2.1 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]
2.2 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]
2.3 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。
通常、成人にはトレラグリプチンとして100mgを1週間に1回経口投与する。
7.1 中等度以上の腎機能障害患者では、排泄の遅延により本剤の血中濃度が上昇するため、腎機能の程度に応じて、下表を参考に投与量を減量すること。[
9.2.1、
9.8、
16.6.1参照]
中等度以上の腎機能障害患者における投与量
| 血清クレアチニン(mg/dL)注1) | クレアチニンクリアランス(Ccr,mL/min) | 投与量 |
中等度腎機能障害患者 | 男性:1.4<〜≦2.4 女性:1.2<〜≦2.0 | 30≦〜<50 | 50mg、週1回 |
高度腎機能障害患者/末期腎不全患者注2) | 男性:>2.4 女性:>2.0 | <30 | 25mg、週1回 |
7.2 投与にあたっては次の点を患者に指導すること。
・本剤は週1回服用する薬剤であり、同一曜日に服用すること。
・本剤の服用を忘れた場合は、気づいた時点で決められた用量のみを服用し、その後はあらかじめ定められた曜日に服用すること。
8.1 低血糖を起こすおそれがあるので、本剤の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明し、注意を喚起すること。[
9.1.1、
11.1.1参照]
8.2 急性膵炎があらわれることがあるので、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう患者に指導すること。[
11.1.3参照]
8.3 本剤は1週間に1回経口投与する薬剤であり、投与中止後も作用が持続するので、血糖値や副作用の発現について十分留意すること。
また、本剤投与中止後に他の糖尿病用薬を使用するときは、血糖管理状況等を踏まえ、その投与開始時期及び用量を検討すること。[
16.1.1、
16.1.2、
18.2.2参照]
8.4 本剤投与中は、血糖を定期的に検査するとともに、経過を十分に観察し、本剤を2〜3ヵ月投与しても効果が不十分な場合には、より適切と考えられる治療への変更を考慮すること。
8.5 低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与するときには注意すること。[
11.1.1参照]
8.6 本剤とGLP-1受容体作動薬はいずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有している。両剤を併用した際の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性は確認されていない。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 低血糖を起こすおそれのある以下の患者又は状態
・脳下垂体機能不全又は副腎機能不全
・栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態
・激しい筋肉運動
・過度のアルコール摂取者
9.1.2 腹部手術の既往又は腸閉塞の既往のある患者
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 中等度以上の腎機能障害患者
投与量を減量し、患者の状態を慎重に観察すること。腎機能の程度に応じて排泄の遅延により本剤の血中濃度が増加する。[
7.1、
16.6.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物試験(ラット)において、胎盤通過が報告されている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物試験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
副作用発現に留意し、経過を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に腎機能が低下していることが多い。[
7.1、
16.6.1参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 低血糖(0.1〜5%未満)
低血糖があらわれることがある。スルホニルウレア剤又はインスリン製剤との併用で重篤な低血糖症状があらわれ、意識消失を来す例も報告されている。低血糖症状が認められた場合には、糖質を含む食品を摂取させるなど適切な処置を行うこと。ただし、α-グルコシダーゼ阻害剤の併用時はブドウ糖を投与すること。[
8.1、
8.5、
9.1.1、
10.2、
17.1、
17.2参照]
11.1.2 類天疱瘡(頻度不明)
水疱、びらん等があらわれた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.3 急性膵炎(頻度不明)
持続的な激しい腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[
8.2参照]
11.1.4 腸閉塞(頻度不明)
高度の便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[
9.1.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1〜5%未満 |
過敏症 | 発疹、そう痒 |
循環器 | 心房細動 |
肝臓 | ALT上昇、AST上昇、γ-GTP上昇 |
その他 | 血中アミラーゼ上昇、リパーゼ上昇、CK上昇、尿潜血陽性、鼻咽頭炎 |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.1 臨床使用に基づく情報
海外臨床試験においてトレラグリプチンとして800mg
注)を単回投与したときにQT延長が報告されている。[
17.3.1参照]
注)本剤の承認用法・用量は、通常、トレラグリプチンとして100mgを1週間に1回経口投与である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 単独療法
(1)国内第II相試験(二重盲検比較試験)
食事療法、運動療法を実施しても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象にトレラグリプチンとして100mg(週1回朝食前)を12週間経口投与した。治療期終了時のHbA1c(NGSP値)の投与前からの変化量の調整済み平均値(標準誤差)は、トレラグリプチン100mg群(55例、解析対象集団)で−0.54(0.068)%、プラセボ群(55例、解析対象集団)で0.35(0.068)%であり、トレラグリプチン100mg群でプラセボ群と比べ有意なHbA1cの低下が認められた〔投与前のHbA1c(NGSP値)を共変量とした共分散分析モデルに基づく、対比検定による対比較:p<0.0001〕。なお、投与前のHbA1c(NGSP値)の平均値(標準偏差)はトレラグリプチン100mg群で8.41(0.97)%、プラセボ群で8.15(0.95)%であった
13)。
副作用の発現頻度はトレラグリプチン100mg群で9.1%(5/55例)であり、低血糖の副作用はみられなかった。[
11.1.1参照]
(2)国内第III相検証試験
食事療法、運動療法を実施しても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象にトレラグリプチンとして100mg(週1回朝食前)、アログリプチンとして25mg(1日1回朝食前)を24週間経口投与した結果は下表のとおりであり、治療期終了時のHbA1c(NGSP値)の投与前からの変化量の調整済み平均値の群間差において、トレラグリプチン100mg群のアログリプチン25mg群に対する非劣性(許容限界:0.40%)が検証された。なお、投与前のHbA1c(NGSP値)の平均値(標準偏差)はトレラグリプチン100mg群で7.73(0.85)%、アログリプチン25mg群で7.87(0.86)%であった
14)。
副作用の発現頻度はトレラグリプチン100mg群で5.0%(5/101例)であり、低血糖の副作用はみられなかった。低血糖以外の主な副作用は脂質異常症2.0%(2/101例)であった。[
11.1.1参照]
治療期終了時のHbA1c(NGSP値)、空腹時血糖値及び食後血糖2時間値の投与前からの変化量及びアログリプチンとの群間差
投与群 | HbA1c(NGSP値)注1)(%) | 空腹時血糖値注2)(mg/dL) | 食後血糖2時間値注2)(mg/dL) |
投与前からの変化量 | アログリプチンとの差 | 投与前からの変化量 | アログリプチンとの差 | 投与前からの変化量 | アログリプチンとの差 |
アログリプチン25mg(n=92) | −0.45(0.06) | 0.11[−0.05,0.28] | −14.9(27.0) | 8.6[1.7,15.5] | −29.2(42.2) | 12.1[−0.9,25.1] |
トレラグリプチン100mg(n=101) | −0.33(0.06) | −6.4(21.2) | −17.2(47.7) |
(3)国内第III相長期投与試験
食事療法、運動療法を実施しても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者(248例、解析対象集団)を対象にトレラグリプチンとして100mg(週1回朝食前)を52週間経口投与した。治療期終了時のHbA1c(NGSP値)の投与前からの変化量の平均値(標準偏差)は−0.57(0.88)%であり、52週にわたって安定した血糖コントロールが得られた。なお、投与前のHbA1c(NGSP値)の平均値(標準偏差)は7.87(0.87)%であった
15)。
副作用の発現頻度は15.7%(39/248例)であり、低血糖の副作用発現頻度は0.4%(1/248例)であった。
低血糖以外の主な副作用は鼻咽頭炎3.2%(8/248例)、便秘、血中クレアチンホスホキナーゼ増加及びリパーゼ増加が各1.6%(4/248例)、発疹1.2%(3/248例)であった。[
11.1.1参照]
(4)国内第III相非盲検試験
食事療法、運動療法に加え、既存のDPP-4阻害剤を1日1回投与している2型糖尿病患者(14例、解析対象集団)を対象に、トレラグリプチンとして100mg(週1回朝食前)に変更後12週間経口投与した。結果は下表のとおりであった
16)。
副作用の発現頻度は7.1%(1/14例)であり、低血糖の副作用はみられなかった。[
11.1.1参照]
朝食後血糖2時間値、空腹時血糖値及びHbA1c(NGSP値)の投与前の測定値及び治療期終了時の変化量
| 変更前値 | 変更前からの変化量 |
朝食後血糖2時間値(mg/dL) | 202.1(38.3) | −8.7(25.4)注) |
空腹時血糖値(mg/dL) | 140.5(23.3) | −1.6(13.9) |
HbA1c(NGSP値)(%) | 7.06(0.49) | 0.04(0.36) |
17.1.2 併用療法
(1)国内第III相長期投与試験(経口血糖降下薬併用試験)
食事療法、運動療法に加え経口血糖降下薬を併用しても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象にトレラグリプチンとして100mg(週1回朝食前)を52週間投与した結果は下表のとおりであり、52週にわたって安定した血糖コントロールが得られた
15)。
副作用の発現頻度は、スルホニルウレア系薬剤併用で10.8%(17/158例)、速効型インスリン分泌促進剤併用で11.9%(8/67例)、α-グルコシダーゼ阻害剤併用で6.2%(4/65例)、ビグアナイド系薬剤併用で11.4%(8/70例)及びチアゾリジン系薬剤併用で13.9%(10/72例)であった。低血糖の副作用発現頻度は、スルホニルウレア系薬剤併用で3.2%(5/158例)、速効型インスリン分泌促進剤併用で1.5%(1/67例)、ビグアナイド系薬剤併用で1.4%(1/70例)、チアゾリジン系薬剤併用で1.4%(1/72例)であり、α-グルコシダーゼ阻害剤併用ではみられなかった。低血糖以外の主な副作用はスルホニルウレア系薬剤併用でリパーゼ増加1.3%(2/158例)、速効型インスリン分泌促進剤併用で湿疹3.0%(2/67例)並びにチアゾリジン系薬剤併用でアラニンアミノトランスフェラーゼ増加及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加が各2.8%(2/72例)であった。[
11.1.1参照]
HbA1c(NGSP値)の投与前の測定値及び治療期終了時の変化量
| HbA1c(NGSP値)(%) |
投与前値 | 投与前からの変化量 |
スルホニルウレア系薬剤併用例(n=158) | 8.09(0.84) | −0.37(0.90) |
速効型インスリン分泌促進剤併用例(n=67) | 7.87(0.78) | −0.25(0.78) |
α-グルコシダーゼ阻害剤併用例(n=65) | 8.07(0.98) | −0.67(0.74) |
ビグアナイド系薬剤併用例(n=70) | 7.82(0.94) | −0.31(0.82) |
チアゾリジン系薬剤併用例(n=72) | 7.91(0.96) | −0.74(0.65) |
17.1.3 高度腎機能障害又は末期腎不全を合併する2型糖尿病
(1)国内第III相二重盲検試験
食事療法、運動療法を実施しても、又は食事療法、運動療法に加え、速効型インスリン分泌促進剤、α-グルコシダーゼ阻害剤又はインスリン製剤を投与してもなお血糖コントロールが不十分な高度腎機能障害又は末期腎不全を合併する2型糖尿病患者を対象にトレラグリプチンとして25mg(週1回朝食前)を12週間投与した。結果は下表のとおりであった。なお、投与前のHbA1c(NGSP値)の平均値(標準偏差)はトレラグリプチン25mg群で7.57(0.85)%、プラセボ群で7.74(1.05)%であった
17)。
副作用発現頻度はトレラグリプチン25mg群で18.2%(10/55例)であった。低血糖の副作用発現頻度は、12.7%(7/55例)であった。[
11.1.1参照]
投与12週時のHbA1c(NGSP値)の投与前からの変化量及びプラセボとの群間差
投与群 | HbA1c(NGSP値)(%) |
投与前からの変化量 | プラセボとの差 |
プラセボ(n=52) | 0.01(0.09) | −0.72注)[−0.97,−0.47] |
トレラグリプチン25mg(n=55) | −0.71(0.09) |
(2)国内第III相長期投与試験
二重盲検期終了後、プラセボからトレラグリプチン25mgへの切り替え群を含め、トレラグリプチン25mg継続投与において、52週にわたって安定した血糖コントロールが得られた。継続非盲検長期投与期終了時におけるHbA1c(NGSP値)の投与前からの変化量の平均値(標準偏差)はトレラグリプチン25mg継続投与群で−0.76(0.82)%、切り替え群で−0.74(0.84)%であった
17)。
継続非盲検長期投与期終了までの副作用発現頻度は、トレラグリプチン25mg継続投与群で23.6%(13/55例)及び切り替え群で12.5%(6/48例)であった。低血糖の副作用発現頻度は、トレラグリプチン25mg継続投与群で18.2%(10/55例)及び切り替え群で10.4%(5/48例)であった。[
11.1.1参照]
17.2 製造販売後調査等
17.2.1 併用療法
(1)国内第IV相二重盲検試験(インスリン製剤併用試験)
食事療法、運動療法に加え、インスリン製剤〔混合型(速効型又は超速効型のインスリン含有率が30%以下)、中間型、持効型溶解のいずれか単剤を使用、1日投与量は8単位以上40単位以下、原則として二重盲検期を通して変更しない〕を投与しても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象にトレラグリプチンとして100mg(週1回朝食前)を12週間投与した。結果は下表のとおりであった。なお、投与前のHbA1c(NGSP値)の平均値(標準偏差)はトレラグリプチン100mg併用群で8.42(0.68)%、インスリン製剤単独群で8.50(0.68)%であった
18)。
副作用発現頻度はトレラグリプチン100mg併用群で10.3%(12/116例)であり、低血糖の副作用発現頻度は7.8%(9/116例)であった。[
11.1.1参照]
投与12週時のHbA1c(NGSP値)の投与前からの変化量及びインスリン製剤単独との群間差
投与群 | HbA1c(NGSP値)(%) |
投与前からの変化量 | インスリン製剤単独との差 |
インスリン製剤単独(n=124) | 0.07(0.07) | −0.63注)[−0.83,−0.44] |
トレラグリプチン100mg併用(n=116) | −0.56(0.07) |
(2)国内第IV相長期投与試験(インスリン製剤併用試験)
二重盲検期終了後、インスリン製剤単独投与からトレラグリプチン100mg併用への切り替え群を含め、トレラグリプチン100mg継続投与において、52週にわたって安定した血糖コントロールが得られた。継続非盲検長期投与期終了時におけるHbA1c(NGSP値)の投与前からの変化量の平均値(標準偏差)はトレラグリプチン100mg継続併用群で−0.43(0.83)%、切り替え群で−0.60(0.83)%であった
18)。
継続非盲検長期投与期終了までの副作用発現頻度は、トレラグリプチン100mg継続併用群で15.5%(18/116例)及び切り替え群で16.8%(20/119例)であった。低血糖の副作用発現頻度は、トレラグリプチン100mg継続併用群で12.9%(15/116例)、切り替え群で10.9%(13/119例)であった。[
11.1.1参照]
17.3 その他
17.3.1 心電図に対する影響
(1)海外第I相試験(QT/QTc評価試験)
健康成人にトレラグリプチンとして200mg(66例)又は800mg(65例)を単回経口投与
注)した時、QTcF間隔の時間を一致させたベースラインからの変化量の調整済み平均値のプラセボ群との差の最大値(両側90%信頼区間の上限値)は、200mg群では投与6時間後に3.5(5.85)msec、800mg群では投与2時間後に11.0(13.77)msecであった(800mg群では投与1.5〜8時間後に両側90%信頼区間の上限値が10msecを超えた)
19)(外国人データ)。[
15.1参照]
注)本剤の承認用法・用量は、通常、トレラグリプチンとして100mgを1週間に1回経口投与である。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
26.1 製造販売元
帝人ファーマ株式会社
東京都千代田区霞が関3丁目2番1号
26.2 販売
武田薬品工業株式会社
〒540-8645
大阪市中央区道修町四丁目1番1号