2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[輸液及びインスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]
2.3 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]
2型糖尿病ただし、シタグリプチンリン酸塩水和物及びイプラグリフロジン
L-プロリンの併用による治療が適切と判断される場合に限る。
5.1 本剤を2型糖尿病治療の第一選択薬として用いないこと。
5.2 本剤は、原則として以下の場合に使用を検討すること。
・既にシタグリプチン50mg 1日1回及びイプラグリフロジン50mg 1日1回を併用し状態が安定している場合
・シタグリプチン50mg 1日1回の単剤治療により効果不十分な場合
・イプラグリフロジン50mg 1日1回の単剤治療により効果不十分な場合
5.3 本剤投与中において、本剤の投与がシタグリプチン及びイプラグリフロジンの各単剤の併用よりも適切であるか慎重に判断すること。
5.4 本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮すること。
5.5 重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者ではイプラグリフロジンの効果が期待できず、また、これらの患者に対するシタグリプチンの最大投与量は25mg 1日1回であることから、本剤を投与しないこと。[
8.3、
9.2.1、
16.6.1参照]
5.6 中等度の腎機能障害のある患者ではイプラグリフロジンの効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断すること。[
8.3、
9.2.2、
16.6.1参照]
通常、成人には1日1回1錠(シタグリプチン/イプラグリフロジンとして50mg/50mg)を朝食前又は朝食後に経口投与する。
中等度の腎機能障害のある患者では、シタグリプチンの用量調節が必要であることから、以下の場合に本剤の使用を検討すること。
・シタグリプチン25mg 1日1回(中等度の腎機能障害のある患者での開始用量)及びイプラグリフロジン50mg 1日1回の併用により効果不十分な場合
・シタグリプチン50mg 1日1回(中等度の腎機能障害のある患者での最大投与量)の単剤治療により効果不十分な場合
・既にシタグリプチン50mg 1日1回及びイプラグリフロジン50mg 1日1回を併用し状態が安定している場合
8.1 本剤の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。[
9.1.1、
11.1.1参照]
8.2 本剤投与中は、血糖値等を定期的に検査するとともに、経過を十分に観察し、常に投与継続の必要性について注意を払うこと。本剤を3ヵ月投与しても効果が不十分な場合、より適切と考えられる治療への変更を考慮すること。
8.3 イプラグリフロジンにより血清クレアチニンの上昇又はeGFRの低下がみられることがあり、また、腎機能障害のある患者ではシタグリプチンの排泄が遅延し血中濃度が上昇するおそれがある。したがって、腎機能を定期的に検査するとともに、腎機能障害患者における治療にあたっては経過を十分に観察すること。[
5.5、
5.6、7.、
9.2.1、
9.2.2、
16.6.1参照]
8.4 シタグリプチンにより急性膵炎があらわれることがあるので、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう患者に指導すること。[
11.1.6参照]
8.5 イプラグリフロジンにより尿路感染及び性器感染を起こし、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症等の重篤な感染症に至ることがある。十分な観察を行うなど尿路感染及び性器感染の発症に注意し、発症した場合には適切な処置を行うとともに、状態に応じて休薬等を考慮すること。尿路感染及び性器感染の症状及びその対処方法について患者に説明すること。[
9.1.3、
11.1.12参照]
8.6 イプラグリフロジンの利尿作用により多尿・頻尿がみられることがある。また、体液量が減少することがあるので、適度な水分補給を行うよう指導し、観察を十分に行うこと。脱水、血圧低下等の異常が認められた場合は、休薬や補液等の適切な処置を行うこと。特に体液量減少を起こしやすい患者(高齢者や利尿薬併用患者等)においては、脱水や糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、脳梗塞を含む血栓・塞栓症等の発現に注意すること。[
9.1.4、
9.8、
10.2、
11.1.13参照]
8.7 イプラグリフロジンの作用機序である尿中グルコース排泄促進作用により、血糖コントロールが良好であっても脂肪酸代謝が亢進し、ケトーシスがあらわれ、ケトアシドーシスに至ることがある。
8.7.1 著しい血糖の上昇を伴わない場合があるため、以下の点に留意すること。
(1)悪心・嘔吐、食欲減退、腹痛、過度な口渇、倦怠感、呼吸困難、意識障害等の症状が認められた場合には、血中又は尿中ケトン体測定を含む検査を実施すること。異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
(2)特に、インスリン分泌能の低下、インスリン製剤の減量や中止、過度な糖質摂取制限、食事摂取不良、感染症、脱水を伴う場合にはケトアシドーシスを発現しやすいので、観察を十分に行うこと。
(3)患者に対し、以下の点を指導すること。
・ケトアシドーシスの症状(悪心・嘔吐、食欲減退、腹痛、過度な口渇、倦怠感、呼吸困難、意識障害等)。
・ケトアシドーシスの症状が認められた場合には直ちに医療機関を受診すること。
・血糖値が高値でなくともケトアシドーシスが発現しうること。
8.7.2 イプラグリフロジンを含むSGLT2阻害剤の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄及びケトアシドーシスが持続した症例が報告されているため、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行うこと。
8.8 イプラグリフロジンは、尿中グルコース排泄促進作用を有する。排尿困難、無尿、乏尿あるいは尿閉の症状を呈する患者においては、その治療を優先するとともに他剤での治療を考慮すること。
8.9 イプラグリフロジンによる体重減少が報告されているため、過度の体重減少に注意すること。
8.10 低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与するときには注意すること。[
11.1.1参照]
8.11 本剤と他の糖尿病用薬の併用における安全性は検討されていない。
8.12 シタグリプチンとGLP-1受容体作動薬はいずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有している。両剤を併用した際の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性は確認されていない。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 低血糖を起こすおそれのある以下の患者又は状態
・脳下垂体機能不全又は副腎機能不全
・栄養不良状態、るいそう、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態
・激しい筋肉運動
・過度のアルコール摂取者
・高齢者
9.1.2 腹部手術の既往又は腸閉塞の既往のある患者
シタグリプチンにより腸閉塞を起こすおそれがある。[
11.1.8参照]
9.1.3 尿路感染、性器感染のある患者
9.1.4 脱水を起こしやすい患者(血糖コントロールが極めて不良の患者、高齢者、利尿薬併用患者等)
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者
投与しないこと。イプラグリフロジンの効果が期待できず、また、これらの患者に対するシタグリプチンの最大投与量は25mg 1日1回である。[
5.5、
8.3、
16.6.1参照]
9.2.2 中等度の腎機能障害のある患者
投与の必要性を慎重に判断すること。イプラグリフロジンの効果が十分に得られない可能性がある。[
5.6、7.、
8.3、
16.6.1参照]
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重度の肝機能障害のある患者
シタグリプチン治療中の患者にイプラグリフロジンを併用する場合は、本剤を使用せず、イプラグリフロジンの低用量から投与を開始するなど慎重に投与すること。重度の肝機能障害のある患者を対象にしたイプラグリフロジンの臨床試験を実施していない。[
16.6.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性にはイプラグリフロジンを含む本剤を投与せず、インスリン製剤等を使用すること。イプラグリフロジンの類薬の動物実験(ラット)でヒトの妊娠中期及び後期にあたる幼若動物への曝露により、腎盂及び尿細管の拡張が報告されている。イプラグリフロジンの動物実験(ラット)で胎児への移行が報告されている
1)。なお、シタグリプチンの動物実験(ラット)で1,000mg/kg/日(シタグリプチンの臨床での最大投与量100mg/日の約100倍の曝露量に相当する)経口投与により、胎児肋骨の欠損、形成不全及び波状肋骨の発現率の軽度増加が認められたとの報告がある。
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)でシタグリプチンの乳汁中への移行が報告されている。また、動物実験(ラット)でイプラグリフロジンの乳汁中への移行及び出生児の体重増加抑制が報告されている
1)2)。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下しているため、腎機能が低下していることが多く、また脱水症状(口渇等)の認知が遅れるなどのおそれがある。[
8.6、
11.1.13、
16.6.3参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 低血糖(頻度不明)
低血糖があらわれることがある。シタグリプチンとインスリン製剤又はスルホニルウレア剤との併用で重篤な低血糖症状があらわれ、意識消失を来す例も報告されている。低血糖症状が認められた場合には、糖質を含む食品を摂取するなど適切な処置を行うこと。ただし、α-グルコシダーゼ阻害剤との併用により低血糖症状が認められた場合にはブドウ糖を投与すること。[
8.1、
8.10、
9.1.1、
10.2、
17.1.1、
17.1.2参照]
11.1.2 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
11.1.3 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、剥脱性皮膚炎(いずれも頻度不明)
11.1.4 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
AST、ALT等の著しい上昇を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.5 急性腎障害(頻度不明)
11.1.6 急性膵炎(頻度不明)
持続的な激しい腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。シタグリプチンの海外の自発報告においては、出血性膵炎又は壊死性膵炎も報告されている。[
8.4参照]
11.1.7 間質性肺炎(頻度不明)
咳嗽、呼吸困難、発熱、肺音の異常(捻髪音)等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施すること。間質性肺炎が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
11.1.8 腸閉塞(頻度不明)
高度の便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[
9.1.2参照]
11.1.9 横紋筋融解症(頻度不明)
筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがある。
11.1.10 血小板減少(頻度不明)
11.1.11 類天疱瘡(頻度不明)
水疱、びらん等があらわれた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.12 腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症(いずれも頻度不明)
腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)があらわれ、敗血症(敗血症性ショックを含む)に至ることがある。[
8.5、
9.1.3参照]
11.1.13 脱水(頻度不明)
口渇、多尿、頻尿、血圧低下等の症状があらわれ脱水が疑われる場合には、休薬や補液等の適切な処置を行うこと。脱水に引き続き脳梗塞を含む血栓・塞栓症等を発現した例が報告されている。[
8.6、
9.1.4、
9.8、
10.2参照]
11.1.14 ケトアシドーシス(頻度不明)
ケトアシドーシス(糖尿病性ケトアシドーシスを含む)があらわれることがある。[
8.7.1、
8.7.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 1〜5%未満 | 頻度不明 |
神経系障害 | | | 浮動性めまい、感覚鈍麻、糖尿病性ニューロパチー、体位性めまい、頭痛 |
血液及びリンパ系障害 | | | 貧血 |
眼障害 | | | 糖尿病網膜症、糖尿病網膜症の悪化、眼瞼浮腫 |
耳及び迷路障害 | | | 回転性めまい |
心臓障害 | | | 上室性期外収縮、心室性期外収縮、動悸 |
呼吸器、胸郭及び縦隔障害 | | | 上気道の炎症、上気道感染 |
感染症 | | | 膀胱炎、外陰部膣カンジダ症、鼻咽頭炎、細菌尿 |
代謝及び栄養障害 | | | ケトーシス |
胃腸障害 | | 便秘 | 腹部不快感(胃不快感を含む)、腹部膨満、腹痛、上腹部痛、悪心、下痢、鼓腸、胃ポリープ、胃炎、萎縮性胃炎、びらん性胃炎、歯周炎、胃食道逆流性疾患、口内炎、嘔吐、齲歯 |
肝胆道系障害 | | | 肝機能異常、脂肪肝 |
腎及び尿路障害 | 頻尿 | | 多尿、尿管結石、腎結石症 |
生殖系及び乳房障害 | | | 陰部そう痒症 |
皮膚及び皮下組織障害 | | | 発疹注)、湿疹注)、冷汗、多汗症、じん麻疹注)、皮膚血管炎、血管浮腫、そう痒症注)、薬疹注) |
筋骨格系及び結合組織障害 | | | 関節痛、筋肉痛、四肢痛、背部痛、RS3PE症候群、筋痙縮 |
全身障害及び投与局所様態 | | 口渇 | 空腹、浮腫、倦怠感、体重減少、顔面浮腫、脱力感 |
血管障害 | | | 高血圧 |
臨床検査 | | | 心電図T波振幅減少、体重増加、赤血球数減少、ヘモグロビン減少、ヘマトクリット減少、白血球数増加、ALT増加、AST増加、γ-GTP増加、血中ビリルビン増加、血中LDH増加、CK増加、血中コレステロール増加、血中尿酸増加、血中尿素増加、血中クレアチニン増加、血中ブドウ糖減少、低比重リポ蛋白増加、血中トリグリセリド増加、尿中蛋白陽性、尿中β2ミクログロブリン増加、尿中β-NアセチルDグルコサミニダーゼ増加、尿潜血陽性、尿中アルブミン/クレアチニン比増加、尿中ケトン体陽性、血中ケトン体増加、尿中α1ミクログロブリン増加、尿量増加 |
イプラグリフロジンの作用機序により、本剤服用中は尿糖陽性、血清1,5-AG(1,5-アンヒドログルシトール)低値を示す。尿糖、血清1,5-AGの検査結果は、血糖コントロールの参考とはならない。
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 雌雄ラットにシタグリプチン50、150及び500mg/kg/日を2年間経口投与したがん原性試験では、500mg/kg/日群の雄ラットにおいて肝腺腫及び肝がんの発現率が増加し、同群の雌ラットにおいて肝がんの発現率が増加したとの報告がある。このラットの投与量は、臨床でのシタグリプチンの最大投与量100mg/日の約58倍の曝露量に相当する。雌雄マウスにシタグリプチン50、125、250及び500mg/kg/日を2年間経口投与したがん原性試験では、シタグリプチン500mg/kg/日(臨床での最大投与量100mg/日の約68倍の曝露量に相当する)までの用量で、いずれの臓器においても腫瘍の発現率は増加しなかった。
15.2.2 雌雄ラットにイプラグリフロジン12.5、40、125、250mg/kg/日(250mg/kg/日群は雌のみで実施)を104週間反復経口投与したがん原性試験において、40mg/kg/日以上の雄及び125mg/kg/日以上の雌で副腎髄質の褐色細胞腫の発生頻度増加が認められた。ラットにイプラグリフロジン40mg/kg/日(雄)又は125mg/kg/日(雌)を反復経口投与したときの曝露量(AUC
0-24hr)は、イプラグリフロジンの最大臨床推奨用量(1日1回100mg)の約10倍又は約60倍であった
3)。
16.1 血中濃度
16.1.1 生物学的同等性試験
健康成人男性(40例)に本剤1錠又は同用量のシタグリプチン(50mg 1錠)及びイプラグリフロジン(50mg 1錠)の単剤併用を無作為化クロスオーバー法により空腹時単回経口投与した。本剤又は併用でシタグリプチン50mg及びイプラグリフロジン50mg投与時のシタグリプチン及びイプラグリフロジンの血漿中薬物濃度推移及び薬物動態パラメータは、それぞれ図及び表1のとおりであった。本剤又は併用で同用量のシタグリプチン及びイプラグリフロジンの単剤を投与したとき、生物学的同等性が認められた。
図 本剤又は併用でシタグリプチン50mg及びイプラグリフロジン50mgを単回経口投与した際のシタグリプチン(上図)及びイプラグリフロジン(下図)の血漿中薬物濃度推移
表1 本剤又は併用でシタグリプチン50mg及びイプラグリフロジン50mgを単回経口投与した際のシタグリプチン及びイプラグリフロジンの薬物動態パラメータ
| シタグリプチン | イプラグリフロジン |
本剤 |
AUC0-∞ | 3.88±0.50μM・hr | 4360±820ng・hr/mL |
Cmax | 382±103nM | 723±188ng/mL |
Tmax | 2.00(1.00,6.00)hr | 1.75(0.50,4.00)hr |
t1/2 | 10.1±1.41hr | 13.1±3.22hr |
単剤併用 |
AUC0-∞ | 3.93±0.56μM・hr | 4400±866ng・hr/mL |
Cmax | 393±112nM | 709±195ng/mL |
Tmax | 3.00(1.00,6.00)hr | 2.00(0.50,4.00)hr |
t1/2 | 10.4±1.41hr | 13.3±2.96hr |
16.2 吸収
16.2.1 バイオアベイラビリティ
シタグリプチン
健康成人男女(12例)を対象に、シタグリプチン100mg単剤の空腹時2時間持続静脈内投与と空腹時単回経口投与を比較したときの絶対バイオアベイラビリティは約87%であった
4)(外国人データ)。
イプラグリフロジン
健康成人男女(14例)を対象に、イプラグリフロジン25mg単剤の空腹時1時間持続静脈内投与と100mg単剤の空腹時単回経口投与を比較したときの絶対バイオアベイラビリティは90.2%であった
5)(外国人データ)。
16.2.2 食事の影響
健康成人男性(12例)に本剤を空腹時又は高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、シタグリプチンの空腹時投与に対する食後投与のAUC0-t及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は0.98(0.95,1.02)及び1.04(0.88,1.23)、イプラグリフロジンの空腹時投与に対する食後投与のAUC0-t及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は1.02(0.97,1.08)及び0.96(0.70,1.31)であった。
16.3 分布
シタグリプチン
シタグリプチンの血漿蛋白結合率は38%であった(in vitro試験)。
イプラグリフロジン
イプラグリフロジンの血漿蛋白結合率は94.6〜96.5%であった。主要な結合蛋白質はアルブミンであった
6)7)(
in vitro試験)。
16.4 代謝
シタグリプチン
16.4.1 シタグリプチンは、代謝を受けにくく、主に未変化体として尿中に排泄される。健康成人男性(6例)に
14C-シタグリプチンの経口投与後、放射能の約16%がシタグリプチンの代謝物として排泄された
8)。6種類の代謝物が検出されたが、微量であり
8)、シタグリプチンの血漿中ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害活性に影響しないと考えられる(外国人データ)。
16.4.2 シタグリプチンの消失において代謝の関与は少ない。シタグリプチンの主代謝酵素はCYP3A4であり、CYP2C8も寄与することが示された(in vitro試験)。また、シタグリプチンはCYP3A4、2C8、2C9、2D6、1A2、2C19及び2B6に対する阻害作用を示さず、CYP3A4に対する誘導作用を示さなかった(in vitro試験)。
イプラグリフロジン
16.4.3 イプラグリフロジンは主にグルクロン酸抱合代謝を受け、ヒト血漿中には4種のグルクロン酸抱合代謝物が認められた
9)。また、1種の硫酸抱合代謝物が少量認められた。
16.4.4 イプラグリフロジンの主代謝酵素はUGT2B7であり、UGT2B4、1A8及び1A9も寄与することが示された
10)(
in vitro試験)。イプラグリフロジンの各種CYP及びUGT分子種に対する阻害作用は弱く、CYP1A2及びCYP3A4に対する誘導作用もほとんど示さなかった
11)12)13)(
in vitro試験)。[
10.参照]
16.5 排泄
シタグリプチン
16.5.1 健康成人男性にシタグリプチン25〜100mg単剤(各6例)を空腹時単回経口投与したとき、シタグリプチンの79〜88%(推測値)は尿中に未変化体として排泄され、腎クリアランスは397〜464mL/minであった
14)。[
10.参照]
16.5.2 健康成人男性(6例)に
14C-シタグリプチンを経口投与後、1週間以内に投与放射能の約87%が尿中に、13%が糞中に排泄された
8)(外国人データ)。[
10.参照]
16.5.3 シタグリプチンの消失は主に腎排泄によるもので、能動的な尿細管分泌が関与する。シタグリプチンはP-糖蛋白質及び有機アニオントランスポーター(hOAT3)の基質である
15)。P-糖蛋白質を介するシタグリプチンの輸送はシクロスポリンにより阻害され、hOAT3を介するシタグリプチンの取込みは、プロベネシド、イブプロフェン、フロセミド、フェノフィブリック酸、キナプリル、インダパミド及びシメチジンで阻害された(
in vitro試験)。また、シタグリプチンは500μMまでの濃度では、P-糖蛋白質を介するジゴキシンの輸送を阻害しなかったが、hOAT3を介するシメチジンの取込みには弱い阻害作用を示した(IC
50:160μM)(
in vitro試験)。[
10.参照]
イプラグリフロジン
16.5.4 健康成人男性にイプラグリフロジン1〜300mg単剤(各6例)を空腹時単回経口投与したとき、未変化体の尿中排泄率は約1%であった
16)。
16.5.5 健康成人男性(6例)に
14C-イプラグリフロジン100mgを空腹時単回経口投与したとき、投与後48時間までに投与放射能の84.4%が排泄された。投与後144時間までに投与放射能の68%が尿中に、33%が糞中に排泄された。呼気中には放射能は検出されなかった
17)(外国人データ)。
16.5.6 イプラグリフロジンはP-糖蛋白質の基質であった
18)(
in vitro試験)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
シタグリプチン
軽度(クレアチニンクリアランス[CrCL]:50〜80mL/min/1.73m
2、6例)、中等度(CrCL:30〜50mL/min/1.73m
2、6例)及び重度(CrCL:<30mL/min/1.73m
2、6例)の腎機能障害患者、血液透析が必要な末期腎不全患者(6例)にシタグリプチン50mg単剤を空腹時単回経口投与したときのAUC
0-∞の幾何平均値の比(90%信頼区間)は、正常腎機能を有する健康成人(CrCL:>80mL/min/1.73m
2、82例)に対して、それぞれ1.61(1.43,1.81)、2.26(2.02,2.53)、3.77(3.37,4.22)、4.50(4.03,5.03)であり、腎機能障害の程度に応じて上昇した。Cmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、正常腎機能を有する健康成人(82例)に対して、それぞれ1.35(1.15,1.58)、1.43(1.23,1.67)、1.75(1.51,2.03)、1.42(1.22,1.65)であった。血液透析が必要な末期腎不全患者では、投与後4時間から3〜4時間の血液透析により、透析液中に投与量の13.5%が除去された
19)(外国人データ)。なお、腎機能障害患者を対象とした反復投与による薬物動態試験は実施されていない。[7.、
8.3、
9.2.1、
9.2.2、
13.1参照]
イプラグリフロジン
軽度(eGFR:60〜90mL/min/1.73m
2、9例)及び中等度(eGFR:30〜60mL/min/1.73m
2、8例)の腎機能障害を有する2型糖尿病患者にイプラグリフロジン50mg単剤を食前単回経口投与したときのAUC
0-∞の幾何平均値の比(90%信頼区間)は、正常腎機能患者(8例)に対して、それぞれ0.94(0.69,1.26)及び1.21(0.89,1.65)であった。Cmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、正常腎機能患者(8例)に対して、それぞれ1.12(0.83,1.52)及び1.17(0.85,1.60)であった。1日あたりの尿中グルコース排泄量のベースラインからの変化量は、正常腎機能患者で約71g、軽度腎機能障害患者で約61g、中等度腎機能障害患者で約38gであり、腎機能障害患者で低かった
20)。
また、イプラグリフロジン100mg単剤を2型糖尿病を有する重度腎機能障害患者(8例)に空腹時単回経口投与したときのAUC
0-∞及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、正常腎機能患者(8例)に対して、それぞれ1.47(1.12,1.92)及び1.05(0.85,1.31)であった。20時間あたりの尿中グルコース排泄量は、正常腎機能患者で約49g(ベースライン値:約1g)であったのに対し、重度腎機能障害患者では約12g(ベースライン値:約2g)であった
20)(外国人データ)。[7.、
8.3、
9.2.1、
9.2.2参照]
16.6.2 肝機能障害患者
シタグリプチン
中等度肝機能障害患者(Child-Pugh分類B、スコア7〜9、10例)にシタグリプチン100mg単剤を空腹時単回経口投与したとき、健康成人(10例)に対するAUC
0-∞及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、それぞれ1.21(1.01,1.46)及び1.13(0.91,1.42)であった
21)(外国人データ)。重度肝機能障害患者(Child-Pugh分類C、スコア9超)での臨床経験はない。[
9.3.1参照]
イプラグリフロジン
中等度肝機能障害患者(Child-Pugh分類B、スコア7〜9、8例)にイプラグリフロジン100mg単剤を空腹時単回経口投与したとき、健康成人(8例)に対するAUC
0-∞及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、それぞれ1.25(0.94,1.66)及び1.27(0.93,1.73)であった
22)(外国人データ)。重度肝機能障害患者(Child-Pugh分類C、スコア9超)での臨床経験はない。[
9.3.1参照]
16.6.3 高齢者
シタグリプチン
健康な高齢者(65〜80歳、16例)及び非高齢者(18〜45歳、12例)男女にシタグリプチン50mg単剤を空腹時単回経口投与したとき、非高齢者に対する高齢者のAUC
0-∞及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、それぞれ1.31(1.19,1.43)及び1.23(1.04,1.46)であった。腎クリアランスは高齢者では非高齢者に比べて31%低下していた(外国人データ)。[
9.8参照]
イプラグリフロジン
健康な高齢者(65歳以上、25例)及び非高齢者(18〜45歳、24例)男女にイプラグリフロジン100mg単剤を食前反復経口投与したとき、非高齢男性に対する高齢男性のAUC
0-24hr及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、それぞれ1.21(1.06,1.38)及び0.99(0.84,1.16)であった。一方、非高齢女性に対する高齢女性のAUC
0-24hr及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、それぞれ1.45(1.27,1.67)及び1.25(1.06,1.49)であった
20)(外国人データ)。[
9.8参照]
16.7 薬物相互作用
シタグリプチン
16.7.1 シタグリプチンが及ぼす影響
シタグリプチンはジゴキシンの血漿中濃度をわずかに増加させた(外国人データ)。[
10.2参照]
表2 シタグリプチンが併用薬の薬物動態に及ぼす影響
併用薬 | 併用薬の用量及び投与期間 | シタグリプチンの用量及び投与期間 | 併用薬の薬物動態パラメータ 幾何平均値の比(90%信頼区間) 併用/単独 |
例数 | AUC0-24hr | Cmax |
ジゴキシン | 0.25mg 1日1回10日間 | 100mg 1日1回10日間 | 12 | 1.11(1.01,1.21) | 1.18(1.05,1.33) |
シタグリプチンは以下の薬物の薬物動態に明らかな影響を及ぼさなかった(外国人データ)。
16.7.2 シタグリプチンが受ける影響
以下の薬物はシタグリプチンの薬物動態に明らかな影響を及ぼさなかった(外国人データ)。
イプラグリフロジン
16.7.3 イプラグリフロジンが及ぼす影響
イプラグリフロジンは以下の薬物の薬物動態に明らかな影響を及ぼさなかった(外国人データ)。
16.7.4 イプラグリフロジンが受ける影響
以下の薬物はイプラグリフロジンの薬物動態に明らかな影響を及ぼさなかった(外国人データ)。
注)日本人データ
(注)本剤の承認された1回用量はシタグリプチン/イプラグリフロジン50mg/50mgである。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相試験(二重盲検比較試験)
(1)イプラグリフロジンで効果不十分な2型糖尿病患者を対象としたシタグリプチン追加投与試験
食事・運動療法に加えイプラグリフロジン50mg 1日1回単剤治療で十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者を対象に、シタグリプチン50mg又はプラセボを経口で1日1回24週間追加投与(朝食前又は朝食後)した
32)。結果は表1のとおりであった。
副作用発現割合は、シタグリプチン追加投与群で1.4%(1/70例)プラセボ追加投与群で7.0%(5/71例)であった。シタグリプチン追加投与群で発現した副作用は湿疹1.4%(1/70例)、プラセボ追加投与群で発現した副作用は口渇、膀胱炎、尿路感染、外陰部膣カンジダ症、尿中ケトン体陽性、低血糖及び頻尿が各1.4%(1/71例)であった。[
11.1.1参照]
表1 イプラグリフロジンで効果不十分な2型糖尿病患者を対象としたシタグリプチン追加投与試験(24週時)の結果
| 例数 | 投与前(標準偏差) | 投与前からの変化量(95%信頼区間) | 群間差(95%信頼区間) |
HbA1c値(%) |
プラセボ追加投与 | 71 | 8.1(0.8) | 0.1(−0.0,0.3) | − |
シタグリプチン追加投与 | 70 | 8.0(0.8) | −0.7(−0.8,−0.5) | −0.8(−1.0,−0.6)† |
空腹時血糖値(mg/dL) |
プラセボ追加投与 | 71 | 151.2(27.0) | −0.6(−5.0,3.8) | − |
シタグリプチン追加投与 | 70 | 148.8(25.4) | −11.8(−16.3,−7.4) | −11.2(−17.2,−5.2)† |
食後2時間血糖値(mg/dL) |
プラセボ追加投与 | 71 | 215.3(47.0) | 3.4(−5.5,12.3) | − |
シタグリプチン追加投与 | 70 | 211.9(49.8) | −39.0(−48.1,−29.9) | −42.5(−53.7,−31.2)† |
(2)シタグリプチンで効果不十分な2型糖尿病患者を対象としたイプラグリフロジン追加投与試験
食事・運動療法に加えシタグリプチン50mg 1日1回単剤治療で十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者を対象に、イプラグリフロジン50mg又はプラセボを経口で1日1回24週間追加投与(朝食前又は朝食後)した
33)。結果は表2のとおりであった。
副作用発現割合は、イプラグリフロジン追加投与群で11.0%(8/73例)、プラセボ追加投与群で5.7%(4/70例)であった。イプラグリフロジン追加投与群で発現した副作用は、便秘及び頻尿が2.7%(2/73例)、血圧低下、体重減少、脱水、筋痙縮、頚動脈狭窄、脳梗塞、頭痛及び陰部そう痒症が各1.4%(1/73例)、プラセボ追加投与群で発現した副作用は、便秘2.9%(2/70例)、筋痙縮及び湿疹が各1.4%(1/70例)であった。[
11.1.1参照]
表2 シタグリプチンで効果不十分な2型糖尿病患者を対象としたイプラグリフロジン追加投与試験(24週時)の結果
| 例数 | 投与前(標準偏差) | 投与前からの変化量(95%信頼区間) | 群間差(95%信頼区間) |
HbA1c値(%) |
プラセボ追加投与 | 70 | 8.0(0.6) | −0.1(−0.2,0.1) | − |
イプラグリフロジン追加投与 | 73 | 8.1(0.8) | −0.8(−1.0,−0.7) | −0.8(−1.0,−0.6)† |
空腹時血糖値(mg/dL) |
プラセボ追加投与 | 70 | 163.0(26.2) | −2.1(−7.6,3.3) | − |
イプラグリフロジン追加投与 | 73 | 158.0(33.2) | −30.3(−35.5,−25.0) | −28.1(−34.8,−21.5)† |
食後2時間血糖値(mg/dL) |
プラセボ追加投与 | 70 | 231.5(48.9) | −3.8(−13.3,5.7) | − |
イプラグリフロジン追加投与 | 73 | 225.3(59.9) | −52.4(−61.5,−43.2) | −48.5(−59.6,−37.5)† |
17.1.2 国内第III相試験(長期併用投与試験)
食事・運動療法に加えシタグリプチン50mg 1日1回単剤治療で十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者(77例)を対象に、イプラグリフロジン50mgを経口で1日1回52週間追加投与(朝食前又は朝食後)した
33)。投与52週時の投与前からのHbA1c値変化量の平均値(95%信頼区間)は−0.8%(−1.0,−0.6)であった。
副作用発現割合は、24.7%(19/77例)であった。主な副作用は頻尿14.3%(11/77例)、口渇7.8%(6/77例)及び便秘5.2%(4/77例)であった。低血糖の副作用は認められなかった。[
11.1.1参照]