ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩による治療中の患者で生命を脅かす又は止血困難な出血を発現した患者(グループA)若しくは緊急手術又は処置を要する患者(グループB)を対象として、本剤1バイアルを15分以内の間隔で2回計5gを静脈内投与し、ダビガトランの抗凝固作用に対する本剤の中和効果及び安全性の検討を目的とした日本人を含む国際共同第III相試験では患者503例(うち、日本人12例)を対象とした。主要評価項目として、本剤投与完了後4時間以内のダビガトランの抗凝固作用に対する本剤の最大の中和効果を、中央検査機関で測定したdTT(希釈トロンビン時間)及びECT(エカリン凝固時間)の値を用い、それぞれの110%基準値上限(ULN)に基づいて評価した。その結果、以下の成績が得られた
7)。
中央検査機関で測定したdTT及びECTを用いて評価した中和効果の要約
| | グループA | グループB | 合計 |
| dTT | 評価対象となった患者数 | 212 | 119 | 331 |
| 本剤投与完了後4時間以内の最大の中和効果の中央値(95%信頼区間) | 100(100,100) | 100(100,100) | 100(100,100) |
| 最大の中和効果が100%であった患者の割合[N(%)] | 209(98.6) | 117(98.3) | 326(98.5) |
| ECT | 評価対象となった患者数 | 269 | 176 | 445 |
| 本剤投与完了後4時間以内の最大の中和効果の中央値(95%信頼区間) | 100(100,100) | 100(100,100) | 100(100,100) |
| 最大の中和効果が100%であった患者の割合[N(%)] | 257(95.5) | 165(93.8) | 422(94.8) |
中和効果の評価は、イダルシズマブ投与後に1回以上血液凝固検査値が得られ、かつ、投与前の値が110%ULNを超える患者を対象とした。
中和効果は下記の式により算出した。算出した値が100%以上の場合、100%と示した。
中和効果の計算式
{(投与前の血液凝固検査値−投与後の血液凝固検査値)/(投与前の血液凝固検査値−110%ULN)}×100%
日本人患者(12例)のうち、dTT(8例)及びECT(10例)それぞれで評価可能であったすべての患者で最大の中和効果は100%であった。
本試験では、ほとんどの患者では、血漿中ダビガトランは本剤投与終了後から持続的に中和されたが、一部の患者では主に本剤投与12時間以上経過後に末梢からのダビガトランの再分布によると考えられる、非結合型総ダビガトラン濃度、血液凝固マーカー値の上昇が認められた。
本剤が投与された503例中、副作用が報告された症例は31例(6.2%)であり、2例以上認められた副作用は、低血圧が4例(0.8%)、頭痛、徐脈が各2例(0.4%)であった。