16.1.1 単回投与
健康成人男性に本剤2.5mg
注)、5mg又は10mgを単回経口投与した時、本剤は速やかに吸収され、投与後2〜2.5時間(中央値)に最高血漿中濃度(Cmax)に達した。Cmax及び血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)は用量の増加にほぼ比例して増加した。消失半減期(t
1/2)は約10〜19時間であった。
図1 空腹時単回投与後の血漿中アンブリセンタン濃度の推移(平均値±標準偏差)
表1 空腹時単回投与後の薬物動態パラメータ
投与量(例数) | Cmax(ng/mL) | tmax(h) | AUC0-∞(ng・h/mL) | t1/2(h) |
2.5mg注)(11例) | 178.7±32.05 | 2.5(1.0-4.0) | 1438.8±372.60 | 10.0±3.62 |
5mg(11例) | 362.0±42.53 | 2.0(1.0-4.0) | 2944.5±608.55 | 13.6±4.83 |
10mg(12例) | 766.8±90.68 | 2.0(1.0-4.0) | 6894.1±1612.50 | 18.8±10.98 |
注)本剤の成人承認用量は1日1回5mg、症状に応じて1日10mgを超えない範囲で適宜増量である。
16.1.2 反復投与
成人肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者に本剤5mgを1日1回12週間反復経口投与した時、投与後4時間にCmaxに達し、t
1/2は11時間であった。定常状態におけるAUC
0-24は8337.4ng・h/mL、Cmaxは674.3ng/mLであった。
また、本剤5mg及び10mgを投与した時の定常状態時における投与前及び投与後2〜4時間の血漿中アンブリセンタン濃度は表2のとおりであった。
表2 成人PAH患者に本剤5mg及び10mg投与時の血漿中アンブリセンタン濃度(定常状態)
投与群(症例数) | 血漿中アンブリセンタン濃度(ng/mL):投与前 | 血漿中アンブリセンタン濃度(ng/mL):投与2〜4時間後 |
5mg(28例) | 147.8±157.2 | 635.2±260.7 |
10mg(17例) | 263.3±265.5 | 1083.2±318.9 |
8歳以上の小児PAH患者に本剤を1日1回経口投与した時の用量群別の曝露量(推定値)は表3のとおりであった。
表3 8歳以上の小児PAH患者における薬物動態パラメータ(母集団薬物動態解析による推定値)
集団 | 投与量 (症例数) | 体重区分 | AUCss(μg・h/mL) | Cmax,ss(ng/mL) |
低用量群 |
日本人 | 2.5mg (3例) | 20〜35kg未満 | 3.94(3.03-5.11) | 442(217-898) |
5mg (1例) | 35〜50kg未満 | 5.60 | 668 |
5mg (1例) | 50kg以上 | 3.87 | 530 |
外国人 | 2.5mg (5例) | 20〜35kg未満 | 4.09(3.11-5.39) | 501(407-615) |
5mg (7例) | 35〜50kg未満 | 6.56(5.00-8.62) | 497(384-643) |
5mg (3例) | 50kg以上 | 3.84(1.98-7.45) | 659(255-1700) |
高用量群 |
外国人 | 5mg (9例) | 20〜35kg未満 | 8.73(7.75-9.83) | 953(850-1070) |
7.5mg (4例) | 35〜50kg未満 | 8.70(7.62-9.92) | 1100(679-1790) |
10mg (6例) | 50kg以上 | 10.2(8.04-12.8) | 948(791-1140) |
16.1.3 母集団薬物動態解析
健康成人及び成人PAH患者における母集団薬物動態解析の結果から、年齢及び性別は本剤の薬物動態に大きな影響を与えなかった(外国人データ)。
In vitroでの本剤(0.2〜20μg/mL)のヒト血漿蛋白結合率は98.8%であった。また、本剤は主にアルブミンと結合し(96.5%)、一部はα1-酸性糖蛋白質と結合した。
本剤はin vitroでUDP-グルクロン酸転移酵素のUGT1A9、UGT2B7及びUGT1A3によりグルクロン酸抱合され、その他に、チトクロームP450(CYP)で酸化的に代謝される。CYPによる代謝には主にCYP3A4、一部にCYP2C19及びCYP3A5が関与する。
健康成人男性を対象に2H及び14C標識した本剤を単回経口投与した時の主要排泄経路は糞中であり、投与量の約40%が未変化体、約21%が4-水酸化体として糞中に排泄された。また、尿中には、投与量の約4%が未変化体、約18%が未変化体のグルクロン酸抱合体及び4-水酸化体のグルクロン酸抱合体として排泄された(外国人データ)。
16.6.1 腎障害患者
腎障害患者における本剤の薬物動態は検討されていない。
本剤の主要排泄経路は糞中であるため、腎障害患者では、本剤の血中濃度が上昇する可能性は低い。
16.6.2 肝障害患者
肝障害患者における本剤の薬物動態は検討されていない。
本剤は、UGT及びCYPで代謝されるため、肝障害患者では、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。[
9.3.1-
9.3.3参照]
16.7.1 代謝酵素に及ぼす影響
非臨床試験において、本剤は第I及びII相代謝酵素を阻害・誘導しなかったことから、本剤がこれらの代謝酵素で代謝される薬剤の体内動態に影響を及ぼす可能性は低いと考えられる。
16.7.2 薬剤トランスポーターに及ぼす影響
本剤はin vitroでP-糖蛋白質及びorganic anion transporting polypeptide(OATP)の基質である。また、本剤はin vitroでOATP1B1、OATP1B3及びsodium taurocholate co-transporting polypeptide(NTCP)を阻害し、IC50はそれぞれ47、45及び約100μMであった。本剤はin vitroでP-糖蛋白質、bile salt export pump(BSEP)、breast cancer resistance protein(BCRP)及びmulti-drug resistance protein-2(MRP2)を阻害しなかった。
16.7.3 CYP3A4に対する誘導の検討
健康成人を対象に本剤がCYP3A4を誘導する可能性について尿中6β-ヒドロキシコルチゾール濃度を指標として検討した結果、本剤はCYP3A4を誘導しなかった(外国人データ)。
16.7.4 シクロスポリン
健康成人男女に、本剤5mg反復投与時にシクロスポリン100〜150mgを併用した結果、定常状態における本剤のAUCは約2倍となった。シクロスポリン100〜150mgを反復投与時に本剤5mgを併用した結果、本剤は定常状態におけるシクロスポリンの薬物動態に影響を与えなかった(外国人データ)。[7.、
10.2参照]
16.7.5 ケトコナゾール(経口剤:国内未発売)
健康成人男性に、ケトコナゾール400mg反復投与時に本剤10mgを併用した結果、本剤のCmax及びAUCは非併用時に比べ、それぞれ約20%及び35%増加した(外国人データ)。
16.7.6 リファンピシン
健康成人男女に、本剤10mg反復投与時にリファンピシン600mgを併用した結果、リファンピシン併用初期には本剤のAUCの一過性の増加(約2倍)が認められたが、リファンピシンを8日間併用投与後には、リファンピシンは本剤の薬物動態に影響を与えなかった(外国人データ)。
16.7.7 経口避妊薬(エチニルエストラジオール35μg及びノルエチステロン1mg含有)
健康成人女性に、本剤10mg反復投与時に経口避妊薬を併用した結果、本剤はエチニルエストラジオール及びノルエチステロンの薬物動態に影響を与えなかった(外国人データ)。
16.7.8 ジゴキシン
健康成人男性に、本剤10mg反復投与時にジゴキシン0.5mgを併用した結果、本剤はジゴキシンの薬物動態に影響を与えなかった(外国人データ)。
16.7.9 オメプラゾール
オメプラゾールによる血漿中未変化体濃度及び薬物動態に与える影響を評価するため、PAH患者での長期第III相試験における薬物動態データを用いてpost-hoc解析を行ったところ、オメプラゾール併用投与群と非併用投与群で差は認められなかった(外国人データ)。
16.7.10 その他の薬剤
健康成人男女に、本剤10mgとシルデナフィル20mg、タダラフィル40mg、又はワルファリン25mgを併用した結果、本剤の薬物動態に変化は認められなかった。また、本剤はシルデナフィル、タダラフィル、ワルファリンの薬物動態に影響を与えなかった(外国人データ)。