<適応菌種>
<適応症>
敗血症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎
<筋肉内投与の場合>
通常、成人1回アミカシン硫酸塩として100〜200mg(力価)を1日1〜2回筋肉内投与する。小児は、アミカシン硫酸塩として1日4〜8mg(力価)/kgとし、1日1〜2回筋肉内投与する。
なお、年齢及び症状により適宜増減する。
<点滴静脈内投与の場合>
通常、成人1回アミカシン硫酸塩として100〜200mg(力価)を、1日2回点滴静脈内投与する。小児は、アミカシン硫酸塩として1日4〜8mg(力価)/kgとし、1日2回点滴静脈内投与する。また、新生児(未熟児を含む)は、1回アミカシン硫酸塩として6mg(力価)/kgを、1日2回点滴静脈内投与する。
なお、年齢、体重及び症状により適宜増減する。
点滴静脈内投与の場合には、通常100〜500mLの補液中に100〜200mg(力価)の割合で溶解し、30分〜1時間かけて投与すること。
腎障害患者では、起炎菌の感受性、感染症の重症度、感染部位、腎機能障害の程度を考慮に入れ、投与量・投与間隔を調整すること。[
8.2、
9.2参照]
7.1 1回投与量を調節する方法
体重及びクレアチニン・クリアランスを用い、図1又は計算式より求めた初回量及び維持量を投与する
1)。
図1 8時間及び12時間ごと投与図
8時間ごと投与の計算式
初回量(mg) | DL=D・W/5.0×104[(Ccr+132)2−1700] |
維持量(mg) | DM=D・W/101(Ccr+0.7) |
12時間ごとの計算式
初回量(mg) | DL=D・W/4.3×104[(Ccr+125)2−6700] |
維持量(mg) | DM=D・W/101(Ccr+0.7) |
D:腎機能正常者に対する使用量(mg/kg)、W:体重(kg)
Ccr:クレアチニン・クリアランス(mL/min)
7.2 投与間隔を調節する方法
「血清クレアチニン値×9」時間ごとに通常量を投与する。
8.1 本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること。[
11.1.1参照]
8.1.1 事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。[2.参照]
8.1.2 投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。
8.1.3 投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。
8.2 眩暈、耳鳴、難聴等の第8脳神経障害があらわれることがあるので慎重に投与すること。特に腎機能障害患者、高齢者、長期間投与患者及び大量投与患者等では血中濃度が高くなりやすく、聴力障害の危険性がより大きくなるので、聴力検査を実施することが望ましい。アミノグリコシド系抗生物質の聴力障害は、高周波音に始まり低周波音へと波及するので、障害の早期発見のために、聴力検査の最高周波数である8kHzでの検査が有用である。[7.、
9.2、
9.8.1、
11.1.2参照]
8.3 急性腎障害等の重篤な腎障害があらわれることがあるので、定期的に検査を実施するなど観察を十分に行うこと。[
9.8.1、
11.1.3参照]
8.4 投与後は血中濃度をモニタリングすることが望ましい。
8.5 本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 本人又はその血族がアミノグリコシド系抗生物質による難聴又はその他の難聴のある患者
9.1.2 重症筋無力症の患者
神経筋遮断作用があり呼吸抑制があらわれることがある。
9.1.3 経口摂取の不良な患者又は非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者
観察を十分に行うこと。ビタミンK欠乏症状があらわれることがある。
9.2 腎機能障害患者
投与量を減らすか、投与間隔をあけて投与すること。高い血中濃度が持続し、腎障害が悪化するおそれがあり、また、第8脳神経障害等の副作用が強くあらわれるおそれがある。[7.、
8.2参照]
9.3 肝機能障害患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。アミカシン硫酸塩はヒト胎盤を通過する。新生児に第8脳神経障害があらわれるおそれがある。[
16.3.1参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.8 高齢者
次の点に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
9.8.1 本剤は主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがあり、第8脳神経障害、腎障害等の副作用があらわれやすい。[
8.2、
8.3参照]
9.8.2 ビタミンK欠乏による出血傾向があらわれることがある。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック(0.1%未満)
初期症状として、不快感、口内異常感、喘鳴、眩暈、便意、耳鳴、発汗等があらわれることがある。[
8.1参照]
11.1.2 第8脳神経障害(0.1〜5%未満)
耳鳴・耳閉塞感・耳痛・眩暈・難聴等の第8脳神経障害(主として蝸牛機能障害)があらわれることがある。[
8.2参照]
11.1.3 急性腎障害(頻度不明)
重篤な腎障害があらわれることがある。[
8.3参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
過敏症 | 発疹 | そう痒、発熱 | |
腎臓 | | 浮腫、蛋白尿、血尿、血清クレアチニン上昇、BUN上昇、乏尿 | カリウム等の電解質異常 |
肝臓 | AST上昇、ALT上昇 | Al-P上昇 | |
血液 | | 白血球減少、好酸球増多 | |
消化器 | | 下痢、悪心・嘔吐 | |
ビタミン欠乏症 | | | ビタミンK欠乏症状(低プロトロンビン血症、出血傾向等)、ビタミンB群欠乏症状(舌炎、口内炎、食欲不振、神経炎等) |
投与部位(筋注の場合) | 注射部位の疼痛、硬結 | | |
その他 | | 頭痛、口唇部のしびれ感 | |
13.1 症状
腎障害、聴覚障害、前庭障害、神経筋遮断症状、呼吸麻痺があらわれることがある。
13.2 処置
血液透析、腹膜透析による薬剤の除去を行う。神経筋遮断症状、呼吸麻痺に対してはコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム製剤の投与又は機械的呼吸補助を行う。
15.1 臨床使用に基づく情報
クエン酸で抗凝固処理した血液を大量輸血された患者にアミノグリコシド系抗生物質を投与すると、投与経路にかかわらず、神経筋遮断症状、呼吸麻痺があらわれることがある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 聴器毒性
モルモットにアミカシンを筋肉内投与した実験(40、100、200mg/kg、28日間)で、耳介反射の消失を認めるとともに、ラセン器の外有毛細胞の消失が認められたとの報告がある
2)。
15.2.2 腎毒性
ラットにアミカシンを背部皮下投与した実験(25、100、400mg/kg、30日間)で、腎重量増加がみられるとともに近位尿細管の内腔拡張、上皮の扁平化が認められたとの報告がある
3)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内二重盲検比較試験
急性単純性膀胱炎の患者に対しアミカシン硫酸塩(AMK)及びベカナマイシン硫酸塩(AKM)それぞれ200mg(力価)を1日1回3日間、筋肉内注射にて投与する二重盲検比較試験において、AMK投与49例では著効38例、有効8例で有効率93.9%(46/49例)であり、アミカシン硫酸塩の有用性が示された。また、AKM投与56例では著効38例、有効15例で有効率94.6%(53/56例)であり、両群間に有意差を認めなかった。AMK投与群において副作用は3例に認められ、耳鳴(1/49例)、発熱(1/49例)、注射部位疼痛(1/49例)であった
12)。
17.1.2 国内二重盲検比較試験
急性腎盂腎炎の患者に対しアミカシン硫酸塩(AMK)及びベカナマイシン硫酸塩(AKM)それぞれ200mg(力価)を1日1回7日間、筋肉内注射にて投与する二重盲検比較試験において、AMK投与21例では著効14例、有効7例で有効率100.0%(21/21例)であり、アミカシン硫酸塩の有用性が示された。また、AKM投与19例では著効11例、有効6例で有効率89.5%であり、両群間に有意差を認めなかった。AMK投与群において副作用は5例に認められたが全て注射部疼痛(5/21例)であった
12)。
17.1.3 国内二重盲検比較試験
膀胱・前立腺手術後(留置カテーテル抜去後)尿路感染症及び複雑性尿路感染症の患者に対しアミカシン硫酸塩(AMK)及びベカナマイシン硫酸塩(AKM)それぞれ200mg(力価)を1日2回7日間、筋肉内注射にて投与する二重盲検比較試験において、AMK投与31例では著効5例、有効16例で有効率67.7%(21/31例)、AKM投与37例では著効2例、有効12例で有効率37.8%であり、AMK投与群の方が有意差をもって有用であった。なお、AMK投与群において副作用は認められなかった
12)。
注)疾患名・菌種名は承認申請資料に基づき記載している。