5.1 無症候性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症に関する治療開始については、CD4リンパ球数及び血漿中HIV RNA量が指標とされている。よって、本剤の使用にあたっては、患者のCD4リンパ球数及び血漿中HIV RNA量を確認するとともに、最新のガイドライン
1)2)3)を確認すること。
5.2 本剤はラミブジン及びアバカビルの固定用量を含有する配合剤であるので、ラミブジン又はアバカビルの用量調節が必要な次の患者には個別のラミブジン製剤(エピビル錠)又はアバカビル製剤(ザイアジェン錠)を用いること。
・体重40kg未満の患者
・アバカビル又はラミブジンのいずれかによる副作用が疑われ、本剤の投与を中止した患者
5.3 本剤のHIV-2感染症患者に対する有効性・安全性は確認されていない。
通常、成人には1回1錠(ラミブジンとして300mg及びアバカビルとして600mg)を1日1回経口投与する。
7.1 本剤と他の抗HIV薬との併用療法において、因果関係が特定されない重篤な副作用が発現し、治療の継続が困難であると判断された場合には、本剤若しくは併用している他の抗HIV薬の一部を減量又は休薬するのではなく、原則として本剤及び併用している他の抗HIV薬の投与をすべて一旦中止すること。
7.2 本剤はラミブジン及びアバカビルの固定用量を含有する配合剤であるので、本剤に加えてラミブジン含有製剤又はアバカビル含有製剤を併用投与しないこと。
7.3 HIVは感染初期から多種多様な変異株を生じ、薬剤耐性を発現しやすいことが知られているので、本剤は他の抗HIV薬と併用すること。[
18.3.1、
18.3.2参照]
7.4 ラミブジンの薬剤耐性プロファイル等のウイルス学的特性はエムトリシタビンと類似しているので、本剤とエムトリシタビンを含む製剤を併用しないこと。また、エムトリシタビンを含む抗HIV療法においてウイルス学的効果が得られず、HIV-1逆転写酵素遺伝子のM184V/I変異が認められた場合、エムトリシタビンを本剤に変更するのみで効果の改善は期待できない。[
18.3.1参照]
8.1 本剤はHIV感染症治療の経験を有する医師が投与を行うこと。
8.2 本剤の再投与を考慮する際は、次のことに注意すること。[
1.1.1-
1.1.5、
2.1、
8.3、
11.1.1、
15.1.1参照]
・アバカビルによる過敏症に関連する症状は、再投与により初回より重篤な再発が認められる。重篤な血圧低下をきたし死に至る可能性があるので、アバカビルによる過敏症が疑われた患者には、決して再投与しないこと。
・アバカビル含有製剤を中止した理由を再度検討し、アバカビルと過敏症との関連性が否定できない場合は再投与しないこと。
・投与中止前に過敏症の主な症状(皮疹、発熱、胃腸症状等)の1つのみが発現していた患者には、本剤の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ、必要に応じて入院のもとで投与を行うこと。
・過敏症の症状又は徴候が認められていなかった患者に対しても、直ちに医療施設に連絡できることを確認した上で投与を行うこと。
8.3 本剤の使用に際しては、国内外のガイドライン等の最新の情報を参考に、患者又は患者に代わる適切な者に、次の事項についてよく説明し同意を得た後、使用すること。
・本剤はHIV感染症の根治療法薬ではないことから、日和見感染症を含むHIV感染症の進展に伴う疾病を発症し続ける可能性があるので、本剤投与開始後の身体状況の変化については、すべて担当医に報告すること。
・アバカビルの投与後過敏症が発現し、まれに致死的となることが報告されている。過敏症を注意するカードに記載されている徴候又は症状である発熱、皮疹、疲労感、倦怠感、胃腸症状(嘔気、嘔吐、下痢、腹痛等)及び呼吸器症状(呼吸困難、咽頭痛、咳等)等が発現した場合は、直ちに担当医に報告し、本剤の服用を中止すべきか否か指示を受けること。また、過敏症を注意するカードは常に携帯すること。[
1.1.1-
1.1.5、
2.1、
8.2、
11.1.1、
15.1.1参照]
・アバカビル含有製剤の再投与により重症又は致死的な過敏症が数時間以内に発現する可能性がある。したがって、本剤の服用を中断した後に再びアバカビル含有製剤を服用する際には、必ず担当医に相談すること。担当医又は医療施設を変わる場合には本剤の服用歴がある旨を新しい担当医に伝えること。[
1.1.1-
1.1.5、
2.1、
8.2、
11.1.1、
15.1.1参照]
・本剤はラミブジン及びアバカビルの固定用量を含有する配合剤であるので、本剤に加えてラミブジン含有製剤又はアバカビル含有製剤をさらに追加して服用しないこと。
8.4 本剤を含む抗HIV薬の多剤併用療法を行った患者で、免疫再構築症候群が報告されている。投与開始後、免疫機能が回復し、症候性のみならず無症候性日和見感染(マイコバクテリウムアビウムコンプレックス、サイトメガロウイルス、ニューモシスチス等によるもの)等に対する炎症反応が発現することがある。また、免疫機能の回復に伴い自己免疫疾患(甲状腺機能亢進症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、ブドウ膜炎等)が発現するとの報告があるので、これらの症状を評価し、必要時には適切な治療を考慮すること。
8.5 膵炎が発症する可能性があるので、血清アミラーゼ、血清リパーゼ、トリグリセリド等の生化学的検査を定期的に行うこと。[
9.1.1、
11.1.3参照]
8.6 重篤な血液障害、乳酸アシドーシス、脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)、横紋筋融解症、ニューロパシー、錯乱、痙攣、心不全、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと。[
9.2.2、
11.1.2、
11.1.4-
11.1.8参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 膵炎を発症する可能性のある患者(膵炎の既往歴のある患者、膵炎を発症させることが知られている薬剤との併用療法を受けている患者)
膵炎を再発又は発症する可能性がある。本剤の適用を考える場合には、他に十分な効果の認められる治療法がない場合にのみ十分注意して行うこと。[
8.5、
11.1.3参照]
9.1.2 B型肝炎ウイルス感染を合併している患者
本剤の投与を中断する場合には十分注意すること。B型慢性肝炎を合併している患者では、本剤の投与中止により、B型慢性肝炎が再燃するおそれがある。特に非代償性の場合、重症化するおそれがある。[
1.2参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 腎機能障害(Ccrが30mL/min未満)を有する患者
9.2.2 腎機能障害(Ccrが30〜49mL/min)を有する患者
血液検査等をより頻回に行うなど、慎重に患者の状態を観察すること。ラミブジンに関連する副作用の発現が疑われる場合は、個別のラミブジン製剤又はアバカビル製剤を用いてラミブジンの用量調節を考慮すること。ラミブジンの高い血中濃度が持続するおそれがある。[
5.2、
8.6、
16.6.1参照]
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重度の肝障害患者
投与しないこと。アバカビルの血中濃度が上昇することにより、副作用が発現するおそれがある。[
2.2、
16.6.2参照]
9.3.2 軽度又は中等度の肝障害患者
アバカビルの血中濃度が上昇することにより、副作用が発現するおそれがある。[
5.2、
16.6.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
動物実験においてラミブジン及びアバカビルに関して次のことが報告されている。
9.5.1 ラミブジン
ラミブジンはヒト胎盤を通過する。出生児の血清中ラミブジン濃度は、分娩時の母親の血清中及び臍帯血中濃度と同じであることが報告されている(外国人データ)。
動物実験(ウサギ)で胎児毒性(早期の胚死亡数の増加)が報告されている。
9.5.2 アバカビル
動物において、アバカビル又はその代謝物は胎盤を通過することが示されている。また、動物(ラットのみ)において、アバカビルの500mg/kg/日又はそれ以上の投与量(ヒト全身曝露量(AUC)の32〜35倍)で、胚又は胎児に対する毒性(胎児の浮腫、変異及び奇形、吸収胚、体重減少、死産の増加)が認められたとの報告がある。
9.5.3 ラミブジン/アバカビル共通
ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)を子宮内曝露又は周産期曝露された新生児及び乳児において、ミトコンドリア障害によると考えられる軽微で一過性の血清乳酸値の上昇が報告されている。
非常にまれに発育遅延、てんかん様発作、他の神経疾患も報告されている。しかしながら、これら事象とNRTIの子宮内曝露、周産期曝露との関連性は確立していない。
9.6 授乳婦
授乳を避けさせること。一般に、HIVの乳児への移行を避けるため、あらゆる状況下においてHIVに感染した女性は授乳すべきでない。
9.6.1 ラミブジン
経口投与されたラミブジンはヒト乳汁中に排泄されることが報告されている(乳汁中濃度:<0.5-8.2μg/mL)
4)(外国人データ)。
ラミブジンの母体血漿中濃度に対する乳汁中濃度の比は0.6〜3.3であることが報告されている(外国人データ)。
乳児の血清中ラミブジン濃度は18〜28ng/mLであったとの報告がある(外国人データ)。
9.6.2 アバカビル
アバカビルの母体血漿中濃度に対する乳汁中濃度の比は0.9であることが報告されている
5)(外国人データ)。
9.7 小児等
ラミブジン又はアバカビルの用量調節が必要である12歳未満の小児患者には、個別のラミブジン製剤(エピビル錠)又はアバカビル製剤(ザイアジェン錠)を用いること。[
5.2参照]
9.8 高齢者
患者の肝、腎、及び心機能の低下、合併症、併用薬等を十分考慮し慎重に投与すること。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 過敏症(頻度不明)
アバカビルの投与により発熱又は皮疹を伴う多臓器及び全身性の過敏症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、以下に示すような徴候又は症状があらわれた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。[
1.1.1-
1.1.5、
2.1、
8.2、
8.3、
15.1.1参照]
・皮膚
皮疹注1)(通常、斑状丘疹性皮疹又はじん麻疹)、多形紅斑
・消化器
嘔気注1)、嘔吐注1)、下痢注1)、腹痛注1)、口腔潰瘍
・呼吸器
呼吸困難注1)、咳注1)、咽頭痛、急性呼吸促迫症候群、呼吸不全
・精神神経系
・血液
・肝臓
肝機能検査値異常注1)(AST、ALT等の上昇)、肝不全
・筋骨格
筋痛注1)、筋変性(横紋筋融解、筋萎縮等)、関節痛、CK上昇
・泌尿器
・眼
・その他
発熱注1)、嗜眠注1)、倦怠感注1)、疲労感注1)、浮腫、リンパ節腫脹、血圧低下、粘膜障害、アナフィラキシー
注1)アバカビルによる過敏症発現患者のうち10%以上にみられた症状
11.1.2 重篤な血液障害(頻度不明)
赤芽球癆、汎血球減少、貧血、白血球減少、好中球減少、血小板減少[
8.6参照]
11.1.3 膵炎(頻度不明)
血清アミラーゼ、血清リパーゼ、トリグリセリド等の検査値の上昇がみられた場合には、直ちに本剤の投与を中止すること。また、重度の腹痛、悪心・嘔吐等の症状がみられた場合にも直ちに本剤の投与を中止し、生化学的検査(血清アミラーゼ、血清リパーゼ、トリグリセリド等)及び画像診断等による観察を十分行うこと。[
8.5、
9.1.1参照]
11.1.4 乳酸アシドーシス、脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)(頻度不明)
乳酸アシドーシス又は肝毒性が疑われる臨床症状や検査値異常が認められた場合には、本剤の投与を一時中止すること。特に、肝疾患の危険因子を有する患者においては注意すること。ラミブジン及びアバカビルを含むNRTIの単独投与又はこれらの併用療法により、重篤な乳酸アシドーシス(全身倦怠、食欲不振、急な体重減少、胃腸障害、呼吸困難、頻呼吸等)、肝毒性(脂肪沈着による重度の肝腫大、脂肪肝を含む)が、女性に多く報告されている。[
8.6参照]
11.1.5 横紋筋融解症(頻度不明)[
8.6参照]
11.1.6 ニューロパシー、錯乱、痙攣(頻度不明)[
8.6参照]
11.1.8 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)[
8.6参照]
注)発現頻度には使用成績調査の結果を含む
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 1%〜17%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
血液 | | | リンパ節症、平均赤血球容積(MCV)増加、リンパ球減少 |
消化器 | 嘔気 | 下痢、腹痛、嘔吐、胃炎、食欲不振 | 痔核、腹部痙直、消化不良、鼓腸放屁 |
全身症状 | | 倦怠感、発熱、頭痛、体脂肪の再分布/蓄積(胸部、体幹部の脂肪増加、末梢部、顔面の脂肪減少、野牛肩、血清脂質増加、血糖増加)、無力症 | 体温調節障害、疼痛、体重減少、疲労、疲労感 |
肝臓 | 肝機能検査値異常(AST、ALT等の上昇) | | |
腎臓 | | 血清クレアチニン上昇 | |
筋骨格 | | 筋肉痛 | 関節痛、筋痙直、骨痛 |
精神神経系 | | めまい、睡眠障害、うつ病 | 感情障害、不安感、末梢神経障害、嗜眠、錯感覚 |
代謝・内分泌系 | 血中尿酸上昇 | | 脱水(症)、高乳酸塩血症、アミラーゼ上昇 |
循環器 | | | 心筋症 |
呼吸器 | | 咳、呼吸困難 | 肺炎、咽頭痛、気管支炎、鼻炎、副鼻腔炎、耳管炎、呼吸障害、上気道炎 |
過敏症 | | | アレルギー反応 |
皮膚 | 発疹(皮膚炎、湿疹、皮疹を含む) | そう痒 | 脱毛、発汗、ざ瘡・毛嚢炎 |
その他 | トリグリセリド上昇・血清コレステロール上昇 | CK上昇、血糖値上昇 | 重炭酸塩上昇、重炭酸塩低下、血糖値低下、総蛋白上昇、総蛋白低下、敗血症 |
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 海外で実施されたプロスペクティブ試験(1956例)において、アバカビルの投与開始前に
HLA-B*5701のスクリーニングを実施しない群と、スクリーニングを実施し
HLA-B*5701保有者を除外した群における臨床症状から疑われる過敏症の発現頻度が、それぞれ7.8%(66/847)、3.4%(27/803)、皮膚パッチテストにより確認された過敏症の発現頻度が、それぞれ2.7%(23/842)、0.0%(0/802)であり、
HLA-B*5701のスクリーニングの実施により過敏症の発現頻度が統計学的に有意に低下する(p<0.0001)ことが示された。また、本試験結果では
HLA-B*5701をスクリーニングしない群において臨床症状から過敏症が疑われた66例中30例、皮膚パッチテストにて確認された過敏症症例23例全例が
HLA-B*5701を有していた。
日本人における過敏症と
HLA-B*5701保有の関連性については不明であり、
HLA-B*5701の保有率は白人では5〜8%、日本人では0.1%との報告がある。[
1.1.1-
1.1.5、
2.1、
8.2、
8.3、
11.1.1参照]
15.1.2 抗HIV薬の多剤併用療法を受けている患者を対象に心筋梗塞の発現頻度を調査したプロスペクティブ観察疫学研究において、アバカビルの使用開始から6ヵ月以内の患者で心筋梗塞のリスクが増加するとの報告があるが、臨床試験の統合解析を実施した結果、対照群と比較してアバカビル投与群の過度な心筋梗塞のリスクは認められなかった。アバカビルと心筋梗塞の関連については、現在のところ結論は出ていない。予防措置として、アバカビルを含む抗HIV療法を開始する場合には、冠動脈性心疾患の潜在的リスクを考慮し、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙等の改善可能なすべてのリスク因子を最小化させるための措置をとること。
15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 ラミブジン
遺伝毒性試験において弱い染色体異常誘発作用を示したとの報告がある。また、長期のがん原性試験において発がん性を認めなかったとの報告がある。
ヒト末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験では300μg/mL以上、マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験では2000μg/mL以上で陽性を示した。
マウス及びラットを用いた長期のがん原性試験では、臨床用量におけるヒト全身曝露量(AUC)の10倍(マウス)及び58倍(ラット)までの曝露量において、発がん性は認められなかった。
15.2.2 アバカビル
(1)細菌を用いた試験では変異原性を認めなかったが、ヒトリンパ球を用いたin vitro染色体異常試験、マウスリンフォーマ試験及びin vivo小核試験では陽性を認めた。これらの結果は、in vivo及びin vitroにおいて、本剤の高濃度を用いた場合に弱い染色体異常誘発作用を有することを示している。
(2)マウス及びラットにおける長期がん原性試験において、包皮腺、陰核腺、肝臓、膀胱、リンパ節、皮下組織等に悪性腫瘍がみられたとの報告がある(ヒト全身曝露量(AUC)の24〜32倍。ただし包皮腺(ヒトにおいて該当する器官は存在しない)の腫瘍については6倍。)ので、ヒトに対する潜在的危険性と治療上の有益性を十分に検討すること。
(3)アバカビルを2年間投与したマウス及びラットにおいて、軽度心筋変性が認められた(ヒト全身曝露量(AUC)の7〜24倍の用量)。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回経口投与
HIV感染症患者9例にラミブジン・アバカビル硫酸塩配合錠を空腹時単回投与した時のラミブジン、アバカビルの薬物動態パラメータを表-1に示した
6)。
表-1 ラミブジン・アバカビル硫酸塩配合錠単回投与後の薬物動態パラメータ
| Cmax(μg/mL) | AUClast(h・μg/mL) | AUC0-τ(h・μg/mL) | tmax注1)(h) | t1/2(h) |
ラミブジン | 3.58±0.61 | 13.81±3.56 | 16.30±5.058 | 2.00(1.00-3.00) | 2.49±0.55 |
アバカビル | 5.68±2.04 | 12.56±4.01 | 12.89±4.22 | 1.00(0.50-1.03) | 1.50±0.16 |
16.1.2 生物学的同等性試験
ラバミコム配合錠「アメル」とエプジコム配合錠を、クロスオーバー法によりそれぞれ1錠(ラミブジンとして300mg、アバカビルとして600mg)健康成人男子に絶食単回経口投与してラミブジン及びアバカビルの血漿中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)〜log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された
7)。
表-2 薬物動態パラメータ(生物学的同等性、ラミブジン)
| 判定パラメータ | 参考パラメータ |
AUC(0→24)(μg・hr/mL) | Cmax(μg/mL) | Tmax(hr) | T1/2(hr) |
ラバミコム配合錠「アメル」 | 14.23±2.84 | 3.34±0.85 | 2.05±0.89 | 4.33±0.43 |
エプジコム配合錠 | 14.41±2.54 | 3.38±0.69 | 2.08±0.66 | 4.32±0.45 |
図-1 血漿中未変化体濃度(生物学的同等性、ラミブジン)
表-3 薬物動態パラメータ(生物学的同等性、アバカビル)
| 判定パラメータ | 参考パラメータ |
AUC(0→12)(μg・hr/mL) | Cmax(μg/mL) | Tmax(hr) | T1/2(hr) |
ラバミコム配合錠「アメル」 | 16.73±4.15 | 6.72±2.42 | 1.13±0.72 | 1.67±0.24 |
エプジコム配合錠 | 16.70±3.37 | 6.26±1.51 | 1.44±0.66 | 1.65±0.23 |
図-2 血漿中未変化体濃度(生物学的同等性、アバカビル)
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人25例に、高脂肪食(約1000kcal、約50%が脂肪由来)摂取後にラミブジン・アバカビル硫酸塩配合錠を経口投与した時、空腹時投与時と比較して、ラミブジンのAUClast、AUC
∞、Cmax、及びアバカビルのAUClast、AUC
∞に変化は認められなかったが、アバカビルのCmaxは24%低下した
10)(外国人データ)。
16.3 分布
16.3.1 ラミブジン
(1)脳脊髄液への移行
成人HIV感染症患者にラミブジン4〜10mg/kg
注)を1日2回2週間以上反復経口投与した時、投与2時間後の脳脊髄液中濃度は血中濃度の約6%であった
8)(外国人データ)。
16.3.2 アバカビル
(1)分布容積
HIV感染症患者6例を対象にアバカビル150mgを静脈内投与
注)した時の見かけの分布容積は約0.86L/kgであり、広く組織に分布することが示唆された
9)10)(外国人データ)。
(2)脳脊髄液への移行
HIV感染症患者におけるアバカビルの脳脊髄液(CSF)への移行は良好で、血漿中AUCに対するCSF中AUCの比は31〜44%であった
11)(外国人データ)。アバカビル600mg1日2回投与時の最高濃度の実測値はIC
50(0.08μg/mLあるいは0.26μM)の9倍超であった
10)(外国人データ)。
(3)血漿蛋白結合率
In vitroにおいて、アバカビルは10μg/mLまでの添加濃度範囲で、ヒト血漿蛋白結合率は約50%と一定であった
10)。
(4)血球移行性
血液及び血漿中放射能濃度が同じであったことから、アバカビルは血球に直ちに分布することが示された
10)。
16.4 代謝
16.4.1 ラミブジン
ヒトでの主代謝物はトランス-スルホキシド体(1-[(2
R,5
S)-trans-2-hydroxymethyl-1,3-oxathiolan-3-oxide-5-yl]cytosine)であった
12)(外国人データ)。
16.4.2 アバカビル
ヒトでの主代謝物は、5'-カルボン酸体及び5'-グルクロン酸抱合体であった
11)(外国人データ)。アバカビルの酸化的代謝にはCYPではなく、アルコールデヒドロゲナーゼ/アルデヒドデヒドロゲナーゼが関与していた。なお、これらの代謝物には抗ウイルス活性はなかった
10)。[
10.2、
16.7.1、
16.7.2参照]
アバカビルは細胞内で活性代謝物であるカルボビル三リン酸に代謝される。HIV感染症患者20例にアバカビル300mg1日2回投与した時の定常状態における細胞内カルボビル三リン酸の半減期は20.6時間であった
10)(外国人データ)。
16.5 排泄
16.5.1 ラミブジン
成人HIV感染症患者にラミブジン2mg/kg
注)を経口投与した時、投与後12時間尿中にトランス-スルホキシド体が投与量の5.2%排出された。また、血中濃度が定常状態での未変化体の尿中排泄率は投与量の約70%であり、腎排泄がラミブジンの体内からの除去の主要な経路であることが示された
12)(外国人データ)。
16.5.2 アバカビル
HIV感染症患者6例を対象に
14C標識アバカビル600mgを単回経口投与後、薬物体内動態を検討した。総放射能の約99%が排泄され、主な排泄経路は尿(約83%)であり、糞中には約16%排泄された。尿中に排泄された放射能の約1%は未変化体であり、約30%が5'-カルボン酸体、約36%が5'-グルクロン酸抱合体であった
11)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
(1)ラミブジン
腎機能の低下したHIV感染症患者にラミブジン300mgを単回経口投与した時、Ccrの低下につれてAUC及び最高血中濃度が増加し、半減期が延長し、見かけの全身クリアランスが減少した
13)(外国人データ)。[
5.2、
9.2.1、
9.2.2参照]
16.6.2 肝障害患者
(1)ラミブジン
中等度及び重度の肝障害を有する患者における成績より、ラミブジンの薬物動態は、肝障害によって重大な影響を受けないことが示されている
14)(外国人データ)。[
2.2、
5.2、
9.3.1参照]
(2)アバカビル
軽度の肝障害(Child-Pugh分類の合計点数:5)を有するHIV感染症患者におけるアバカビルの薬物動態を検討した結果、AUC及び消失半減期は肝障害を有さないHIV感染症患者のそれぞれ1.89倍及び1.58倍であった。代謝物の体内消失速度にも変化が認められたが、AUCは肝障害による影響を受けなかった
15)(外国人データ)。なお、これら患者に対する推奨投与量は明らかでない。[
2.2、
5.2、
9.3.1、
9.3.2参照]
16.7 薬物相互作用
16.7.1 In vitro試験
アバカビルは、アバカビルの主代謝酵素であるアルコールデヒドロゲナーゼ/アルデヒドデヒドロゲナーゼを阻害しなかった。[
10.2、
16.4.2、
16.7.2参照]
また、
in vitro試験において、アバカビルはCYP1A1を阻害し、CYP3A4もわずかに阻害した
37)が、CYP2D6及び2C9を阻害しなかった
38)。
16.7.2 臨床薬物相互作用試験
HIV感染症患者25例を対象にアバカビル600mgをエタノール0.7g/kgと併用して単回投与した場合、アバカビルのAUC
∞の上昇及びt
1/2の延長がみられたが臨床上重要なものではなかった。また、アバカビルはエタノールの薬物動態に影響を示さなかった
16)(外国人データ)。[
10.2、
16.4.2参照]
HIV感染症患者15例を対象にアバカビル600mgとジドブジン300mg及びラミブジン150mg
注)のどちらか1剤あるいは両剤を併用した場合、いずれの併用においても併用薬によるアバカビル血中濃度への影響はみられなかった。一方、アバカビルと併用したラミブジンのAUC
∞及びCmaxは、ジドブジン併用、非併用に関わらずいずれも低下した。また、アバカビルと併用したジドブジンは、ラミブジン併用時及び非併用時においてAUC
∞の上昇がみられたが、Cmaxは低下した。これらの変化は臨床上重要なものではなかった
17)(外国人データ)。
アバカビル・ドルテグラビル・ラミブジン600mg・50mg・300mg
注)を投与中の成人HIV感染症患者にリオシグアト0.5mgを単回経口投与した時、リオシグアトのAUCが健康成人に単独投与したヒストリカルコントロールと比べて約2.6倍に増加した
37)39)(外国人データ)。[
10.2参照]
注)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人には1回1錠(ラミブジンとして300mg及びアバカビルとして600mg)を1日1回経口投与する。」である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 海外第III相試験(CNA30021)
治療経験がない成人のHIV感染症患者770例を対象としてアバカビルの投与回数を比較する無作為二重盲検比較試験(ラミブジン300mg1日1回とエファビレンツ600mg1日1回の併用による、アバカビル600mg1日1回投与群384例又はアバカビル300mg1日2回投与群386例)を実施した
18)。投与48週後にHIV-1 RNA量が400copies/mL未満であった患者の比率は、アバカビル600mg1日1回投与群、300mg1日2回投与群ともに72%であった。さらに、投与48週後にHIV-1 RNA量が50copies/mL未満であった患者の比率は、アバカビル600mg1日1回投与群が66%、アバカビル300mg1日2回投与群が68%であった。
また、投与48週後のCD4リンパ球数の増加量(中央値)は、それぞれ188/mm
3、200/mm
3であった。
17.1.2 海外第III相試験(CAL30001)
抗HIV薬の治療経験がある18歳以上の患者182例を対象としてラミブジン・アバカビル硫酸塩配合錠とアバカビル及びラミブジンの併用療法を比較する無作為オープン比較試験(テノホビル300mg1日1回と使用経験のないHIVプロテアーゼ阻害剤又は非核酸系逆転写酵素阻害剤1剤の併用による、ラミブジン・アバカビル硫酸塩配合錠1日1回投与群94例又はアバカビル300mg1日2回+ラミブジン300mg1日1回投与群88例)を実施した
19)。48週間の治療により、血漿中HIV-1 RNA AAUCMB値は、ラミブジン・アバカビル硫酸塩配合錠投与群で−1.65log
10copies/mL、アバカビル+ラミブジン併用投与群で−1.83log
10copies/mLであり、非劣性であった。48週間の治療後の血漿中HIV-1 RNA量が50copies/mL未満の患者の比率はそれぞれ50%、47%と同等であり、また、血漿中HIV-1 RNA量が400copies/mL未満の患者の比率もそれぞれ54%、57%と同等であった。48週間の治療後のCD4リンパ球数の増加量(中央値)は、ラミブジン・アバカビル硫酸塩配合錠投与群で47.5/mm
3、アバカビル+ラミブジン併用投与群で95.0/mm
3であった。
ラミブジン・アバカビル硫酸塩配合錠1日1回投与群において、93例中45例(48.4%)に副作用が認められ、主な副作用は嘔気11例(11.8%)、下痢10例(10.8%)であった。
本剤を使用する場合は重篤な過敏症に留意し、過敏症の兆候又は症状が発現した場合には本剤の使用を中止する等の適切な処置をとるよう、医師に要請すること。