医療用医薬品 : ヒシファーゲン

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医薬品情報


総称名 ヒシファーゲン
一般名 グリチルリチン酸一アンモニウム
グリシン
アミノ酢酸
L-システイン塩酸塩水和物
欧文一般名 Monoammonium Glycyrrhizinate
Glycine
Aminoacetic Acid
L-Cysteine Hydrochloride Hydrate
製剤名 グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩水和物配合剤
薬効分類名 肝臓疾患用剤
アレルギー用剤
薬効分類番号 3919 4490
KEGG DRUG
D04990 グリチルリチン酸モノアンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2023年12月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ヒシファーゲン配合静注シリンジ20mL (後発品) HISHIPHAGEN Combination Intravenous Syringes ニプロ 3919502G1085 160円/筒 処方箋医薬品注)
ヒシファーゲン配合静注シリンジ40mL (後発品) HISHIPHAGEN Combination Intravenous Syringes ニプロ 3919502G2057 254円/筒 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症の患者[低カリウム血症、高血圧症等を悪化させるおそれがある。]

4. 効能または効果

○小児ストロフルス、湿疹・皮膚炎、蕁麻疹、皮膚そう痒症、口内炎、フリクテン、薬疹・中毒疹
○慢性肝疾患における肝機能異常の改善

6. 用法及び用量

<小児ストロフルス、湿疹・皮膚炎、蕁麻疹、皮膚そう痒症、口内炎、フリクテン、薬疹・中毒疹の治療>
通常、成人には1日1回5〜20mLを静脈内に注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
<慢性肝疾患における肝機能異常の改善>
慢性肝疾患に対しては1日1回40〜60mLを静脈内に注射または点滴静注する。年齢、症状により適宜増減する。なお、増量する場合は1日100mLを限度とする。

8. 重要な基本的注意

8.1 ショック等の発現を予測するため、十分な問診を行うこと。
8.2 ショック発現時に救急処置のとれる準備をしておくこと。
8.3 投与後、患者を安静な状態に保たせ、十分な観察を行うこと。
8.4 甘草を含有する製剤との併用は、本剤に含まれるグリチルリチン酸が重複し、偽アルドステロン症があらわれやすくなるので注意すること。[11.1.3参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。グリチルリチン酸一アンモニウムを大量投与したときの動物実験(ラット)において腎奇形等が認められている1)
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。グリチルリチン酸一アンモニウムを投与したときの動物実験(ラット)において乳汁移行が認められている2)
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。臨床での使用経験において、低カリウム血症等の副作用の発現率が高い傾向が認められている。

10. 相互作用

10.2 併用注意
ループ利尿剤
エタクリン酸、
フロセミド等
チアジド系及びその類似降圧利尿剤
トリクロルメチアジド、
クロルタリドン等
低カリウム血症(脱力感、筋力低下等)があらわれるおそれがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を行うなど十分に注意すること。これらの利尿作用が、本剤に含まれるグリチルリチン酸のカリウム排泄作用を増強し、血清カリウム値の低下があらわれやすくなる。
モキシフロキサシン塩酸塩心室性頻拍(Torsade de pointesを含む)、QT延長を起こすおそれがある。本剤が有するカリウム排泄作用により血清カリウム濃度が低下すると、モキシフロキサシン塩酸塩による心室性頻拍(Torsade de pointesを含む)、QT延長が発現するおそれがある。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシーショック(頻度不明)
血圧低下、意識消失、呼吸困難、心肺停止、潮紅、顔面浮腫等があらわれることがある。
11.1.2 アナフィラキシー(頻度不明)
呼吸困難、潮紅、顔面浮腫等があらわれることがある。
11.1.3 偽アルドステロン症(頻度不明)
増量又は長期連用により高度の低カリウム血症、低カリウム血症の発現頻度の上昇、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等があらわれるおそれがある。
また、低カリウム血症の結果として、脱力感、筋力低下などがあらわれるおそれがある。[8.4参照]
頻度は使用成績調査を含む
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜5%未満0.1%未満頻度不明
過敏症 発疹蕁麻疹、そう痒
体液・電解質血清カリウム値の低下注) 浮腫
循環器血圧上昇注)  
消化器 上腹部不快感嘔気・嘔吐
呼吸器  咳嗽
  一過性の視覚異常(目のかすみ、目のチカチカ等)
その他 全身倦怠感、筋肉痛、異常感覚(しびれ感、ピリピリ感等)、発熱、過呼吸症状(肩の熱感、四肢冷感、冷汗、口渇、動悸)、尿糖陽性頭痛、熱感、気分不良

14. 適用上の注意

14.1 全般的な注意
使用時には、以下の点に注意すること。
・感染に対する配慮をすること。
・シリンジが破損するおそれがあるので、シリンジを鉗子等で叩くなど、強い衝撃を与えないこと。
・押子(プランジャー)が外れたり、ガスケットが変形し薬液が漏出したりするおそれがあるので押子のみを持たないこと。
・押子を反時計回りに回転させると接続にゆるみが生じ、ガスケットから押子が外れるおそれがあるので、押子を反時計回りに回転させないこと。
・押子を引かないこと。
・シリンジが破損するおそれがあるので、高圧自動注入装置及び極端な陰圧が発生する回路には使用しないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 使用に際しては、ブリスター包装(20mL)の開封口又は外袋(40mL)の切り口からゆっくり開け、外筒(バレル)を持って取り出すこと。
14.2.2 押子の緩みがないか確認すること。緩みが認められた場合は、押子を時計回りに回転させ締め直すこと。
14.2.3 筒先のキャップをゆっくり回転させながら外して、注射針等に確実に接続すること。キャップを外した後は、筒先に触れないこと。
14.2.4 注射針等を接続する場合は誤刺に注意し、しっかりと固定すること。
14.2.5 静脈内注射は、患者の状態を観察しながら、できるだけ投与速度を緩徐にすること。
14.3 薬剤投与後の注意
開封後の使用は1回限りとし、使用後の残液はシリンジとともに速やかに廃棄すること。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
グリチルリチン酸又は甘草を含有する製剤の経口投与により、横紋筋融解症があらわれたとの報告がある。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
18.1.1 抗炎症作用
(1)抗アレルギー作用
ウサギにおけるアルツス反応抑制3)等の抗アレルギー作用を有する。また、グリチルリチン酸はコルチゾンの作用に対し、ストレス反応抑制作用を増強、抗肉芽作用及び胸腺萎縮作用に拮抗的に作用し、抗浸出作用に対しては影響を及ぼさなかった4)
(2)アラキドン酸代謝系酵素の阻害作用
グリチルリチン酸は、アラキドン酸代謝系の初発酵素であるホスホリパーゼA25)6)とアラキドン酸から炎症性ケミカルメディエーターを産生するリポキシゲナーゼ7)に直接結合する。グリチルリチン酸は、これらの酵素のリン酸化を介する活性化を選択的に阻害する6)7)
18.1.2 免疫調節作用
グリチルリチン酸は、in vitroの実験系において、(1)T細胞活性化調節作用8)、(2)インターフェロン-γ誘起作用9)、(3)胸腺外Tリンパ球分化増強作用10)等の作用が示されている。
18.1.3 実験的肝細胞障害抑制作用
グリチルリチン酸はラットの初代培養肝細胞を用いたin vitroの実験系で、四塩化炭素による肝細胞障害を抑制することが示されている11)
18.1.4 肝細胞増殖促進作用
グリチルリチン酸、並びにグリチルレチン酸は、ラットの初代培養肝細胞を用いたin vitroの実験系において、肝細胞の増殖促進作用を有することが示されている12)
18.1.5 ウイルス増殖抑制・不活化作用
マウスでのMHV(マウス肝炎ウイルス)の感染実験で、グリチルリチン酸・グリシン・L-システイン塩酸塩投与により生存日数の延長が認められ、また、ウサギにおけるワクシニアウイルス発痘の阻止実験で発痘を抑制した13)。また、in vitroの実験系でヘルペスウイルス等の増殖抑制・不活化作用が示されている14)15)
18.1.6 グリシン、L-システイン塩酸塩の作用
グリシン及びL-システイン塩酸塩は、グリチルリチン酸の大量長期投与による電解質代謝異常に基づく偽アルドステロン症の発症を抑制ないし軽減する等の作用を有する16)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. グリチルリチン酸一アンモニウム

一般的名称 グリチルリチン酸一アンモニウム
一般的名称(欧名) Monoammonium Glycyrrhizinate
化学名 Monoammonium of 20β-carboxy-11-oxo-30-norolean-12-en-3β-yl-2-O-β-D-glucopyranuronosyl-β-D-glucopyranosiduronic acid
分子式 C42H65NO16
分子量 839.96
物理化学的性状 ・白色の微細な結晶又は結晶性の粉末で、においはなく、特異な甘味がある。
理化学知見その他 <グリチルリチン酸一アンモニウム>
KEGG DRUG D04987

19.2. グリシン

一般的名称 グリシン アミノ酢酸
一般的名称(欧名) Glycine Aminoacetic Acid
分子式 C2H5NO2
分子量 75.07
物理化学的性状 ・白色の結晶又は結晶性の粉末で、味は甘い。
・水又はギ酸に溶けやすく、エタノール(95)にほとんど溶けない。
・結晶多形が認められる。
理化学知見その他 <グリシン>
KEGG DRUG D00011

19.3. L-システイン塩酸塩水和物

一般的名称 L-システイン塩酸塩水和物
一般的名称(欧名) L-Cysteine Hydrochloride Hydrate
化学名 (2R)-2-Amino-3-sulfanylpropanoic acid monohydrochloride monohydrate
分子式 C3H7NO2S・HCl・H2O
分子量 175.63
物理化学的性状 ・白色の結晶又は結晶性の粉末で、特異なにおい及び強い酸味がある。
・水に極めて溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けやすい。
・6mol/L塩酸試液に溶ける。
理化学知見その他 <L-システイン塩酸塩水和物>
KEGG DRUG D02326

20. 取扱い上の注意

20.1 包装内に脱酸素剤を封入しているので、使用時まで開封しないこと。
20.2 以下の場合には使用しないこと。
・ブリスター包装(20mL)又は外袋(40mL)が破損している場合
・ブリスター包装フィルム表面に減圧によるへこみがない場合
・シリンジから薬液が漏れている場合
・性状その他薬液に異状が認められる場合
・シリンジに破損等の異状が認められる場合
・キャップが外れている場合

22. 包装

<ヒシファーゲン配合静注シリンジ20mL>
横口(スリップ)タイプ
20mL×10シリンジ[脱酸素剤入り]
ロックタイプ
20mL×10シリンジ[脱酸素剤入り]
<ヒシファーゲン配合静注シリンジ40mL>
横口(スリップ)タイプ
40mL×6シリンジ[脱酸素剤入り]

23. 主要文献

  1. Mantovani,A.,et al., Food Chem.Toxicol., 26, 435-440, (1988) »PubMed
  2. Yoshida,T.,et al., 薬理と治療, 39, 309-327, (2011)
  3. 栗栖 明 ほか, 最新医学, 9 (別冊), 1260-1267, (1954)
  4. 熊谷 朗, 代謝, 10 (臨時増刊号), 632-645, (1973)
  5. 沖増英治 ほか, 医学のあゆみ, 122, 174-177, (1982)
  6. Ohtsuki,K.,et al., Biol.Pharm.Bull., 21, 574-578, (1998) »PubMed
  7. Shimoyama,Y.,et al., FEBS Lett., 391, 238-242, (1996) »PubMed
  8. Zhang,Y.,et al., Immunol.Lett., 32, 147-152, (1992) »PubMed
  9. Abe,N.,et al., Microbiol.Immunol., 26, 535-539, (1982) »PubMed
  10. Kimura,M.,et al., Biotherapy, 5, 167-176, (1992) »PubMed
  11. ヒキノ ヒロシ, 薬学雑誌, 105, 109-118, (1985) »DOI
  12. Kimura,M.,et al., Eur.J.Pharm., 431, 151-161, (2001) »PubMed
  13. 飯島 登 ほか, Minophagen Med.Rev., 15, 121-122, (1970)
  14. Pompei,R.,et al., Nature, 281, 689-690, (1979) »PubMed
  15. Baba, M.,et al., Antiviral Res., 7, 99-107, (1987) »PubMed
  16. 熊谷 朗 ほか, 薬理と治療, 7, 2933-2938, (1979)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
ニプロ株式会社 医薬品情報室
〒566-8510 大阪府摂津市千里丘新町3番26号
電話:0120-226-898
FAX:050-3535-8939
製品情報問い合わせ先
ニプロ株式会社 医薬品情報室
〒566-8510 大阪府摂津市千里丘新町3番26号
電話:0120-226-898
FAX:050-3535-8939

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
ニプロ株式会社
大阪府摂津市千里丘新町3番26号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版