2.1 本剤の成分又はウマ血液を原料とする製剤(乾燥まむしウマ抗毒素等)に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 下記の製剤による治療を受けている患者[
10.1参照]
肝臓外科、肺外科、心臓血管外科、産婦人科及び泌尿器外科領域における手術時の組織の接着・閉鎖
(ただし、縫合あるいは接合した組織から血液、体液又は体内ガスの漏出をきたし、他に適切な処置法のない場合に限る。)
接着・閉鎖部位の血液、体液をできるだけ取り除き、本剤を適切な大きさにし、乾燥状態のままあるいは生理食塩液でわずかに濡らし、その活性成分固着面を接着・閉鎖部位に貼付し、通常3〜5分間圧迫する。
8.1 本剤の使用にあたっては、疾病の治療における本剤の必要性とともに、本剤の製造に際して感染症伝播を防止するための安全対策が講じられているが、血液を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを、患者に対して説明し、理解を得るよう努めること。
8.2 本剤の原材料となる血漿については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体及び抗HIV-2抗体が陰性であることを確認している。さらに、プールした試験血漿については、HIV、HBV、HCV及びHAVについて核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。また、ヒトパルボウイルスB19についてもNATによるスクリーニングを実施し、適合した血漿を用いている。
その後の製造工程である60℃、20時間液状加熱処理(フィブリノゲン)及び60℃、10時間液状加熱処理(トロンビン)は、HIVをはじめとする各種ウイルスに対し、不活化・除去作用を有することが確認されているが、使用に際しては、次の点に十分に注意すること。
8.2.1 ウイルス不活化処理を行っているが、肝炎ウイルス等の感染の可能性を完全に否定することはできないので、観察を十分に行うこと。
8.2.2 血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の使用によりその感染の可能性を否定できないので、使用後の経過を十分に観察すること。[
9.1.2、
9.1.3、
9.5参照]
8.3 現在までに本剤の使用により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、使用の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上使用すること。
8.4 本剤はヒト以外のウマ由来の蛋白質(ウマコラーゲン)を含有するため、本剤使用後にショック、アナフィラキシー等が発現するおそれがある。特に、以下の場合には十分に注意すること。[
11.1.1参照]
8.4.1 本剤を使用したことのある患者に、本剤を再使用する場合
8.4.2 本剤に含まれるヒト以外のウマ由来の蛋白質と同じ成分(ウマコラーゲン)を含む他の製剤(タココンブ等)を使用したことのある患者に、本剤を使用する場合
8.5 感染の可能性が高い部位に使用する際、本剤使用部位で膿瘍形成が助長される場合がある。[
11.1.2参照]
8.6 使用された本剤に対し周辺臓器の癒着が起こる場合があるので、症状が認められた場合には適切な処置を行うこと。
なお、腸管との癒着が起こった場合、イレウスを引き起こすことがある。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 汎発性血管内凝固症候群(DIC)が考えられる病態を有する患者
本剤の成分が、血管内に流入した場合、DIC状態を悪化させるおそれがある。
9.1.2 溶血性・失血性貧血の患者
ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には、発熱と急激な貧血を伴う重篤な全身症状を起こすことがある。[
8.2.2参照]
9.1.3 免疫不全症患者・免疫抑制状態の患者
ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には、持続性の貧血を起こすことがある。[
8.2.2参照]
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝障害が考えられる病態を有する患者
本剤の成分が、血管内に流入した場合、血栓を形成するおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること。本剤の使用によりヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には胎児への障害(流産、胎児水腫、胎児死亡)が起こる可能性を否定できない。[
8.2.2参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
小児等に対する有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック(頻度不明)
血圧低下、呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫、じん麻疹等の症状が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。[
8.4参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 1%以上又は頻度不明 | 0.5〜1%未満 | 0.5%未満 |
消化器 | | | 処置後胆汁漏出 |
呼吸器 | | 気胸、胸水 | 肺障害 |
過敏症 | | 発疹 | |
その他 | 発熱、術後出血、肉芽腫 | | 疼痛、CRP上昇 |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤は、無菌、乾燥状態であるのでアルミ包装が破損している場合は使用しないこと。
14.1.2 使用直前に、開封して使用すること。
14.1.3 本剤の裁断に際しては、はさみを使用すること。
14.1.4 本剤は血液のついた手術器具や手袋に付着する場合があるので、手術器具や手袋の血液を取り除くこと。
14.2 薬剤投与時の注意
<製剤共通>
14.2.1 局所適用に限る。
14.2.2 本剤が誤って血管内に入ると生命を脅かす血栓塞栓性合併症が発現するおそれがあるため、本剤が血管内に入らないよう注意すること。
14.2.3 活性成分固着面(黄色面)を創面に貼付すること。
14.2.4 本剤をタンポン(ガーゼ)等で圧迫後は、慎重にタンポン(ガーゼ)等を取り除くこと。
14.2.5 本剤を体外循環終了時等の噴出性あるいは流出性出血の激しい部位の接着・閉鎖に使用する場合は、適切な方法で血流を遮断した上で使用すること。
14.2.6 創傷部位に対して適正面積を使用すること。
14.2.7 創傷部位においてタンポンや栓の代わりとして使用しないこと。
<フラットタイプ>
14.2.8 本剤を生理食塩液で濡らしてから使用する場合は、濡らし過ぎると効果が低下するので、活性成分固着面(黄色面)をわずかに濡らし、直ちに使用すること。
<ロールタイプ>
14.2.9 開封後、生理食塩液で濡らさずに、内径10mm以上のポート又はトロカールを通して使用すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
本剤はウマコラーゲンを含有するため、本剤を使用した患者に、これらを含む他の製剤を使用した場合、過敏症を発現する可能性があるので、本剤を使用した旨、患者に情報提供することが望ましい。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相試験
国内の肝切除例を対象とした二重盲検比較試験において、治験薬貼付5分後に止血を達成した被験者の割合は本剤群100%(54/54例)、タココンブを適用した対照群100%(54/54例)であり、本剤のタココンブに対する非劣性が示された
2)。
本剤群の副作用は10例(18.2%)に認められ、主な副作用は発熱6例(10.9%)、発疹3例(5.5%)、処置後胆汁漏出2例(3.6%)であった。また、対照群の副作用は心室細動1例(1.8%)であった。
17.1.2 海外第III相試験(肝臓外科領域)
本剤群(59例)の術中止血時間はアルゴンビーマーを適用した対照群(62例)に比べ有意に短かった(p=0.0007、Log-rank検定)
3)。
本剤群の主な副作用は、術後出血1例(1.7%)であった。
17.1.3 海外第III相試験(肝臓外科領域)
本剤群(60例)の術中止血時間はアルゴンビーマーを適用した対照群(59例)に比べ有意に短かった(p=0.0018、Log-rank検定)
4)。
本剤群の主な副作用は、術後膿瘍及び肝膿瘍各1例(1.7%)であった。
17.1.4 海外第III相試験(心臓血管外科領域)
心血管手術例を対象とした非盲検比較試験において、3分後の止血を達成した被験者の割合は本剤群74.6%(44/59例)、凝固因子を含まない止血シートを適用した対照群33.3%(20/60例)であり、有意差が認められた(p<0.0001、施設で調整したCochran-Mantel-Haenszel検定)
5)。
本剤群の副作用は、発熱1例(2%)であった。
17.1.5 海外第III相試験(泌尿器外科領域)
表在性腎腫瘍摘除例を対象とした非盲検比較試験において、本剤群(92例)の術中止血時間は縫合を適用した対照群(93例)に比べ有意に短かった(p<0.0001、Log-rank検定)
6)。
本剤群の主な副作用は、発熱9例(9.8%)であった。
17.1.6 海外第III相試験(肺外科領域)
肺葉切除例を対象とした非盲検比較試験において、本剤群(148例)の術後気漏の持続時間は縫合等を適用した対照群(151例)に比べ有意に短かった(p=0.030、施設を層別因子とした層別Log-rank検定)
7)。
本剤群の主な副作用は、発熱及び胸水各3例(2%)、肺障害2例(1%)であった。
なお、臨床試験で使用された本剤の平均枚数(レギュラーサイズ換算、以下同じ)は、国内臨床試験で1.5枚、海外各臨床試験で1.2〜2.6枚であり、すべての臨床試験における最大枚数は、国内臨床試験で2枚、海外臨床試験で7枚であった。
18.1 作用機序
本剤は血液、リンパ液などの体液や生理食塩液などに接するとコーティングの成分が溶解して一部が創面に拡散し、フィブリノゲンとトロンビンが反応して、生理的血液凝固過程の最終段階が開始される。フィブリノゲンはフィブリン・モノマーに変換され、重合して安定なフィブリン塊となり、組織を接着・閉鎖する。
18.2 止血効果
18.2.1 高脾内圧のブタ脾臓損傷モデル、凝固能低下状態におけるブタの心臓外科手術モデルにおいて、止血効果が認められた
8)。
18.2.2 線溶亢進状態におけるウサギの大脳皮質損傷モデルにおいて、止血効果が認められた
9)。
18.2.3 イヌ脾臓/肝臓複合損傷モデルにおいて、本剤とアプロチニンを含む製剤(TachoComb H、本邦未承認)との間に止血効果の大きな差は認められなかった
10)。
18.3 接着力
ブタ胸膜を用いた
ex vivoの人工肺モデルにおいて、本剤とアプロチニンを含む製剤(タココンブ、TachoComb H)は、同程度の接着力を示した
11)。
本剤は特定生物由来製品に該当することから、本剤を使用した場合は、医薬品名(タコシール組織接着用シート)、製造番号(ロット番号)、使用年月日、患者の氏名・住所等を記録し、少なくとも20年間保存すること。
<フラットタイプ>
タコシール組織接着用シート9.5cm×4.8cm 1枚(レギュラーサイズ)[乾燥剤入り]
タコシール組織接着用シート4.8cm×4.8cm 1枚(ハーフサイズ)[乾燥剤入り]
タコシール組織接着用シート3.0cm×2.5cm 1枚(スモールサイズ)[乾燥剤入り]
<ロールタイプ>
タコシール組織接着用シート4.8cm×4.8cm 1枚(ハーフサイズ)[乾燥剤入り]
献血又は非献血の区別の考え方
献血又は非献血の区別は製剤の安全性の優劣を示すものではありません。この表示区別は、下記の手順に従って決められています。