5.1 アルコール依存症の診断は、国際疾病分類等の適切な診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ使用すること。
5.2 心理社会的治療と併用すること。
5.3 断酒の意志がある患者にのみ使用すること。
5.4 離脱症状がみられる患者では、離脱症状に対する治療を終了してから使用すること。[本剤は離脱症状の治療剤ではない。]
通常、成人にはアカンプロサートカルシウムとして666mgを1日3回食後に経口投与する。
7.1 本剤の吸収は食事の影響を受けやすく、有効性及び安全性は食後投与により確認されているため、食後に服用するよう指導すること。[空腹時に投与すると、食後投与と比較して血中濃度が上昇するおそれがある。][
16.2.1参照]
7.2 本剤の投与期間は原則として24週間とすること。治療上の有益性が認められる場合にのみ投与期間を延長できるが、定期的に本剤の投与継続の要否について検討し、本剤を漫然と投与しないこと。[国内臨床試験では、24週間の投与による有効性及び安全性が確認されている。][
17.1.1参照]
8.1 本剤は、アルコール依存症の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、投与すること。
8.2 本剤との因果関係は明らかではないが、自殺念慮、自殺企図等が報告されているので、本剤を投与する際には患者の状態を十分に観察するとともに、関連する症状があらわれた場合には、本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
8.3 患者及びその家族等に自殺念慮、自殺企図等の行動の変化があらわれることのリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 自殺念慮又は自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重度の腎機能障害のある患者
投与しないこと。排泄遅延により、高い血中濃度が持続するおそれがある。[
2.2、
16.6.1参照]
9.2.2 中等度の腎機能障害のある患者
減量を考慮するとともに、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。排泄遅延により血中濃度が上昇するおそれがある。[
16.6.1参照]
9.2.3 軽度の腎機能障害のある患者
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重度の肝機能障害のある患者
重度の肝機能障害のある患者を対象とした臨床試験は実施していない。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
減量を考慮するとともに、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。血中濃度が上昇するおそれがある。[
16.6.3参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 アナフィラキシー(頻度不明)
全身性皮疹、発疹、蕁麻疹、口内炎、喉頭痙攣、息切れ等の症状を伴うアナフィラキシーがあらわれることがある。
11.1.2 血管浮腫(頻度不明)
舌腫脹、リンパ節腫脹等の症状を伴う血管浮腫があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 1〜5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
精神神経系 | | 傾眠 | 不安、頭痛、精神運動亢進 | |
消化器 | 下痢(14.1%) | 腹部膨満、嘔吐 | 便秘、悪心、鼓腸、過敏性腸症候群、口内炎 | 腹痛 |
肝臓 | | | γ-GTP増加 | |
皮膚 | | | 湿疹、乾癬 | 蕁麻疹、そう痒症、斑状丘疹状皮疹 |
その他 | | | 浮腫、末梢性浮腫 | 不感症、勃起不全、リビドー減退・亢進 |
14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
14.1.2 本剤は腸溶性のフィルムコーティング錠であるため、かんだり、割ったり、砕いたりせずにそのまま服用するよう指導すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
海外で実施されたアルコール依存症患者を対象とした本剤の計11のプラセボ対照臨床試験において、自殺念慮、自殺企図等の自殺関連有害事象の発現割合は、短期投与試験(90日〜6ヵ月)で本剤群1.4%(19/1317例)、プラセボ群0.5%(6/1186例)、長期投与試験(48週〜12ヵ月)で本剤群2.4%(17/702例)、プラセボ群0.8%(4/520例)であり、相対リスク比は、短期投与試験で2.85(95%信頼区間:1.14-7.12)、長期投与試験で3.15(95%信頼区間:1.07-9.30)であった。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男性(各10例)に本剤333〜1998mgを絶食下
注)で単回経口投与した場合、血漿中未変化体濃度は4.4〜6.8時間で最高に達し、14.9〜20.4時間の半減期で消失した。血漿中濃度は用量増加とともに上昇し、AUC
0-∞は用量にほぼ比例して増加した
1)。
健康成人男性に本剤を経口投与した後の血漿中未変化体濃度推移(各点は10例の平均値)
薬物動態パラメータ
Dose(mg) | 例数 | Cmax(ng/mL) | tmax(hr) | t1/2,β(hr) | AUC0-∞(ng・hr/mL) |
333 | 10 | 123±45 | 4.40±0.70 | 16.9±5.9 | 1650±620 |
666 | 10 | 293±174 | 5.30±1.83 | 14.9±8.8 | 3760±1410 |
1332 | 10 | 290±120 | 6.80±3.43 | 20.4±15.1 | 8400±3890 |
1998 | 10 | 443±207 | 5.20±2.74 | 19.8±15.4 | 10700±5600 |
16.1.2 反復投与
本剤を健康成人男性10例に食後反復経口投与(666mgを1日3回)した場合、反復投与2日目からほぼ一定の血漿中濃度を示し、速やかに定常状態に達すると推察された
2)。
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
本剤666mgを健康成人男性9例に絶食下又は食後投与で単回経口投与し、薬物動態パラメータを比較した。絶食下では食後投与と比較して、Cmaxで約3倍、AUC
0-∞で約2倍上昇した
1)。[
7.1参照]
16.3 分布
アカンプロサートカルシウムを健康成人男性に静脈内投与
注)した後の分布容積は72〜109L(ほぼ1L/kg)であると推定される
3)4)(外国人データ)。また、ヒト血漿蛋白に対する未変化体(0.1〜10μg/mL)の結合率は限外ろ過法で1%以下であった
5)。
16.4 代謝
アカンプロサートカルシウムは、生体内で代謝を受けず未変化体として排泄される
6)。ヒト肝ミクロソームを用いた
in vitroのチトクロームP-450(CYP)阻害試験で、アカンプロサートカルシウムはCYP1A2、2C9、2C19、2D6、2E1及び3A4に対する阻害作用を示さず、初代培養ヒト肝細胞において、CYP1A2及び3A4の酵素誘導をしなかった
7)。
16.5 排泄
アカンプロサートカルシウムの主要排泄経路は腎排泄である。日本の健康成人男性(各10例)に本剤(333〜1998mg)を絶食下
注)で単回経口投与した場合、投与後96時間までの尿中に投与量の約4.99〜7.49%が未変化体として排泄された
1)。外国の健康成人男性12例にアカンプロサートカルシウム333mgを静脈内投与した場合、投与後72時間までに投与量の96〜113%が尿中に未変化体として排泄された
3)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
本剤666mgを中等度(クレアチニンクリアランス30〜60mL/min)及び重度(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)の腎機能障害患者と健康成人(各6例)に絶食下
注)で単回経口投与し、薬物動態パラメータを比較した。中等度及び重度の腎機能障害患者のCmaxは健康成人のそれぞれ約2及び4倍であり、消失半減期は約1.8及び2.6倍に延長した
8)(外国人データ)。[
9.2.1、
9.2.2参照]
16.6.2 肝機能障害患者
軽度から中等度の肝機能障害患者(Child-Pugh分類:A群、B群)と健康成人(各6例)に本剤を絶食下
注)で反復経口投与(666mgを1日3回)し、薬物動態パラメータを比較した。肝機能障害患者と健康成人の薬物動態に差は認められなかった
9)(外国人データ)。
16.6.3 高齢者
本剤666mgを健康高齢男性(67〜80歳)10例に食後単回経口投与した。健康非高齢男性(22〜29歳)10例の薬物動態パラメータと比較した場合、健康高齢者の血漿中濃度は高く推移し、Cmax及びAUC
0-∞はそれぞれ約2及び2.3倍に増加した
10)。[
9.8参照]
注)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人にはアカンプロサートカルシウムとして666mgを1日3回食後に経口投与する。」である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相プラセボ対照二重盲検比較試験
断酒意志があり、心理社会的治療を併用するアルコール依存症患者(327例)を対象として、本剤666mgを1日3回(1998mg/日)又はプラセボを24週間食後に経口投与した。その後、24週間の追跡観察期間を設けた。
その結果、投与期間の完全断酒率は、本剤群47.2%(77/163例)、プラセボ群36.0%(59/164例)であり、本剤のプラセボに対する優越性が示された。
完全断酒率(投与期間)
投与群 | 完全断酒率 | 完全断酒率の差(95%信頼区間) | χ2検定 |
本剤群 | 47.2%(77/163例) | 11.3%(0.6〜21.9) | P=0.0388 |
プラセボ群 | 36.0%(59/164例) |
副作用発現頻度は、17.2%(28/163例)であった。主な副作用は、下痢12.9%(21/163例)、嘔吐1.2%(2/163例)であった
11)。[
7.2参照]
100錠[10錠(PTP)×10]、500錠[10錠(PTP)×50]、500錠[瓶、バラ]