17.1.1 国内第II相試験(HPV-032試験)
20〜25歳の女性1040例を対象とした二重盲検比較試験において、有効性を対照(HAV:不活化A型肝炎ワクチン)と比較した。主要評価項目解析でHPV-16又はHPV-18の持続感染(6ヵ月定義)は統計学的に有意な有効性(VE
注1))が得られた(p<0.0001,両側Fisher直接確率検定)。持続感染に対する有効性を表1に示した
1)。
注1)VE(Vaccine Efficacy)=(1-(本剤群の発生例数/本剤群の総追跡調査期間)/(対照群の発生例数/対照群の総追跡調査期間))×100(%)
表1 持続感染注2)に対する有効性(プロトコールに準拠したコホート)注3)
HPV-16/18に起因するエンドポイント | 本剤 | 対照 | 有効性(%) (95.5%CI) |
被験者数 | 発生例数 | 被験者数 | 発生例数 |
持続感染 (6ヵ月定義) | 387 | 0 | 392 | 15 | 100 (71.3,100) |
試験開始時に血清抗体陰性であった被験者の3回目接種1ヵ月後の幾何平均抗体価(GMT)は、抗HPV-16抗体が7975.9 EL.U/mL(95%CI:7313.0-8698.8)及び抗HPV-18抗体が4080.9 EL.U/mL(95%CI:3740.4-4452.4)であった。
本剤接種後7日間(接種当日も含む)の日誌による安全性調査を行った512例のうち、局所(注射部位)の副反応発現頻度は100.0%(512/512例)であり、疼痛99.2%(508/512例)、発赤88.9%(455/512例)、腫脹78.3%(401/512例)であった。また、全身性の副反応発現頻度は80.1%(410/512例)であった。主なものは、疲労61.7%(316/512例)、筋肉痛49.2%(252/512例)、頭痛39.3%(201/512例)であった。
17.1.2 国内第II相試験(HPV-063試験)
HPV-032試験を完了した752例を対象に追跡調査試験を実施し、1回目ワクチン接種後4年間までの長期有効性を評価した。両試験(HPV-032及びHPV-063試験)の併合解析におけるHPV-16又はHPV-18の持続感染(12ヵ月定義)、HPV-16又はHPV-18に起因する組織病変に対する有効性を表2に示した。なお、組織病変の評価において、数例では子宮頸部に事前に検出されていない型を含む、新たな複数の癌原性HPVが病変部位に検出された。そのため病変の原因である可能性が最も高い型と、単に一時的に存在している型とを区別するためHPV型判定アルゴリズムを適用した。病変部位に検出されたHPV型及び先行する細胞検体から検出されたHPVの型を検討し、病変形成に深く関与していると考えられる型を特定し、HPV-16型及び18型以外の型に起因する組織病変は除外した。
表2 持続感染及び組織病変に対する有効性(HPV-032/063併合解析、追跡期間4年間、プロトコールに準拠したコホート注1)/HPV型判定アルゴリズム)
HPV-16/18に起因するエンドポイント | 本剤 | 対照 | 有効性(%)(95%CI) |
被験者数 | 発生例数 | 被験者数 | 発生例数 |
持続感染(12ヵ月定義) | 382 | 0 | 383 | 16 | 100 (74.8,100) |
CIN1+注2) | 406 | 0 | 404 | 8 | 100 (42.2,100) |
CIN2+注3) | 406 | 0 | 404 | 5 | 100 (-8.0,100) |
1回目接種48ヵ月後のGMTは、抗HPV-16抗体が1283.2 EL.U/mL(95%CI:1150.1-1431.7)及び抗HPV-18抗体が473.0 EL.U/mL(95%CI:416.8-536.8)であり、それぞれ自然感染による抗体価の43.1倍、20.9倍であった。抗体陽性率は48ヵ月目までHPV-16及びHPV-18いずれにおいても100%を維持した。
17.1.3 国内第III相試験(HPV-046試験)
10〜15歳の女性100例を対象とした非盲検試験において、ワクチンを0、1、6ヵ月目に3回接種した1ヵ月後の免疫原性を評価した。試験開始時に血清抗体陰性であった被験者の3回目接種1ヵ月後のGMTは、抗HPV-16抗体が19513.8 EL.U/mL(95%CI:16837.7-22615.3)及び抗HPV-18抗体が8998.4 EL.U/mL(95%CI:7746.7-10452.2)であり、GMTは20〜25歳の日本人女性(HPV-032試験)の2倍以上を示した
2)。なお、本試験では有効性の評価は実施されていない。
本剤接種後7日間(接種当日も含む)の日誌による安全性調査を行った100例のうち、局所(注射部位)の副反応発現頻度は99.0%(99/100例)であり、疼痛98.0%(98/100例)、発赤85.0%(85/100例)、腫脹81.0%(81/100例)であった。また、全身性の副反応発現頻度は65.0%(65/100例)であった。主なものは、疲労37.0%(37/100例)、頭痛31.0%(31/100例)、筋肉痛25.0%(25/100例)であった。
17.1.4 海外第III相試験(HPV-008試験)
15〜25歳の女性18665例を対象とした二重盲検比較試験において、有効性を対照(HAV)と比較した。試験終了時解析(48ヵ月目)の主要評価項目でHPV-16又はHPV-18に起因するCIN2+(CINグレード2以上)は、本剤群で5例に対して対照群は97例(VE=94.9%(95%CI:87.7%,98.4%))、追加評価項目でCIN3+(CINグレード3以上)は本剤群で2例に対して対照群で24例(VE=91.7%(95%CI:66.6%,99.1%))であった
3)。また、HPV型判定アルゴリズム適用後の組織病変に対する有効性を表3に示し、持続感染に対する有効性を表4に示した。
表3 組織病変に対する有効性(プロトコールに準拠したコホート注)/HPV型判定アルゴリズム)
HPV-16/18に起因するエンドポイント | 本剤 | 対照 | 有効性(%) (95%CI) |
被験者数 | 発生例数 | 被験者数 | 発生例数 |
CIN2+ | 7338 | 1 | 7305 | 92 | 98.9 (93.8,100) |
CIN3+ | 7338 | 0 | 7305 | 22 | 100 (81.8,100) |
表4 持続感染注)に対する有効性(プロトコールに準拠したコホート)
HPV-16/18に起因するエンドポイント | 本剤 | 対照 | 有効性(%) (95%CI) |
被験者数 | 発生例数 | 被験者数 | 発生例数 |
持続感染(6ヵ月定義) | 7182 | 35 | 7137 | 588 | 94.3 (92.0,96.1) |
持続感染(12ヵ月定義) | 7082 | 26 | 7038 | 354 | 92.9 (89.4,95.4) |
試験終了時(48ヵ月目)におけるその他の癌原性HPVに起因する持続感染及び組織病変に対する有効性を表5に示した
4)。HPV-31、HPV-33、HPV-45及びHPV-51に起因する持続感染(6ヵ月定義)及びCIN2+に対する統計学的な有意差が全てのコホートにおいて認められた。
表5 癌原性HPVに起因する持続感染及び組織病変に対する有効性(プロトコールに準拠したコホート)注)
HPV型 | 持続感染(6ヵ月定義) | CIN2+ |
本剤 | 対照 | 有効性(%) (95%CI) | 本剤 | 対照 | 有効性(%) (95%CI) |
発生例数 | 発生例数 | 発生例数 | 発生例数 |
HPV-16に近縁の型 |
HPV-31 | 58 | 247 | 76.8 (69.0,82.9) | 5 | 40 | 87.5 (68.3,96.1) |
HPV-33 | 65 | 117 | 44.8 (24.6,59.9) | 13 | 41 | 68.3 (39.7,84.4) |
HPV-35 | 67 | 56 | -19.8 (-74.1,17.2) | 3 | 8 | 62.5 (-56.5,93.6) |
HPV-52 | 346 | 374 | 8.3 (-6.5,21.0) | 24 | 33 | 27.6 (-26.3,59.1) |
HPV-58 | 144 | 122 | -18.3 (-51.8,7.7) | 15 | 21 | 28.5 (-45.5,65.7) |
HPV-18に近縁の型 |
HPV-39 | 175 | 184 | 4.8 (-17.7,23.1) | 4 | 16 | 74.9 (22.3,93.9) |
HPV-45 | 24 | 90 | 73.6 (58.1,83.9) | 2 | 11 | 81.9 (17.0,98.1) |
HPV-59 | 73 | 68 | -7.5 (-51.8,23.8) | 1 | 5 | 80.0 (-79.1,99.6) |
HPV-68 | 165 | 169 | 2.6 (-21.5,21.9) | 11 | 15 | 26.8 (-70.7,69.6) |
その他のHPV型 |
HPV-51 | 349 | 416 | 16.6 (3.6,27.9) | 21 | 46 | 54.4 (22.0,74.2) |
HPV-56 | 226 | 215 | -5.3 (-27.5,13.1) | 7 | 13 | 46.1 (-45.2,81.8) |
HPV-66 | 211 | 215 | 2.3 (-18.7,19.6) | 7 | 16 | 56.4 (-12.1,84.8) |
試験開始時に血清抗体陰性であった被験者の3回目接種1ヵ月後のGMTは、抗HPV-16抗体が9341.5 EL.U/mL(95%CI:8760.4-9961.1)及び抗HPV-18抗体が4769.6 EL.U/mL(95%CI:4491.2-5065.3)であった
5)。
本剤接種後7日間(接種当日も含む)の日誌による安全性調査を行った3184例のうち、局所(注射部位)の副反応発現頻度は91.2%(2805/3077例)であり、疼痛90.5%(2786/3077例)、発赤43.8%(1348/3077例)、腫脹42.0%(1292/3077例)であった。また、全身性の副反応発現頻度は57.6%(1772/3076例)であった。主なものは、疲労39.8%(1223/3076例)、筋肉痛39.3%(1209/3076例)、頭痛30.7%(943/3076例)であった。
17.1.5 海外第II相試験(HPV-001試験、HPV-007試験、HPV-023試験)
15〜25歳の女性1113例を対象とした二重盲検比較試験(HPV-001試験)において、有効性をプラセボと比較した。また、HPV-001試験で3回のワクチン接種を完了した776例を継続して追跡調査試験(HPV-007試験)に登録し、本剤の長期有効性を評価した。HPV-001及びHPV-007試験を併合解析した組織病変に対する有効性を表6に示した
6)。また、HPV-001/007試験を完了した437例を対象に追跡調査試験(HPV-023試験)を実施し、更なる長期有効性を評価した。その結果、HPV-16/18に起因する6ヵ月持続感染、12ヵ月持続感染及びCIN1+について、本剤群では新たな発症例は認められなかったが、対照群ではそれぞれ4例、1例及び1例の発症が認められた。現在までに1回目接種後、最長9.4年間(平均追跡期間約8.9年)までの予防効果が持続することが確認されている。
表6 組織病変に対する有効性(総コホート注))
HPV-16/18に起因するエンドポイント | 本剤 | プラセボ | 有効性(%) (95%CI) |
被験者数 | 発生例数 | 被験者数 | 発生例数 |
CIN2+ | 481 | 0 | 470 | 9 | 100 (51.3,100) |
HPV-001、HPV-007及びHPV-023試験において、HPV-16及びHPV-18に対するGMTは1回目の接種から7ヵ月目にピークに達し、以後18ヵ月目からはプラトーに達し9.4年(113ヵ月)まで維持された。また、113ヵ月目時点でHPV-16及びHPV-18のいずれも、GMTは自然感染による抗体価の10倍以上であり、抗体陽性率はそれぞれ100%を維持した。
本剤接種後7日間(接種当日も含む)の日誌による安全性調査を行った540例のうち、局所(注射部位)の副反応発現頻度は94.0%であり、疼痛93.4%(496/531例)、発赤35.6%(189/531例)、腫脹34.3%(182/531例)であった。また、全身性の主な副反応は、疲労40.3%(214/531例)、頭痛33.9%(180/531例)、胃腸症状16.8%(89/531例)であった。
17.1.6 海外第III相試験(HPV-014試験)
15〜55歳の女性666例を対象とした非盲検年齢層別試験において、ワクチン3回接種後の免疫原性を評価した。試験開始時に血清抗体陰性であった被験者では年齢に関係なく、1回目の接種から18ヵ月目のHPV-16及びHPV-18に対するGMTはHPV-001及びHPV-007試験のプラトー期のGMTと同じ範囲にあった。26〜55歳の年齢層では15〜25歳の年齢層に比べGMTがやや低値ではあったが、48ヵ月目の抗体価は、自然感染による抗体価に比べ高く維持された。なお、本試験において有効性の評価は実施されていない。
本剤接種後7日間(接種当日も含む)の日誌による安全性調査を行った666例のうち、局所(注射部位)の副反応発現頻度は96.9%(220/227例)、94.7%(214/226例)、86.0%(178/207例)(それぞれ15〜25歳群、26〜45歳群、46〜55歳群、以下同じ)であり、疼痛96.9%(220/227例)、92.9%(210/226例)、82.6%(171/207例)、発赤58.6%(133/227例)、55.8%(126/226例)、48.8%(101/207例)、腫脹42.3%(96/227例)、44.2%(100/226例)、40.1%(83/207例)であった。また、全身性の副反応発現頻度は56.4%(128/227例)、42.5%(96/226例)、41.5%(86/207例)であった。主なものは、疲労37.9%(86/227例)、26.5%(60/226例)、21.3%(44/207例)、頭痛33.9%(77/227例)、21.2%(48/226例)、22.2%(46/207例)、筋肉痛42.3%(96/227例)、27.4%(62/226例)、23.2%(48/207例)であった。
抗体価と長期間にわたる感染の予防効果及び子宮頸癌とその前駆病変の予防効果との相関性については現時点では明確ではない。