セチプチリンマレイン酸塩として、通常成人1日3mgを初期用量とし、1日6mgまで漸増し、分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
8.1 うつ症状を呈する患者は希死念慮があり、自殺企図のおそれがあるので、このような患者は投与開始早期並びに投与量を変更する際には患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること。[5.、
8.2-
8.4、
9.1.4、
9.1.7、
15.1.1参照]
8.2 不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されている。また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化又は自殺念慮、自殺企図、他害行為が報告されている。患者の状態及び病態の変化を注意深く観察するとともに、これらの症状の増悪が観察された場合には、服薬量を増量せず、徐々に減量し、中止するなど適切な処置を行うこと。[5.、
8.1、
8.3、
8.4、
9.1.4-
9.1.7、
15.1.1参照]
8.4 家族等に自殺念慮や自殺企図、興奮、攻撃性、易刺激性等の行動の変化及び基礎疾患悪化があらわれるリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。[5.、
8.1-
8.3、
9.1.4-
9.1.7、
15.1.1参照]
8.5 投与量の急激な減少ないし投与の中止により、嘔気、頭痛、倦怠感、易刺激性、情動不安、睡眠障害等の離脱症状があらわれることがある。投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。
8.6 本剤を緑内障患者に投与する場合には、緑内障発作あるいはその前駆症状の有無についての問診を行い、さらに、眼圧の測定などにより、眼圧が亢進していないことなどを十分確認すること。また、投与中は定期的に眼圧の測定などを行うことが望ましい。[
9.1.1参照]
8.7 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
8.8 無顆粒球症があらわれることがあるので、定期的に血液検査を行うことが望ましい。[
11.1.2参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 緑内障、排尿困難又は眼内圧亢進等のある患者
本剤は抗コリン作用を若干有するため、これらに影響を与える可能性がある。[
8.6参照]
9.1.2 心疾患のある患者
9.1.3 てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者
9.1.4 躁うつ病患者
9.1.5 脳の器質障害又は統合失調症の素因のある患者
9.1.6 衝動性が高い併存障害を有する患者
9.1.7 自殺念慮又は自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者
9.2 腎機能障害患者
代謝、排泄能の低下により、本剤の作用が増強することがある。
9.3 肝機能障害患者
代謝、排泄能の低下により、本剤の作用が増強することがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)において、乳汁中に移行することが認められている。
9.7 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
少量から投与を開始するとともに、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に起立性低血圧、ふらつき等があらわれやすい。
9.8.1 80歳以上の患者
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 Syndrome malin(悪性症候群)(頻度不明)
無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合には、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CKの上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。
なお、高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎障害へと移行し、死亡した例が報告されている。
11.1.2 無顆粒球症(頻度不明)
異常(前駆症状として発熱、咽頭痛、インフルエンザ様症状等があらわれる場合もある)が認められた場合には投与を中止すること。[
8.8参照]
注)発現頻度は、使用成績調査を含む。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
循環器 | 血圧降下 | 心悸亢進、頻脈等 | |
精神神経系 | 眠気、めまい・ふらつき・立ちくらみ、倦怠感・脱力感、頭痛・頭重、不眠、不安・焦躁、構音障害、視調節障害、振戦、躁転 | 運動失調、苦悶、アカシジア、せん妄、幻覚等 | 興奮 |
過敏症 | 発疹等 | | |
血液 | 白血球減少 | 血小板減少、貧血等 | |
消化器 | 口渇、便秘、悪心・嘔吐、食欲不振、下痢等 | | |
肝臓 | AST・ALT・γ-GTP・Al-Pの上昇等 | | |
その他 | 排尿障害、浮腫 | | |
13.1 症状
本剤の過量服用により、血圧低下、不整脈、精神障害、痙攣及び呼吸抑制等が発現するおそれがある。
13.2 処置
特異的な解毒剤は知られていない。なお、強制利尿及び人工透析の有用性は確立していない。
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 海外で実施された大うつ病性障害等の精神疾患を有する患者を対象とした、複数の抗うつ剤の短期プラセボ対照臨床試験の検討結果において、24歳以下の患者では、自殺念慮や自殺企図の発現のリスクが抗うつ剤投与群でプラセボ群と比較して高かった。なお、25歳以上の患者における自殺念慮や自殺企図の発現のリスクの上昇は認められず、65歳以上においてはそのリスクが減少した。[5.、
8.1-
8.4、
9.1.4、
9.1.7参照]
15.1.2 主に50歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において、選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ剤を含む抗うつ剤を投与された患者で、骨折のリスクが上昇したとの報告がある。
18.1 作用機序
セチプチリンマレイン酸塩のうつ病・うつ状態に対する作用機序は、主に、シナプス前のα2-アドレナリン受容体を遮断することによりシナプス間隙へのノルアドレナリン遊離を促進するとともに、脳内ノルアドレナリンの代謝回転を亢進させることにより中枢ノルアドレナリン作働性神経の活動度を増強することと考えられている。
18.2 脳内モノアミンの代謝回転亢進作用
ラットでのモノアミン合成阻害剤を用いた実験で、ノルアドレナリンの代謝回転を亢進することが示唆されている
23)24)。
18.3 クロニジン拮抗作用
ラット大脳皮質膜分画及びモルモット摘出回腸標本を用いた
in vitro実験並びにマウスを用いた実験においてクロニジン拮抗作用が認められ、シナプス前のα
2-アドレナリン受容体を遮断することが示唆されている
23)24)。
18.4 モノアミン取込みに対する作用
ラットにおいて、脳内モノアミン取込み阻害作用を示さないことが、また、
in vitro実験でも弱いノルアドレナリン取込み阻害作用しか示さないことが認められている
23)24)。
18.5 レセルピン拮抗作用
マウスにおいて、レセルピン投与時に認められる眼瞼下垂に対しては拮抗作用を示したが、低体温には拮抗しないことが認められている
23)。
18.6 抗セロトニン作用
ラットにおいて、セロトニンの前駆体である5-ハイドロキシトリプトファン投与後の中枢作用並びにモルフィン禁断時の身体症状に拮抗する作用が認められている
25)。
18.7 抗コリン作用
マウスにおいて、トレモリンに対し極めて弱い拮抗作用しか示さないことが、また、ウサギにおいて、フィゾスチグミン覚醒反応に対する影響も軽度である等、抗コリン作用は弱いことが認められている
23)26)。