2.1 重篤な呼吸抑制のある患者[呼吸抑制を増強する。]
2.2 気管支喘息発作中の患者[気道分泌を妨げる。]
2.3 慢性肺疾患に続発する心不全の患者[呼吸抑制や循環不全を増強する。]
2.4 痙攣状態(てんかん重積症、破傷風、ストリキニーネ中毒)にある患者[脊髄の刺激効果があらわれる。]
2.5 麻痺性イレウスの患者[消化管運動を抑制する。]
2.6 急性アルコール中毒の患者[呼吸抑制を増強する。]
2.7 本剤の成分及びアヘンアルカロイドに対し過敏症の患者
2.8 出血性大腸炎の患者[腸管出血性大腸菌(O157等)や赤痢菌等の重篤な細菌性下痢のある患者では、症状の悪化、治療期間の延長をきたすおそれがある。]
2.9 ナルメフェン塩酸塩水和物を投与中又は投与中止後1週間以内の患者[
10.1参照]
通常、成人にはヒドロモルフォンとして4〜24mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。
7.1 初回投与
オピオイド鎮痛剤による治療の有無を考慮して初回投与量を設定すること。
7.1.1 オピオイド鎮痛剤を使用していない患者
1日4mgから開始し、鎮痛効果及び副作用の発現状況を観察しながら用量調節を行うこと。
7.1.2 オピオイド鎮痛剤を使用している患者
他のオピオイド鎮痛剤から本剤に変更する場合には、前治療薬の投与量等を考慮し、投与量を決めること。本剤の1日用量は、ヒドロモルフォンとして、モルヒネ経口剤1日用量の1/5量を目安とすること。
7.1.3 フェンタニル貼付剤を使用している患者
フェンタニル貼付剤から本剤へ変更する場合には、フェンタニル貼付剤剥離後にフェンタニルの血中濃度が50%に減少するまで17時間以上かかることから、剥離直後の本剤の使用は避け、本剤の使用を開始するまでに、フェンタニルの血中濃度が適切な濃度に低下するまでの時間をあけるとともに、本剤の低用量から投与することを考慮すること。
7.2 疼痛増強時
疼痛が増強した場合や鎮痛効果が得られている患者で突発性の疼痛が発現した場合は、直ちにヒドロモルフォン塩酸塩等の即放性製剤の臨時追加投与を行い鎮痛を図ること。
7.3 増量
本剤投与開始後は患者の状態を観察し、適切な鎮痛効果が得られ副作用が最小となるよう用量調節を行うこと。増量の目安は使用量の30〜50%増とする。[
8.5参照]
7.4 減量
連用中における急激な減量は、退薬症候があらわれることがあるので行わないこと。副作用等により減量する場合は、患者の状態を観察しながら慎重に行うこと。[
11.1.1参照]
7.5 投与の中止
本剤の投与を中止する場合には、退薬症候の発現を防ぐために徐々に減量すること。[
11.1.1参照]
8.1 本剤は徐放性製剤であることから、急激な血中濃度の上昇による重篤な副作用の発現を避けるため、服用に際して割ったり、砕いたり、あるいはかみ砕かないように指導すること。
8.2 連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること。[
11.1.1参照]
8.3 眠気、めまいが起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
8.4 本剤を投与する場合には、以下の対応を念頭におき、副作用に十分注意すること。
・便秘に対する対策として緩下剤を併用、悪心・嘔吐に対する対策として制吐剤を併用する。
・鎮痛効果が得られている患者で通常と異なる強い眠気がある場合には、過量投与の可能性があるので、本剤の減量を考慮する。
8.5 本剤を増量する場合には、副作用に十分注意すること。[
7.3参照]
8.6 本剤の医療目的外使用を防止するため、適切な処方を行い、保管に留意するとともに、患者等に対して適切な指導を行うこと。[
14.1.1、
14.1.3参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 細菌性下痢のある患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。治療期間の延長をきたすおそれがある。
9.1.2 心機能障害あるいは低血圧のある患者
9.1.3 呼吸機能障害のある患者
9.1.4 脳に器質的障害のある患者
9.1.5 ショック状態にある患者
9.1.6 代謝性アシドーシスのある患者
9.1.7 甲状腺機能低下症(粘液水腫等)の患者
9.1.8 副腎皮質機能低下症(アジソン病等)の患者
9.1.9 薬物依存・アルコール依存又はその既往歴のある患者
9.1.10 衰弱者
9.1.11 前立腺肥大による排尿障害、尿道狭窄、尿路手術術後の患者
9.1.12 器質的幽門狭窄又は最近消化管手術を行った患者
9.1.13 痙攣の既往歴のある患者
9.1.14 胆嚢障害、胆石症又は膵炎の患者
9.1.15 重篤な炎症性腸疾患のある患者
9.2 腎機能障害患者
低用量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。排泄が遅延し副作用があらわれるおそれがある。[
16.6.1参照]
9.3 肝機能障害患者
低用量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。代謝が遅延し副作用があらわれるおそれがある。なお、重度の肝機能障害のある患者を対象とした臨床試験は実施していない。[
16.6.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。マウス及びハムスターで胎児奇形(頭蓋奇形、軟部組織奇形、骨格変異)が、ラットで出生児の体重及び生存率の低下が報告されている。
分娩前に投与した場合、出産後新生児に退薬症候(多動、神経過敏、不眠、振戦等)があらわれることがある。
分娩時の投与により、新生児に呼吸抑制があらわれることがある。
9.6 授乳婦
本剤投与中は授乳しないことが望ましい。ヒト母乳中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
低用量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。一般に生理機能が低下しており、特に呼吸抑制の感受性が高い。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 依存性(頻度不明)
連用により生じることがある。また、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、あくび、くしゃみ、流涙、発汗、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、散瞳、頭痛、不眠、不安、せん妄、振戦、全身の筋肉・関節痛、呼吸促迫等の退薬症候があらわれることがある。[
7.4、
7.5、
8.2参照]
11.1.2 呼吸抑制(頻度不明)
息切れ、呼吸緩慢、不規則な呼吸、呼吸異常等があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。なお、本剤による呼吸抑制には、麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が拮抗する。
11.1.3 意識障害(0.7%)
昏睡、昏迷、錯乱、せん妄等の意識障害があらわれることがある。
11.1.4 イレウス(麻痺性イレウスを含む)、中毒性巨大結腸(頻度不明)
炎症性腸疾患の患者に投与した場合、中毒性巨大結腸があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 5%未満 | 頻度不明 |
過敏症 | | 発疹、そう痒症 | 蕁麻疹 |
精神神経系 | 傾眠(20.1%) | めまい、味覚異常 | ミオクローヌス、頭痛、縮瞳、痛覚過敏注)、アロディニア |
呼吸器 | | | 呼吸困難 |
消化器 | 悪心(29.5%)、嘔吐(27.3%)、便秘 | 食欲不振 | 腹部不快感、口渇 |
肝臓 | | 肝機能異常 | |
その他 | | 倦怠感、異常感 | 発熱、尿閉 |
13.1 症状
呼吸抑制、意識不明、痙攣、錯乱、血圧低下、重篤な脱力感、重篤なめまい、嗜眠、心拍数の減少、神経過敏、不安、縮瞳、重度の低酸素症による著明な散瞳、皮膚冷感等を起こすことがある。
13.2 処置
以下の治療を行うことが望ましい。
・投与を中止し、気道確保、補助呼吸及び呼吸調節により適切な呼吸管理を行う。
・麻薬拮抗剤投与を行い、患者に退薬症候又は麻薬拮抗剤の副作用が発現しないよう慎重に投与する。なお、麻薬拮抗剤の作用持続時間はヒドロモルフォンのそれより短いので、患者のモニタリングを行うか又は患者の反応に応じて初回投与後は注入速度を調節しながら持続静注する。
・必要に応じて補液、昇圧剤等の投与又は他の補助療法を行う。
14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 具体的な服用方法、服用時の注意点、保管方法等を十分に説明し、本剤の目的以外への使用あるいは他人への譲渡をしないよう指導するとともに、本剤を子供の手の届かないところに保管するよう指導すること。[
8.6参照]
14.1.2 PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
14.1.3 本剤が不要となった場合には、病院又は薬局へ返却するなどの処置について適切に指導すること。[
8.6参照]
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人健康成人男性に本剤2mg及び6mgを空腹時に単回経口投与したときの、血漿中ヒドロモルフォン濃度推移及び薬物動態パラメータは次のとおりであった
1)。
単回経口投与時の血漿中ヒドロモルフォン濃度推移
薬物動態パラメータ(単回経口投与時)
投与量 | 例数 | AUClast(ng・hr/mL) | Cmax(ng/mL) | Tmaxa)(hr) | t1/2(hr) |
2mg | 6 | 5.31±1.64 | 0.356±0.115 | 5.00(1.00〜10.00) | 8.88±2.25b) |
6mg | 6 | 19.2±4.99 | 1.09±0.434 | 3.25(1.00〜8.00) | 16.8±6.69 |
16.1.2 男女差
健康成人男女各18例に、ヒドロモルフォン塩酸塩即放性製剤8mgを空腹時単回経口投与したとき、血漿中ヒドロモルフォン濃度推移に差は認められなかった
2)(外国人データ)。
16.2 吸収
16.2.1 バイオアベイラビリティ
日本人健康成人6例に、ヒドロモルフォン塩酸塩即放性製剤を空腹時単回経口投与したとき、バイオアベイラビリティは24%であった
3)。
16.2.2 食事の影響
日本人健康成人男性6例に、本剤2mgを単回経口投与したとき、空腹時と比較して食後投与時でCmaxは1.6倍、AUCinfは1.3倍に増大した
1)。
16.3 分布
16.3.1 母乳中への移行
健康授乳婦8例に、ヒドロモルフォン塩酸塩即放性製剤2mgを経鼻投与
注)したとき、ヒドロモルフォンの乳汁/血漿中のAUCの比は2.56であった
4)(外国人データ)。
16.3.2 血漿蛋白結合率
平衡透析法で測定したヒト血漿蛋白結合率は24〜30%であった
5)(
in vitro)。
16.4 代謝
ヒトにおけるヒドロモルフォンの主代謝経路は、3位水酸基のグルクロン酸抱合によるヒドロモルフォン-3-グルクロニドへの代謝である
6)(外国人データ)。
ヒドロモルフォン及びヒドロモルフォン-3-グルクロニドは、CYP1A2、2A6、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、2E1及び3A4/5を阻害せず
7)、CYP1A2、2B6及び3A4を誘導しなかった
8)(
in vitro)。[
10.参照]
16.5 排泄
日本人健康成人男性に本剤2mg及び6mgを単回経口投与したとき、投与後48時間までの尿中に、投与量の約3%がヒドロモルフォンとして、投与量の約30%がヒドロモルフォン-3-グルクロニドとして排泄された
1)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
腎機能正常者7例、中等度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス40〜60mL/min)8例及び重度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)8例にヒドロモルフォン塩酸塩即放性製剤4mgを単回経口投与したとき、腎機能正常者よりも、中等度腎機能障害患者ではAUCが2倍、重度腎機能障害患者では4倍高かった
9)(外国人データ)。[
9.2参照]
16.6.2 肝機能障害患者
肝機能正常者及び中等度肝機能障害患者(Child-Pughスコア7〜9)各12例にヒドロモルフォン塩酸塩即放性製剤4mgを単回経口投与したとき、肝機能正常者よりも、中等度肝機能障害患者ではAUCが4倍高かった
10)(外国人データ)。[
9.3参照]
16.6.3 高齢者
健康高齢者(65〜74歳)及び健康非高齢者(18〜38歳)各18例に、ヒドロモルフォン塩酸塩即放性製剤4mgを空腹時単回経口投与したとき、血漿中ヒドロモルフォン濃度推移に差は認められなかった
11)(外国人データ)。
注)本剤の承認された用法及び用量は、4〜24mgを1日1回経口投与である。
ナルサス錠2mg、ナルサス錠6mg、ナルサス錠12mgは、それぞれ錠剤表面に使用色素による黒色、黄色、赤色の斑点がみられることがある。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
<ナルサス錠2mg>
(PTP、乾燥剤入り)20錠(10錠×2)100錠(10錠×10)
<ナルサス錠6mg>
(PTP、乾燥剤入り)20錠(10錠×2)100錠(10錠×10)
<ナルサス錠12mg>
(PTP、乾燥剤入り)20錠(10錠×2)100錠(10錠×10)
<ナルサス錠24mg>
(PTP、乾燥剤入り)20錠(10錠×2)100錠(10錠×10)
本剤は厚生労働省告示第42号(平成30年3月5日付)に基づき、1回30日分を限度として投薬する。