15.1.1 本剤の臨床試験は,国内では13.9ヵ月(投与期間3〜20ヵ月の中央値)まで,海外では31.2ヵ月(投与期間2〜57ヵ月の中央値)までの期間で実施されており,これらの期間を超えた本剤の長期投与時の安全性は確立していない。
15.1.2 本剤単剤投与での使用経験は限られている。
15.1.3 本剤投与後,アバタセプトに対する抗体が産生されることがある。国内臨床試験において,電気化学発光法による投与期間中の抗体陽性率は本剤投与群3.6%(2/56例),点滴静注群3.6%(2/56例)であり,投与後最長168日までの抗体陽性率は本剤投与群16.1%(9/56例),点滴静注群10.7%(6/56例)であった
1)。海外臨床試験における免疫原性の結果は以下のとおりであった。なお,抗体の発現と効果又は有害事象との関連は明らかではない。
・メトトレキサート併用下で実施した海外臨床試験において,アバタセプトの皮下投与時及び点滴静注時の免疫原性について検討した。酵素免疫吸着測定法によるアバタセプトに対する抗体陽性率は,本剤投与群1.1%(8/725例),点滴静注群2.3%(16/710例)であり,点滴静注用製剤でこれまで得られた結果と同様であった。アバタセプトの皮下投与時の電気化学発光法による投与期間中の抗体陽性率は2.3%(16/684例),投与後最長168日までの抗体陽性率は9例中0例であった。免疫原性による薬物動態,安全性又は有効性への明らかな影響は認められなかった
1)。
・点滴静注用製剤による負荷投与を行わない本剤単独皮下投与時の免疫原性への影響を検討した。本剤単独群(49例)及びメトトレキサート併用群(51例)に投与開始4ヵ月時点で抗体陽性例は認められなかった。また,安全性についても,本剤の他の臨床試験で得られた結果と明らかな違いは認められなかった
2)。
・本剤の3ヵ月間の投与中断及び再開による免疫原性への影響を検討した。本剤投与中断による抗体陽性率の上昇は,点滴静注用製剤の投与中断時に認められた結果と同様であった。最長3ヵ月間,本剤投与中断後に投与を再開した患者では,本剤投与を継続した患者と比べ,再開時の点滴静注用製剤による負荷投与の有無に係らず,効果の発現に明らかな違いは認められず,投与時反応も認められなかった。また,本試験での点滴静注用製剤による負荷投与なしの場合の安全性は,他の試験の結果と同様であった
3)。
15.1.4 海外において,JCウイルスの発現は確認されていないものの点滴静注用製剤投与中に進行性多巣性白質脳症(PML)を再発した症例が市販後に報告されている。
15.1.5 本剤とタクロリムス等のカルシニューリン阻害薬との併用について,安全性は確立していない。
15.1.6 海外における関節リウマチ患者を対象としたプラセボ対照試験において,悪性腫瘍の発現率は,本薬を投与(中央値12ヵ月)した2,111例のうち29例(1.4%)で,プラセボを投与した1,099例のうち12例(1.1%)と同様であった。二重盲検試験及び非盲検試験において,本薬を投与した6,028例(16,671人・年)における悪性腫瘍の発現率は,100人・年当たり1.35であり,7年間ほぼ一定であった。このうち,黒色腫以外の皮膚癌が0.64,固形癌が0.62及び悪性血液疾患が0.10であった。主な固形癌は肺癌(0.14/100人・年)であり,主な悪性血液疾患はリンパ腫(0.06/100人・年)であり,7年間ほぼ一定であった。二重盲検試験及び非盲検試験の累積データにおける,悪性腫瘍全体の発現率,主な癌種別(黒色腫以外の皮膚癌,固形癌及び悪性血液疾患)の発現率,個々の癌種の発現率はいずれも二重盲検試験と同様であった。なお,これらの悪性腫瘍の発現率は関節リウマチ患者から予測されるものと一致していた
4)。[
1.1、
8.3参照]
15.2.1 マウスのがん原性試験(投与量20,65及び200mg/kgで週1回,雄:84週間・雌:88週間,皮下投与)において,リンパ腫及び雌マウスの乳腺腫瘍の発生率上昇が報告されている。これら腫瘍の発生には,マウス白血病ウイルス及びマウス乳癌ウイルスと本薬の免疫抑制作用との関連が示唆されている。