血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有する患者の出血傾向の抑制
本剤1バイアルを添付の日本薬局方注射用水2.5mLで溶解し、2〜6分かけて緩徐に静脈内に注射する。
出血時に投与する場合、活性化人血液凝固第VII因子として、体重1kg当たり症状に応じて1回60〜120μgを投与する。追加投与は、8時間以上の間隔をあけて行い、初回投与の用量と合わせて、体重1kg当たり180μgを超えないこととする。
定期的に投与する場合、活性化人血液凝固第VII因子として、体重1kg当たり1回60〜120μgを1〜2日おきに投与する。
7.1 本剤1バイアルを添付の日本薬局方注射用水2.5mLで溶解して、活性化人血液凝固第VII因子として0.6mg/mLの濃度とした後、必要量を投与すること。
7.2 出血時に投与する場合の注意
7.2.1 初回投与から36時間以内の本剤投与は追加投与として取り扱うこと。
7.2.2 追加投与は1回とし、十分な効果が得られない場合には、血液凝固第X因子の蓄積を考慮した上で、他の対処方法も考慮すること。
7.2.3 追加投与の後、次に本剤を投与するまでの間隔は、48時間以上あけること。
7.3 定期的に投与する場合の注意
本剤の出血時投与後、定期的な投与を開始する場合は、直近の投与から48時間以上の間隔をおくことを目安とする。
8.1 本剤の使用にあたっては、疾病の治療での本剤の必要性とともに、本剤の製造に際し感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているが、ヒトの血液を原材料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを患者及び家族に対して説明し、理解を得るよう努めること。
8.2 本剤の原材料となる献血者の血液については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体、抗HIV-2抗体及び抗HTLV-1抗体陰性で、かつALT値でスクリーニングを実施している。さらに、HBV、HCV及びHIVについては個別の試験血漿で、HAV及びヒトパルボウイルスB19についてはプールした試験血漿で核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。その後のS/D処理及びウイルス除去膜処理により原材料由来のウイルスを除去し、さらに65℃、96時間の乾燥加熱処理を施した製剤であるが、投与に際しては、次の点に十分注意すること。
8.2.1 血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること。[
9.1.2、
9.1.3、
9.5参照]
8.2.2 現在までに本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、投与の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上投与すること。
8.3 マウスたん白質に対する抗体を産生する可能性を完全には否定できないので、観察を十分に行うこと。[
9.1.5参照]
8.4 本剤と他の血液凝固因子製剤を併用する場合は、血栓形成等の相互作用が生じる可能性を否定できないため、治療上の有益性と危険性を十分に考慮すること。
8.5 エミシズマブ(遺伝子組換え)の臨床試験で、エミシズマブ(遺伝子組換え)投与中の出血時に活性型プロトロンビン複合体(乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体)製剤を併用した症例において、血栓塞栓症及び血栓性微小血管症の発現が複数例に認められている。本剤とエミシズマブ(遺伝子組換え)の併用例では血栓塞栓症及び血栓性微小血管症の発現は認められていないが、血栓塞栓症及び血栓性微小血管症があらわれるおそれを否定できないため、以下の事項に注意すること。[1.、
10.2参照]
8.5.1 エミシズマブ(遺伝子組換え)投与中は本剤の投与を避けること。やむを得ず本剤を投与する場合は、必ず血友病に対する十分な治療経験を有する医師のもと、必要な血液凝固系検査等が実施可能で血栓塞栓症及び血栓性微小血管症に対する適切な処置が可能な医療機関で投与すること。また、投与後は血液凝固系検査等により患者の凝固系の状態を注意深く確認すること。異常が認められた場合には本剤及びエミシズマブ(遺伝子組換え)の投与を中止し、適切な処置を行うこと。
8.5.2 エミシズマブ(遺伝子組換え)投与中止後6ヵ月間は、8.5.1と同じ対応をとること。
8.6 重度の出血に対して使用する場合は、緊急時に十分対応できる医療施設において、十分な知識・経験を持つ医師のもとで使用すること。
8.7 手術時における本剤の使用経験はないので、使用する場合は、治療上の有益性と危険性を十分に考慮すること。
8.8 在宅自己注射は、軽度又は中等度の出血及び定期投与を対象とする。在宅自己注射は、患者又はその家族が適切に使用可能と判断した場合にのみ適用すること。本剤を処方する際は、使用方法等の患者教育を十分に実施し、在宅にて適切に治療ができることを確認した上で、医師の管理指導の下で実施すること。また、患者又はその家族に対し、本剤により発現する可能性のある副作用等について十分説明すること。自己注射後、異常が認められた場合や効果が不十分な場合には、速やかに医療機関へ連絡するよう指導すること。自己注射の継続が困難な場合は、医療機関において医師の管理下で慎重に観察するなど、適切な対応を行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 播種性血管内凝固(DIC)患者及びDICを起こしやすいとされている患者(大手術後、重症の肝疾患、溶血性貧血等)
DICの悪化又はDIC誘発のおそれがある。[
11.1.2参照]
9.1.2 溶血性・失血性貧血等の患者
ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には、発熱と急激な貧血を伴う重篤な全身症状を起こすことがある。[
8.2.1参照]
9.1.3 免疫不全患者・免疫抑制状態の患者
ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には、持続性の貧血を起こすことがある。[
8.2.1参照]
9.1.4 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
9.1.5 マウスたん白質に対し過敏症の既往歴のある患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与すること。本剤の投与によりヒトパルボウイルスB19の感染の可能性を否定できない。感染した場合には胎児への障害(流産、胎児水腫、胎児死亡)が起こる可能性がある。[
8.2.1参照]
9.7 小児等
低出生体重児、新生児、乳児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に、生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 血栓塞栓症(頻度不明)
動脈血栓塞栓症(心筋梗塞、脳梗塞、腸管虚血等)、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症、血栓性静脈炎、深部静脈血栓症等)が起こることがある。
11.1.2 DIC(頻度不明)
血小板数及びフィブリノゲン値の減少並びにFDP、D-ダイマーの増加等の凝固系検査異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。[
9.1.1参照]
11.1.3 ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 5%以上注) | 1%〜5%未満注) |
| 循環器 | | 血圧上昇 |
| 消化器 | | 腹痛 |
| 血液 | TAT増加 | |
| その他 | | 発熱、頭痛、血中カリウム減少、口腔ヘルペス |
本剤を過量投与した場合、血栓形成を誘発する可能性を否定できない。
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 溶解の際は、添付の溶解液注入針を使用すること。
14.1.2 他の製剤と混合しないこと。
14.1.3 使用後の残液は細菌感染のおそれがあるので使用しないこと。
14.1.4 一度溶解したものはできるだけ速やかに使用すること。
14.1.5 溶解時に沈殿が認められるものは使用しないこと。
14.1.6 【溶解方法】に従って溶解すること。
14.2 薬剤交付時の注意
14.2.1 患者が家庭で保存する場合、冷蔵庫内で保存することが望ましいが、室温(30℃以下)で保存することもできる。室温で保存した場合には、使用期限を超えない範囲で6ヵ月以内に使用し、再び冷蔵庫に戻さないように指導すること。
14.2.2 子どもによる誤用等を避けるため、薬剤の保管に十分注意すること。
14.2.3 光の影響を防ぐために、薬剤バイアルは外箱に入れた状態で保存すること。
14.2.4 使用済の医療用具等の処理については、主治医の指示に従うこと。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験(出血時投与)
16歳以上65歳以下のインヒビターを保有する先天性血友病の男性患者6例を対象とした多施設共同非盲検非対照試験において、軽度〜中等度の関節内出血9エピソードで、本剤を60μg/kg又は120μg/kgを単回投与したときの有効率(著効+有効の割合)は、7/9(77.8%)であった。
| 用量 | 止血効果判定(投与終了8時間後) | 「著効」又は「有効」と判定された出血エピソード |
| 著効 | 有効 | やや有効 | 無効 |
| 60μg/kg(n=5) | 1 | 4 | 0 | 0 | 5 |
| 120μg/kg(n=4) | 1 | 1 | 2 | 0 | 2 |
副作用は6例(延べ9例)中1例に2件認められた。その内訳は血圧上昇、発熱が各11.1%(1/9例)であった
2)。
17.1.2 国内第III相試験(出血時投与)
12歳以上65歳以下のインヒビターを保有する先天性血友病の男性患者を対象とした多施設共同非盲検非対照試験において、患者14名の21出血エピソードに、総投与量として180μg/kgを超えない範囲で本剤の60μg/kg又は120μg/kgを1回又は2回投与した場合の有効率(著効+有効の割合)は、19/21(90.5%)であった。また、出血の重症度別の有効率は、軽度の出血が7/7(100%)、中等度の出血が12/13(92.3%)、重度の出血が0/1(0%)であった。
| インヒビター患者 | 出血数 | 著効 | 有効 | やや有効 | 無効 | 有効率(%) |
| 合計(14名) | 21 | 3 | 16 | 0 | 2 | 19/21(90.5%) |
| 血友病A(8名) | 11 | 1 | 9 | 0 | 1 | 10/11(90.9%) |
| 血友病B(6名) | 10 | 2 | 7 | 0 | 1 | 9/10(90.0%) |
副作用は14例(延べ21例)中1例に1件認められ、その内訳は血中カリウム減少4.8%(1/21例)であった
3)。
17.1.3 国内第II/III相試験(定期投与)
インヒビターを保有する先天性血友病患者を対象とした多施設共同非盲検自己対照試験において、患者11名(男性、血友病B、3〜47歳)がそれぞれ現行療法(各被験者が定期投与開始前に行っていたバイパス止血製剤による治療法)を24週間実施後、本剤を24週間定期投与(活性化人血液凝固第VII因子として、1回60〜120μg/kgを1〜2日おきに投与)した。主要評価項目であるバイパス止血製剤による治療を要した出血エピソードの年間出血率の成績は下表のとおりであった。
| 被験者 | 現行療法の種類注) | 年間出血率(回/年) | 年間出血率比 |
| 現行療法期間 | 定期療法期間 |
| 1 | 出血時投与 | 27.1 | 0.0 | 0.00 |
| 2 | 出血時投与 | 21.6 | 6.2 | 0.29 |
| 3 | 他剤定期投与 | 6.3 | 2.2 | 0.35 |
| 4 | 予備的投与 | 34.4 | 0.0 | 0.00 |
| 5 | 予備的投与 | 17.3 | 10.4 | 0.60 |
| 6 | 予備的投与 | 15.4 | 38.9 | 2.53 |
| 7 | 予備的投与 | 13.0 | 0.0 | 0.00 |
| 8 | 予備的投与 | 10.8 | 4.3 | 0.40 |
| 9 | 予備的投与 | 10.4 | 2.2 | 0.21 |
| 10 | 予備的投与 | 6.5 | 2.1 | 0.33 |
| 11 | 予備的投与 | 2.3 | 8.5 | 3.77 |
副作用は11例中1例に1件認められ、その内訳は血中フィブリノゲン減少9.1%(1/11例)であった
4)。
20.1 外箱開封後は遮光して保存すること。
20.2 本剤は特定生物由来製品に該当することから、本剤を使用した場合は、医薬品名(販売名)、その製造番号又は製造記号(ロット番号)、使用年月日、使用した患者の氏名、住所等を記録し、少なくとも20年間保存すること。
21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
<血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有する患者の出血抑制(出血時投与)>
21.2 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定期間は、可能な限り全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
【溶解方法】
1 キャップを外し、アルコール綿で溶剤バイアルと薬剤バイアルのゴム栓を消毒する。
2 溶解液注入針を開封する(中身は取り出さない)。
3 ケースに入れたまま溶解液注入針の青色の方を溶剤バイアルにしっかりと刺し込む。
4 溶解液注入針を刺した溶剤バイアルを逆さまにし、溶解液注入針のピンク色の方を薬剤バイアルにしっかりと刺し込み、溶剤を薬剤バイアルに移注する。
5 バイアルをゆっくり振盪し、薬剤を完全に溶解する。
6 溶解液注入針の側面の外気導入ボタンを約5秒間押して、真空状態を解除する。
7 溶解液注入針の上下を両手でつまんで左右にひねり、真ん中から切り離す。
8 薬剤バイアルに注射器を取り付ける。逆さまにし、外気導入ボタンを押しながら薬液を抜き取る。
9 必要本数分を溶解して1本の注射器にまとめ、翼状針又は注射針を取り付け静脈内に注射する。
その他の説明