医薬品情報
総称名 |
メマンチン |
一般名 |
メマンチン塩酸塩 |
欧文一般名 |
Memantine Hydrochloride |
製剤名 |
メマンチン塩酸塩口腔内崩壊錠 |
薬効分類名 |
NMDA受容体拮抗 アルツハイマー型認知症治療剤 |
薬効分類番号 |
1190 |
ATCコード |
N06DX01 |
KEGG DRUG |
|
KEGG DGROUP |
|
JAPIC |
添付文書(PDF)
|
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添付文書情報2023年11月 改訂(第1版)
販売名 |
欧文商標名 |
製造会社 |
YJコード |
薬価 |
規制区分 |
メマンチン塩酸塩OD錠5mg「YD」
(後発品)
|
MEMANTINE HYDROCHLORIDE OD TABLETS |
陽進堂 |
1190018F4081 |
15.4円/錠 |
劇薬, 処方箋医薬品注) |
メマンチン塩酸塩OD錠10mg「YD」
(後発品)
|
MEMANTINE HYDROCHLORIDE OD TABLETS |
陽進堂 |
1190018F5088 |
29.7円/錠 |
劇薬, 処方箋医薬品注) |
メマンチン塩酸塩OD錠20mg「YD」
(後発品)
|
MEMANTINE HYDROCHLORIDE OD TABLETS |
陽進堂 |
1190018F6084 |
52.3円/錠 |
劇薬, 処方箋医薬品注) |
2. 禁忌
4. 効能または効果
5. 効能または効果に関連する注意
5.1 アルツハイマー型認知症と診断された患者にのみ使用すること。
5.2 本剤がアルツハイマー型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない。
5.3 アルツハイマー型認知症以外の認知症性疾患において本剤の有効性は確認されていない。
5.4 他の認知症性疾患との鑑別診断に留意すること。
6. 用法及び用量
通常、成人にはメマンチン塩酸塩として1日1回5mgから開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持量として1日1回20mgを経口投与する。
7. 用法及び用量に関連する注意
7.1 1日1回5mgからの漸増投与は、副作用の発現を抑える目的であるので、維持量まで増量すること。
7.2 高度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス値:30mL/min未満)のある患者には、患者の状態を観察しながら慎重に投与し、維持量は1日1回10mgとすること。[
9.2.1、
16.6.1参照]
7.3 医療従事者、家族等の管理の下で投与すること。
8. 重要な基本的注意
8.1 投与開始初期においてめまい、傾眠が認められることがある。また、これらの症状により転倒等を伴うことがあるため、十分に注意すること。
8.2 通常、中等度及び高度アルツハイマー型認知症では、自動車の運転等危険を伴う機械の操作能力が低下することがある。また、本剤により、めまい、傾眠等があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
8.3 本剤投与により効果が認められない場合、漫然と投与しないこと。
9. 特定の背景を有する患者に関する注意
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 てんかん又は痙攣の既往のある患者
9.1.2 尿pHを上昇させる因子(尿細管性アシドーシス、重症の尿路感染等)を有する患者
尿のアルカリ化により本剤の尿中排泄率が低下し、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。[
10.2、
16.5参照]
9.2 腎機能障害患者
本剤は腎排泄型の薬剤であり、排泄が遅延する。[
16.6.1参照]
9.2.1 高度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス値:30mL/min未満)のある患者[
7.2参照]
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 高度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ウサギ)で胎児への移行が認められている。また、動物実験(ラット)で胎児及び出生児の体重増加抑制が認められている。[
16.3.3参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で、乳汁中への移行が認められている。[
16.3.3参照]
9.7 小児等
10. 相互作用
10.2 併用注意
ドパミン作動薬 レボドパ等 | ドパミン作動薬の作用を増強させるおそれがある。 | 本剤のNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体拮抗作用が、ドパミン遊離を促進させる可能性がある。 |
ヒドロクロロチアジド [16.7参照] | ヒドロクロロチアジドの血中濃度を低下させる。 | 機序は不明である。 |
腎尿細管分泌(カチオン輸送系)により排泄される薬剤 シメチジン等 | 本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。 | 本剤は一部が尿細管分泌(カチオン輸送系)により排泄されるため、同じ輸送系を介する薬剤と競合する可能性がある。 |
尿アルカリ化を起こす薬剤1) アセタゾラミド等 [9.1.2、16.5参照] | 本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。 | 尿のアルカリ化により、本剤の尿中排泄率が低下するため。 |
NMDA受容体拮抗作用を有する薬剤 アマンタジン塩酸塩、 デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物等 | 相互に作用を増強させるおそれがある。 | 両薬剤ともNMDA受容体拮抗作用を有するため。 |
11. 副作用
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 痙攣(0.3%)
11.1.2 失神(頻度不明)、意識消失(頻度不明)
11.1.3 精神症状
激越(0.2%)、攻撃性(0.1%)、妄想(0.1%)、幻覚(頻度不明)、錯乱(頻度不明)、せん妄(頻度不明)等があらわれることがある。
11.1.4 肝機能障害(頻度不明)、黄疸(頻度不明)
AST、ALT、ALP、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害があらわれることがある。
11.1.5 横紋筋融解症(頻度不明)
筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇等があらわれることがある。また、横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。
11.1.6 完全房室ブロック、高度な洞徐脈等の徐脈性不整脈(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 1〜5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
過敏症 | | 発疹 | 顔面浮腫、眼瞼浮腫 |
精神神経系 | めまい、頭痛 | 傾眠、不眠、徘徊、不穏、易怒性、不安 | 歩行障害、不随意運動(振戦、チック、ジスキネジー等)、活動性低下、鎮静 |
腎臓 | | 頻尿、尿失禁、尿潜血、BUN上昇 | |
肝臓 | 肝機能異常 | | |
消化器 | 便秘、食欲不振 | 消化管潰瘍、悪心、嘔吐、下痢、便失禁 | |
循環器 | 血圧上昇 | 血圧低下、上室性期外収縮 | |
その他 | 血糖値上昇、転倒、浮腫、体重減少、CK上昇 | 貧血、倦怠感、発熱、コレステロール上昇、トリグリセリド上昇 | 脱力感 |
13. 過量投与
13.1 症状
メマンチン塩酸塩400mg服用患者において、不穏、幻視、痙攣、傾眠、昏迷、意識消失等があらわれ、また、メマンチン塩酸塩2,000mg服用患者において、昏睡、複視及び激越があらわれ、それぞれ回復したとの報告がある(外国人における報告)。
13.2 処置
尿の酸性化により、僅かに排泄が促進したとの報告がある。
14. 適用上の注意
14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
14.1.2 舌の上にのせて唾液を浸潤させると崩壊するため、水なしで服用可能である。また、水で服用することもできる。
14.1.3 寝たままの状態では、水なしで服用させないこと。
15. その他の注意
15.2 非臨床試験に基づく情報
ラットの高用量投与実験(メマンチン塩酸塩100mg/kg単回経口投与、25mg/kg/日以上14日間反復経口投与、又は100mg/kg/日14日間混餌投与)において、脳梁膨大皮質及び帯状回皮質に神経細胞の空胞化又は壊死が認められた。
16. 薬物動態
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
(1)メマンチン塩酸塩錠
健康成人男性に、メマンチン塩酸塩5、10及び20mgを空腹時単回経口投与したとき、最高血漿中濃度(Cmax)と血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)は投与量にほぼ比例して増加した。消失半減期(t
1/2)は55.3〜71.3時間であり、投与量による変化はみられなかった
2)。
メマンチン塩酸塩単回経口投与時の薬物動態パラメータ
投与量 | n | Cmax(ng/mL) | Tmax(hr) | AUC(ng・hr/mL) | t1/2(hr) |
5mg | 6 | 6.86±0.66 | 5.3±2.1 | 489.4±51.0 | 55.3±6.4 |
10mg | 6 | 12.18±1.68 | 5.3±1.6 | 1091.7±172.7 | 63.1±11.8 |
20mg | 6 | 28.98±3.65 | 6.0±3.8 | 2497.6±482.8 | 71.3±12.6 |
(2)メマンチン塩酸塩OD錠
健康成人男性にメマンチン塩酸塩OD錠20mg(水なしで服用又は水で服用)又はメマンチン塩酸塩錠20mg(水で服用)をクロスオーバー法で空腹時単回経口投与したとき、いずれの場合も両製剤の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは同様であった。メマンチン塩酸塩OD錠20mgは水なしで服用又は水で服用した場合のいずれも、メマンチン塩酸塩錠20mg(水で服用)と生物学的に同等であることが確認された
3)。
16.1.2 反復投与
アルツハイマー型認知症患者(10mg/日:11例、20mg/日:12例)に、メマンチン塩酸塩1日1回(朝食後)5mgから開始し、1週間ごとに5mgずつ漸増し10mg又は20mgを維持用量として24週間反復経口投与したとき、血漿中濃度は投与4週後ではほぼ定常状態に達しており、その時の血漿中濃度は10mg/日群で64.8〜69.8ng/mL、20mg/日群で112.9〜127.8ng/mLであった
4)。
16.1.3 生物学的同等性試験
<メマンチン塩酸塩OD錠20mg「YD」>
(1)水で服用した場合
メマンチン塩酸塩OD錠20mg「YD」とメマリーOD錠20mgをクロスオーバー法によりそれぞれ1錠(メマンチン塩酸塩として20mg)、健康成人男子22名に絶食単回経口投与して血漿中未変化体濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)〜log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された
5)。
| 判定パラメータ | 参考パラメータ |
AUC0-144(ng・hr/mL) | Cmax(ng/mL) | Tmax(hr) | t1/2(hr) |
メマンチン塩酸塩OD錠20mg「YD」 | 1697.3±163.5 | 32.995±5.628 | 2.3±0.6 | 51.5±7.5 |
メマリーOD錠20mg | 1729.0±157.4 | 33.467±6.148 | 2.9±1.9 | 50.2±5.4 |
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
(2)水なしで服用した場合
メマンチン塩酸塩OD錠20mg「YD」とメマリーOD錠20mgをクロスオーバー法によりそれぞれ1錠(メマンチン塩酸塩として20mg)、健康成人男子24名に絶食単回経口投与して血漿中未変化体濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)〜log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された
5)。
| 判定パラメータ | 参考パラメータ |
AUC0-144(ng・hr/mL) | Cmax(ng/mL) | Tmax(hr) | t1/2(hr) |
メマンチン塩酸塩OD錠20mg「YD」 | 1565.4±204.3 | 30.423±4.673 | 3.5±1.3 | 49.4±5.8 |
メマリーOD錠20mg | 1614.6±237.9 | 30.923±4.399 | 3.0±1.0 | 50.4±5.8 |
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.3 分布
16.3.1 脳脊髄液への移行性
アルツハイマー型認知症患者にメマンチン塩酸塩1日1回(朝食後)5mgから開始し、1週間ごとに5mgずつ漸増し10mg又は20mgを維持用量として24週間反復経口投与したとき、脳脊髄液中濃度の血漿中濃度に対する比は10mg/日群で0.63、20mg/日群で0.72であった
4)。
16.3.2 涙液への移行性
健康成人男性にメマンチン塩酸塩を空腹時に単回経口投与した場合、涙液中への移行が認められた
2)。
16.3.3 ラット及びウサギにおける移行性
ラットに
14C-標識体を単回経口投与したとき、放射能は主として消化管内容物、陰茎、腎臓、尿路、肝臓、肺、副腎、涙腺、ハーダー氏腺、唾液腺及び脾臓に分布した
6)。
ラットにメマンチン塩酸塩を混餌投与したとき、脳内メマンチンのAUCは血漿中メマンチンのAUCの18倍以上高かった
7)。
また、妊娠中のウサギに
14C-標識体を単回静脈内投与したとき、放射能は胎児に移行した。授乳期のラットに
14C-標識体を単回経口投与したとき、放射能は乳汁に移行した
8)9)。[
9.5、
9.6参照]
16.4 代謝
16.4.1 高齢男性にメマンチン塩酸塩20mgを単回経口投与したとき、投与後72時間以内に未変化体が34.1%、代謝物であるフラノース型グルクロン酸が結合した抱合体が2.2%尿中に排泄された
10)。
16.4.2 メマンチン塩酸塩は、ヒトチトクロームP450(CYP)分子種を発現した細胞を用いた検討で、ヒトのP450で代謝されにくいことが示された。ヒト肝細胞においてCYP1A2、2C9、2E1、3A4及び3A5を誘導しなかった。臨床用量における血漿中濃度付近(1μmol/L)で、ヒト肝ミクロソームにおける各P450活性、エポキシド加水分解酵素(EH)活性、フラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO)活性、グルクロン酸転移酵素(UGT)活性及び硫酸転移酵素(SULT)活性を阻害しなかった
11)(
in vitro)。
16.5 排泄
健康成人男性に、メマンチン塩酸塩5mgを1日3回経口投与し、定常状態に到達した13日目の初回投与時に
14C-標識体5mgを経口投与したところ、総放射能の尿中への累積排泄率は投与20日後までに83.2±11.7%であり、糞中への累積排泄率は7日後までに0.54±0.41%であった
12)(外国人データ)。
また、炭酸水素ナトリウムを併用し、尿pHをアルカリ性状態にした場合には、メマンチンの全身クリアランス(CL/F)は単独投与時と比べて大きく低下したとの報告がある
1)(外国人データ)。[
9.1.2、
10.2参照]
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者での体内動態
メマンチン塩酸塩は腎排泄型の薬剤であり、腎機能が低下する程度に応じて、メマンチン塩酸塩のt
1/2の延長とAUCの増大が認められている
13)。[
7.2、
9.2参照]
メマンチン塩酸塩10mg単回経口投与時の腎機能障害患者及び腎機能正常者での薬物動態パラメータ
腎機能(Ccr) | 正常者(Ccr>80) | 軽度障害患者(50≦Ccr≦80) | 中等度障害患者(30≦Ccr<50) | 高度障害患者(5≦Ccr<30) |
n | 6 | 6 | 6 | 7 |
平均Ccr(推定値)(mL/min) | 91.1 | 62.7 | 40.9 | 19.1 |
Cmax(ng/mL) | 12.66±2.14 | 17.25±3.94 | 15.76±3.70 | 15.83±0.62 |
AUC(ng・hr/mL) | 1046±82 | 1640±180 | 2071±531 | 2437±451 |
t1/2(hr) | 61.2±7.5 | 83.0±17.0 | 100.1±16.3 | 124.3±21.0 |
CL/F(mL/min) | 133.0±9.6 | 85.3±8.8 | 70.4±17.0 | 58.6±11.3 |
CLr(mL/min) | 82.2±19.8 | 62.1±10.9 | 42.1±9.0 | 28.5±12.2 |
16.7 薬物相互作用
健康成人20例にメマンチン塩酸塩を漸増法(メマンチン塩酸塩5mgを3日間、続いて10mgを4日間投与後、20mgを14日間)により1日1回経口投与した後、メマンチン塩酸塩20mgとヒドロクロロチアジド(25mg)・トリアムテレン(50mg)配合剤を7日間併用したとき、ヒドロクロロチアジドのCmax及びAUCは単独投与時の約80%に低下した
14)(外国人データ)。[
10.2参照]
16.8 その他
<メマンチン塩酸塩OD錠5mg「YD」>
メマンチン塩酸塩OD錠5mg「YD」は「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドライン(平成24年2月29日 薬食審査発0229第10号)」に基づき、メマンチン塩酸塩OD錠20mg「YD」を標準製剤としたとき、溶出挙動に基づき生物学的に同等とみなされた
15)。
<メマンチン塩酸塩OD錠10mg「YD」>
メマンチン塩酸塩OD錠10mg「YD」は「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドライン(平成24年2月29日 薬食審査発0229第10号)」に基づき、メマンチン塩酸塩OD錠20mg「YD」を標準製剤としたとき、溶出挙動に基づき生物学的に同等とみなされた
16)。
17. 臨床成績
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験
中等度から高度アルツハイマー型認知症患者(MMSEスコア:5点以上14点以下、FASTステージ:6a以上7a以下)315例を対象にメマンチン塩酸塩10mg(5mg/日を1週間投与後、10mg/日を23週間投与:計24週間投与)又は20mg(5mg/日、10mg/日及び15mg/日をそれぞれ順に1週間投与後、20mg/日を21週間投与:計24週間投与)、もしくはプラセボを24週間投与する二重盲検比較(用量設定)試験を実施した。
認知機能を評価するSIB-Jにおいて、主たる解析では投与24週後評価のスコア変化量で用量反応性が認められ、また、副次的に実施した対比較の結果、プラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群の間に有意差が認められた(解析対象:260例、p=0.0029、Wilcoxon検定)。日常生活動作を評価するADCS ADL-Jにおいては、主たる解析では投与24週後評価のスコア変化量で用量反応性は認められず、また、副次的に実施した対比較の結果、プラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群の間に有意差は認められなかった(解析対象:260例、p=0.8975、Wilcoxon検定)。
副作用発現頻度はメマンチン塩酸塩10mg/日群で29.9%(32/107例)、メマンチン塩酸塩20mg/日群で31.0%(31/100例)であり、主な副作用は、メマンチン塩酸塩10mg/日群で体重減少3.7%(4/107例)、メマンチン塩酸塩20mg/日群で便秘、歩行異常、浮動性めまい、幻覚各3.0%(3/100例)であった
17)18)。
17.1.2 国内第III相試験
中等度から高度アルツハイマー型認知症患者(MMSEスコア:5点以上14点以下、FASTステージ:6a以上7a以下)432例を対象にメマンチン塩酸塩20mg(5mg/日、10mg/日及び15mg/日をそれぞれ順に1週間投与後、20mg/日を21週間投与:計24週間投与)もしくはプラセボを24週間投与する二重盲検比較試験を実施した。
認知機能を評価するSIB-Jのスコア変化量を表に示す。SIB-Jにおいて、主たる解析である投与24週後評価のプラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群のスコア変化量の差は4.53点であり、両群間に有意差が認められた(解析対象:368例、p=0.0001、Wilcoxon検定)。最終評価時点においても両群間に有意差が認められた(解析対象:424例、p<0.0001、Wilcoxon検定)。
また、SIB-Jのスコア変化量の経時的推移でもメマンチン塩酸塩20mg/日群は24週間にわたってプラセボ群を上回った。
投与24週後のSIB-Jのスコア変化量
投与群 | n | 0週からの変化量注1) | 変化量の差注2) |
メマンチン塩酸塩20mg/日群 | 193 | -0.65±9.74 | 4.53 |
プラセボ群 | 175 | -5.18±11.66 | - |
全般的臨床症状を評価するModified CIBIC plus-Jの投与24週後評価の平均値を表に示す。メマンチン塩酸塩20mg/日群はプラセボ群を上回ったが、両群間の差は0.11であり、有意差は認められなかった(解析対象:367例、p=0.3189、Mantel検定)。
また、最終評価においても有意差は認められなかった(解析対象:425例、p=0.1083、Mantel検定)。
投与24週後のModified CIBIC plus-J
投与群 | n | 24週後(平均値±標準偏差) | 平均値の差注3) |
メマンチン塩酸塩20mg/日群 | 190 | 4.47±1.07 | -0.11 |
プラセボ群 | 177 | 4.58±1.01 | - |
副作用発現頻度はメマンチン塩酸塩群で28.5%(63/221例)であり、主な副作用は、便秘3.2%(7/221例)、血圧上昇2.3%(5/221例)、高血圧1.8%(4/221例)、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、アルツハイマー型認知症各1.4%(3/221例)であった
19)20)。
17.1.3 海外第III相試験
米国において、ドネペジル塩酸塩の治療を6ヵ月以上受けている中等度から高度アルツハイマー型認知症患者(MMSEスコア:5点以上14点以下)403例を対象にメマンチン塩酸塩20mg(5mg/日、10mg/日及び15mg/日をそれぞれ順に1週間投与後、20mg/日を21週間投与:計24週間投与)もしくはプラセボを24週間投与する二重盲検比較試験を実施した。
認知機能を評価するSIBの最終評価時点のスコア変化量の最小二乗平均値を表に示す。プラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群の差は3.4点であり、両群間に有意差が認められた(解析対象394例、p<0.001、2元配置共分散分析)。
最終評価時点のSIBのスコア変化量
投与群 | n | 0週からの変化量注4) | 変化量の差注5) |
メマンチン塩酸塩20mg/日群 | 198 | 0.9±0.67 | 3.4 |
プラセボ群 | 196 | -2.5±0.69 | - |
全般的臨床症状を評価するCIBIC-plusの最終評価時点の平均値を表に示す。プラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群の差は0.25であり、両群間に有意差が認められた(解析対象394例、p=0.03、Cochran-Mantel Haenszel検定)。
最終評価時点のCIBIC-plus
投与群 | n | 最終評価時点(平均値±標準誤差) | 平均値の差注6) |
メマンチン塩酸塩20mg/日群 | 198 | 4.41±0.074 | -0.25 |
プラセボ群 | 196 | 4.66±0.075 | - |
日常生活動作を評価するADCS-ADL
19の最終評価時点のスコア変化量の最小二乗平均値を表に示す。プラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群の差は1.4点であり、両群間に有意差が認められた(解析対象395例、p=0.03、2元配置共分散分析)。
最終評価時点のADCS-ADL19のスコア変化量
投与群 | n | 0週からの変化量注7) | 変化量の差注8) |
メマンチン塩酸塩20mg/日群 | 198 | -2.0±0.50 | 1.4 |
プラセボ群 | 197 | -3.4±0.51 | - |
副作用発現頻度はメマンチン塩酸塩群で33.7%(68/202例)であり、主な副作用は、浮動性めまい5.9%(12/202例)、頭痛4.5%(9/202例)、激越、錯乱各4.0%(8/202例)、転倒、下痢、傾眠、尿失禁各2.5%(5/202例)、疲労、無力症、嘔吐各2.0%(4/202例)、末梢性浮腫、高血圧、歩行異常、体重増加、不眠症、貧血各1.5%(3/202例)であった
21)22)。
17.2 製造販売後調査等
17.2.1 国内第IV相試験
ドネペジル塩酸塩を服用中の中等度から高度アルツハイマー型認知症患者(MMSEスコア:1点以上14点以下)546例を対象にメマンチン塩酸塩20mg(5mg/日、10mg/日及び15mg/日をそれぞれ順に1週間投与後、20mg/日を21週間投与:計24週間投与)もしくはプラセボを24週間投与する無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施した。
認知機能を評価するSIB-Jのスコア変化量の結果を表に示す。SIB-Jにおいて、主たる解析である最終評価時点のメマンチン塩酸塩20mg/日併用群のスコア変化量はプラセボ併用群を上回ったが、両群間に有意差は認められなかった
23)24)(解析対象:527例、p=0.2437、0週時のSIB-Jスコア及びドネペジル塩酸塩の1日量を共変量とした共分散分析)。
最終評価時点のSIB-Jのスコア変化量
投与群 | n | 0週からの変化量注9) | 変化量の差注10) |
最小二乗平均値[95%信頼区間] | 最小二乗平均値[95%信頼区間] |
メマンチン塩酸塩20mg/日併用群 | 261 | -1.34[-2.33,-0.35] | 0.81[-0.56,2.19] |
プラセボ併用群 | 266 | -2.15[-3.13,-1.18] | - |
※その他の解析として行ったWilcoxon順位和検定においても、両群間に有意差は認められなかった(p=0.0563)。
18. 薬効薬理
18.1 作用機序
アルツハイマー型認知症ではグルタミン酸神経系の機能異常が関与しており、グルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体チャネルの過剰な活性化が原因の一つと考えられている。メマンチンはNMDA受容体チャネル阻害作用により、その機能異常を抑制する
25)。
18.2 NMDA受容体チャネルに対する阻害作用及び特性
18.2.1 ラット大脳皮質神経細胞膜画分のNMDA受容体チャネルに対して、選択的で低親和性の結合を示した
26)(
in vitro)。
18.2.2 ラット初代培養海馬神経細胞において、NMDA受容体チャネルの活性化によって生じる電流に対して膜電位依存性の阻害作用を示し、その作用の発現及び消失は速やかであった
27)(
in vitro)。
18.2.3 ラット海馬スライスのシナプス伝達の長期増強(記憶・学習の基本モデル)の形成に対して濃度依存的な抑制作用を示すが、NMDA受容体チャネル阻害作用のIC
50値付近ではほとんど影響しなかった
28)(
in vitro)。
18.3 学習障害抑制作用
18.3.1 ラット海馬へのアミロイドβ
1-40及びイボテン酸(NMDA受容体作動薬)の注入により惹起された神経細胞傷害及び空間認知機能障害を抑制した。一方、正常ラットの空間認知機能には影響しなかった
29)。
18.3.2 ラット腹腔内へのNMDAの投与により惹起された、神経細胞傷害に基づかない受動的回避学習障害を抑制した
30)。
18.3.3 正常ラットに高用量(腹腔内10mg/kg)を投与した場合、受動的回避学習を障害したとの報告がある
31)。
19. 有効成分に関する理化学的知見
19.1. メマンチン塩酸塩
一般的名称 |
メマンチン塩酸塩 |
一般的名称(欧名) |
Memantine Hydrochloride |
化学名 |
3,5-Dimethyltricyclo[3.3.1.13,7]dec-1-ylamine monohydrochloride |
分子式 |
C12H21N・HCl |
分子量 |
215.76 |
物理化学的性状 |
白色の粉末又は結晶性の粉末である。 ギ酸又はエタノール(99.5)に溶けやすく、水にやや溶けやすい。 |
KEGG DRUG |
|
20. 取扱い上の注意
20.1 アルミピロー又はプラスチックボトル開封後は湿気を避けて保存すること。
20.2 製剤の特性上、吸湿により錠剤表面がざらつくことがある。
20.3 5mg錠、10mg錠は、それぞれ錠剤表面に使用色素による赤色、黄色の斑点がみられることがある。
22. 包装
<メマンチン塩酸塩OD錠5mg「YD」>
56錠[14錠(PTP)×4]
100錠(プラスチック容器、乾燥剤入り)
<メマンチン塩酸塩OD錠10mg「YD」>
56錠[14錠(PTP)×4]
100錠(プラスチック容器、乾燥剤入り)
<メマンチン塩酸塩OD錠20mg「YD」>
56錠[14錠(PTP)×4]
100錠(プラスチック容器、乾燥剤入り)
23. 主要文献
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健康成人男性における単回経口投与時の薬物動態の検討(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.7.6.4)
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大和田康子 他,
新薬と臨牀, 63 (3), 374-378, (2014)
-
アルツハイマー型認知症患者における反復経口投与時の薬物動態の検討(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.7.6.7)
-
(株)陽進堂社内資料:生物学的同等性試験(OD錠20mg)
-
全身オートラジオグラフィー(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.6.4.4)
-
脳内濃度(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.6.4.4)
-
ラットにおける14C-標識体を用いた乳汁中への移行(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.6.4.6)
-
胎盤胎児移行性(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.6.4.4)
-
日本人及び白人の高齢者における薬物動態の検討(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.7.6.11)
-
ヒト生体試料を用いたin vitro試験(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.7.2.2)
-
外国人における吸収、代謝及び排泄の検討(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.7.6.6)
-
腎機能障害患者における薬物動態の検討(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.7.6.8)
-
メマンチン塩酸塩とヒドロクロロチアジド・トリアムテレン配合剤との薬物動態学的相互作用の検討(メマリー錠:2011年1月21日承認、申請資料概要2.7.6.16)
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(株)陽進堂社内資料:生物学的同等性試験(OD錠5mg)
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(株)陽進堂社内資料:生物学的同等性試験(OD錠10mg)
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24. 文献請求先及び問い合わせ先
文献請求先
株式会社陽進堂
お客様相談室
富山県富山市婦中町萩島3697番地8号
電話:0120-647-734
製品情報問い合わせ先
株式会社陽進堂
お客様相談室
富山県富山市婦中町萩島3697番地8号
電話:0120-647-734
26. 製造販売業者等
26.1 製造販売元
株式会社陽進堂
富山県富山市婦中町萩島3697番地8号