通常、成人には、デクスラゾキサンとして、1日1回、投与1日目及び2日目は1000mg/m2(体表面積)、3日目は500mg/m2を1〜2時間かけて3日間連続で静脈内投与する。なお、血管外漏出後6時間以内に可能な限り速やかに投与を開始し、投与2日目及び3日目は投与1日目と同時刻に投与を開始する。また、用量は、投与1日目及び2日目は各2000mg、3日目は1000mgを上限とする。
中等度及び高度の腎機能障害のある患者(クレアチニンクリアランス:40mL/min未満)では投与量を通常の半量とする。
身長、体重より求めた体表面積より投与量を算出すること。
8.1 本剤は必ずアントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤が投与された患者に対して使用されるため、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで使用すること。
8.2 投与後は血管外漏出の症状が軽快するまで、定期的に漏出部位の状態を観察すること。
8.3 本剤は投与中及び投与終了後に骨髄抑制をおこすことがあるため、定期的に血液検査を行うとともに患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。[
11.1.1参照]
8.4 本剤の投与により免疫機能が低下している患者に、生ワクチン又は弱毒生ワクチンを接種すると、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、本剤投与中にこれらのワクチンを接種しないこと。
9.2 腎機能障害患者
血液毒性の発現に注意して観察すること。デクスラゾキサンは大部分が腎排泄されることが知られており、腎機能障害のある患者では、本剤の排泄率が低下し、全身への曝露時間が延長する可能性があることから、副作用が強くあらわれるおそれがある。[
16.6.1参照]
9.3 肝機能障害患者
9.4 生殖能を有する者
9.4.1 生殖可能な年齢の患者
9.4.2 妊娠する可能性がある女性患者及びパートナーが妊娠する可能性のある男性患者
本剤の妊娠に及ぼす危険性について患者に説明した上で、本剤投与中及び少なくとも投与終了後3ヵ月を経過するまでは避妊するよう指導すること。[
9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験
注)において胎児毒性(マウス、ラット及びウサギ)、催奇形性(マウス及びラット)が報告されている
1)。[
2.2、
9.4.2参照]
注)ラゾキサン(本薬を含むラセミ体)の試験成績である。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。本剤は、主として腎臓から排泄されるが、一般に高齢者では腎機能が低下していることが多い。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 骨髄抑制(白血球減少、好中球減少、血小板減少、ヘモグロビン減少)(48.1%注))
重篤な血球減少があらわれることがあり、投与後10日以上経過して発現する例が報告されている。また、骨髄抑制に起因する重篤な感染症(2.1%
注))、発熱性好中球減少症(11.0%
注))があらわれることがある。[
8.3参照]
注)使用成績調査の結果から算出
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 10%以上 | 10%未満 | 頻度不明 |
消化器 | 悪心、嘔吐 | 下痢、口内炎、口内乾燥、口渇、食欲減退、腹痛、胃炎 | |
皮膚 | | 脱毛、点状出血、そう痒 | |
肝臓 | AST上昇、ALT上昇、総ビリルビン上昇 | Al-P上昇 | γ-GTP上昇 |
腎臓 | クレアチニン上昇 | | |
精神神経系 | | 浮動性めまい、頭痛、感覚消失、傾眠、失神、振戦、うつ病、不眠症 | |
呼吸器 | | 呼吸困難、咳、肺炎 | |
循環器 | | 高血圧、深部静脈血栓症、ほてり、心房細動 | |
注射部位 | 注射部位反応(注射部位の疼痛、紅斑、腫脹、肥厚、硬結、注射部位静脈炎、血管穿刺部位血栓、血栓性静脈炎等) | | |
その他 | 発熱 | 感染(創傷感染、丹毒、ヘルペスウイルス感染、好中球減少性感染等)、創部痛、疲労、関節痛、浮腫、顔面浮腫、衰弱、腹水、脱水、骨盤痛、腟出血、貧血、かすみ目、体重減少、カルシウム上昇、カルシウム低下、ナトリウム低下、カリウム上昇、カリウム低下 | |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤は用時調製すること。
14.1.2 本剤1バイアルあたり注射用水25mLを加え、20mg/mL溶液とした後、必要量を注射筒で抜き取り、速やかに500mLの乳酸リンゲル液、日局生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈すること。
14.1.3 調製した溶液は速やかに使用し、残液は廃棄すること。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 血管外漏出部位に十分な血流を確保するため、氷嚢などで冷却している場合は投与15分以上前に血管外漏出部位から取り外すこと。
14.2.2 他の薬剤との混注はしないこと。
14.2.3 調製した溶液は、投与する直前まで室温で管理し、調製後150分以内に投与を完了すること。
14.2.4 薬剤が皮膚・粘膜に付着しないよう注意すること。また、本剤に接触した場合には、直ちに水でよく洗い流すこと。
15.1 臨床使用に基づく情報
アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤による心筋症
注1)において、18歳未満の患者では、本剤の投与により、急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群の発現リスクが増加することが海外で実施された臨床試験により報告されている
2)3)4)5)。
15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 反復投与毒性試験で精巣重量の低値(ラット)又は精巣萎縮(ラット、ウサギ)が認められたとの報告がある。[
9.4.1参照]
15.2.2 遺伝毒性については、in vitro又はin vivo試験(マウスリンフォーマTK試験、ほ乳類培養細胞を用いた小核試験、マウスを用いた小核試験)成績において、陽性を示したとする報告がある。
15.2.3 がん原性試験注2)で造血系腫瘍[組織球性及びリンパ球性の悪性リンパ腫又はリンパ性白血病](雌マウス)又は子宮腺癌(雌ラット)の発現頻度の増加が認められたとの報告がある。
注1)これらの患者への投与は承認外である。
注2)ラゾキサン(本薬を含むラセミ体)の試験成績である。
18.1 作用機序
ダウノルビシン誘発皮膚潰瘍モデルにおいて、デクスラゾキサンは単回腹腔内投与により潰瘍発現を用量依存的に抑制し、1日1回3日間の反復腹腔内投与では潰瘍面積を著しく減少させた。また、ダウノルビシン及びドキソルビシン誘発皮膚潰瘍モデルにおいて、デクスラゾキサンは静脈内投与においても潰瘍抑制作用を示し、静脈内と腹腔内の投与経路の違いによる効果の差異は認められなかった。