○骨端線閉鎖を伴わないターナー症候群における低身長
○骨端線閉鎖を伴わないSGA(small-for-gestational age)性低身長症
<骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症>
5.1 本剤の適用は、成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断された患者に限定すること。診断にあたっては、最新の「厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班 成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断と治療の手引き」を参照すること。
<骨端線閉鎖を伴わないターナー症候群における低身長>
5.2 適用基準
染色体検査によりターナー症候群と確定診断された者で、身長が標準身長の−2.0SD以下又は年間の成長速度が2年以上にわたって標準値の−1.5SD以下である場合。
5.3 治療継続基準
1年ごとに以下の基準を満たしているかどうかを判定し、いずれかを満たしたときに治療の継続をする。
・成長速度≧4cm/年
・治療中1年間の成長速度と、投与前1年間の成長速度の差が、1.0cm/年以上の場合。
・治療2年目以降で、治療中1年間の成長速度が下記の場合
ただし、以上のいずれも満たさないとき、又は骨年齢が15歳以上に達したときは投与を中止すること。
<成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)>
5.4 本剤の適用は、成人成長ホルモン分泌不全症と診断された患者のうち、以下のいずれかの患者に限定すること。なお、重症の基準は、最新の「厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班 成人成長ホルモン分泌不全症の診断と治療の手引き」の病型分類を参照すること。
5.4.1 小児期発症型(小児期に成長ホルモン分泌不全症と確定診断されている患者)では、以下のいずれかを満たすもの。ただし、診断にあたっては、本治療開始前に再度成長ホルモン分泌刺激試験を行うこと。
・2種類以上の成長ホルモン分泌刺激試験における血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値が重症の基準を満たすもの。
・頭蓋内器質性疾患の合併ないし既往歴、治療歴または周産期異常の既往があり、成長ホルモンを含む複数の下垂体ホルモンの分泌低下がある患者では、1種類の成長ホルモン分泌刺激試験における血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値が重症の基準を満たすもの。
5.4.2 成人期発症型では、頭蓋内器質性疾患の合併ないし既往歴、治療歴または周産期異常の既往がある患者のうち、以下のいずれかを満たすもの。
・成長ホルモンを含む複数の下垂体ホルモンの分泌低下がある患者で、1種類の成長ホルモン分泌刺激試験における血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値が重症の基準を満たすもの。
・成長ホルモン単独の分泌低下がある患者で、2種類の成長ホルモン分泌刺激試験における血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値が重症の基準を満たすもの。
成長ホルモン分泌刺激試験の種類と成人成長ホルモン分泌不全症で重症と診断される血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値
成長ホルモン分泌刺激試験の種類 | 重症と診断される血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値 |
インスリン、アルギニン、グルカゴン | 1.8ng/mL以下 |
GHRP-2 | 9ng/mL以下 |
<骨端線閉鎖を伴わないSGA(small-for-gestational age)性低身長症>
5.5 適用基準
以下のいずれの基準も満たすこと。
5.5.1 出生時
出生時の体重及び身長がともに在胎週数相当の10パーセンタイル未満で、かつ出生時の体重又は身長のどちらかが、在胎週数相当の−2SD未満であること。
なお、重症の新生児出生時に身長が測定できないことがあるので、測定されていない場合は、出生体重のみで判定すること。
5.5.2 治療の開始条件
・3歳以上の患者であること。
・身長が標準身長の−2.5SD未満であること。
・治療開始前1年間の成長速度が標準成長速度の0SD未満であること。
5.5.3 出生後の成長障害が子宮内発育遅延以外の疾患等に起因する患者でないこと。また、成長障害をもたらすと考えられる治療を受けている患者でないこと。
5.6 治療継続基準
1年ごとに以下の基準を満たしているかどうかを判定し、いずれかを満たしたときに治療の継続をする。
・成長速度≧4cm/年
・治療中1年間の成長速度と、投与前1年間の成長速度の差が1.0cm/年以上の場合。
・治療2年目以降、増量後の治療中1年間の成長速度が下記の場合。
ただし、二次性徴発来後、年間成長速度が2cm未満になった場合は、投与を中止すること。
上記治療継続基準のいずれも満たさないとき、又は骨年齢が男17歳、女15歳以上に達したときは投与を中止すること。
<骨端線閉鎖を伴わないSHOX異常症における低身長>
5.7 適用基準
SHOX異常症と確定診断された者で、身長が標準身長の−2.0SD以下である場合、又は年間の成長速度が2年以上にわたって標準値の−1.5SD以下である場合
5.8 治療継続基準
1年ごとに以下の基準を満たしているかどうかを判定し、いずれかを満たしたときに治療を継続する。
・成長速度≧4cm/年
・治療中1年間の成長速度と、投与前1年間の成長速度の差が1.0cm/年以上の場合
・治療2年目以降で、治療中1年間の成長速度が下記の場合
上記治療継続基準のいずれも満たさないとき、又は骨年齢が男17歳、女15歳以上に達したときは投与を中止すること。
<成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)>
7.1 本剤の投与量は、血清IGF-I濃度を参照して調整すること。血清IGF-I濃度は投与開始後24週目までは4週間に1回、それ以降は12週から24週に1回の測定を目安とすること。また、副作用の発現等の際は、適宜、血清IGF-I濃度を測定し、本剤の減量、投与中止等適切な処置をとること。[
8.3参照]
7.2 加齢に伴い生理的な成長ホルモンの分泌量や血清IGF-I濃度が低下することが知られている。本剤投与による症状の改善が認められなくなり、かつ本剤を投与しなくても血清IGF-I濃度が基準範囲内にある場合は、投与中止を考慮すること。[
8.3参照]
<骨端線閉鎖を伴わないSGA(small-for-gestational age)性低身長症>
7.3 用量の増量にあたっては、Δ身長SDスコア、低身長の程度等を考慮して総合的に判断すること(日本小児内分泌学会/日本未熟児新生児学会、「SGA性低身長症におけるGH治療の実施上の注意」を参照のこと)。
<効能共通>
8.1 成長ホルモンは、インスリン感受性を低下させるため、本剤の投与により血糖値、HbA1cの上昇があらわれることがある。定期的に血糖値、HbA1c等を測定し、異常が認められた場合は、投与量の減量又は一時的な投与中止等、適切な処置を行うこと。特にターナー症候群においては、耐糖能の低下を合併することがあり、経過を注意深く観察すること。[
9.1.4、
11.1.4参照]
<骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症、骨端線閉鎖を伴わないターナー症候群における低身長、骨端線閉鎖を伴わないSGA(small-for-gestational age)性低身長症、骨端線閉鎖を伴わないSHOX異常症における低身長>
8.2 甲状腺機能を定期的に検査し、甲状腺機能低下症があらわれあるいは悪化した場合には適切な治療を行うことが望ましい。[
11.2参照]
<成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)>
8.3 本剤の投与中は、血清IGF-I濃度が基準範囲上限を超えないよう、定期的に検査を実施すること。[
7.1、
7.2参照]
8.4 本剤と本剤以外のホルモン剤を併用する場合には、併用するホルモン剤が血清IGF-I濃度に影響を及ぼすことがあるため、慎重に血清IGF-I濃度をモニタリングすること。
8.5 本剤の投与により浮腫、関節痛等があらわれることがあるため、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与量の減量あるいは投与中止を考慮すること。
8.6 本剤の治療は、内分泌専門医もしくはその指導の下で治療を行うこと。
<骨端線閉鎖を伴わないSGA(small-for-gestational age)性低身長症>
8.7 治療前及び治療中には、IGF-Iを3ヵ月〜6ヵ月に1回、HbA1c、空腹時又は随時血糖、TSH、fT4、骨年齢を6ヵ月〜1年に1回測定すること。異常が認められた場合には投与中止を考慮すること。
8.8 本剤の治療は、小児内分泌専門医等の本疾患に関する専門家もしくはその指導の下で行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 脳腫瘍(頭蓋咽頭腫、松果体腫、下垂体腺腫等)による成長ホルモン分泌不全性低身長症及び成人成長ホルモン分泌不全症の患者
脳腫瘍の進行や再発の観察を十分に行い慎重に投与すること。成長ホルモンは細胞増殖作用を有する。[
2.1参照]
9.1.2 脳腫瘍の既往のある患者
定期的に画像診断を実施し、脳腫瘍の発現や再発の有無を注意深く観察すること。成人成長ホルモン分泌不全症患者では脳腫瘍の既往のある患者が多く含まれており、国内臨床試験において本剤の治療中に脳腫瘍が再発したとの報告がある。[
2.1参照]
9.1.3 心疾患のある患者
9.1.4 糖尿病患者、耐糖能異常のある患者又は糖尿病の危険因子を持つ患者
糖尿病患者では、投与開始前に血糖(血糖値、HbA1c等)及び糖尿病合併症(糖尿病網膜症等)の病勢をコントロールしておくこと。投与開始後は定期的に血糖値、HbA1c等を測定し、また、糖尿病合併症(糖尿病網膜症等)を含め、患者の状態を注意深く観察すること。必要に応じて、糖尿病用薬の投与量の調整を行うこと。投与開始後に糖尿病の症状の顕在化又は悪化が認められた場合は、本剤の投与量の減量又は一時的な投与中止等、適切な処置を行うこと。
耐糖能異常のある患者又は糖尿病の危険因子を持つ患者(肥満、家族歴に糖尿病を持つ患者等)では、慎重に観察すること。糖尿病が顕在化することがある。[
8.1、
10.2、
11.1.4参照]
9.2 腎機能障害患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。[
2.2参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.8 高齢者
投与量の減量あるいは投与中止も考慮に入れて、慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。また、外国において、成人成長ホルモン分泌不全症患者における成長ホルモン維持用量は加齢に伴い減少することが報告されている。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 けいれん(頻度不明)
11.1.2 甲状腺機能亢進症(頻度不明)
11.1.3 ネフローゼ症候群(頻度不明)
ネフローゼ症候群(浮腫、尿蛋白、低蛋白血症)があらわれることがある。
11.1.4 糖尿病(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症、骨端線閉鎖を伴わないターナー症候群における低身長、骨端線閉鎖を伴わないSGA(small-for-gestational age)性低身長症、骨端線閉鎖を伴わないSHOX異常症における低身長>
| 0.2%以上 | 0.2%未満 |
過敏症 | | 全身そう痒、発疹(蕁麻疹、紅斑等) |
内分泌 | 甲状腺機能低下症注)、耐糖能低下、血中甲状腺刺激ホルモン増加 | 思春期早発症 |
筋・骨格系 | 関節痛・下肢痛等の成長痛、関節痛、四肢痛、側弯症等の脊柱変形の進行 | 有痛性外脛骨、外骨腫、大腿骨骨頭辷り症、大腿骨骨頭壊死、踵骨骨端炎、周期性四肢麻痺、ミオグロビン上昇、筋肉痛、関節炎 |
代謝 | 遊離脂肪酸上昇、トリグリセライド上昇、血清P上昇、血清LDH上昇、総コレステロール上昇、ALP上昇、CK上昇 | 血清K上昇 |
泌尿器 | 尿潜血・顕微鏡的血尿、蛋白尿 | |
肝・胆道系 | 血清ALT上昇、血清AST上昇、γ-GTP上昇 | |
消化器 | 嘔吐 | 嘔気、腹痛 |
精神・神経系 | 頭痛 | てんかんの悪化、下肢しびれ |
血液 | 白血球数上昇、好酸球増多、異型リンパ球 | 血小板数減少 |
投与部位 | | 注射部位の熱感、注射部位の疼痛、注射部位の硬結、注射部位の発赤、皮下脂肪の消失、注射部位の内出血、注射部位の発疹 |
全身症状 | 発熱 | 浮腫 |
その他 | 扁桃肥大、アデノイド肥大 | 頭蓋内圧亢進に伴う乳頭浮腫・視覚異常・頭痛・悪心・嘔吐、複視、霧視、眼部腫脹、胸痛、リンパ管腫、肥厚性鼻炎、睡眠時無呼吸症候群、胸腺腫大、爪変形 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)>
| 2%以上 | 2%未満 |
過敏症 | | 湿疹、発疹、接触皮膚炎、アレルギー性鼻炎 |
皮膚 | | 凍瘡、ざ瘡、皮膚疼痛、紫斑、皮膚変色、母斑、発赤、そう痒、アトピー性皮膚炎 |
内分泌 | | 遊離サイロキシン減少、遊離サイロキシン増加、遊離トリヨードチロニン増加、甲状腺刺激ホルモン低下、血中エストラジオール上昇、抗甲状腺抗体陽性、甲状腺腫 |
筋・骨格系 | 関節痛、四肢痛、背部痛 | 下肢不快感、関節腫脹、頚部痛、坐骨神経痛、こわばり感、筋肉痛、外骨腫、骨腫脹、関節炎 |
代謝 | トリグリセライド上昇、総コレステロール上昇 | CK上昇、HDLコレステロール低下、LDLコレステロール上昇、ALP上昇 |
泌尿器 | 尿潜血・顕微鏡的血尿、蛋白尿 | |
生殖器 | | 性器出血 |
肝・胆道系 | 血清ALT上昇、血清AST上昇 | γ-GTP上昇 |
消化器 | | 口内炎、胃腸炎、食欲減退、上腹部痛、下痢、血便、結腸ポリープ |
精神・神経系 | めまい、頭痛 | 睡眠障害、傾眠、横断脊髄炎、四肢しびれ、偏頭痛、うつ病、不眠症、てんかんの悪化 |
血液 | 好酸球増多 | リンパ球増多、好中球減少、白血球数上昇、後骨髄球数増加、異型リンパ球、リンパ球減少、好塩基球増多、好中球増多、骨髄球数増加 |
循環器 | 血圧上昇 | 胸部圧迫感、期外収縮、動悸 |
呼吸器 | | 咳嗽 |
投与部位 | | 注射部位の出血、注射部位の硬結、注射部位の疼痛、注射部位の不快感、注射部位の発赤、注射部位のそう痒感、注射部位の萎縮 |
全身症状 | 浮腫 | 倦怠感、発熱 |
その他 | | CRP上昇、唾液腺混合腫瘍、嚢胞、痛風悪化、耳鳴、高尿酸血症、胆嚢ポリープ、緑内障 |
過量投与により最初は血糖低下が、次いで血糖上昇が認められることがある。長期の過量投与により先端巨大症の症状が認められることがある。
1)2)
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 専用注入器の使用方法に従って用いること。
14.1.2 使用後は速やかに冷蔵庫に入れ、凍結を避けて2〜8℃で遮光保存し、35日以内に使用すること。
14.2 薬剤投与時の注意
本剤は皮下投与のみに使用し、注射部位を上腕、大腿、腹部、臀部等広範に求め、順序よく移動し、同一部位に短期間内に繰返し注射しないこと。
14.3 薬剤交付時の注意
14.3.1 1本のカートリッジを複数の患者と共有しないこと。
14.3.2 1本の専用注入器を複数の患者と共有しないこと。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 ヒト成長ホルモンと白血病の因果関係は明らかではないが、ヒト成長ホルモンの投与を受けた患者に白血病があらわれたとの報告があるので、定期的に血液検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。白血病、悪性腫瘍を発生しやすい先天異常、免疫不全症候群等の基礎疾患のある患者、脳腫瘍などによる放射線治療歴のある患者、抗がん薬や免疫抑制薬の投与歴のある患者、治療開始時の血液像に異常がある患者に投与する場合には、特に患者の状態を観察すること。
15.1.2 ヒト成長ホルモンの投与を受けた患者に脳腫瘍が再発したとの報告がある。
15.1.3 小児がんの既往を有する患者にヒト成長ホルモンを投与した場合、二次性腫瘍の発現リスクが上昇するとの報告がある。
15.1.4 連続投与した場合、ヒト成長ホルモンに対する抗体が生じることがある。抗体の産生により効果の減弱がみられる場合には、投与を中止し、適宜他の治療法を考慮すること。[
17.3.1参照]
15.2 非臨床試験に基づく情報
SD系ラットの妊娠前、妊娠初期投与試験において、高投与量群で交尾率及び妊娠率の低下が報告されている。
3)
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症>
17.1.1 国内臨床試験
グロウジェクト注射用8mg(0.175mg/kg/週)にて6ヵ月間治療した45例(新規例28例、切替例17例)における年間成長速度を下表に示した。
5)
表1成長速度(投与開始時、切替時、投与6ヵ月後)
| 成長速度(cm/年) |
新規例 | 切替例 |
投与開始時 | 4.7±1.0 | 5.2±1.4 |
切替時 | / | 7.0±1.6(p<0.01) |
投与6ヵ月後 | 8.7±2.7(p<0.001) | 6.7±1.4(p<0.01) |
<骨端線閉鎖を伴わないターナー症候群における低身長>
17.1.2 国内臨床試験
グロウジェクト注射用1.33mg(0.35mg/kg/週)にて24ヵ月間治療した39例における年間成長速度を下表に示した。
6)
表2成長速度(投与開始時、12ヵ月後、24ヵ月後)
| 成長速度(cm/年) |
投与開始時 | 4.1±1.5 |
投与 | 12ヵ月後 | 7.2±1.5(p<0.001) |
24ヵ月後 | 5.3±1.1(p<0.001) |
<成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)>
17.1.3 国内臨床試験(二重盲検試験、長期投与試験)
主な成績を下表に示した。グロウジェクトBC注射用8mg(0.003mg/kg/日〜0.012mg/kg/日)を1日1回就寝前に皮下投与した。
(1)二重盲検試験
成人成長ホルモン分泌不全症と診断され、GH分泌刺激試験において、GH頂値が3ng/mL(リコンビナント標準品を用いた場合は1.8ng/mL)未満の患者を対象にプラセボを対照とした二重盲検試験を行った。なお、用法・用量に関する検討を行うため、0.012mg/kg/日まで漸増する群と、維持用量0.006mg/kg/日まで漸増する群を設定した。
7)
表3躯幹部体脂肪率(%)の変化量(投与開始時〜24週後)
| 躯幹部体脂肪率(%)の変化量(投与開始時〜24週後) |
Mean±SD(例数) | 95%信頼区間 |
プラセボ投与群 | 0.24±2.07(31) | −0.52〜0.99 |
0.006mg投与群 | −3.03±2.51(31)* | −3.95〜−2.11 |
0.012mg投与群 | −4.58±2.59(32)* | −5.51〜−3.64 |
表4血清IGF-ISDスコア(投与開始時〜24週後)
| 血清IGF-I SDスコア |
開始時 | 変化量(投与開始時〜24週後) |
Mean±SD(例数) | Mean±SD(例数) | 95%信頼区間 |
プラセボ投与群 | −2.760±1.407(31) | −0.131±0.545(31) | −0.331〜0.069 |
0.006mg投与群 | −2.977±1.771(31) | 1.971±1.270(31)* | 1.505〜2.437 |
0.012mg投与群 | −3.096±1.972(32) | 3.633±1.667(32)* | 3.032〜4.233 |
*p値 群内比較:投与開始時vs24週後(p<0.001)
(2)長期投与試験
二重盲検試験において12週間以上の治験薬の投与を行い、12週以降の躯幹部体脂肪のデータが存在している成人成長ホルモン分泌不全症患者を対象に長期投与試験を行った。
8)
表5躯幹部体脂肪率(%)の変化量(長期投与試験 開始時〜48週後)
| 躯幹部体脂肪率(%)の変化量(長期投与試験 開始時〜48週後) |
Mean±SD(例数) | 95%信頼区間 |
プラセボ/本剤 | −4.01±3.21(29)** | −5.24〜−2.79 |
本剤/本剤 | 0.35±3.02(59) | −0.44〜1.13 |
表6血清IGF-ISDスコア(長期投与試験 開始時〜48週後)
| 血清IGF-I SDスコア |
長期投与試験 開始時 | 変化量(長期投与試験 開始時〜48週後) |
Mean±SD(例数) | Mean±SD(例数) | 95%信頼区間 |
プラセボ/本剤 | −2.849±1.602(29) | 3.102±1.887(29)** | 2.384〜3.819 |
本剤/本剤 | −0.102±2.174(58) | −0.223±1.873(59) | −0.711〜0.266 |
**p値 群内比較:長期投与試験 開始時vs48週後(p<0.001)
<骨端線閉鎖を伴わないSGA(small-for-gestational age)性低身長症>
17.1.4 国内第III相試験
主な成績を下表に示した。SGA性低身長症患者に各表中に示す投与量のグロウジェクトBC注射用8mgを1日1回皮下投与した。
9)
表7身長SDSの変化量
群(用量) | 12ヵ月後(例数) | 24ヵ月後(例数) |
0.23mg群 (0.23mg/kg/週) | 0.634±0.322(42) | − | 0.840±0.418(43) | − |
0.47mg群 (0.47mg/kg/週) | 1.025±0.336(45) | p<0.001* | 1.497±0.440(45) | p<0.001* |
表8身長SDS及び成長速度SDSの経時推移
項目 | 群(用量) | 試験開始時(例数) | 12ヵ月後(例数) | 24ヵ月後(例数) |
身長SDS | 0.23mg群 (0.23mg/kg/週) | −3.176±0.672(43) | −2.512±0.751(42) | −2.336±0.820(43) |
0.47mg群 (0.47mg/kg/週) | −3.211±0.710(45) | −2.186±0.814(45) | −1.714±0.861(45) |
成長速度SDS | 0.23mg群 (0.23mg/kg/週) | −1.986±1.400(43) | 2.636±1.854(42) | 0.640±1.285(42) |
0.47mg群 (0.47mg/kg/週) | −1.539±1.194(45) | 4.822±1.866(45) | 2.648±1.453(43) |
<骨端線閉鎖を伴わないSHOX異常症における低身長>
17.1.5 国内第III相試験
SHOX異常症における低身長患者を対象に、無治療を対照とした非盲検無作為化並行群間比較試験を行った。本剤群ではグロウジェクト皮下注12mg(0.35mg/kg/週)を7回に分けて1日1回、12ヵ月間皮下投与し、対照群では、12ヵ月間本剤を投与せずに観察した。その後、いずれの群もグロウジェクト皮下注12mg(0.35mg/kg/週)を7回に分けて1日1回、12ヵ月間、皮下投与した。
主要評価項目とした試験開始12ヵ月後の暦年齢相当身長SDSのベースラインからの変化量の結果は表9、その他の有効性の評価項目の結果は表10のとおりであった。なお、ランガー型中間肢骨異形成症患者は除外した。
表9試験開始12ヵ月後の暦年齢相当身長SDSのベースラインからの変化量
| 本剤群(10例) | 対照群(9例) | 群間差 [95%信頼区間] | p値* |
暦年齢相当身長SDSのベースラインからの変化量 | 0.923±0.213(10) | 0.127±0.105(8) | 0.796 [0.621,0.971] | <0.001 |
表10その他の有効性評価項目の結果
評価項目 | 本剤/本剤群(10例) | 対照/本剤群(9例) |
暦年齢相当身長SDS | ベースライン | −2.705±0.428(10) | −2.574±0.473(9) |
試験開始12ヵ月後 | −1.782±0.419(10) | −2.514±0.437(8) |
試験開始24ヵ月後 | −1.277±0.570(8) | −1.635±0.421(6) |
成長速度(cm/年) | ベースライン | 5.05±1.02(10) | 4.71±0.73(9) |
試験開始12ヵ月後 | 9.83±1.14(10) | 5.59±0.66(8) |
試験開始24ヵ月後 | 7.51±1.47(8) | 9.79±0.95(6) |
安全性評価対象19例中1例(5.3%)に副作用としてインスリン抵抗性が認められた。
10)
17.3 その他
17.3.1 抗ヒト成長ホルモン抗体
国内での臨床試験205例(グロウジェクト注射用1.33mg:成長ホルモン分泌不全性低身長症63例、ターナー症候群97例、グロウジェクト注射用8mg:成長ホルモン分泌不全性低身長症45例)において、その検査で一度でも10倍以上の抗hGH抗体が出現した症例は16例(7.8%、内訳 グロウジェクト注射用1.33mg:成長ホルモン分泌不全性低身長症7例、ターナー症候群6例、グロウジェクト注射用8mg:成長ホルモン分泌不全性低身長症3例)であった。この抗体出現率は、他の同種同効製剤とほぼ同率であった。
5)6)11)[
15.1.4参照]
18.1 作用機序
成長ホルモンは下垂体前葉で産生され、貯蔵されているが、視床下部から分泌される成長ホルモン放出因子の刺激により放出され、肝臓に存在するGHレセプターと結合してIGF-Iを産生する。このIGF-I及びGHが軟骨細胞に作用して骨格の成長をもたらす。視床下部からは、GHの分泌量を抑制するソマトスタチンも分泌され、GHの分泌量が調節されている。
18.2 身体成長促進作用
下垂体摘出ラットにおける脛骨骨端軟骨の増大及び各種骨端軟骨への
35Sの取り込み作用を試験し、これらの作用はいずれも下垂体由来ヒト成長ホルモン製剤とほぼ同等であることが確認されている。
12)
18.3 IGF-I増加作用
下垂体摘出ラットを用いた試験、また健常成人における試験で、血中IGF-Iを増加させることが認められている。
13)
18.4 体組成及び脂質代謝改善作用
下垂体摘出成熟ラットを用いた試験で、除脂肪体重の有意な増加及び血清LDL-コレステロールの有意な低下が認められている。また、副腎皮質ホルモンおよび甲状腺ホルモンとの併用試験においても、同様の作用を示すことが認められている。
14)