医療用医薬品 : 硝酸イソソルビド

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医薬品情報


総称名 硝酸イソソルビド
一般名 硝酸イソソルビド
欧文一般名 Isosorbide Dinitrate
製剤名 硝酸イソソルビド注射液
薬効分類名 冠血管拡張剤
薬効分類番号 2171
ATCコード C01DA08
KEGG DRUG
D00516 硝酸イソソルビド
KEGG DGROUP
DG01270 硝酸イソソルビド
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2024年3月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
硝酸イソソルビド注5mg/10mL「タカタ」 Isosorbide Dinitrate Injection“TAKATA” 高田製薬 2171404A1042 214円/管 処方箋医薬品
硝酸イソソルビド注50mg/100mL「タカタ」 Isosorbide Dinitrate Injection“TAKATA” 高田製薬 2171404A4033 1659円/瓶 処方箋医薬品
硝酸イソソルビド注5mg/5mL「タカタ」 (後発品) Isosorbide Dinitrate Injection“TAKATA” 高田製薬 2171404A2030 210円/管 処方箋医薬品
硝酸イソソルビド注50mg/50mL「タカタ」 (後発品) Isosorbide Dinitrate Injection“TAKATA” 高田製薬 2171404A5056 1022円/瓶 処方箋医薬品
硝酸イソソルビド注100mg/100mL「タカタ」 (後発品) Isosorbide Dinitrate Injection“TAKATA” 高田製薬 2171404A6052 2146円/瓶 処方箋医薬品

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 重篤な低血圧又は心原性ショックのある患者[血管拡張作用によりさらに血圧を低下させ、症状を悪化させるおそれがある。][9.1.1参照]
2.2 Eisenmenger症候群又は原発性肺高血圧症の患者[血圧低下によりショックを起こすことがある。]
2.3 右室梗塞の患者[血圧低下によりショックを起こすことがある。]
2.4 脱水症状のある患者[血圧低下によりショックを起こすことがある。]
2.5 神経循環無力症の患者[本剤の効果がなく、本剤投与により血圧低下等があらわれることがある。]
2.6 閉塞隅角緑内障の患者[眼圧を上昇させるおそれがある。]
2.7 硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
2.8 頭部外傷又は脳出血のある患者[頭蓋内圧を上昇させるおそれがある。]
2.9 ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者[10.1参照]

4. 効能または効果

急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)
○不安定狭心症
○冠動脈造影時の冠攣縮寛解

6. 用法及び用量

<急性心不全>
通常、成人には、本剤を注射液そのまま、又は生理食塩液、5%ブドウ糖注射液等で希釈して0.1〜0.001%(ただし、0.05%注の場合は0.05〜0.001%)溶液とし、硝酸イソソルビドとして1時間あたり1.5〜8mgを点滴静注する。投与量は、患者の病態に応じて適宜増減するが、増量は1時間あたり10mgまでとする。
<不安定狭心症>
通常、成人には、本剤を注射液そのまま、又は生理食塩液、5%ブドウ糖注射液等で希釈して0.1〜0.001%(ただし、0.05%注の場合は0.05〜0.001%)溶液とし、硝酸イソソルビドとして1時間あたり2〜5mgを点滴静注する。投与量は患者の病態に応じて適宜増減する。
<冠動脈造影時の冠攣縮寛解>
通常、成人には、冠動脈造影時に本剤を注射液そのまま、硝酸イソソルビドとして5mgをカテーテルを通し、バルサルバ洞内に1分以内に注入する。なお、投与量は患者の症状に応じて適宜増減するが、投与量の上限は10mgまでとする。

7. 用法及び用量に関連する注意

7.1 冠動脈造影時に冠攣縮を誘発した場合は、迅速に攣縮寛解のための処置を行うこと。また、まれに完全閉塞寛解時にreperfusion injuryによると考えられる心室細動などの危険な不整脈や血圧低下を起こすことがあるので電気的除細動などの適切な処置を行うこと。

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤投与中は、頻回の血圧測定と血行動態のモニターを行うこと。また、投与量の調節は患者の血行動態、症状をみて徐々に行うこと。[11.1.1参照]
8.2 投与中に血圧低下等の異常が観察された場合には、減量又は投与を中止すること。また、必要に応じて昇圧剤投与等の適切な処置を行うこと。[11.1.1参照]
8.3 血圧低下の可能性のある患者や心拍出量が低下している患者に投与する場合には、カテコールアミン系薬剤等と併用することが望ましい。
8.4 投与中に左心不全状態が改善した場合は、患者の様子をみて投与を中止すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 低血圧の患者(重篤な低血圧のある患者を除く)
さらに血圧を低下させるおそれがある。[2.1参照]
9.1.2 左室充満圧の低い患者
血圧低下及び心拍出量低下のおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
本剤は、主として肝臓で代謝されるが、一般に肝機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがある。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤
シルデナフィルクエン酸塩
(バイアグラ、レバチオ)
バルデナフィル塩酸塩水和物
(レビトラ)
タダラフィル
(シアリス、アドシルカ、ザルティア)
2.9参照]
併用により、降圧作用を増強することがあるので、本剤投与前にこれらの薬剤を服用していないことを十分確認すること。また、本剤投与中及び投与後においてこれらの薬剤を服用しないよう十分注意すること。本剤はcGMPの産生を促進し、一方、ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤はcGMPの分解を抑制することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する。
グアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤
リオシグアト
(アデムパス)
2.9参照]
併用により、降圧作用を増強することがあるので、本剤投与前にこれらの薬剤を服用していないことを十分確認すること。また、本剤投与中及び投与後においてこれらの薬剤を服用しないよう十分注意すること。本剤とグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤は、ともにcGMPの産生を促進することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する。
10.2 併用注意
利尿剤血圧低下等が増強されるおそれがある。過度の血圧低下が起こった場合には、減量又は投与を中止し、必要に応じて昇圧剤投与等の適切な処置を行うこと。血圧低下作用を増強させる。
血管拡張剤
硝酸・亜硝酸エステル系薬剤
血圧低下等が増強されるおそれがある。過度の血圧低下が起こった場合には、減量又は投与を中止し、必要に応じて昇圧剤投与等の適切な処置を行うこと。血管拡張作用が増強される。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック(0.1〜5%未満)
このような場合には投与を中止し、昇圧剤投与等の適切な処置を行うこと。[8.18.2参照]
11.1.2 心室細動、心室頻拍
冠動脈造影時の冠攣縮寛解に際し、reperfusion injuryによると考えられる心室細動等の危険な不整脈(0.1%未満)があらわれることがある。このような場合には、電気的除細動などの適切な処置を行うこと。
発現頻度は製造販売後調査を含む。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜5%未満0.1%未満頻度不明
循環器血圧低下、めまい、動悸、四肢浮腫、心拍出量低下徐脈、期外収縮、心房細動 
精神神経系頭痛全身倦怠感、興奮、陽気 
消化器嘔気、嘔吐食欲低下 
血液動脈血酸素分圧の低下 メトヘモグロビン血症
肝臓AST、ALT等の上昇  
過敏症  発疹

14. 適用上の注意

14.1 薬剤投与時の注意
14.1.1 硝酸イソソルビドが吸着しないポリエチレン製の輸液セットを用いること。
14.1.2 ポリ塩化ビニル製の輸液セットを用いる場合には、硝酸イソソルビドはポリ塩化ビニル製の輸液セットに吸着し、その吸着量は輸液の流速が遅いほど、また、管が長いほど増加するので、できるかぎり希釈し、短い管を用いて流速を上げることが望ましい。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与(心不全患者)
心不全患者に硝酸イソソルビド5mgを静脈内単回投与注)したとき、血漿中硝酸イソソルビド濃度は2相性を示し、半減期3.9±1.2分(分布相)及び78.0±24.0分(排泄相)であった。また、AUC及びクリアランスはそれぞれ2,328±478ng・min/mL及び134.0±22.2L/hrであった1)
注)静脈内単回投与は承認外用法である。
表16-1 硝酸イソソルビド注(静脈内単回投与)による薬物動態パラメータ
t1/2α(min)t1/2β(min)Vss(L)AUC(ng・min/mL)CL(L/hr)
3.9±1.278.0±24.0124.0±51.22,328±478134.0±22.2
16.1.2 単回投与(狭心症患者)
狭心症患者に硝酸イソソルビド5mgをバルサルバ洞内に投与したとき、5分後の血漿中濃度は246±122ng/mLを示した。血漿中硝酸イソソルビド濃度は2相性を示し、半減期1.5分(分布相)及び27分(排泄相)であった。また、AUCは5,305±2,352ng・min/mLであった2)
表16-2 硝酸イソソルビド注(バルサルバ洞内注入)による薬物動態パラメータ
Cmax注)(ng/mL)t1/2α(min)t1/2β(min)AUC(ng・min/mL)
246±1221.527.05,305±2,352

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床成績
急性心不全に対し二重盲検試験を含む臨床試験での有効率は、57.4%(116/202)であり、不安定狭心症の臨床試験の有効率は、80.0%(24/30)であった。また、冠動脈造影時の冠攣縮寛解に対する臨床試験での有効率は、エルゴノビン負荷では62.8%(296/471)であった3)4)5)6)7)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
硝酸・亜硝酸エステル系薬剤は、生成したNOがグアニル酸シクラーゼ(GC)を刺激することにより、cGMPの上昇を介し、血管平滑筋を弛緩させると考えられる8)9)
18.2 病態モデル動物における作用
18.2.1 心臓の前負荷、後負荷を軽減
急性うっ血性心不全イヌによる実験で、硝酸イソソルビドは静脈系容量血管を拡張することにより、静脈還流を減少させ、左室拡張終期圧の低下(前負荷の軽減)をもたらし、同時に末梢動脈を拡張して、総末梢血管抵抗を減少(後負荷の軽減)させた。これらの作用により、うっ血性心不全の血行動態を改善した9)10)
18.2.2 心筋の局所血流量を増加
デキストラン容量負荷イヌによる実験で硝酸イソソルビドは、虚血域の心内膜側の心筋局所血流量を増加させた。また、臨床的にも運動負荷201Tl心筋シンチグラフィーにより虚血心の心筋灌流を増大、改善させることが認められた11)12)
18.2.3 虚血部心筋組織内ノルアドレナリンの増加
梗塞イヌによる実験で虚血部心筋からのノルアドレナリンの放出が抑制され、虚血部心筋組織内ノルアドレナリンを増加させ、血行動態的には心係数、左室収縮力の改善を認めた13)
18.3 血管拡張作用
18.3.1 静脈系容量血管の拡張
摘出したウサギ腸間膜動脈と静脈の10−5mol/Lノルアドレナリン収縮に対し、硝酸イソソルビド10−7mol/L以上の濃度で静脈は弛緩し、動脈は10−5mol/L以上の濃度で弛緩することが認められた14)
18.3.2 cGMP産生作用
KClであらかじめ収縮させたウシの摘出冠動脈に硝酸イソソルビドを添加すると、冠動脈の弛緩作用に比例してcGMPの産生が増加した15)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. 硝酸イソソルビド

一般的名称 硝酸イソソルビド
一般的名称(欧名) Isosorbide Dinitrate
化学名 1,4:3,6-Dianhydro-D-glucitol dinitrate
分子式 C6H8N2O8
分子量 236.14
物理化学的性状 白色の結晶又は結晶性の粉末で、においはないか、又は僅かに硝酸ようのにおいがある。
NN-ジメチルホルムアミド又はアセトンに極めて溶けやすく、クロロホルム又はトルエンに溶けやすく、メタノール、エタノール(95)又はジエチルエーテルにやや溶けやすく、水にほとんど溶けない。
急速に熱するか又は衝撃を与えると爆発する。
旋光度 [α]20D:+134〜+139°(脱水物に換算したもの1g、エタノール(95)、100mL、100mm)
KEGG DRUG D00516

20. 取扱い上の注意

20.1 外箱開封後は光を遮り保存すること。

22. 包装

<硝酸イソソルビド注5mg/10mL「タカタ」>
10アンプル[ガラスアンプル]
<硝酸イソソルビド注50mg/100mL「タカタ」>
10バイアル[ガラスバイアル]
<硝酸イソソルビド注5mg/5mL「タカタ」>
10アンプル[ガラスアンプル]
<硝酸イソソルビド注50mg/50mL「タカタ」>
10バイアル[ガラスバイアル]
<硝酸イソソルビド注100mg/100mL「タカタ」>
10バイアル[ガラスバイアル]

23. 主要文献

  1. 長村好章他, 臨牀と研究, 62 (8), 2672-2676, (1985)
  2. 延吉正清他, 臨牀と研究, 64 (7), 2308-2311, (1987)
  3. 広沢弘七郎他, 呼吸と循環, 331 (7), 903-912, (1985)
  4. 広沢弘七郎他, 医学のあゆみ, 134 (4), 310-320, (1985)
  5. Hirota Y. et al., Jpn. Circ. J., 51 (6), 617-623, (1987)
  6. 滝島任他, 循環器科, 21 (3), 276-286, (1987)
  7. 延吉正清他, 臨牀と研究, 64 (7), 2295-2307, (1987)
  8. Kukovetz W. R., Cardiology, 74 (S.1), 12-19, (1987)
  9. 高田芳伸他, 薬局, 42 (7), 937-944, (1991)
  10. 大原秀人他, 日本薬理学雑誌, 82 (5), 343-350, (1983) »PubMed
  11. 高山幸男他, 脈管学, 21 (5), 351-357, (1981)
  12. Tonooka I. et al., Am. Heart J., 111 (3), 525-533, (1986)
  13. 李詔, 日大医学雑誌, 41 (6), 637-652, (1982)
  14. Ishikawa S. et al., Br. J. Pharmacol., 79 (3), 737-750, (1983)
  15. Matlib M. A. et al., Am. Heart J., 110 (1), 204-212, (1985)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
高田製薬株式会社 文献請求窓口
〒336-8666 さいたま市南区沼影1丁目11番1号
電話:0120-989-813
FAX:048-816-4183
製品情報問い合わせ先
高田製薬株式会社 文献請求窓口
〒336-8666 さいたま市南区沼影1丁目11番1号
電話:0120-989-813
FAX:048-816-4183

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
高田製薬株式会社
さいたま市西区宮前町203番地1

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2024/07/24 版