医療用医薬品 : アレセンサ

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医薬品情報


総称名 アレセンサ
一般名 アレクチニブ塩酸塩
欧文一般名 Alectinib Hydrochloride
製剤名 アレクチニブ塩酸塩カプセル
薬効分類名 抗悪性腫瘍剤
ALK注1)阻害剤 注1)ALK:Anaplastic Lymphoma Kinase(未分化リンパ腫キナーゼ)
薬効分類番号 4291
ATCコード L01ED03
KEGG DRUG
D10450 アレクチニブ塩酸塩
KEGG DGROUP
DG03136 ALK阻害薬
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2024年8月 改訂(効能変更、用法及び用量変更)(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
アレセンサカプセル150mg ALECENSA Capsules 中外製薬 4291032M3021 6737.1円/カプセル 劇薬, 処方箋医薬品注2)

1. 警告

1.1 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
1.2 本剤の投与により間質性肺疾患があらわれることがあるので、初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び胸部CT検査等の実施など、観察を十分に行うこと。異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。また、治療初期は入院又はそれに準ずる管理の下で、間質性肺疾患等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと。[8.19.1.111.1.1参照]

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5参照]

4. 効能または効果

ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法
○再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫

5. 効能または効果に関連する注意

ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法>
5.1 十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、ALK融合遺伝子陽性が確認された患者に投与すること。検査にあたっては、承認された体外診断用医薬品又は医療機器注)を用いること。
5.2 本剤の術前補助療法における安全性及び有効性は確立していない。
5.3 術後補助療法として本剤を投与する場合には、臨床試験に組み入れられた患者の病期等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
<再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫>
5.4 十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、ALK融合遺伝子陽性が確認された患者に投与すること。
注)承認された体外診断用医薬品又は医療機器に関する情報については、以下のウェブサイトから入手可能である:
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/cd/0001.html

6. 用法及び用量

ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌>
通常、成人にはアレクチニブとして1回300mgを1日2回経口投与する。
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法>
通常、成人にはアレクチニブとして1回600mgを1日2回、食後に経口投与する。ただし、投与期間は24カ月間までとする。なお、患者の状態により適宜減量する。
<再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫>
通常、アレクチニブとして1回300mgを1日2回経口投与する。ただし、体重35kg未満の場合の1回投与量は150mgとする。

7. 用法及び用量に関連する注意

ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫>
副作用により休薬する場合、回復後は休薬前と同一用量で投与を再開できる。忍容性が得られない場合は、投与を中止すること。
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法>
副作用が発現した場合には、以下の基準を考慮して、休薬、減量又は中止すること。
減量の目安
減量レベル1回投与量
通常投与量600mg
1段階減量450mg
2段階減量300mg
3段階減量投与中止
副作用発現時の用量調節基準
副作用程度注)処置
間質性肺疾患全Grade投与を中止する。
肝機能障害総ビリルビンが基準値上限の2倍以下でALT又はASTが基準値上限の5倍を超える上昇ALT又はASTがベースライン又は基準値上限の3倍以下に回復するまで休薬する。回復後は1用量レベル減量して投与再開できる。
総ビリルビンが基準値上限の2倍を超えALT又はASTが基準値上限の3倍を超える上昇投与を中止する。
徐脈Grade 2又はGrade 3Grade 1以下又は心拍数が60回/分以上に回復するまで休薬する。回復後は1用量レベル減量して投与再開できる。
Grade 4投与を中止する。
血中CK増加CKが基準値上限の5倍を超えた場合ベースライン又は基準値上限の2.5倍以下に回復するまで休薬する。回復後は1用量レベル減量又は同一用量で投与再開できる。
CKが基準値上限の10倍を超えた場合ベースライン又は基準値上限の2.5倍以下に回復するまで休薬する。回復後は1用量レベル減量して投与再開できる。
溶血性貧血ヘモグロビン10g/dL未満ヘモグロビン10g/dL以上に回復するまで休薬する。回復後は1用量レベル減量して投与再開できる。

8. 重要な基本的注意

8.1 間質性肺疾患があらわれることがあるので、息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。また、胸部CT検査等の実施など、患者の状態を十分観察すること。必要に応じて動脈血酸素分圧(PaO2)、動脈血酸素飽和度(SpO2)、肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)、肺拡散能力(DLco)等の検査を行うこと。[1.29.1.111.1.1参照]
8.2 肝機能障害があらわれることがあるので、本剤投与中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。[9.3.111.1.2参照]
8.3 好中球減少、白血球減少等があらわれることがあるので、本剤投与中は定期的に血液検査(血球数算定、白血球分画等)を行い、患者の状態を十分に観察すること。[11.1.3参照]
8.4 腎機能障害があらわれることがあるので、本剤投与中は定期的に腎機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。[11.1.6参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 間質性肺疾患のある患者又はその既往歴のある患者
間質性肺疾患が発現又は増悪するおそれがある。[1.28.111.1.1参照]
9.3 肝機能障害患者
<効能共通>
9.3.1
肝機能障害が増悪するおそれがある。[8.211.1.2参照]
アレクチニブの血漿中濃度が上昇するとの報告がある。[16.6.1参照]
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法>
9.3.2 重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者
減量を考慮するとともに、患者の状態をより慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。アレクチニブの血漿中濃度が上昇し、副作用が増強されるおそれがある。[16.6.1参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後1カ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。[9.5、15.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ラット、ウサギ)において、胚・胎児の死亡、流産、内臓異常、骨格変異等が報告されている。[2.29.4参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中への移行については不明である。
9.7 小児等
ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法>
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
<再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫>
低体重児、新生児、乳児又は6歳未満の幼児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下していることが多い。

10. 相互作用

相互作用序文
アレクチニブは、チトクロームP450(主にCYP3A4)によって代謝される。
薬物代謝酵素用語
CYP
薬物代謝酵素用語
CYP3A4
10.2 併用注意
CYP3A阻害剤
イトラコナゾール等
16.7.2参照]
アレクチニブの血漿中濃度が上昇し、副作用の発現頻度が高まるおそれがあることから、CYP3A阻害作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。やむを得ず併用する際には、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。アレクチニブの代謝には主にCYP3A4が関与しているため、CYP3A阻害剤との併用により、アレクチニブの代謝が阻害され血漿中濃度が増加する可能性がある。
CYP3A誘導剤
リファンピシン等
16.7.1参照]
アレクチニブの血漿中濃度が低下し、本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、CYP3A誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。アレクチニブの代謝には主にCYP3A4が関与しているため、CYP3A誘導剤との併用により、アレクチニブの代謝が亢進し血漿中濃度が低下する可能性がある。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 間質性肺疾患(4.0%)[1.28.19.1.1参照]
11.1.2 肝機能障害(頻度不明)
AST、ALT、ビリルビン等の増加を伴う肝機能障害があらわれることがある。[8.29.3.1参照]
11.1.3 好中球減少(8.0%)、白血球減少(5.4%)[8.3参照]
11.1.4 消化管穿孔(頻度不明)
異常が認められた場合には、内視鏡、腹部X線、CT等の必要な検査を行い、本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.5 血栓塞栓症(頻度不明)
肺塞栓症等があらわれることがある。
11.1.6 腎機能障害(1.0%)[8.4参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 15%以上5%以上〜15%未満5%未満頻度不明
精神神経系味覚障害頭痛末梢性ニューロパチー、不眠症、傾眠、浮動性めまい 
消化器便秘(30.8%)悪心、下痢、口内炎嘔吐、腹痛、胃腸炎、歯周病、消化不良、腹部不快感、胃食道逆流性疾患、口内乾燥 
循環器 徐脈心電図T波逆転 
呼吸器 上気道感染咳嗽、呼吸困難、気管支炎、肺炎、気胸 
血液 貧血溶血性貧血、活性化部分トロンボプラスチン時間延長、リンパ球数減少血小板数減少
皮膚発疹(20.4%) 皮膚乾燥、ざ瘡様皮膚炎、そう痒症、光線過敏症、湿疹、爪の障害、爪囲炎、乾癬、色素沈着障害、手掌・足底発赤知覚不全症候群、脱毛症 
筋骨格系血中CK増加(27.4%)、筋肉痛 関節痛、筋痙縮、筋力低下、四肢痛、背部痛 
肝臓AST増加(27.1%)、高ビリルビン血症(26.8%)、ALT増加(21.7%)血中Al-P増加LDH増加、γ-GTP増加、硬化性胆管炎 
腎臓高クレアチニン血症 血尿、蛋白尿、尿路感染 
  結膜炎、ドライアイ、霧視、麦粒腫、黄斑症 
代謝  高尿酸血症、高トリグリセリド血症、食欲減退、血中甲状腺刺激ホルモン増加、高カリウム血症、低マグネシウム血症、高血糖、高リン酸塩血症 
その他 浮腫、倦怠感疲労、無力症、体重増加、発熱、インフルエンザ様疾患、中耳炎、回転性めまい、腫脹、体重減少、膀胱炎、細菌性前立腺炎、腫瘍出血 

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.2 非臨床試験に基づく情報
遺伝毒性試験において、異数性誘発作用が認められたが、遺伝子突然変異誘発性又は染色体構造異常誘発性は認められなかった1)。[9.4参照]

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 反復投与(300mg1日2回反復経口投与時)
150mgカプセル又は20/40mgカプセル注1)を用いてALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者34例に1回300mgを空腹時(投与前2時間、投与後1時間絶食)に1日2回10日間反復経口投与したときの血漿中アレクチニブ濃度の推移と薬物動態パラメータ、20/40mgカプセル注1)に対する150mgカプセルのCmax、AUClastの幾何平均値の比及びその90%信頼区間を以下に示した2)
150mgカプセル又は20/40mgカプセルを300mg1日2回反復経口投与時(空腹時)の血漿中アレクチニブ濃度推移(平均値±標準偏差)
300mg1日2回反復経口投与時(空腹時)の血漿中アレクチニブの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差)
 NTmax(h)Cmax(ng/mL)AUClast(ng・h/mL)t1/2(h)
150mgカプセル344.54±1.87390±1033230±91413.4±8.15a)
20/40mgカプセル344.20±1.77460±1223710±104012.6±4.94b)
20/40mgカプセルに対する150mgカプセルのAUClast及びCmaxの幾何平均値の比及びその90%信頼区間
薬物動態パラメータ幾何平均値の比幾何平均値の比の90%信頼区間
AUClast0.8680.801-0.941
Cmax0.8460.784-0.913
16.1.2 反復投与(600mg1日2回反復経口投与時)
150mgカプセルを用いて、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者6例に術後補助療法として1回600mgを食後に1日2回3週間反復経口投与したときの血漿中アレクチニブ濃度の推移と薬物動態パラメータを以下に示した3)
150mgカプセルを600mg1日2回反復経口投与時(食後)の血漿中アレクチニブ濃度推移(平均値±標準偏差)
600mg1日2回反復経口投与時(食後)の血漿中アレクチニブの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差)
 NTmax(h)Cmax(ng/mL)AUC0-10(ng・h/mL)
150mgカプセル66.83±2.39739±1486250±1570
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
(1)150mgカプセルを用いてALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者31例に1回300mgを空腹時(投与前2時間、投与後1時間絶食)又は食後に1日2回10日間反復経口投与したとき、Tmaxは食事の影響を受けなかったが、AUC、Cmaxは空腹時投与に比べて食後投与でおよそ1.2倍に増加した2)
(2)150mgカプセルを用いて、健康成人18例に1回600mgを空腹時(投与前10時間、投与後4時間以上絶食)又は食後に単回経口投与したとき、Tmaxの中央値は空腹時投与で4時間、食後投与で8時間であった。また、AUC及びCmaxは空腹時投与に比べて食後投与でそれぞれおよそ2.9倍及び2.7倍に増加した4)(外国人データ)。
(3)20/40mgカプセル注1)を用いて、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者6例に300mgを絶食下(投与前10時間、投与後2時間絶食)又は食後に単回経口投与したときの血漿中アレクチニブ濃度の推移を以下の図に示した。また、20/40mgカプセル注1)を用いて20〜300mgを単回、1日2回21日間反復投与時の食事条件別の薬物動態パラメータを以下に示した。単回投与時は、食後投与でAUCとCmaxはともに、絶食下投与のおよそ1.8倍に増加し、Tmaxの平均値も食後投与で5.89時間に延長した。なお、反復投与開始から8日目までに血漿中アレクチニブ濃度は定常状態に達することが示され、反復投与時のアレクチニブの体内動態では1回20mg1日2回投与から1回300mg1日2回投与の範囲で線形性が認められた5)6)
300mg単回経口投与時の血漿中アレクチニブ濃度推移(平均値±標準偏差)
単回経口投与時の血漿中アレクチニブの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差)
投与量食事条件NTmax(h)Cmax(ng/mL)AUC0-72(ng・h/mL)t1/2(h)
20mg絶食下15.974.5214342.4
40mg絶食下13.9712.324826.6
80mg絶食下13.9841.467016.1
160mg絶食下32.62±1.1860.3±42.21030±71722.3±6.88
240mg絶食下32.69±1.2158.6±15.6920±34117.7±5.14
食直後34.63±1.08118±52.22200±80417.1±2.06
300mg絶食下62.38±0.79984.1±35.81540±56019.3±1.95
食直後65.89±2.07162±63.62700±103016.4±4.14
1日2回反復経口投与時の血漿中アレクチニブの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差)
1回投与量食事条件NTmax(h)Cmax(ng/mL)AUC0-10(ng・h/mL)t1/2(h)
20mg空腹時14.0025.522039.1
40mg空腹時13.8363.94799.37
80mg空腹時12.00150131014.1
160mg空腹時34.61±1.15300±1042310±59815.1±2.04a)
240mg空腹時33.33±1.15385±1002970±93720.9±15.8
食直後35.24±1.13380±82.83300±83818.5b)
300mg空腹時63.99±2.17575±3224970±326012.4±3.17c)
食直後65.32±1.58528±1384220±119016.5±3.83d)
16.2.2 バイオアベイラビリティ
健康成人6例を対象にアレクチニブとして600mgを単回経口投与したときの絶対的バイオアベイラビリティは約37%であった7)(外国人データ)。
16.3 分布
In vitro試験の結果、アレクチニブのヒト血漿蛋白結合率は99%以上であり、主にアルブミンに結合し、α1-酸性糖蛋白への結合はほとんど認められなかった8)。また、ヒトにおける血球移行率は約80%であった9)
白色ラットに14C標識アレクチニブを1mg/kgの用量で単回経口投与したとき、放射能は各組織に速やかに分布し、ハーダー腺、副腎、肺、褐色脂肪組織及び肝臓に高い分布を示し、大脳、小脳、脊髄への分布も確認された。有色ラットに14C標識アレクチニブを10mg/kgの用量で単回経口投与したときメラニン含有組織であるブドウ膜及び有色皮膚に高い放射能が検出された10)
16.4 代謝
In vitro代謝試験の結果、アレクチニブはヒト肝臓において、主にCYP3A4により代謝されて主要代謝物(M-4、モルフォリン部の開環後、脱アルキル化した化合物)を生成することが示された11)。また、M-4は、アレクチニブと同程度のALKチロシンキナーゼ阻害活性が示された12)。20/40mgカプセル注1)を用いてALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者6例に1回300mgを空腹時又は食直後に1日2回21日間反復経口投与したときのM-4のAUC0-10(平均値±標準偏差)は、それぞれ1980±596ng・h/mL及び2030±563ng・h/mLであった。未変化体に対するM-4のAUC0-10の比率(平均値±標準偏差)は空腹時及び食直後投与時でそれぞれ47.2±15.8%及び49.8±13.1%であった5)
16.5 排泄
健康成人6例を対象に14C-標識アレクチニブ600mgを単回経口投与したとき、投与から168時間までに投与放射能の98.3%が回収され、糞中に97.8%、尿中に0.467%の放射能が排泄された。また、糞中及び尿中に排泄された未変化体は、それぞれ投与量の84.0%及び0.1%未満であった7)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 肝機能障害患者
中等度(Child-Pugh分類B)及び重度(Child-Pugh分類C)の肝機能障害患者各8例を対象に、アレクチニブとして300mgを単回経口投与したときの薬物動態を健康成人各8例と比較し、肝機能障害がアレクチニブの薬物動態に与える影響を検討した結果を表に示す13)(外国人データ)。[9.3.19.3.2参照]
健康成人に対する中等度の肝機能障害患者におけるアレクチニブ薬物動態パラメータの幾何平均値の比及びその信頼区間
薬物動態パラメータ化合物健康成人に対する肝機能障害患者の幾何平均値の比幾何平均値の比の90%信頼区間
AUC0-∞未変化体1.601.05-2.43
代謝物(M-4)0.8060.502-1.30
未変化体+M-4注2)1.360.947-1.96
Cmax未変化体1.280.865-1.88
代謝物(M-4)0.6460.362-1.15
未変化体+M-4注2)1.160.786-1.72
健康成人に対する重度の肝機能障害患者におけるアレクチニブ薬物動態パラメータの幾何平均値の比及びその信頼区間
薬物動態パラメータ化合物健康成人に対する肝機能障害患者の幾何平均値の比幾何平均値の比の90%信頼区間
AUC0-∞未変化体2.201.31-3.69
代謝物(M-4)0.6560.269-1.60
未変化体+M-4注2)1.760.984-3.15
Cmax未変化体1.000.551-1.83
代謝物(M-4)0.6080.266-1.39
未変化体+M-4注2)0.9810.517-1.86
16.6.2 小児等
再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫小児患者(6歳以上15歳未満)4例を対象に、アレクチニブとして1回300mg(体重35kg以上)あるいは150mg(体重35kg未満)を1日2回21日間反復経口投与したときの血漿中アレクチニブの薬物動態パラメータを以下に示した14)
1日2回反復経口投与時の血漿中アレクチニブの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差)
投与群1回投与量NTmax(h)Cmax(ng/mL)AUC0-10(ng・h/mL)
体重35kg未満150mg23.96±0.0589507±2343500±1680
体重35kg以上300mg24.93±1.47713±3175820±2260
16.7 薬物相互作用
16.7.1 CYP3A誘導剤
健康成人24例を対象にCYP3A誘導剤であるリファンピシンの併用がアレクチニブとして600mg単回投与時の薬物動態に与える影響を検討した結果を表に示す15)(外国人データ)。[10.2参照]
CYP3A誘導剤の非併用時に対する併用時のアレクチニブ薬物動態パラメータの幾何平均値の比及びその信頼区間
薬物動態パラメータ化合物N非併用時に対する併用時の幾何平均値の比幾何平均値の比の90%信頼区間
AUC0-∞未変化体240.2680.238-0.301
代謝物(M-4)1.791.58-2.02
未変化体+M-4注2)0.8160.740-0.901
Cmax未変化体240.4860.435-0.543
M-42.201.90-2.55
未変化体+M-4注2)0.9610.877-1.05
16.7.2 その他の薬剤
(1)
健康成人16例を対象にCYP3A阻害剤であるポサコナゾール(国内未承認)の併用がアレクチニブとして300mg単回経口投与時の薬物動態に与える影響を検討した結果を表に示す15)(外国人データ)。[10.2参照]
CYP3A阻害剤の非併用時に対する併用時のアレクチニブ薬物動態パラメータの幾何平均値の比及びその信頼区間
薬物動態パラメータ化合物N非併用時に対する併用時の幾何平均値の比幾何平均値の比の90%信頼区間
AUC0-∞未変化体161.751.57-1.95
代謝物(M-4)0.7510.644-0.877
未変化体+M-4注2)1.361.24-1.49
Cmax未変化体161.181.02-1.37
M-40.2870.231-0.355
未変化体+M-4注2)0.9330.808-1.08
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者10例を対象に、アレクチニブとして600mgを1日2回反復投与時にCYP3Aの基質であるミダゾラム2mgを単回併用投与したときのミダゾラムの薬物動態に与える影響を検討した。その結果、ミダゾラム単独投与時に対する本剤併用投与時におけるミダゾラム(未変化体)のCmax及びAUC0-∞の幾何平均値の比(併用投与時/単独投与時)[90%CI]は、それぞれ0.919[0.648,1.31]及び0.971[0.717,1.32]であった15)(外国人データ)。
健康成人24例を対象にプロトンポンプ阻害剤であるエソメプラゾールの併用がアレクチニブとして600mg単回経口投与時の薬物動態に与える影響を検討した。その結果、本剤単独投与時に対するエソメプラゾール併用投与時におけるアレクチニブ(未変化体)のCmax及びAUC0-∞の幾何平均値の比(併用投与時/単独投与時)[90%CI]は、それぞれ1.16[1.03,1.32]及び1.22[1.09,1.36]であった4)(外国人データ)。
(2)本剤はCYP2C8、P-gp及びBCRPを阻害した16)in vitro)。
注1)アレセンサカプセル20/40mgは販売中止。
注2)モル濃度換算した薬物動態パラメータを用いて算出した。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌>
17.1.1 国内第I/II相試験(AF-001JP試験)
1レジメン以上の化学療法歴を有するALK融合遺伝子陽性の進行・再発非小細胞肺癌患者を対象にした第I/II相試験の第II相部分(46例)で本剤を1回300mg1日2回空腹時(投与前2時間、投与後1時間絶食)に連日経口投与された患者における奏効率は93.5%(95%信頼区間:82.1〜98.6%)であった17)
副作用発現頻度は、96.6%(56/58例)であった。主な副作用は、血中ビリルビン増加36.2%(21/58例)、味覚異常34.5%(20/58例)、AST増加32.8%(19/58例)、血中クレアチニン増加31.0%(18/58例)、便秘、発疹各29.3%(17/58例)であった。
17.1.2 国内第III相試験(JO28928試験)
化学療法未治療又は1レジメンの化学療法歴を有するALK融合遺伝子陽性進行・再発非小細胞肺癌患者207例を対象に、クリゾチニブ1回250mgを1日2回連日経口投与する群と、本剤1回300mgを1日2回連日経口投与する群を比較した第III相非盲検ランダム化試験を実施した。主要評価項目である独立判定機関評価による無増悪生存期間は以下のとおりであった18)
独立判定機関評価による無増悪生存期間のKaplan-Meier曲線
無増悪生存期間
無増悪生存期間中央値(月)
[95%信頼区間]
ハザード比
本剤群クリゾチニブ群
推定不能
[20.3-推定不能]
(N=103)
10.2
[8.2-12.0]
(N=104)
0.34[99.6826%信頼区間:0.17-0.71]注1)
p<0.0001注2)
副作用発現頻度は、88.3%(91/103例)であった。主な副作用は、便秘31.1%(32/103例)、味覚異常18.4%(19/103例)、血中CK増加16.5%(17/103例)、血中ビリルビン増加、発疹各10.7%(11/103例)、AST増加、筋肉痛各9.7%(10/103例)であった。
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法>
17.1.3 国際共同第III相試験(BO40336試験)
病理病期IB(腫瘍径≧4cm)〜IIIA注3)ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌患者の術後患者257例(日本人35例を含む)を対象に、術後補助療法における本剤と化学療法(シスプラチン又はカルボプラチン+ゲムシタビン又はビノレルビン又はペメトレキセド)の有効性及び安全性を比較することを目的とした第III相試験を実施した注4)注5)。主要評価項目である治験責任医師判定による無病生存期間は、II/IIIA期集団及びITT集団において、それぞれ以下のとおりであり、化学療法群に対する本剤群の優越性が検証された。本剤が投与された128例(日本人15例を含む)における副作用発現頻度は、93.8%(120/128例)であった。主な副作用は、血中CK増加40.6%(52/128例)、AST増加39.1%(50/128例)、ALT増加32.8%(42/128例)、便秘31.3%(40/128例)、血中ビリルビン増加31.3%(40/128例)、筋肉痛24.2%(31/128例)、血中ALP増加19.5%(25/128例)、貧血19.5%(25/128例)、血中クレアチニン増加14.1%(18/128例)、発疹13.3%(17/128例)、味覚不全10.2%(13/128例)であった19)
治験責任医師判定による無病生存期間のKaplan-Meier曲線(II/IIIA期集団)
治験責任医師判定による無病生存期間のKaplan-Meier曲線(ITT集団)
無病生存期間(II/IIIA期集団及びITT集団)
 無病生存期間中央値(月)
[95%信頼区間]
ハザード比
本剤群化学療法群
II/IIIA期集団未達
[推定不能-推定不能]
(N=116)
44.4
[27.8-推定不能]
(N=115)
0.24
[95%信頼区間:0.13-0.45]
p<0.0001注6)注7)
ITT集団未達
[推定不能-推定不能]
(N=130)
41.3
[28.5-推定不能]
(N=127)
0.24
[95%信頼区間:0.13-0.43]
p<0.0001注6)注8)
注3)切除検体の病理診断においてAJCC/UICC病期分類(第7版)に基づく病理病期IB(腫瘍径4cm以上)、II、又はIIIAに該当する患者を対象とした。
注4)本剤は1回600mgを1日2回、最大24カ月間連日経口投与した。
注5)過去5年以内の抗悪性腫瘍剤による治療歴のない患者が組み入れられた。
注6)II/IIIA期集団における無病生存期間の解析において統計学的な有意差が認められた場合、ITT集団における無病生存期間について仮説検定を実施することとされた。
注7)層別Log-rank検定、有意水準両側0.0118
注8)層別Log-rank検定,有意水準両側0.0077
<再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫>
17.1.4 国内第II相試験(ALC-ALCL試験)
6歳以上の再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫患者10例を対象に、本剤を体重35kg以上の患者には1回300mg、体重35kg未満の患者には1回150mgをそれぞれ1日2回連日経口投与した。主要評価項目である中央判定委員会による奏効率は80.0%(両側90%信頼区間:56.2〜95.9%)注9)であった20)。なお、事前に設定された閾値は50%であった。
副作用発現頻度は、100.0%(10/10例)であった。主な副作用は、斑状丘疹状皮疹40.0%(4/10例)、上気道感染、気管支炎、血中Al-P増加各30.0%(3/10例)であった。
注9)逆正弦変換に基づく方法で算出した信頼区間。一方、二項分布に基づく正確な方法(Clopper-Pearson法)で算出した90%信頼区間は49.3%〜96.3%であった。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌及び未分化大細胞リンパ腫では、ALKチロシンキナーゼ活性が異常に亢進しており、癌化及び腫瘍増殖に関与している。アレクチニブは、ALKチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、ALK融合遺伝子陽性の腫瘍細胞の増殖を抑制する21)
18.2 抗腫瘍効果
アレクチニブ及び主要代謝物(M-4)は、ALK融合遺伝子陽性のヒト非小細胞肺癌由来NCI-H2228細胞株の細胞増殖を抑制した12)。また、アレクチニブは、NCI-H2228細胞株を皮下移植した重症複合型免疫不全マウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した21)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. アレクチニブ塩酸塩

一般的名称 アレクチニブ塩酸塩
一般的名称(欧名) Alectinib Hydrochloride
化学名 9-Ethyl-6,6-dimethyl-8-[4-(morpholin-4-yl)piperidin-1-yl]-11-oxo-6,11-dihydro-5H-benzo[b]carbazole-3-carbonitrile monohydrochloride
分子式 C30H34N4O2・HCl
分子量 519.08
融点 約302℃(分解)
物理化学的性状 白色〜黄赤みの白色の粉末又は塊のある粉末である。2,2,2-トリフルオロエタノールにやや溶けやすく、エタノール(99.5)に極めて溶けにくく、水、アセトニトリル及びアセトンにはほとんど溶けない。
KEGG DRUG D10450

21. 承認条件

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

22. 包装

28カプセル(PTP14カプセル×2)

23. 主要文献

  1. 遺伝毒性試験(2014年7月4日承認、CTD 2.6.6.4)
  2. Hida T,et al., Cancer Sci., 107, 1642-6, (2016) »PubMed
  3. 日本人患者におけるintensive PK評価(2024年8月承認、CTD 2.7.2.2.2.1.3.1)
  4. Morcos PN,et.al., Clin Pharmacol Drug Dev., 6 (4), 388-97, (2017) »PubMed
  5. AF-001JP試験の薬物動態の成績(2014年7月4日承認、CTD 2.7.2.2.2.1)
  6. 食事の影響(2014年7月4日承認、CTD 2.7.1.2.1)
  7. Morcos PN,et al., Xenobiotica., 47, 217-29, (2017) »PubMed
  8. In vitro血漿蛋白結合(2014年7月4日承認、CTD 2.7.2.2.1.1)
  9. In vitro血球移行(2014年7月4日承認、CTD 2.7.2.2.1.2)
  10. 組織分布(2014年7月4日承認、CTD 2.6.4.4.1)
  11. ヒト推定代謝経路(2014年7月4日承認、CTD 2.7.2.2.1.3)
  12. ヒト主要代謝物のALKに対する阻害活性(2014年7月4日承認、CTD 2.6.2.2.3)
  13. Morcos PN,et al., J Clin Pharmacol., 58, 1618-28, (2018) »PubMed
  14. ALC-ALCL試験の薬物動態の成績(2020年2月21日承認、CTD 2.7.2.2.2)
  15. Morcos PN,et al., Clin Pharmacol Drug Dev., 6, 280-91, (2017) »PubMed
  16. 薬物動態学的薬物相互作用(2014年7月4日承認、CTD 2.6.4.7)
  17. Seto T,et al., Lancet Oncol., 14, 590-8, (2013) »PubMed
  18. Hida T,et al., Lancet., 390, 29-39, (2017) »PubMed
  19. BO40336試験の有効性及び安全性の成績(2024年8月承認、CTD 2.5.4.3、2.5.5.3)
  20. ALC-ALCL試験の有効性の成績(2020年2月21日承認、CTD 2.5.4.3)
  21. Sakamoto H,et al., Cancer Cell., 19, 679-90, (2011) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
中外製薬株式会社 メディカルインフォメーション部
〒103-8324 東京都中央区日本橋室町2-1-1
電話:0120-189706
FAX:0120-189705
URL:http://https://www.chugai-pharm.co.jp/
製品情報問い合わせ先
中外製薬株式会社 メディカルインフォメーション部
〒103-8324 東京都中央区日本橋室町2-1-1
電話:0120-189706
FAX:0120-189705
URL:http://https://www.chugai-pharm.co.jp/

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
中外製薬株式会社
東京都中央区日本橋室町2-1-1

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2024/09/18 版