1.1 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
1.2 間質性肺疾患があらわれ、死亡に至った症例も報告されているので、初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽等)の確認及び胸部X線検査の実施等、観察を十分に行うこと。また、異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。[
8.2、
9.1.2、
11.1.1参照]
<根治切除不能又は転移性の腎細胞癌>
5.1 本剤の術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない。
<根治切除不能な尿路上皮癌における化学療法後の維持療法>
5.2 化学療法で疾患進行が認められていない患者を対象とすること。
5.3 本剤の手術の補助療法における有効性及び安全性は確立していない。
5.4 臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[
17.1.3参照]
<根治切除不能なメルケル細胞癌、根治切除不能な尿路上皮癌における化学療法後の維持療法>
通常、成人にはアベルマブ(遺伝子組換え)として、1回10mg/kg(体重)を2週間間隔で1時間以上かけて点滴静注する。
<根治切除不能又は転移性の腎細胞癌>
アキシチニブとの併用において、通常、成人にはアベルマブ(遺伝子組換え)として、1回10mg/kg(体重)を2週間間隔で1時間以上かけて点滴静注する。
<根治切除不能なメルケル細胞癌、根治切除不能な尿路上皮癌における化学療法後の維持療法>
7.1 他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
<効能共通>
7.2 本剤の投与時に発現することがあるinfusion reactionを軽減させるため、本剤投与前に抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤等の投与を行うこと。[
8.9、
11.1.13参照]
7.3 本剤投与により副作用が発現した場合には、以下の基準を目安に、本剤の休薬等を考慮すること。
副作用発現時の用量調節基準
| 副作用 | 程度注) | 処置 |
| 間質性肺疾患 | Grade 2の場合 | Grade 1以下に回復するまで休薬する。 |
| Grade 3、4又は再発性のGrade 2の場合 | 本剤の投与を中止する。 |
| 肝機能障害 | AST若しくはALTが基準値上限の3〜5倍、又は総ビリルビンが基準値上限の1.5〜3倍に増加した場合 | Grade 1以下に回復するまで休薬する。 |
| AST若しくはALTが基準値上限の5倍超、又は総ビリルビンが基準値上限の3倍超に増加した場合 | 本剤の投与を中止する。 |
| 大腸炎・下痢 | Grade 2又は3の場合 | Grade 1以下に回復するまで休薬する。 |
| Grade 4又は再発性のGrade 3の場合 | 本剤の投与を中止する。 |
| 甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、副腎機能不全、高血糖 | Grade 3又は4の場合 | Grade 1以下に回復するまで休薬する。 |
| 心筋炎 | 新たに発現した心徴候、臨床検査値又は心電図による心筋炎の疑い | 休薬又は投与中止する。 |
| 腎障害 | Grade 2又は3の場合 | Grade 1以下に回復するまで休薬する。 |
| Grade 4の場合 | 本剤の投与を中止する。 |
| infusion reaction | Grade 1の場合 | 投与速度を半分に減速する。 |
| Grade 2の場合 | 投与を中断する。患者の状態が安定した場合(Grade 1以下)には、中断時の半分の投与速度で投与を再開する。 |
| Grade 3又は4の場合 | 本剤の投与を中止する。 |
| 上記以外の副作用 | Grade 2又は3の場合 | Grade 1以下に回復するまで休薬する。 |
・Grade 4又は再発性のGrade 3の場合 ・副作用の処置としての副腎皮質ホルモン剤をプレドニゾロン換算で10mg/日相当量以下まで12週間以内に減量できない場合 ・12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合 | 本剤の投与を中止する。 |
8.1 本剤のT細胞活性化作用により、過度の免疫反応に起因すると考えられる様々な疾患や病態があらわれることがある。観察を十分に行い、異常が認められた場合には、過度の免疫反応による副作用の発現を考慮し、適切な鑑別診断を行うこと。過度の免疫反応による副作用が疑われる場合には、副腎皮質ホルモン剤の投与等を考慮すること。また、本剤投与終了後に重篤な副作用があらわれることがあるので、本剤投与終了後も観察を十分に行うこと。
8.2 間質性肺疾患があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽等)の確認及び胸部X線検査の実施等、観察を十分に行うこと。また、必要に応じて胸部CT、血清マーカー等の検査を実施すること。[
1.2、
9.1.2、
11.1.1参照]
8.3 肝不全、肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。[
11.1.3参照]
8.4 甲状腺機能障害、副腎機能障害及び下垂体機能障害があらわれることがあるので、定期的に内分泌機能検査(TSH、遊離T3、遊離T4、ACTH、血中コルチゾール等の測定)を行うこと。また、必要に応じて画像検査等の実施も考慮すること。[
11.1.5、
11.1.6、
11.1.7参照]
8.5 1型糖尿病があらわれることがあるので、口渇、悪心、嘔吐等の症状の発現や血糖値の上昇に十分注意すること。[
11.1.8参照]
8.6 心筋炎があらわれることがあるので、胸痛、CK上昇、心電図異常等の観察を十分に行うこと。[
11.1.9参照]
8.7 筋炎、横紋筋融解症があらわれることがあるので、筋力低下、筋肉痛、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇等の観察を十分に行うこと。[
11.1.12参照]
8.8 腎障害があらわれることがあるので、定期的に腎機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。[
11.1.11参照]
8.9 infusion reactionがあらわれることがあるので、本剤の投与は重度のinfusion reactionに備えて緊急時に十分な対応のできる準備を行った上で開始すること。また、2回目以降の本剤投与時にinfusion reactionがあらわれることもあるので、患者の状態を十分に観察すること。[
7.2、
11.1.13参照]
8.10 重症筋無力症があらわれることがあるので、筋力低下、眼瞼下垂、呼吸困難、嚥下障害等の観察を十分に行うこと。[
11.1.14参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 自己免疫疾患の合併又は慢性的若しくは再発性の自己免疫疾患の既往歴のある患者
9.1.2 間質性肺疾患のある患者又はその既往歴のある患者
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後一定期間は、適切な避妊法を用いるように指導すること。[
9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。本剤を用いた生殖発生毒性試験は実施されていない。ヒトIgG
1は胎盤を通過することが知られており、本剤は母体から胎児へ移行する可能性がある。本剤を投与すると、胎児に対する免疫寛容が妨害され、流産率又は死産率が増加するおそれがある。[
9.4参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤のヒト母乳中への移行に関するデータはないが、ヒトIgG1はヒト乳汁中に排出されることが知られている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.2 膵炎(0.6%)
11.1.3 肝不全(頻度不明)、肝機能障害(12.7%)、肝炎(0.4%)、硬化性胆管炎(0.1%)
肝不全、AST、ALT、γ-GTP、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎があらわれることがある。[
8.3参照]
11.1.4 大腸炎(1.7%)、重度の下痢(2.5%)
持続する下痢、腹痛、血便等の症状が認められた場合には投与を休薬又は中止すること。
11.1.5 甲状腺機能障害(19.6%)
甲状腺機能低下症(16.3%)、甲状腺機能亢進症(5.1%)、甲状腺炎(1.6%)等の甲状腺機能障害があらわれることがある。[
8.4参照]
11.1.6 副腎機能障害
副腎機能不全(1.5%)等の副腎機能障害があらわれることがある。[
8.4参照]
11.1.7 下垂体機能障害
下垂体炎(0.2%)、下垂体機能低下症(頻度不明)等の下垂体機能障害があらわれることがある。[
8.4参照]
11.1.8 1型糖尿病(0.3%)
1型糖尿病(劇症1型糖尿病を含む)があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシスに至るおそれがある。1型糖尿病が疑われた場合には、本剤の投与を中止してインスリン製剤を投与する等の適切な処置を行うこと。[
8.5参照]
11.1.10 神経障害
末梢性ニューロパチー(2.8%)、ギラン・バレー症候群(頻度不明)等の神経障害があらわれることがある。
11.1.11 腎障害(1.7%)
急性腎障害(0.8%)、尿細管間質性腎炎(0.2%)等の腎障害があらわれることがある。[
8.8参照]
11.1.12 筋炎(0.2%)
、横紋筋融解症(頻度不明)[
8.7参照]
11.1.13 infusion reaction(22.9%)
アナフィラキシー、発熱、悪寒、呼吸困難等があらわれることがある。infusion reactionが認められた場合には、本剤の投与を中止する等の適切な処置を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。[
7.2、
8.9参照]
11.1.14 重症筋無力症(0.1%)
重症筋無力症によるクリーゼのため急速に呼吸不全が進行することがあるので、呼吸状態の悪化に十分注意すること。[
8.10参照]
11.1.15 脳炎(頻度不明)
11.1.16 免疫性血小板減少症(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 5%以上 | 1〜5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
| 血液及びリンパ系障害 | | 血小板減少、貧血、好中球減少 | リンパ球減少、好酸球増加 | |
| 心臓障害 | | 駆出率減少、トロポニン増加 | 徐脈、動悸、脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント増加 | |
| 眼障害 | | | 霧視、流涙増加、眼痛、眼そう痒症、眼刺激 | ぶどう膜炎 |
| 胃腸障害 | 下痢(31.4%)、悪心(15.8%)、口内炎、嘔吐 | 口内乾燥、便秘、腹痛、口腔内痛、消化不良、上腹部痛、鼓腸、胃食道逆流性疾患、腹部不快感 | 口腔知覚不全、舌痛、腹部膨満、歯肉出血、肛門の炎症、イレウス、直腸炎、下腹部痛、過敏性腸症候群、腸炎 | |
| 全身障害 | 疲労(24.4%)、悪寒、無力症、発熱、粘膜の炎症 | 末梢性浮腫、インフルエンザ様疾患、胸痛、倦怠感 | 疼痛、末梢腫脹、歩行障害 | |
| 肝胆道系障害 | | 血中Al-P増加 | | |
| 感染症 | | | 毛包炎、カンジダ感染、尿路感染、帯状疱疹、インフルエンザ | |
| 内分泌障害 | | 血中甲状腺刺激ホルモン増加 | 血中甲状腺刺激ホルモン減少、遊離サイロキシン減少 | |
| 代謝及び栄養障害 | 食欲減退、体重減少 | 高リパーゼ血症、高アミラーゼ血症、低リン酸血症、高トリグリセリド血症、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症、高コレステロール血症、高尿酸血症、高血糖、低カリウム血症、脱水 | 血中コルチコトロピン増加、高カリウム血症、体重増加、低カルシウム血症 | |
| 筋骨格系及び結合組織障害 | 関節痛、筋肉痛 | 血中クレアチンホスホキナーゼ増加、背部痛、四肢痛、筋骨格痛 | 筋力低下、筋痙縮、関節炎、滑膜炎、頚部痛、多発性関節炎、鼡径部痛、滑液嚢腫、関節リウマチ、少関節炎、軟骨石灰化症 | |
| 精神・神経系障害 | 頭痛、味覚不全 | 浮動性めまい、味覚障害、錯感覚、嗜眠 | 振戦、知覚過敏、不眠症、感覚鈍麻、会話障害、パーキンソン病、リビドー減退、微細運動機能障害 | |
| 腎及び尿路障害 | | 蛋白尿、血中クレアチニン増加 | 自己免疫性腎炎 | |
| 呼吸器、胸郭及び縦隔障害 | 発声障害、呼吸困難 | 咳嗽、鼻出血、口腔咽頭痛、鼻漏 | | |
| 皮膚及び皮下組織障害 | 手掌・足底発赤知覚不全症候群(16.2%)、そう痒症、発疹、皮膚乾燥 | 斑状丘疹状皮疹、そう痒性皮疹、紅斑、脱毛症、ざ瘡様皮膚炎、過角化、皮膚炎、蕁麻疹 | 水疱、斑状皮疹、紅斑性皮疹、湿疹、寝汗、皮膚剥脱、皮膚病変、多汗症、丘疹性皮疹、乾癬、尋常性白斑、紫斑、斑状出血、毛孔性角化症、扁平苔癬 | |
| 血管障害 | 高血圧(24.7%) | | 低血圧、潮紅 | |
| その他 | | | 挫傷、腫瘍随伴症候群、腫瘍疼痛 | |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 目視による確認を行い、外観上の異常を認めた場合には使用しないこと。
14.1.2 希釈液として日局生理食塩液を使用すること。
14.1.3 本剤の必要量を注射筒で抜き取り、通常250mLの日局生理食塩液に添加して希釈すること。
14.1.4 泡立たないように、静かに転倒混和し、激しく撹拌しないこと。
14.1.5 本剤は保存剤を含まないため、希釈後、速やかに使用すること。希釈後すぐに使用せず保存する場合には、25℃以下で4時間又は2〜8℃で24時間以内に投与を完了すること。希釈液を冷蔵保存した場合には、投与前に室温に戻すこと。また、バイアル中及び希釈後の残液は廃棄すること。
14.1.6 希釈液は凍結させないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 他剤との混注はしないこと。
14.2.2 本剤は、0.2μmのインラインフィルターを通して投与すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
国内外の臨床試験において、本剤に対する抗体の産生が報告されている。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人進行固形癌患者に本剤3〜20mg/kgを1時間静脈内投与した時
注2)の血清中濃度推移を図1に、また、薬物動態パラメータを表1に示す。Cmax又はAUCは投与量にほぼ比例して増加した
1)。
図1 日本人進行固形癌患者にアベルマブを投与量3〜20mg/kgで点滴静注した時注2)の血清中濃度推移(算術平均±標準偏差)
3mg/kg:n=5、10mg/kg:n=6、20mg/kg:n=6
表1 固形癌患者にアベルマブを投与量3〜20mg/kgで1時間点滴静注した時の薬物動態パラメータ
| 投与量 | 3mg/kg (n=5) | 10mg/kg (n=6) | 20mg/kg (n=6) |
| Cmax(μg/mL) | 64.0(22.2) | 179(19.6) | 459(13.6) |
| AUC0-∞(μg・hr/mL) | 6060(32.0)注1) | 21510(45.4)注1) | 53700(24.3) |
| t1/2(hr) | 94.0(31.7) | 122(33.1) | 112(11.6) |
| tmax(hr) | 1.68(0.97-2.07) | 1.53(1.00-3.08) | 1.683(1.00-4.92) |
| CL(mL/hr/kg) | 0.496(32.0)注1) | 0.471(44.1)注1) | 0.373(24.2) |
| Vz(mL/kg) | 61.0(25.3)注1) | 73.8(17.2)注1) | 60.6(21.7) |
16.1.2 反復投与
日本人進行固形癌患者に本剤3〜20mg/kgを2週間に1回反復静脈内投与した時
注2)の投与終了時の血清中濃度推移を図2に、トラフ濃度の推移を図3に示す。反復静脈内投与期間中の血清中濃度の蓄積の程度は軽度であった
1)。
図2 反復投与時の投与終了時の血清中濃度推移(算術平均±標準偏差)
3mg/kg:n=5(Day 1)、n=4(Day 15〜43)、n=3(Day 85)、n=1(Day 127及び169)
10mg/kg:n=6(Day 1〜43)、n=3(Day 85〜169)
20mg/kg:n=6(Day 1及び15)、n=5(Day 29)、n=4(Day 43)、n=2(Day 85)、n=1(Day 127〜169)
図3 反復投与時のトラフ濃度推移(算術平均±標準偏差)
3mg/kg:n=4(Day 15〜43)、n=3(Day 85)、n=1(Day 127及び169)
10mg/kg:n=6(Day 15〜43)、n=3(Day 85〜169)
20mg/kg:n=6(Day 15)、n=5(Day 29)、n=4(Day 43)、n=2(Day 85)、n=1(Day 127及び169)
注2)本剤の承認された用法及び用量は、1回10mg/kg(体重)を2週間間隔で1時間以上かけて点滴静注である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<根治切除不能なメルケル細胞癌>
17.1.1 国際共同第II相試験(EMR100070-003試験)
遠隔転移を有する根治切除不能なメルケル細胞癌患者のうち、パートAでは化学療法歴のある患者88例(日本人患者3例を含む)、パートBでは化学療法歴のない患者29例を対象として、本剤10mg/kgを2週間間隔で点滴静注した。パートAの主要評価項目である奏効率
注1)は31.8%(95.9%信頼区間:21.9〜43.1%、2016年3月3日データカットオフ)であった。なお、事前に設定した閾値奏効率は20%であった。パートBの副次評価項目である奏効率
注1)の中間解析結果
注2)は62.5%(95%信頼区間:35.4〜84.8%、2016年12月30日データカットオフ)であった
2)。
注1)RECISTガイドライン1.1版に基づく独立判定によるCR又はPR。
注2)有効性解析対象集団のうち、本剤投与開始後13週以上観察された16例の結果。
表2 有効性成績(EMR100070-003試験)
| | パートA 例数(%) | パートB 例数(%) |
| 完全奏効(CR) | 8(9.1) | 3(18.8) |
| 部分奏効(PR) | 20(22.7) | 7(43.8) |
| 安定(SD) | 9(10.2) | 2(12.5) |
| 進行(PD) | 32(36.4) | 3(18.8) |
| 評価不能 | 19(21.6) | 1(6.3) |
本剤が投与された117例(日本人3例を含む)中85例(72.6%)に副作用が認められた。主な副作用は、疲労29例(24.8%)、infusion reaction17例(14.5%)、下痢11例(9.4%)、悪心10例(8.5%)、発疹8例(6.8%)、無力症及びそう痒症各7例(6.0%)、斑状丘疹状皮疹及び食欲減退各6例(5.1%)であった。
<根治切除不能又は転移性の腎細胞癌>
17.1.2 国際共同第III相試験(B9991003試験)
化学療法歴のない、根治切除不能又は転移性の淡明細胞型腎細胞癌患者886例(日本人患者67例を含む)を対象として、本剤(10mg/kgを2週間間隔で静脈内投与)とアキシチニブ(開始用量として1回5mgを1日2回経口投与)の併用投与とスニチニブ(50mg1日1回を4週間経口投与し、2週間休薬)の有効性及び安全性を比較することを目的とした、非盲検無作為化国際共同第III相試験を実施した。主要評価項目はPD-L1陽性
注3)患者における無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)であり、副次評価項目としてPD-L1の発現を問わない全患者におけるPFS及びOSを評価した。事前に計画した中間解析(2018年6月20日データカットオフ)において、本剤とアキシチニブの併用投与はPD-L1陽性患者におけるPFS及びPD-L1の発現を問わない全患者におけるPFSのいずれについてもスニチニブに対して統計学的に有意な延長を示した
3)。
注3)腫瘍組織における免疫細胞のPD-L1発現率1%以上
表3 無増悪生存期間及び全生存期間の結果
| | PD-L1陽性患者集団 | 全患者集団 |
本剤+アキシチニブ (n=270) | スニチニブ (n=290) | 本剤+アキシチニブ (n=442) | スニチニブ (n=444) |
| PFS注4) | 中央値(月) (95%信頼区間) | 13.8 (11.1,NE) | 7.2 (5.7,9.7) | 13.8 (11.1,NE) | 8.4 (6.9,11.1) |
ハザード比注5) (95%信頼区間) | 0.61 (0.47,0.79) | 0.69 (0.56,0.84) |
| 片側p値注5) | <0.0001 | 0.0001 |
| OS | 中央値(月) (95%信頼区間) | NE (21.3,NE) | NE (21.0,NE) | NE (NE,NE) | NE (21.0,NE) |
ハザード比注5) (95%信頼区間) | 0.82 (0.53,1.28) | 0.78 (0.55,1.08) |
| 片側p値注5) | 0.1911 | 0.0679 |
図4 PD-L1陽性患者集団におけるPFSのKaplan-Meier曲線
図5 全患者集団におけるPFSのKaplan-Meier曲線
本剤とアキシチニブの併用投与を受けた434例(日本人33例を含む)中414例(95.4%)に副作用が認められた。主な副作用は、下痢235例(54.1%)、高血圧208例(47.9%)、疲労156例(35.9%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群144例(33.2%)、発声障害116例(26.7%)、悪心107例(24.7%)、甲状腺機能低下症105例(24.2%)、口内炎96例(22.1%)、食欲減退86例(19.8%)であった。
<根治切除不能な尿路上皮癌における化学療法後の維持療法>
17.1.3 国際共同第III相試験(B9991001試験)
プラチナ製剤を含む一次化学療法(4〜6サイクル)にて疾患進行が認められていない、根治切除不能な尿路上皮癌患者700例(日本人患者73例を含む)を対象として、本剤(10mg/kgを2週間間隔で静脈内投与)とBest Supportive Care(BSC)の併用療法とBSC単独療法の有効性及び安全性を比較することを目的とした、非盲検無作為化国際共同第III相試験を実施した。主要評価項目はPD-L1の発現を問わない全患者及びPD-L1陽性
注6)患者におけるOSであった。事前に計画した中間解析(2019年10月21日データカットオフ)において、本剤とBSCの併用療法は、全患者及びPD-L1陽性患者のいずれにおいてもBSC単独療法に対して統計学的に有意なOSの延長を示した
4)。
注6)次のいずれかを満たす場合をPD-L1陽性と判定した。
・腫瘍細胞の25%以上に膜染色が認められる。
・腫瘍に浸潤した免疫細胞の割合が1%超かつ免疫細胞の25%以上に染色が認められる。
・腫瘍に浸潤した免疫細胞の割合が1%かつ免疫細胞の100%に染色が認められる。
表4 全生存期間の結果
| | 全患者集団 | PD-L1陽性患者集団 |
本剤+BSC (n=350) | BSC (n=350) | 本剤+BSC (n=189) | BSC (n=169) |
| OS | 中央値(月) (95%信頼区間) | 21.4 (18.9,26.1) | 14.3 (12.9,17.9) | NE (20.3,NE) | 17.1 (13.5,23.7) |
ハザード比注7) (95%信頼区間) | 0.69 (0.56,0.86) | 0.56 (0.40,0.79) |
| 片側p値注7) | 0.0005 | 0.0003 |
図6 全患者集団におけるOSのKaplan-Meier曲線
図7 PD-L1陽性患者集団におけるOSのKaplan-Meier曲線
本剤とBSCの併用療法を受けた344例(日本人36例を含む)中266例(77.3%)に副作用が認められた。主な副作用は、そう痒症47例(13.7%)、甲状腺機能低下症36例(10.5%)、下痢35例(10.2%)、注入に伴う反応35例(10.2%)、無力症34例(9.9%)、疲労33例(9.6%)、発疹25例(7.3%)、悪寒24例(7.0%)、悪心24例(7.0%)、関節痛23例(6.7%)、発熱23例(6.7%)、甲状腺機能亢進症21例(6.1%)、皮膚乾燥18例(5.2%)であった。[
5.4参照]
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。