上の注意

14.1 全般的な注意
使用時には、以下の点に注意すること。
・感染に対する配慮をすること。
・シリンジが破損するおそれがあるので、シリンジを鉗子等で叩くなど、強い衝撃を与えないこと。
・押子(プランジャー)が外れたり、ガスケットが変形し薬液が漏出したりするおそれがあるので押子のみを持たないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
<用法共通>
14.2.1 シリンジポンプでは使用しないこと。
14.2.2 使用に際しては、ブリスター包装を開封口からゆっくり開け、外筒(バレル)を持って取り出すこと。
14.2.3 筒先のキャップをゆっくり回転させながら外して、注射針等に確実に接続すること。キャップを外した後は、筒先に触れないこと。
<静脈内注射時>
14.2.4 本剤にて心肺蘇生時、炭酸水素ナトリウムとの混注は避けること。
14.2.5 血圧の異常上昇をきたさないよう慎重に投与すること。
<点滴静注時>
14.2.6 大量の注射液が血管外に漏出した場合、局所の虚血性壊死があらわれることがある。
<筋肉内注射時>
14.2.7 組織・神経等への影響を避けるため次の点に注意すること。
・注射部位については、神経走行部位を避けて慎重に投与すること。
・繰り返し注射する場合には、左右交互に注射するなど、同一部位を避けること。なお、小児等には特に注意すること。
・注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き、部位をかえて注射すること。
14.3 薬剤投与後の注意
開封後の使用は1回限りとし、使用後の残液はシリンジとともに速やかに廃棄すること。

16. 薬物動態

16.4 代謝
アドレナリンは血中では安定だが、速やかに交感神経細胞内に取り込まれるか、あるいは組織内で主にモノアミンオキシダーゼ(MAO)、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)により代謝、不活性化される。静注した場合の代謝物は、投与量の50%がO-メチル化物であるメタネフリンとその硫酸抱合体であり、残りの大部分は脱アミノ化物である3-メトキシ-4-ヒドロキシマンデル酸である4)
16.5 排泄
代謝物は主にグルクロン酸抱合体及び硫酸抱合体として尿中に排泄されるが、このなかには未変化体も含まれる4)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
アドレナリンはノルアドレナリンのN‐メチル化体であり、生体内では副腎髄質ホルモンとして働いている。アドレナリン受容体に結合して薬理作用を現し、全ての受容体(α1、α2、β1、β2)に対して刺激作用を示す4)
18.2 循環器系に対する作用
心臓に対しては、洞房結節の刺激発生のペースをはやめて心拍数を増加させ、心筋の収縮力を強め、心拍出量を増大するので強心作用(β1作用)を現す。血管に対しては、収縮作用と拡張作用の両方を現し、心臓の冠動脈を拡張し(β2作用)、皮膚毛細血管を収縮させ(α1作用)末梢抵抗を増加させて血圧を上昇させる5)6)
18.3 血管以外の平滑筋に対する作用
気管支筋に対して弛緩作用(β2作用)を現し、気管支を拡張させて呼吸量を増加させる5)6)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. アドレナリン

一般的名称 アドレナリン
一般的名称(欧名) Adrenaline
化学名 4-[(1R)-1-Hydroxy-2-(methylamino)ethyl]benzene-1,2-diol
分子式 C9H13NO3
分子量 183.20
物理化学的性状 白色〜灰白色の結晶性の粉末である。ギ酸又は酢酸(100)に溶けやすく、水に極めて溶けにくく、メタノール又はエタノール(99.5)にほとんど溶けない。希塩酸に溶ける。空気又は光によって徐々に褐色となる。
KEGG DRUG D00095

20. 取扱い上の注意

20.1 外箱開封後は遮光して保存すること。
20.2 ブリスター包装内は滅菌している。また、脱酸素剤を入れて安定性を保持しているので、使用時まで開封しないこと。
20.3 以下の場合には使用しないこと。
・包装フィルム表面に減圧によるへこみがない場合
・シリンジから薬液が漏れている場合
・性状その他薬液に異状が認められる場合
・シリンジに破損等の異状が認められる場合
・キャップが外れている場合
・シリンジ先端部のシールがはがれている場合

22. 包装

1mLシリンジ×10本[脱酸素剤入り]

23. 主要文献

  1. Johnston RR,et al., Anesth Analg., 55 (5), 709-712, (1976)
  2. Navarro R,et al., Anesthesiology, 80 (3), 545-549, (1994) »PubMed
  3. Moore MA,et al., Anesthesiology, 79 (5), 943-947, (1993) »PubMed
  4. 第十八改正日本薬局方解説書, C204-C214, (2021), (廣川書店)
  5. 島本暉朗ほか, 薬理学, 340-347, (1964), (医学書院)
  6. 高木敬次郎ほか, 薬物学, 84-85, (1987), (南山堂)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
テルモ株式会社 テルモ・コールセンター
〒259-0151 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500
電話:0120-12-8195
製品情報問い合わせ先
テルモ株式会社 テルモ・コールセンター
〒259-0151 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500
電話:0120-12-8195

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
テルモ株式会社
東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目44番1号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2023/09/20 版